つまをめとらば | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

 

つまをめとらば つまをめとらば
1,510円
Amazon

 

 

(あらすじ)※Amazonより

 

女が映し出す男の無様、そして、真価――。
太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。
身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか――。
時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。
「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付」「ひと夏」「逢対」「つまをめとらば」
男の心に巣食う弱さを包み込む、滋味あふれる物語、六篇を収録。

 

◇◆

 

第154直木賞受賞作である。

 →あもる1人直木賞選考会の様子はこちら・・・

 「あもる一人直木賞(第154回)選考会ースタートー

 「あもる一人直木賞(第154回)選考会ー途中経過1ー

 「あもる一人直木賞(第154回)選考会ー途中経過2ー

 「あもる一人直木賞(第154回)選考会ー結果発表・統括ー

 

 

無駄を極限まで省いた、静かで穏やかな凪いだ作品。その一方で奥底には隠しきれない情熱がある。
そんなほとばしる情熱を真正面から受け止めた私は大いにときめいた。なぜ「女」をここまで熱く静かに描けるのだろう。

「女」という生き物を妖しくも美しく、畏れをもって描かれており、女である自分には見えていない女がそこにはあり、ドキっとした。


長編に比べ、短編はダイナミックさを出すことが難しい。
ここ最近、ダイナミックさやスケールの大きさが重視される傾向にある中、そんなハンデをもろともせず、限りなく制限された中で大きくダイナミックな世界を描ききった。
しかもどの角度から見ても美しい。その素朴な描きっぷりに誰もがきっと心を撃ち抜かれる。


青山さんのやさしい筆遣いが私は好きだった。
なにより前回の直木賞ノミネート(第152回)時より格段にうまくなっていて、ぐぐっと読ませてきたことに私は感動を覚えたほどだった。

 

第152回直木賞候補作。

けして悪くなかったが、この作品に比べ今回の受賞作は大変よかった。

 

 

全体的に大変軽やかでさらりとした手触りで心地よい作品で、あえて欠点を言うならば語りたいことがあまりない、ということである。

というのも、あもる一人直木賞選考会ではこの青山さんの作品を1位にし、そして本物の直木賞をバッチリ当てたひっさびさの珍しい(←自虐的)選考会であったにも関わらず、当てた記憶も読後の感覚も重さもあまり手のひらに残っていないのだ。

・・はい、そこ、加齢とか言わない!!

 

ま、こんなことはただのケチつけたがりババアの世迷い言であるから、あまり気にしないでいただきたい。

 

記憶や重さの残らない作品ではあったが、致命的な欠点も欠陥も見当たらず、この作品は誰からも嫌われない、そんな作品なのである。とにかく優しい文体だから。

直木賞選考会の直後の講評で宮城谷さんは、青山さんの文章のあの軽やかさと優しさをこう表現している。


「青山さんぐらい(の年齢)になると、
 人の盛衰、生死を知り、それを大げさでなく、あっさりと書ける。
 それが文章の軽みや、くすぶりになってでてくると思う。重くない。
 人生を重く感じさせずに、ひゅっと垣間見させてくれる。」

この言葉が一番の私の胸を突いたなあ。

バレリーナがツツツとつま先で体重を感じさせないように歩む、そんな感じの軽やかさなのだ。

 

あとは

「青山さんは哲学的な思考が強い方ではないかという印象。
 哲学的思考をユーモアにくるんでいる。」

だそうです・・
 

すんません、あもちゃん、そこはわかりませんでした~!

真面目なあもちゃんですけえ、ユーモアとか無縁なんじゃ。・・うん、ほんとに。