もしかしたら、彼女が本当に紋白蝶になってきたのかもしれない。
と、おもいながら、そっと、その紋白蝶に手を伸ばしてみると、紋白
蝶は、すでに息絶えていた。 よく観ると、その模様は、結婚式のと
きに彼女が身につけたドレスのレースの模様と酷似しているように
も思えたので、あはれにも思えた。 生きているような紋白蝶の死
骸をそっと、傷つかせないほどに懐紙に包んで、紋白蝶が螺鈿細
工された選考箱に収めた。 つづく
もしかしたら、彼女が本当に紋白蝶になってきたのかもしれない。
と、おもいながら、そっと、その紋白蝶に手を伸ばしてみると、紋白
蝶は、すでに息絶えていた。 よく観ると、その模様は、結婚式のと
きに彼女が身につけたドレスのレースの模様と酷似しているように
も思えたので、あはれにも思えた。 生きているような紋白蝶の死
骸をそっと、傷つかせないほどに懐紙に包んで、紋白蝶が螺鈿細
工された選考箱に収めた。 つづく
と、思いながら、その暗いひんやりとした空間のどこかへ、その
紋白蝶が消え去っていくまでを、ゆっくりと見送った。
やがて、その姿は、視界から完全に消えて見えなくなったので
少し軋む雨戸を閉め、ガラス窓を閉め、カーテンを引いて、彼女
のそばに座っていた彼は、朝方に少しまどろんだのか、fyと目が
覚め、彼女も、目が覚めたんじゃないかなという錯覚を伴いなが
ら、なにげに彼女を見つめると、その枕元に、昨夜の、あの、紋
白蝶が昨夜留まったのと同じ場所に。。 つづく
その紋白蝶は、生きているのでかれは、じっとしているその紋白
蝶を、手に取って、立ち上がり、ゆっくりと窓を大きく開けて、外へ
とその紋白蝶を手からそっと放った。
そとの、そのひんやりとした空気は、二人で温めていた部屋の
空気を、一気に冷ますかのように感ぜられた。彼には、十月なの
で、ちょっと寒いかもしれなうけれど、部屋の中に閉じ込めておく
よりいいかなと思えたので、そうはしたのだが、手を放してやって
直ぐに、かわいそうなことしたかなと。 つづく
まるで、彼女が自分の現世の身体に別れを告げるかのように
、悲しみに耐えて身体を震わせているかのようで切なく、ものの
あはれを感ぜずにはいられないような、その紋白蝶の舞い は、
半時ほど刻んで休み、また半時ほどと、その繰り返しして見せ
て少し疲れでもしたのか、その紋白蝶は「私を、もう少し此処に
居させて。」とでもいうかのように、彼女の枕もとのヘッドウオー
ルにスッと留まった。
彼女の変わり身かとも思える。 つづく
どれくらいの時間が経過したのかさえ分からないうちに、彼女の
遺体は、アパートのベッドの上にあった。 その夜は、通夜として
彼は、その彼女と一緒に、そのベッドのそばにいて過ごした。
夜中に突然、十月だというのにどこからともなく、一匹の紋白蝶
が、ひらひらと、部屋の中を舞い始めた。 そのちょっと不自然に
も感ぜられる頼りなげな舞い方は、マリオネットのそれのようでも
あり、部屋の空気そのものが肌に不思議な感覚でまとわりつくに
感ぜられるのも、それのようであった。 つづく
後日、判明したことに、当直の医師は内科医師であったとのこと。
そんなことが分かったからといって、彼にとってはもうどうでもいい
話話だった。
なぜ彼女が死ななければならなかったのか死をもって償わなけ
ればならないほどのことでも犯したのか、神は、その命を差し出さ
せることで、なにを彼女に与えたのであろうか。 わずかに二十二
年間の生涯しか与えられず、彼と感じられ、ともになき、笑いもした
結婚して僅か一ヶ月という、彼女の幸せの時間は、あまりにも短い
ものではなかったかと。 つづく
彼女が止まっていると、反対車線側で一台の車が止まり、それ
に会釈しながら小走りになったところへ、その後ろから来た車が
止まらずに、そのまま彼女を跳ね飛ばし、何メートルかボンネット
に乗せたまま走って止まり、そこで、ボンネットから体が落ちた。
ということまでが分かった。
それを聞いた時、記憶の断片に。加害者の話もそのようなこと
言ってたなと、かすかに聞いたことがあるような気がした。
後日、区役所に提出するための、死亡診断書には、【脳内
出血重圧のため、死亡に至った。と。 つづく
彼は部屋から出て待つように言われ待つこと数十分「必要と思
われますので、検死解剖をしますから。」と、承諾書にサインを求
められて。 死んでまで切り刻むのは嫌だと反対をしたのだが、「
原因をハッキリさせたほうが彼女のためになりますよ。」と、説得
されサインをし、結果を待った。
結果は、腰骨の骨折による内臓破裂が原因の出血多量死と、
判明しましたとの報告を受けた。
更には、事故現場の目撃証言があり、信号のない横断歩道を
、小雨の中、四車線の半分の真ん中で。 つづく
[[「十月八日、零時十九分。ご臨終です。」 彼女の命の終焉を
、医師が彼に伝えた。そして同席していた看護師と共に頭を静か
に淡々と深々と下げたが、淡々としたその様子からは、言葉で
伝えられたはずの、彼女の死という現実は伝わらず、無情とも
いえるそのことを伝えるその瞬間に見えた看護師の目に光る
ものが、言葉よりも心を雄弁に物語っているのではないかと
彼には感ぜられた。
どれくらいの時間が経ったのか警察官が数人きて「警察に
よる検死をしますので、ご主人は出ていただけますか」と。
つづく
「先生を呼んできます!!」と、飛 び出していった。 直ぐに当直の
医師が駆けつけて、手当を始めたが彼女の意識はなくなりなが
ら真っ青の顔色になっていってる。 医師が看護師に何事か大
声でだしながら、必死の形相で取り組んでいるのがわかる。
かれは、そのそばで、両の手から血が流れ出るのでは。という
くらいに手を組み合わせながら握りしめ、彼女との結婚式を、取
り上げて二人を認めてくれたはずのキリスト様に頼んだ。 貴方
様のお力で、お長いですから、結婚ということを本当に喜んでい
た彼女を助けてください。 つづく