今回の話から、王子様彼編:主人公である【あなた】目線のストーリーになります!
素敵な彼がいて幸せ全開と思いきや…そうでもないようです。
一体何があったんでしょう?
さっそくスタートです!!!
離れてみて改めて気づく。
私と彼にはすごい差があるってこと。
彼は、彼自身の会社と私が働いている会社との共同出資で、海外に新事業を展開するくらいの規模の仕事をしている。
何と言うかグローバルな感じがすごい。
彼の家には洋書も沢山あったし、この前も海外の人と楽しそうにおしゃべりをしていた。
私との当たり前がこうも違うのかとびっくりしたんだった。
それだけじゃない。
いつも前向きで努力家で、優しくて、みんなに信頼されて、その上、容姿だってすっごくかっこいい!
その点、私は…
何の取り柄もない。英語も苦手。見た目だって大したことない。私のこと本気で可愛いって言ってくれたのは、おばあちゃんだけだったから。
…だから、、
なんで彼は私なんかがいいんだろう?
って、たまにチラッと頭を過ぎることがあった。
でもそんなことを考えさせないくらいに、彼は私のことを大切にしてくれていた。
…
…そう。
彼のおかげで今まで幸せに過ごせていたんだと思う。
彼が近くにいない今、そうやって見過ごしてきた不安の部分が、私の中で、黒い雲のようにもくもくと膨れてきている。
そして、もう一つ。
彼といるといつもそうなってしまうのだけれど、彼の醸し出す優しい甘さに包まれると、何かが恥ずかしくなって、もじもじしてしまう。
しかも彼と過ごす時間を重ねるごとに、彼の甘さの濃度は深まるばかり。
すごく幸せなんだけど、、どうしてもその甘さから逃げたくなってしまう自分もいた。
「何がそんなに恥ずかしいの?」って彼にも言われたんだけど…
嬉しいはずなのに、彼の愛情を全部受け止めたいはずなのに…こんなに彼のこと好きなのに…
私って何なんだろう?
そんなことも考えていた。
彼とは時差の関係で、なかなか電話できるタイミングもない、、それに、すごく忙しそうだから私からメッセージを送り続けるのも、彼にとっては負担になるかと思ってしまい気が引ける。
何もできない。
…そんな悶々と不安に苛まれる日々が続いていた。
-そんなある日のことだった。
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「ねぇ、見てこれ!さっき送られてきたんだけど、やっぱりこの2人、すごいお似合いだよね。」
「本当だー!…え!待って、ここ見て!これって、ペアリングじゃない?!」
「あー…やっぱりこの2人って付き合ってるんだ。でもいいよねぇ。誰もが認めるカップルって感じがさ!」
近くで楽しそうに話している同僚達。
…何の話だろう?と気になって近寄ってみると、、
「あ、これ見てよ!さっき、海外事業部の同期から送られてきた写真なんだけど、その中にこんな写真があってさー!」
そう声をかけられて、スマホの画面を私に見せてきた。
…え、、、、、
何、これ。
一瞬で体が硬直するような感覚に襲われた。
海外に行ったのは、会社の中でも群を抜いて仕事ができる精鋭メンバーのみで、その中で紅一点、とある女性社員がいた。
会社の中でも、その人の美しさと聡明さは評判でたぶん社内で知らない人はいないんじゃないかってくらい。
それに私も一度だけ話したことがあるんだけど、すごく可愛くて素敵な人で私もドキドキしちゃったくらいだった。
そんな人が彼と仲睦まじく肩を寄せ合って楽しそうに笑っている写真だった。
…本当だ。
…同じ指輪してる。
私の目に留まったペアリングの指輪。
その事実を受け入れた時、私の中にあった黒い雲のようにモヤモヤしていたものが、鋭利な塊に形を変えて、私の心を突き刺した。
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その後、どうやってその日を過ごしていたのか思い出せないくらい私は沈んでいた。
それからは、家にいる時も、通勤中も、仕事をしている時も、帰宅中も、買い物してる時も、寝る時も、起きた時も、何なら24時間ずっと、、、
同じことをひたすら繰り返していた。
…でもほら、彼は私のこと好きって言ってたし。連絡だって、この前も少しだけだったけど、できたじゃん。
あの時だって、こんなことしてくれた…
、、そうだよ!
それって好きじゃなきゃやらないでしょ?ほらあの時だってそう!好きだからやってくれたんだよ。
うん、大丈夫!
彼は私のことが好きなんだよ。
彼との出来事を思い出しては、彼の愛を必死に感じていた。
それなのに、、
何でなの?
なんで、
私の心はどんどん苦しくなっていくの?
さっきまで感じていたはずの彼の愛が、どこかに呆気なく消えてしまった。
…
…やっぱり、私は彼とは不釣り合いなんだ。私なんかが彼の隣りにいるのはおかしいんだ。
そんな声が聞こえる。
…でも、彼は私のこと好きだっていってくれてるよ?
それは、彼にとって、私って存在が物珍しくて新鮮に感じたから好きになっただけかもしれない。
…それだけで、こんなに好きになってくれるはずないもん。
確かにそれはあるかもしれない。
でも、こんな素敵な人に出会ったらその気持ちが変わることだってあると思わない?自分だって実際に話してドキドキしたんでしょ?
…う、うん。
…でも
…
同僚だって言ってたでしょ。この2人は誰もが認めるくらいにお似合いだって。彼に相応しい人って、こういう人なんだよ。
…。
私の中で錯綜する会話が途切れた。
…返す言葉がなくなった今、
彼が私のことを好きだと納得できる可能性が私の中から消えてしまった。
…私、なんでこんなに必死にやってたんだろう。
途端に虚しさが込み上げてきて、自分がひどく惨めに思えてきてしまった。
彼との今までのことが、まるで雲に浮かぶ夢物語だったかのように、現実に突き落とされた気分だ。
私と彼が恋人になるはずのない世界、、
これが、本来のあるべき現実なんじゃないかと、そんなことを思うことしかできなくなってしまった今、
私は、完全に心を見失ってしまった。