前回の俺様物語の続きで〝あなた〟目線に変わります。
さて、あなたは彼の気持ちをどう受け止めたんでしょう??
それでは、どうぞ!
家に帰って、お風呂に入る。
そして、ベッドに寝転んで、さっきから頭の中でぐるぐるしていることを考えてみる。
…お前がいいって、どういうことなんだろう?でも抱きしめられたってことは、私のことが好きってこと…だよね?恋愛としての好きだよね?3年は会えないわけだから、遠距離ってこと?
…完全に迷子になってしまった私。
…
…私は、何を、どうしたらいいんだろう?
そんなことを考える中で、
抱きしめられた時の感覚がふとよみがえる。
力強くて、優しくて、
そして温かかった。
…ドキドキした。
…もう一度ちゃんと聞いてみよう。うん、それがいい。
〈今度、会える時ってあるかな?〉
彼にメッセージを送ってみる。
〈また連絡する〉
そう返事が来たっきり、次の連絡が来ることはなかった。
今日中に連絡くるかな?って少し期待しちゃってたからかな…
いつもなら気にならないはずなのに、少しだけ胸がチクッとした。
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…新事業ってすごく大きな仕事だし、忙しいよね。 返事も難しいのかな。
何だかやり場のない気持ちを抱えたまま、いつも通り会社で仕事をしていると、私とは対照的に楽しそうに話す会話が聞こえてきた。
「ねぇ聞いて聞いて〜!さっき私が困ってたら、すごーく優しく教えてくれたの!なんであんなにかっこいいんだろう…!彼女とかっているのかなぁ?」
「この前聞いたんだけど、今いないらしいよ!これチャンスなんじゃない?今同じ仕事に関わってるんでしょ?あんな彼氏がいたら最高だよね!」
「そうなんだよね!今度ご飯誘ってみようかなぁ。」
…
どうやらその相手というのが〝彼〟だった。
…優しい?
…え?
優しい??????
私そんな優しく教えてもらったことないんだけど…!!!むしろ逆!!
…
…
…あれ?
…私のこと、本当に好き、、なのかな。
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悶々とする日々が続いた。
それから、数日が経ったある日、彼から連絡が入った。
〈明後日の夜、空いてるか?〉
…ほら、いつもこうやって、急なんだもん。
〈空いてるよ!〉
そう返せば、
〈じゃあ19時に、いつもの場所で。〉
あっさりした返信が返ってきた。
…本当に、、勝手なんだから。
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当日、いつもの待ち合わせ場所に向かうと、少し先の方に彼の姿が見えた。
…私のこと、待ってるんだよね。
当たり前のことなんだけど、その現実に少しそわそわして、…ほんの少しだけドキドキした。
「お待たせ!」
「おお。」
「今日はどこに行くの?言われた通り、お腹空かしてきたよ!」
「そか。ま、着いてからのお楽しみってことで。じゃあ行くぞ。」
そう言うと、彼の案内で歩き始めた。
…どこに行くんだろう??
〜〜〜〜〜
「え??!!!ここって!!!私が行ってみたかったお店…。え…何で?」
…予想外過ぎて、めちゃくちゃびっくりした。
「何でって、お前ここに来たいって言ってただろ?」
「そ、そうなんだけど…だってこのお店、予約が全然取れなくて半年待ちだって…すっごい人気店なんだよ?」
「ああ。そうらしいな。
実はこの前俺が担当したクライアントがこの店のオーナーで、たまたま話の流れで今日の予約取ってくれたんだよ。」
…わぁ。そんなことってあるんだ。。
店内に入ると、個室に通された。
オシャレで落ち着いた雰囲気に加え、所々に飾られているオブジェや小物、この店内を彩るすべてのものにこだわりを感じられて、居心地の良い空間だった。
料理も、とっっっても美味しかった!!!
特にこのケーキ!!!
「…お前、本当好きだよなぁ。笑」
「だって、美味しいんだもん!!あぁ、幸せ…」
「…そりゃよかったな。笑」
…とても幸せな時間だった。
もっとこの時間が続けばいい、そんなことを思った矢先の出来事だった。
-彼に電話がかかってきた。
「…お疲れ。どうした?まだ会社にいるのか?…わかった。大丈夫だ、問題ない。ああ、すぐ行く。」
「…どうしたの?」
「悪い、会社に戻る。明日のプレゼン資料にミスがあったらしい。」
「…そっか。それは大変だね。わかった。…頑張ってね。」
そして彼を見送った。
1人残された私。
何だか幸せの魔法が解けたようだった。
無機質な現実に引き戻された感覚に少し寂しさを感じた。
1人家に帰る途中、
…私って、彼にとってどんな存在なんだろうって。
そんなことを、ふと思ってしまったんだ。
-次の日。
「昨日の夜、本当にありがとうございました!もうあの時本当にどうしようかと…助かりました!」
「大丈夫だよ。そういうミスはよくあることだ。まぁ、今回のスケジュールもタイトだったしな。」
「…あの!!今日の夜って…空いてたりしますか?もしよかったらご飯でも、、」
…
本当にたまたまだった。
会議室の電気がついていたから、誰かの消し忘れかなと思って。
ついでに消していこうと会議室に入ろうとした時に聞こえてきた会話だった。
…昨日の仕事って、昨日の電話って、この前の、あの子のことだったの…?
タイミングが悪いというのか、何というのか、今の私にとっては聞きたくないものだった。
すぐに踵を返して、その場を後にした。
…何だかイライラする。
…私のこと、好きなんじゃないの?!
彼への苛立ちと心が叫ぶような感覚に胸が苦しくなった。
エレベーターの前でボタンを押す。
早くこの場から離れたい。
ドアが開いて入ろうとした瞬間だった。
「おい。」
その声に振り向くと、彼がいた。
…何で、いるの?
どのくらいその場で固まっていたのか。
目の前のエレベーターは誰も乗せずにボタンの光る階へと移動していった。