映画と私 -601ページ目

新年。そして2007年ベスト。

     
2008年。いい年になりますように。
お正月はお笑いばかりみていた。
去年も、いろんなとこに行って、いろんなもの食べて、いろんなもの見た。
ということで、2007年ベスト

☆映画 
1位  もず           
2位  麦の穂を揺らす風     
3位  SWEET SIXTEEN           
4位  秋日和          
5位  明るい瞳         
6位  男はつらいよ 
7位  恋愛の目的
8位  サッドヴァケーション
9位  少女    
10位 腑抜けども悲しみの愛を見せよ          
             
                

   
渋谷実の「もず」は本当に良かった。生涯のベスト10にも入るかもしれないくらい。
旧作の方が多いなあ。そしてなぜかずっとみてなかった「男はつらいよ」をやっとみた。
やっぱりおもしろい。渥美清はかっこいい。
あとはケン・ローチにはまった年。映画の重みが違う。  
苦手だった青山真治は「サッドヴァケーション」で見直した。男女の描き方が秀逸だった。

☆本  
1位 ボヴァリー夫人
2位 コレラの時代の愛
3位 真鶴
4位 感情教育
5位 ドレミの歌


               

なんといってもフローベールの年だった。マルケスもやっぱり好き。
薦められた川上弘美も思いのほか良かった。

☆アート 
1位 沈黙から 塩田千春展
2位 ニキ美術館
3位 見果てぬ夢 日本近代画家の絶筆
4位 カルロ・ザウリ展
5位 中村宏 図画事件

              
塩田千春には完璧やられた。ニキ美術館もやっと行けた。うれしい。
1位から5位まで全部ちがう県だな。今年もいっぱい行こう。

今年もたくさんいい出会いがありますように! 


「牡牛座 レーニンの肖像」と権力者4部作について


「牡牛座 レーニンの肖像」が、東京に先駆けて上映ということで、
シネヌーヴォーに行ってきた。

この映画は、レーニンの死の間際の生活を描いている。
雨の音を聴き、独り言をいいながら、全裸で体にシーツを巻き付けているレーニン。
でかい赤ちゃんのようだ。半身が麻痺し、記憶がだんだん薄れて行く姿が、淡々と描かれる。
そして、ソクーロフらしい淡い色調の映像が、
レーニンをもう既にこの世のものではないような不思議な存在にしている。
実際、表舞台から消えていたこの頃のレーニンは死んでるような存在だったのかもしれない。
歴史的な人物としてイメージするレーニンとはかけ離れている。

ソクーロフは同じように、権力者4部作としてヒトラーや、
天皇裕仁を歴史的なイメージとは、かけ離れた一人の人間として描いている。
「モレク神」では、ヒトラーを愛人エヴァの前で子供のように感情を露にする一人の人間として、
そして「太陽」は昭和天皇を神ではなく、苦悩するひとりの人間として描いている。

それは、見てはいけないものを覗きみているかのような、生々しさと同時に、
この世の出来事ではないような不思議さがある。
相反するものが共存している。
それは、イメージというフィルターを通して、レーニンやヒトラー、昭和天皇を
自分たちとは違う存在としてみているからだ。

しかし、ソクーロフはそれらのイメージを覆すことで、生身の人間として浮かびあがらせる。
そして、自分たちと変わらない人間として、
もう一度違う視点で歴史的な出来事を見つめることを強いてくる。

レーニンやヒトラーよりも日本人として、やはり昭和天皇が興味深かった。
人間でありながら、神と呼ばれた存在。
日本中の人々に崇められながらも、そのイメージで生きる意外許されない存在。
誰よりも孤独だったことがしみじみと伝わってくる。
皇后の胸に顔を埋める天皇の姿が特に印象的だった。
権力者4部作の最後ファウストもどんなのか楽しみだ。
     
             
                  

ヴァレリー・アファナシエフ ピアノリサイタル × 塩田千春

私の好きな人同士のコラボレーション。
アファナシエフとの出会いは、たまたま図書館でシューベルトの幻想ソナタを借りたことからだ。
なんとなく聴いてみよぐらいの気持ちで借りたら、涙がでるぐらいよかった。
なんと言ったらいいのか、哲学的でもありこの世のものとは思えないような演奏。
私の秘かに好きなもの同士が合体するなんて!!
しかもこの二人。みる前からいいものになるのがわかってるような取り合わせ。
どちらも、明るいとか楽しいとかとは、全く反対のイメージ。
みる方も娯楽ではなく真剣勝負しないといけないような緊張感がある。
そしていよいよその時が。
前半はショパンのワルツから。鳥肌たった。そして泣きそう。
無表情なアファナシエフだけど、紡ぎだされる音は不思議なちからでもあるかのように
私の体にどんどん沁み込んでいく。特に好きなワルツの第7番が聴けた時は本当に至福のときだった。
後半は、ポローネズ。しびれた。英雄は圧巻。
全ての演奏が終わったとき、少しはにかんだような顔をしたのがとっても素敵だった。
会場に居た人々もみんな感動したようで、拍手はなかなか鳴り止まない。
その度に現れるアファナシエフ。アンコールはイ短調マズルカ。やっぱりいい。
ところで、塩田千春の美術だが、これはちょっと残念だった。
展示作品を映像にとって、プロジェクターで映すというだけのもので、
なくてもいいのでは?と思ってしまった。
私の中ではピアノを毛糸ではりめぐらせてくれるのかと思ってた。
まあ、でもヴァレリーのピアノは最高だったし、会場からでたら満月で
山下公園から見える海と月はかなりきれいで夢うつつで大阪へと帰ることができた。