あもる一人直木賞(第154回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

なんだかんだで読了いたしました。
あもちゃん、やればできる子。
最初からやらないのがハラハラさせるよね~。
ザ・じらし名人!

そして今回は5冊ということで、今記事で結果発表でもよかったのだが、
お楽しみ(?)はギリギリまでとっておく、ということにして途中経過を発表したい。
ザ・じらし名人!!
(正しくは、じらし名人というより、まだ迷っているので迷走名人・・。)


迷走名人あもちゃんの一人直木賞選考会、途中経過の発表です。

1位 青山文平「つまをめとらば」(文芸春秋)
2位 深緑野分(のわき)「戦場のコックたち」(東京創元社)
3位 梶よう子「ヨイ豊(とよ)」(講談社)

1ミリほど離れまして・・・

4位 柚月裕子「孤狼(ころう)の血」(KADOKAWA)

5位 

である。
※あくまでもいまのところ、なので、最終的に変動する可能性があります。
 迷走名人なもんで・・・。最後の発表までお待ちください・・・。


梶よう子さんの「ヨイ豊」を読み終わった時、私はもう嬉しくて仕方なかった。
なぜなら、青山さん、柚月さん、という面白い作品を立て続けに読み、
もうどうしよう~~~~という嬉しい悲鳴を挙げたばかりのところに、
またまた面白い作品を読むことが出来たからだ。

そして深緑野分さんの「戦場のコックたち」を読み終え、悶絶した。
もう、私、どないしよう~~~~~~~。
嬉しい悲鳴をあげまくって喉が痛い・・・。

今回のノミネート作品は本当にもったいない。
別の回だったら獲れる可能性が高い作品ばかりだ。
なのに何で同じ回に直木賞獲得レベルの作品が一堂に会しちゃったのかね。
これも試練なのだろうか。
誰の?ってそりゃ作家さんの、ですよ。
私の試練ではない。

いやー、1つだけを選ばないといけないのが本当にもったいない!!!!
そりゃダブル受賞という選択肢もあるが、基本的に私はダブル受賞はさせませぬ。
5作品の候補から2作品を選ぶって、あーた。
ほぼ半分やん。
しかもそれを外してみんさい。
かああああああ。
恥ずかしくってもう二度と表を歩くことはできませんって。

作品ごとの詳細については最後の発表時に一気にまとめるとして、
(ちょっと時間がないもんで~。)
「ヨイ豊」と「戦場のコックたち」が今回の順位になった理由を簡単に述べたい。

梶さんの「ヨイ豊」は描かれる情景が大変美しく、
まるで物語の中の浮世絵のような世界がそこにはあった。
交わされるやりとりは私を江戸時代末期に簡単に連れて行ってくれた。
江戸が終わり、明治が始まる。
外国文化がやってきて、江戸の文化が消えていく。
近代という時代がやってきて、武士の時代が終わろうとしていた。
その激動の時代を浮世絵という一枚の絵を透かして私に見せてくれた。
芸術と政治はいつの時代も背中合わせで、そのことをやんわりと教えてくれる。
憂き世と浮き世。
読了後、いい作品を読んだな~としみじみと思い、じゃあ何位にしようか?と考えた時、
途方にくれた。
1位でもよかったし、2位でも3位でも・・・。
よくわからなくなってしまった私は、とりあえず「保留」にすることにした。

そして深緑さんの「戦場のコックたち」である。
ちょっとちょっと。
どえらい作品が出てきましたよ。
柚月さんの「孤狼の血」のときもそうだったのだが、
この「戦場のコックたち」も女性が書いてるんだ~、と軽く驚いた。
太平洋戦争のアメリカ軍のコック兵の話であるのだが、
不思議な話であった。
戦争を真正面から書いているわけでもなく、あくまでも一人のコック兵のお話。
しかしコック兵と言えども普段は兵士として戦っており、
戦争の悲劇、興奮や恐怖などはぎゅっと絞り込んで描くことでリアリティを残し、
若いコック兵が友情や生死に触れ、成長していく様子も描かれている。
時に残酷に、時に感傷的に。
主人公もヒーローなんかじゃなく、
常にそこらへんにいるちょっとお人好しの普通の若者を等身大に描くことに
作者が細心の注意を払っていることがよくわかる。
しかもおもしろいことに、
軍の中で起こる奇妙な数々の事件も解決するミステリーの側面も見せる。
アメリカ人が主人公の物語で、舞台はヨーロッパの戦地ということもあり、
本は二段に分かれており、外国の翻訳小説という形式をとっている。
文体もちょっと変わっていて、日本人の文体ではないような匂いがする。
そんな物語を読めば読むほど、
戦争というものがいかに戦略的に進めなければいけないのか、
やみくもに前に前に戦い進んで行っても意味がないのか、ということを知る。
コック兵が存在する、ということでまずそのことを知る。
食料を確保し、食料をいかにおいしく食べさせるかを考え、
また闘い疲れた兵士を無駄なく交代させ癒し、そしてまた闘いに出させる。
ただそれだけのことがいかに大事でいかに難しいことか。

戦争ってそういうことなんだなあ・・
ドンパチやってるイメージしかなかったが、実はそうやって戦っているのね。
それが戦争の本当の姿なのだ、と改めて思い知らされた。
フィクションとはいえ、知らない世界を読者に見せてくれる作品はよい作品である。

この作品を読んで私の中の基準が決まった。
「戦場のコックたち」
を中心にして順位を考えてみよう。と。
そうするとスルスルと上記のような順位になったのである。

きっと今まで、最初に読んだ青山さんの「つまをめとらば」を基準にしていたから、
いつまで経っても順位が定まらなかったのだ。
だってこの作品が1位なんだもん。
そりゃこの作品を中心にしていたら決まらんわ。

とはいえ、正直、4作品全てに直木賞を差し上げたい気持ちには変わらない。
ただ「ヨイ豊」と「孤狼の血」については、ちょっとゴチャゴチャしちゃったかな。
という点において、順位が下がってしまった。
しかーし、同じくゴチャゴチャしていた「戦場のコックたち」については
それが逆に美点となって読めたのだ。
戦時の混乱と描かれる世界の混乱が重なり合って、美しいゴチャゴチャ感がそこにはある。

余分なものは徹底的に排除され、静寂を極めた「つまをめとらば」vs
清濁併せ呑んだようなダイナミックでとっちらかった「戦場のコックたち」。
最終的には私の中で2作品の闘いとなった。今のところ。

うーむ。これがいかんともしがたい。ダブル受賞にしてもいい!!!
未だにまだ迷っているというのが本音。
そして最後の1作品はピアノ調律師の物語である。
これでもピアニスト崩れのあもちゃん、この作品をあえて残したのである。

果して最後の作品、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」は一体何位になるのか!?
そして迷走名人あもちゃんの最終的な順位はいかに!?
しばし待たれよ。
・・って、おおげさ~。