・・・夕方日記・・・ -7ページ目

こんなところに

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二番花が咲き始めました。

今年は一番花と同じくらいのつぼみがついて、
長く楽しめそうで嬉しいです。

お皿はこちらの記事に書いたブルーウィローです。

モンゴメリのパットのシリーズを英語版でぱらぱらと読んでいたところ
『銀の森のパット』にもブルーウィローが登場していることに気づきました。

銀の森のパット 上 (New Montgomery Books 9)  銀の森のパット 上 (New Montgomery Books 9)


パットの、自分の住まいである銀の森屋敷への愛情が日ましに深まっていくと書かれたあと、
家のものがこまごまと列挙されていく部分です。
太字は私が変えています

見事な縁飾りをしたテーブル掛け。ジュディのかぎ針編みの敷物。組み合わせ文字のシーツ。
毛布がぎっしり入っている杉の箱。刺しゅうをしたテーブルセンター。
レースのドイリー(小皿敷)。なつかしい、古い、柳細工の皿。
祖母セルビーの銀の茶器。古い鏡たち。
この鏡たちは、これまで顔をうつした人びとの美しさを少しずつ盗んできたのである。(p.199)


ここが、原文だと以下のようになっています。

The fine hemstiched tablecloths... Judy's hooked lugs... the monogrammed sheets...
the ceder chest full of brankets... the embroidered centerpieces...
the lace doilies... the dear old blue willow-ware plates...
Grandmother Selby's silver tea service, the old mirrors that had stolen
a bit of loveliness from every fair face that had ever looked into them(p.254).


「なつかしい、古い、柳細工の皿」は、
"the dear old blue willow-ware plates"、ブルーウィローのお皿のことなのでした。

銀の森が何代も住まわれた、古い風情のある家だということを示す、
歴史を感じられる品々として挙げられているもののなかに
ブルーウィローのお皿が入っていることにまずびっくり。

これにだけ dear がついていることからも、
長いこと食卓で使われてきたブルーウィローのお皿は
おいしい食事を囲んだ家族の楽しい日々の思い出が詰まった、
堆積した時間を感じる大切な食器だったんだろうなと改めて感じました。

パットの曾曾おじいさんは、1780年にイギリスから移住してきた設定です。
曾曾おばあさんはフランス人のユグノー教徒でした。
曾おばあさんはアイルランド出身のクエーカー教徒で、
アイルランドからニガヨモギを持ってきて銀の森屋敷の庭に植えています。

おそらくウィローのお皿もこうした人たちが持ってきたもので、
ずっと愛情を込めて使われてきたんだろうなと思いました。

ヘムステッチリネン類、おばあさんの銀の茶器など
他に挙げられているものも興味深かったです。

銀の森のパット (角川文庫)  銀の森のパット (角川文庫)

2012年に出版されたこちらの文庫版では
「昔から大事に使っている、青い柳模様の皿(p.521)」と訳されていました。


・・・・・・・・


もうひとつびっくりしたのが、Blur(ブラー)の"There's No Other Way" という曲のMVです。
夫(洋楽が好き)が発見して、教えてもらいました。



ブルーウィローがほぼ出ずっぱり!!!
基本的にずっと出ていますが、1:45~や2:20~あたりにお皿がアップで写っています。

ちゃんとコースになっていて、
スープとパン→メインのミートパイに付け合わせのにんじん、ブロッコリー、
まるいのはポテトかな?→デザートにお母さんがとりだしたケーキが衝撃。

ソースボート(大きめのミルク入れにも見える)でグレービーソースをかけている場面や
デザート皿を前にみんなが待ってるところまで、
なんかブルーウィローのMVじゃないかと思えてくるくらい映っています。

ブラーはイギリスのバンドです。
この曲は1991年に発売されたアルバムの中の一曲で
彼らの初めてのヒット曲だそう。
全く詳しくなくてすみません;オルタナティブロックというジャンルだそうです。

ふつうのお家の食卓での使われ方が、ほんとに興味深かったです。
しばしば下から迫り来るボーカルの方に
「ええけん座って食べよって(訳:いいから座って食べてなさい)」と
ついつい言いそうになりつつ(暴言、何度も見てしまいました。

こちら(■)やこちら()など
本を読んでいてブルーウィローが出てきたり、
映画や雑誌の写真に写り込んでいたりするのに気づくことはたまにあるのですが、
思いも寄らない、全く異なるジャンルにも登場しているのが
ほんとにおもしろかったです。

涼暮月

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夏椿が咲いています。

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先日、日本民藝館に行ってきました。

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お向かいの西館、柳宗悦の旧居なのですが
見られるのが会期中の水曜と土曜だけで、なかなか都合が合わなかったのです。
今回やっと行けました。

わかりやすい豪華さはないけれど品のある、素朴な落ち着いた建物でした。
付け焼き刃でない、質量を持った思想がある家だなぁと思いました。

宗悦の書斎が圧巻でした。
ドアを囲んで天井までの本棚に、庭のみどりがきれいに見える窓、
どっしりとした椅子と机、そこだけ確実に時間が垂直に流れている気がして

民藝とは何か (講談社学術文庫) 民藝とは何か (講談社学術文庫)
 
この本で読んだ

自然さとか謙虚とか質素とか単純とかいうことが、
美を育てる根本的な要件であるということです。

をしみじみと思い出しました。

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そこから近代文学館を回って
旧前田家本邸へ。

洋館は保存整備工事のため、来月から二年近く休館になるそうで(
その前にもう一回見ておきたかったのです。

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いちばん好きなのは階段の下のここ。

作り付けの椅子があって、深く座ると手前側の人は見えなくなります。
向こう側の人は見えるのですが、これは前田家側の人である可能性が高く
お客様が人目につかずにお話しできるようにという配慮がなされた設計になっているのだそうです。



それから窓好きとしては
食堂の窓(左)と長女(酒井美意子さん)の部屋の窓(右)。
玄関の真上なので、この部屋だけバルコニー付き!



書斎(左)と寝室。

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旧前田邸には和館もあります。

洋館のどうだ感にくらべるとずいぶんあっさりした佇まいに見えるのですが
欄間から床の間からいろいろ渋く
なにより畳に座ってながめられる庭がほんとにすばらしい。



ガイドの方に教えていただいたところ
一番いい場所は、床の間の中央を背にして座った場所=上座。
ガイドの方は洋館にいらっしゃるのですが、見ているときに声をかけて下さって
話しているうちに和館についても詳しく教えて下さいました。ありがたや


右手に花頭窓→雪見障子の硝子ごしに石灯籠が見え、
庭に目をやると視線の一番奥に滝が見えるようになっています。

もともと、「窓」は「間戸」と書いて
柱と柱の間を指していたと読んだことがあります()。

座ると横長く切り取られる「間戸」の景色を
絵巻物に見立てるように
座ったときの視線で計算された庭の造りがみごとでした。

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みんな自然に畳に座って庭を見ているのもなんだか和みました。
やっぱり畳と板間は落ち着くなぁ。

薔薇ノ花サク。

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今年もばらが咲きました。

暖かくなるのが早かったためか、4月の終わり頃からつぎつぎに
たくさん咲いてくれて嬉しかったです。

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一番乗りはアブラハム・ダービー。
株もずいぶん大きくなって、いい香りが庭中に広がっていました。



L.D.ブレスウェイト(左)とアイスバーグ。

写真だとくっきり写るのですが、もう少し落ち着いた赤で存在感があります。
アイスバーグは形が品があって、葉がふかみどりなのもきれい。
グラハムさんとヘリテちゃんのもとになった薔薇です。
同じ頃に咲いたので、紅白でなんだかおめでたい感じに



グラハム・トーマスと野いばら。

優しい黄色に、ティーローズの香りがほっとします。
野いばらはここにあげたすべての薔薇の台木になっている野生の薔薇。
自然のままの素朴な美しさがあるなぁと思います。
栄養もあるのか、蜂人気が毎年一位

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ヘリテージ。
色といいかたちといい香りといいことごとく壷です。

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ピエール・ド・ロンサール。

この記事の最初にあるのが、これのつぼみの写真です。
ゆっくりゆっくり開いていくのがほんとに風情があります。

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昨年から仲間入りしたニュー・ドーン。
通称藤村さん(New Dawn=新しい夜明けなので、咲いてない=夜明け前→島崎)、
驚異的な伸びを記録しました。

小さな苗を植えたのに、アーチにしてJ字くらいに回してこれてます。
つぼみもたくさんついてありがたや。
とげが妙にシャープなので、持つところを慎重に見きわめてます

夏椿に絡ませてある羽衣ジャスミンも咲きました。

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照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。

もうひとつのプディング:ビアトリクス・ポター『ひげのサムエルのおはなし』(2)

ひげのサムエルのおはなし 新版 (ピーターラビットの絵本 14)  ひげのサムエルのおはなし 新版 (ピーターラビットの絵本 14)

ひとつ前の記事の続きです。

煙突づたいに屋根裏部屋の床下に迷い込んだ子猫のトムが、
ねずみのサムエルとおくさんのアナ・マライアに捕まって
ねこまきだんごにされそうになるお話です。

「ねこまきだんご」とはローリーポーリープディングのことで、
1908年に出版されたときのタイトルにもなっていました。

そして!
今回初めて原書を読んで気がついたのですが、
物語の中にもうひとつ、別のプディングが登場しているのです。

・・・・・

トムがねこまきだんごにされている頃、
お母さんのタビタおくさんは
ちょうど訪ねてきたいとこのリビーおばさんと一緒にトムを探していました。

屋根裏部屋の床下からふしぎな物音(=トムがめん棒で転がされているroly-poly 音)が
聞こえてくるのに気がついた二人は、
床板をはがしてもらうべく、「だいくの ジョンさん」を呼びます。
ジョンさんは犬で、仕事道具の入ったバスケットを持って歩いてくる挿絵が描かれています

ジョンがのこぎりで床板を切る音を聞いて、
サムエルは「わしらのたくらみは ろけんした(p.18)」と観念。
二匹は荷物をまとめて速攻引っ越していきます。

というわけで、だいくのジョンが、ゆかにあなをあけたころには、
ゆかしたには、めん棒と とてもよごれた ねり粉にまかれた トムのほかには、
だれも いませんでした。(p.60)


ただ、ねずみの匂いが立ちこめていたので、
ジョンは午前中いっぱい屋根裏で捜索活動を行います。
最後にもとのように床板を打ちつけて下に降りていくと 以下、太字は私が変えています

 ねこたちは おちつきをとりもどし、ジョンに おひるをたべていくように といいました。
 タビタおくさんは、ねり粉を トムのからだからはがして、
すすが目立たないように ほしぶどうを入れて、
ゆでだんごにしてあったのです。(p.63)


ここの「ゆでだんご」にご注目下さい。

原文だとこれが

The cat family had quite recovered. They invited him to stay to dinner.
The dumpling had been peeled off Tom Kitten, and made separately into a bag pudding,
with currants in it to hide the smuts.


bag pudding と書かれているのだ!!!

バッグプディングって何だろうと調べてみましたが、
はっきりこれというレシピは見つかりませんでした…。

バッグプディングの中で一番有名なのはクリスマスプディングと書かれているサイトがあったりして
どうもプディングクロスにひとまとめに包んで蒸すものをざっくり総称して
バッグプディングと呼んでいるような印象を受けました。


ビートン夫人の料理本をさらったところ、
bag pudding は載っていませんでしたが
hunter pudding というレシピが見つかりました。

タビタおくさんの作ったものに、これがとても近かったです。

Ingredients.
12 ozs. of flour,
4 ozs. of finely-chopped suet,
6 ozs. of raisins of stoned and halved,
3 ozs. of sugar,
1 teaspoonful of baking-powder,
1/4 pint of milk or water, salt.

Method.--Add the suet, raisins, sugar, baking-powder,and a good pinch fo salt to the flour,
mix well, and stir in the milk or water.
Shape the mixture into 1 or 2 rolls, tie in pudding cloths, and boil for about 2 hours.
If prefered, the mixture may be made more moist and steamed in a basin.


小麦粉にスエットや砂糖、ベーキングパウダー、
レーズンに適量のミルクか水を入れて混ぜ、
プディングクロスでくくって二時間ゆでればできあがり。

あればプディング型に入れて蒸すと
よりしっとり仕上がりますヨと書かれているところからも、
戸外で調理器具が満足に揃わなくても作ることができるプディング→
ハンタープディング という名前になったのかなと思いました。

イギリスの菓子物語 ~英国伝統菓子のレシピとストーリー~  イギリスの菓子物語 ~英国伝統菓子のレシピとストーリー~①

ほしぶどう入りのプディングだと考えてレシピを探すと、
こちらの本に載っていたスポッティド・ディックというプディングに
非常に似ていたので、作ってみました。
 


小麦粉にバターを切り混ぜ
砂糖とバーキングパウダー、ほしぶどうを入れて
かまぼこのように形作ったら
ホイルとオーブンペーパーで包んで蒸します。

「19世紀ごろに生まれ」、「カランツが生地にちらばり、
スポット(水玉、ぶち)のように見えるためこの名がつ」いたそうです。
「昔は、プディングクロス」に包んで蒸していて
「プディングベイスン(陶製の型)は使わず、布に包んだ筒状の伝統の形が特徴(①p.52)」なのだそうです。

ローリーポーリープディングもそうでしたが
焼き菓子と違って途中の様子をうかがえないので、
かすかにたちのぼる香りを励みに
大丈夫かなと待っているのが新鮮でした。



できたてにカスタードソースをかけていただきます。

ほかほかとあたたかいのが嬉しいですし
しっかりしていて、たしかにこれはお昼ごはんになるなぁと思いました。
頂いたのが午前中だったのですが、夕ごはんまで大丈夫でした

大工のジョンは、匂いでお昼がプディングだと予想はついていたのですが
仕事が立て込んでいて、残念ながら帰らなければなりませんでした。

プディングを差しだしているリビーおばさんとかなり心残りな様子のジョン。

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それにしても、トムがまかれていたプディング生地をはがして再利用、
しかも煙突を通ってきたトムを包んだために微妙にすすっぽいところを
ほしぶどうを入れてカモフラージュするタビタおくさん、おそるべし。

小さいころには全く気がついていなかったいろいろが
今頃になってするするとつながっていくのが
ほんとにおもしろかったです。



<おまけ>

今回の裏・目からウロコ一位はこれでした。

ねこたちは おちつきをとりもどし、ジョンに おひるをたべていくように といいました。

は、原文ではこうなっています。

The cat family had quite recovered. They invited him to stay to dinner.

お昼ごはん=lunch、夕ごはん=dinner、軽めの夕ごはん=supper と習ってきたので
ディナーがお昼?とふしぎに思いました。

このすぐ前の部分で、屋根裏に上がったジョンが描写されているのですが

… and John Joiner spent the rest of the morning sniffing and whining,
and wagging his tail, and going round and round with his head in the hole like a gimlet.

そこで、だいくのジョンは、はなをならしたり、かぎまわったり、しっぽをふったり、
かけあるいたり、くびを ねじくぎのように あなにつっこんだりしながら 
ごぜんちゅうを そこで すごしました(p.61)。


となっているので、時間帯は明らかにお昼を指していることがわかります。

さらに、サムエルがアナ・マライアに向かって
「わしに、ねこまきだんごをつくってくれや(p.44)」とリクエストする場面、
訳では省かれていますが

"Anna Maria, make me a kitten dumpling roly-poly pudding for my dinner."

と言っていて、ここでも dinner という語が使われています。

調べてみると、dinnerは「昼または夜にとる一日のうちの主要な食事(ランダムハウス英和辞典)」で、
イギリスではその日のうちでいちばんしっかりした食事を指すため、
昼食のことをdinnerと呼ぶケースもあるそうなのです。

※こちらのサイトが勉強になりました
イギリス英語とアメリカ英語の食事という言い方の違いについて:dinner、tea、supperの違い

ここで頭の中の廊下(どこ?;)の蛍光灯がいっせいに点いた気がしました。

詩人のウィリアム・ワーズワースの妹、ドロシー(1771ー1855)の日記に
dinner がよく出てくるのですが、時系列がふしぎに思える箇所が多かったのです。

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Wordsworth, Dorothy. Journals of Dorothy Wordsworth. Oxford: Oxford Univercity Press, 1958.②

ドロシーが兄のウィリアムと一緒に
ピーターラビットの舞台と同じ湖水地方、グラスミア湖の近くの
ダヴ・コテッジと呼ばれる家で暮らしていた時期に書かれた
The Grasmere Journals 1800-1803 が収録されています。

1800年9月9日(火)の日記は以下のようになっています。 かっこ内は私の補足です

Tuesday Morning 9th. Mr Marshall came--he dined with us.
My brothers walked with him round the lakes after dinner--windy--we went to the island.
W. and I after to tea. John and I went to the B. quarter,
before supper went to seek a horse at Dawson's--fir grove.
After supper, talked of Wm's poems.(②p.39)

9日 火曜日 朝
マーシャルさん(ドロシーの幼なじみ、ジェーン・ポラードの夫)来訪。昼食を一緒に頂いた。
お昼ごはんのあと、マーシャルさんと兄のウィリアム、
弟のジョン(このときダヴ・コテージに滞在中)と散歩に行き、
風が吹くなか、(グラスミア湖に浮かぶ)島へと渡った。
ウィリアムと私はそのあとお茶を飲みに帰った。
ジョンと私はブラッククォーター(兄妹が近くのイーズデールにつけていた名前。
高い丘に囲まれていて、風や雲がたまりやすい場所でした)に散歩に出て、
夕ごはんの前に、樅林の近くのドーソンさんの家に、馬を手配しに行った。
(翌日、マーシャルさん&ウィリアム&ジョンの三人は馬に乗ってケジックへ出かけます)
夕食後、ウィリアムの詩について話した。


これまで、dinner=夕食だと勝手に思い込んでいたので
夕ごはんのあとに散歩はまだいいとしても、湖に漕ぎ出して島に行く?;
いやでも緯度が高くて日没が9時過ぎるくらいだから可能なのかな?
だけどお茶を飲んでるし、お茶はどう考えても夕方、四時ごろのはずだよね??
しかもそのあとsupper=軽め夕ごはんを食べてるし、なんで2回も夕ごはん???
夜食???

……(?_?)

→いいや、とりあえずお客さんが来てごはん食べて散歩したってことで次行こう!(ヲイ

のような感じで、微妙に謎な気持ちが残っておりました。

これをdinner=お昼ごはんと思って読めば一発解決、
時間の流れもちゃんとつじつまが合ってる!!!

他に興味深いところが多い日記なので 
こんな感じでdinnerに関しては深く考えずに読みとばしていたのですが(早く調べなさい;
この部分以外にも、いろんなところが腑に落ちて心底すっきりしました。
いつかこの日記についても記事を書きたいです


最後にもう一つおもしろかったのは、
『ひげのサムエルのおはなし』で
タビタおくさんのいとこのリジーおばさんは「パンに入れる イーストをかりにきた(p.12)」のですが、
ドロシーの1801年12月2日(水)の日記にも 
Mrs. Olliff brought us some yeast・・・(②p.65)
(オリッフさんのおくさん〔ご近所さん〕がイーストを少し持ってきてくれた)という記述があること。 

日記が1801年、絵本の出版が1908年なので
ドロシーとビアトリクス・ポターが湖水地方に住んでいた時期には
一世紀近い開きがあるにもかかわらず、
ふだんの暮らしぶりに似ているところがあるのが、なんだか和みました。

そう思うと、産業革命がいろんなものを根こそぎ変えてしまって、
それ以前に戻ろうとする動きが高まった流れも、自分なりにより納得できる気がします
  

ビアトリクス・ポター『ひげのサムエルのおはなし』とローリーポーリープディング

ひげのサムエルのおはなし (ピーターラビットの絵本 14)  ひげのサムエルのおはなし (ピーターラビットの絵本 14)

いたずら好きの子猫のトムは
お母さんのタビタおくさんがパンを焼くあいだ
おとなしくしているようにと閉じ込めた押入れから脱走し、
暖炉から煙突を通って、屋根裏部屋の床下に迷い込んでしまいます。

そこにいたのは大きなねずみ、ひげのサムエル(表紙のお方)と
奥さんのアナ・マライアでした。

なんとアナ・マライアは「あっというまに」「トムにとびかかり、
トムは、なにが なんだか わからないでいるうちーー
上着は はがされ、ひもで きっちり しばられて しまいました(p.44)」(驚愕Ⅰ

するとサムエルは
「わしに、ねこまきだんごをつくってくれや(p.44)」と言い出します。(驚愕Ⅱ

アナ・マライアはねり粉とバターとめん棒が必要だと返し、
二人はタビタおくさんの台所へ忍び込んでこれらを拝借、
巻き寿司の具がトムになった状態の「ねこまきだんご」を作りはじめるのです。

初めて読んだ子どもの頃、この「ねこまきだんご」というワードは
すごいイキオイで私と妹の壺に入りました。

布団にぐるぐるまきになって転がる「ねこまきだんごごっこ」が大流行。
調子に乗った私が回りすぎて気持ちが悪くなり、最終的に母トチーから禁止令が出るという悲劇が;

そんなわけで、おもしろ創作お菓子だと信じて疑っていませんでした。

駄菓子菓子!

物語や絵本のお菓子 ティータイムレシピ  物語や絵本のお菓子 ティータイムレシピ

数年前に手にしたこの本で、「ねこまきだんご」が
ローリー・ポーリー・プディングなるお菓子だということが判明しました。
ほんとにびっくりしました、「ラピュタは本当にあったんだ!」的目からウロコ。

1908年に出版されたとき、この物語は "The Roly-Poly Pudding"という題だったのだそうです。
1926年に"The Tale of Samuel Whiskers or, The Roly-Poly Pudding"と改題されたそう。
Whiskers=猫やねずみなどのひげ

日本語版では『ひげのサムエルのおはなし』ですが、
英語版ではローリーポーリープディングは今も副題として残っています。

物語の中でもこんなふうに 以下、太字は私が変えています

Tom Kitten bit and spat, and mewed and wriggled;
and the rolling-pin went roly-poly, roly; roly, poly, roly.

トムは くいつこうとしたり、つばをひっかけたり、ないたり、もがいたりしました。
そのまに、めん棒は ぺたぺた ぺたぺたと いったり きたり しました。(p.57)
 

「ぺたぺた」と訳されていますが、
サムエルとアナ・マライアがめん棒を使う場面で
「roly-poly」 という擬音が何度も使われており、
題名を想起させる仕掛けになっていたんだと気付きました。

・・・・

ずいぶん経ってしまいましたが;先日ようやく作ってみました。

イギリスの菓子物語 ~英国伝統菓子のレシピとストーリー~  イギリスの菓子物語 ~英国伝統菓子のレシピとストーリー~

今回はこちらの本の作り方で、「一番簡単でおいしい湯煎焼き(②p.39)」にしました。

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生地をのばしてジャムを塗り、ぐるぐる巻いてオーブンへ。

できあがるのに合わせてカスタードソースを作って、いただきます。

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ほかほか+温かいソースをかけるので、とても温まります。
紅茶にもよく合って、冬場はとくにいいなとしみじみ思いました。

この本では「イングランド北部の菓子」の章で紹介されており、
ピーターラビットの舞台、湖水地方の地元お菓子だったんだなぁとなんだか嬉しくなりました。

ローリーポーリープディングは「ビクトリア調時代に生まれたデザート」で、
「suet(牛脂)と小麦粉でつくった生地」を使い
「布で包んでゆでるのがもともとの作り方(①p.6)」だったそうです。

包みやすいので「シャツの袖にくるみ、
かたどったことからシャツスリーブ・プディングとも呼ばれる(①p.77)」由。

気になったのでビートン夫人の料理本を見てみると、載っていました!
出版されたのが『ひげのサムエルのおはなし』が出る前年の1907年なので、これ以上ないビンゴでちょっと嬉しかったです

Ingredients.--8 ozs. of flour,      小麦粉 8オンス
4 ozs. of finely-chopped suet,       細かく切った牛脂 4オンス
1/2 a tea spoonful of baking-powder,   ベーキングパウダー 小さじ1
1 saltspoonful of salt,          塩 小さじ1/2 
2 to 3 tablespoonfuls of jam.       ジャム 大さじ2~3

Mathod.--Mix the flour, suet, baking-powder and salt into a stiff paste
with a little cold water.
Roll it out into a long piece about 1/4 of an inch thick,
spread on the jam to within the sides and far end with water.
Roll up lightly, seal the edges, wrap the pudding in a scalded pudding-cloth,
and secure the ends with string.
Boil from 1 1/2 to 2 hours, or bake in a quick oven for half that length of time.

小麦粉とベーキングパウダーにスエットを切り混ぜ、ひとかたまりにする。
必要なら少量の冷水を足す。
1/4インチほどの厚さで長方形に伸ばし、ジャムを塗る。
巻き終わりにとじるための水をつけておく。
軽く巻き上げ、端をとじ、熱湯消毒したプディングクロスで包んで
両端をひもなどでしばる。
一時間半~二時間ゆでるか、オーブンで焼く。焼き時間はゆでるときの半分ほど。


ゆでても焼いても構わないようで、このおおらかさにほっとしました。
ぐるぐる好きにはほんとに作るのがおもしろかったので、
また違う方法でも挑戦してみようと思います。


<蛇足>
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ひげのサムエルがアナ・マライアに「ねこまきだんご」を作ってくれという場面では、
次のようなやりとりがなされています。

「わしに ねこまきだんごを つくってくれや」

ねり粉と バターと めん棒がいるわねえ」
おかみさんは、くびをかしげて、トムを とっくり ながめながら いいました。(p.44)

「いや、ちゃんと つくってくれや」と、サムエルはいいました。「パン粉をつかってな」(p.46)

「ばかなこと いいなさんな! ねり粉とバターで いいんです」と、アナ・マライアはいいました。(p.47)


改めて読んでいると「パン粉をつかってちゃんと作る」が引っかかりました。
原文を見てみると、こんなふうに書かれています。

"Anna Maria, make me a kitten dumpling roly-poly pudding for my dinner."

"It requires dough and a pat of butter, and a rolling-pin," said Anna Maria,
considering Tom Kitten with her head on one side.

"No," said Samuel Whiskers, "make it properly, Anna Maria, with breadcrumbs."

"Nonsense! Butter and dough," replied Anna Maria.


「ねり粉」はdough、「パン粉」はbreadcrumbs。

ドウはパン種のことで、物語ではタビタおくさんがすでに作ってあり、
暖炉の前で温めてあります。
ドウを使えば、トムにバターを塗って
ねり粉で巻けば準備完了(実際に二人はこの作り方で仕度をします)。

一方、breadcrumblesはパンくずとも訳されるので
おそらくねずみたちがタビタおくさんの台所から借りて(?)きた
(そしてふだん小麦粉の代用にもしている)ものを指すのではないかと思います。

これにバターや牛脂を混ぜて生地を作れば、より本来のプディングの作り方に近くなり
おそらく風味のある、おいしいプディングになると思われるので
サムエルは「ちゃんとした」と言ったのかな?

アナ・マライアにしてみれば、パン粉だとわざわざ計量して切り混ぜることになり、
余計な手間をかけさせられる羽目になるので
ナンセンスだとばっさりいったのでしょう。
なんかどっちの言い分もわかるなぁと複雑な気持ちに

パン粉を使ったプディングのレシピがあるかと
ビートン夫人の本をひっくり返しましたが見つけられませんでした;

ただ、ずっと前に作ったモンゴメリのレシピ、ニュー・ムーン・プディング
小麦粉でなくてパン粉を使うプディングでした。

実母を赤ちゃんの頃になくしたモンゴメリを育ててくれたのは
12歳で北イングランドからカナダに移住したおばあさんでした(1911年に87歳で没。

日記には一緒に料理やお菓子作りをしている記述があるので、
モンゴメリの料理のルーツは
多分にイギリス生まれの彼女の影響を受けている可能性があると思われます。

そう考えるとこの頃のイングランドで、パン粉でプディングを作るのも
よくあることだったのかなと思いました。