江崎道朗氏の「天皇家百五十年の戦い」とても素晴らしかった。本当に多くの方々に読んでほしい。

 

特に、天皇陛下が3年前にテレビを通じて発表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」については、はじめて私が感じていたことと同じことをちゃんと言葉にしてもらえた気がしています。

 

この本は、一冊すべて拾い読みではなく順を追って読んでいただきたい本です。こう書くのは私が結構拾い読みもするからなのですが、この本は通しで読むことによって、さらにその価値が増し、理解度がより一層深まる本です。

 

そして、この本を読むと本当に天皇と皇室は孤独な戦いを強いられてきたことにあらためて気づかされます。そしてそれを許しているのは我々国民なのです。君民共治といいますが、天皇が務めを果たしても民が務めを果たさなければ君民共治にはなりません。それが残念ながら今の日本だと思います。そしてどんなものも、流れは上から下にいくものです。こうした大きなひずみが、日本中に長年の大小にかかわりない沢山の歪を生みだし膿となっているのではないかと思うのです。

二千年の孤独

 

 

天皇陛下が大変な思いをされているのに平気でいられるのですから、その他の人が酷い目にあうのなんかよけい気にしないでしょう。

 

しかし、それでも天皇陛下は我々国民のために日々祈られていらっしゃいます。そうしたことが、その御言葉や行幸などによくあらわれています。そしてそうしたことを丹念に江崎氏は紐解かれています。

 

御代替わりのこの時期、沢山の天皇、皇室関連の本が出ています。もっと分厚くもっと詳細な本もあります。しかし、一見丁寧そうにみえて実は尊敬の念が感じられない本がなんとたくさんあることか。私は全部は無理ですが新しく出ている本は出来うる限りどんな本かチェックしていますが、慇懃無礼な本がほんとうにたくさんあります。もっともらしいことを書いているように見えて、違う方向にもっていこうという内容のものもあります。しかしこの本には、そうした面はありません。天皇について、皇室について真摯に語られており、そして私達にちゃんと向き合うように呼びかけられている本なのです。

 

 

本の内容を知るには目次が一番わかりやすいので、以下の目次を参照ください。

 

目次

はじめにー見落とされた「国家の命運と皇室の関係」

 

第一部 君民共治という知恵ーー近代国家と皇室の関係
第一章 中江兆民と「君民共治」

・明治の指導者層を襲った「共和制・の衝撃」

・皇室の存在意義を力説し「君民共治」を説いた中江兆民

・フランス革命の研究により「君主制」を擁護

・イギリスの保守思想家バークを紹介した金子堅太郎

・「祖先から継承した違法」を守るのが「保守」

・立憲君主か天皇親政か

・尊王を巡り対立する薩長藩閥政府と自由民権派


第二章 福沢諭吉の「二重国家体制論」

・「政治」の基礎にある「精神の領域」が皇室

・民主主義により「分裂」した国民を「統合」する役割

・行政の手の届かない「格差」と「貧困」への対応を期待

・「祭祀」と「国民の安寧実現」が皇室の伝統

・右翼全体主義の席巻、そして敗戦


第二部 皇室解体の逆風ーー昭和天皇と天皇陛下の苦悩
第三章 昭和天皇と天皇陛下・戦後の戦い

・敗戦時、十一歳の決意

・皇室解体を仕組んだ過酷な占領政策

・「統治権の総攬者」という地位の剥奪

・皇室祭祀の根拠法令の失効

・皇室の藩屏と専門官僚の消滅

・皇室財産の剥奪

・日本文化からの排除

・皇室誹謗のプロガバンダを可能にした「不敬罪」の廃止

・昭和天皇の戦い

・三万三千キロの旅

・日本政府の奮闘

・占領軍に乗じた「進歩的文化人」と戦後

 

第四章 変質した内閣法制局

・「政教分離」を盾に宮中祭祀を排除しようとした宮内庁

・「大嘗祭は許されない」-最大の敵となった内閣法制局

・「践祚の概念がない」という驚愕の発言

・「後奈良天皇」に言及された陛下の覚悟

・「憲法より皇室が先」、国民の声が押し戻した憲法解釈

 

第五章 皇室の伝統と日本国憲法

・「天皇はリベラルは本当か」

・「象徴」の意味を問う「政治」と皇室の戦い

・宮澤憲法学をのりこえる「憲法典」解釈

・国家国民のために尽くす皇室の伝統を体現

・戦前、昭和との「断絶」を挑発するメディア

・昭和天皇の「戦争責任」問題を引き受けた天皇陛下

・宮中祭祀を復活させた陛下の「御決意」


第三部 日本分裂を防いだ皇室の伝統
第六章 平成の御巡幸

・「象徴という御姿がはっきり見えてきた」

・受け継がれた志

・御巡幸が呼び覚ます「地方の力」

・皇室の知られざる努力


第七章 慰霊の旅

・おびただしい数の戦歿者追悼の御製

・「五内為ニ裂ク」-昭和天皇の御心の継承

・「歴史戦」と次元の異なる陛下の戦い


第八章 沖縄とのかけはし

・戦争に負けてから始まった沖縄の悲劇

・ひめゆりの塔事件、異例の談話

・「沖縄で殿下の悪口を言う人はいない」

・沖縄の文化と歴史を真摯に学ばれる理由

・「天皇陛下万歳」が響きわたった提灯行列


第九章 災害大国を癒す力

・四十回を超える被災地御訪問

・災害地が復興するまで見守り続ける

・苦しみ、悲しみを受け止め続ける

・行政の手の届かないところに手を差し伸べる

・政府の不作為による痛みを癒される

 

第十章 敗戦国という苦悩

・「敗戦国の皇室」から「世界の王室の精神的リーダー」へ

・反日感情が高まるオランダとイギリスとの和解

・国家間の友好の根源にある人と人の信頼関係を重視

・日本の精神文化を発信する皇室の力


おわりにー皇室を支える国民の務め

 

目次に登場する後奈良天皇とは、世界史上一番貧窮した君主といわれ、日本の歴史上一番困難な時代の天皇です。しかし、私は昭和天皇と今上陛下は、それ以上の困難な時代を生きられているのではないか、と今では考えています。

世界史上一番貧窮した(?)君主はどうしたか

天皇のお詫び状

 

以下、本書から印象的なところをほんの少し抜粋しましたが、上記したようにほんの一部だけではこの素晴らしい内容を把握することはできません。感動的な話も多く記載されていますが本来であれば多くの人が教えられていてしかるべきであるような天皇、皇室の逸話が知られていないのは、国民との紐帯を裂くために教えられていないからなのです。陛下が、国際社会に及ぼしてきた影響力、また地方御巡幸で果たされた地域活性化は国民として知っておくべきことではないかと思います。これを機に、是非この本を読んでいただきたいし、周りの方々に勧めていただきたいと思います。

そして私達一人一人が、皇室を支えられるようにないたいと思うのです。そうすることによって、それが巡り巡って私達の更なるパワーになるということは、私達はなんと幸運な星の下に生まれた、いえ天皇の元に生まれたことだろうと幸せに思います。

 

以前も書きましたが、日本は「天皇は人(民)の敬によりて威を増し、人(民)は天皇の徳によりて運を添ふ」そんな国なのです。

天皇は国民の敬によりて威を増し国民は天皇の徳によりて運を添ふ

 

 

・平成二十八年には「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」と、それに続く御譲位に関する議論があった。このときも、国家の命運と皇室の関係は正面から議論されてこなかった。陛下の御言葉がまさにその真摯な議論を広く呼びかけるものであったにもかかわらず、である。

 

・日本の社会、日本の国家全体の中で、政治というのはごく一部の狭い世界にすぎない。政治や行政の手が及ばないところまで目を配り、国家の命運全体のことを考えてくださるのが皇室なのである。

 

・政府を建設することは、現在生きている世代の国民だけの問題ではない。

すでに亡くなった祖先たちの世代、現在生きている世代、そして、今後生まれてくる子孫の世代に関わるものなのだから、今生きている世代の一時的な思想だけで左右してよいものではないのだ。

国民の自由は大切なものだが、空理空論に振り回されてはならない。重要なのは、ただ自由、自由と叫んで実際にはその自由を成り立たせている基盤を破壊するような空虚な議論に惑わされるのではなく、自由を尊ぶべき原因を深く探求し、自由が侵されないように慣習に基づく社会秩序を維持することなのだ。

 

・真に国を愛する政治家は、従来からその国に存在している慣習を尊重して折衷的に改革を行おうとする。慣習に基づく社会秩序を尊重しながら政治をよくしていこうとする政治勢力を生み出していくことが政治の基本原則である。

 

・華族制度は占領中に廃止され、宮内省は宮内庁に格下げされて、皇室を支える専門官僚は生まれなくなった。戦前までの宮内省は皇室典範の宮内令に基づき、内閣から独立していた。職員の給与も一般の官僚とは違い、皇室財産から賄われていた。そうすることで皇室に対する政府の介入を阻止しようとしたのだ。

 

・現在では宮内庁の官僚のほとんどが外務省や厚生労働省、警視庁からの出向で占められている。皇室の伝統を知らない官僚が皇室の日常生活を支えていかざるを得ない状態になっているのだ。このことは皇室の伝統を守っていくうえで大きな支障となっている。また、宮内庁が公務員の立場で宮中祭祀に関わることは政教分離の建前で厳しく規制されてしまっている。

 

・多額の財産税の賦課、皇族の経済的特権の剥奪によって、十一宮家が臣籍降下を余儀なくされた。男系男子の皇位継承資格者を減らすことで、徐々に皇室を枯らしていく政策である。また、宮家は皇室にとって身近な相談相手でもあったから、宮家の激減はそういう意味でも打撃となった。

 

・国家の危急存亡のとき、天皇が究極の安全保障装置であることは既に述べた。もし天皇が国務に関する機能を失ったら非常事態の時に日本は立ち行かないという危機意識を当時の政府の要路の人々は共有していた。心ある人々が日本の命運と天皇との結びつきを何としても現行憲法に残そうとしたのである。

 

・「国民のために尽くす皇室」というお言葉によって、陛下がおっしゃっている「皇室の伝統を守る」という言葉の意味もより深くわかってくる。

陛下は、歴史と伝統を守ろうということだけをおっしゃっているのではない。皇室を守るのではなく、「国家国民のために尽くす皇室の伝統」を守ろうとされている。皇室という「伝統のある古い名家」を守ろうとしたわけではない。国家と国民のために尽くす皇室の伝統をどう守ればいいかということをお考えなのだ。

 

・問題は、天皇陛下のこうした思想的な戦いを、特に宮澤憲法学や内閣法制局との戦いを、国民の側、特に政府要路の側がほとんど理解できていないように見えることだ。はたしてそれでいいのだろうか。

 

・農業、林業、工業といった様々な地場産業や特産品など、地域の誇りとなるものを受け継ぎ、守ってきた喜びを皇室が共にし、激励することで、全国各地の国民に自信と勇気を与えてきたのが地方御巡幸なのである。

 

・同時代の死者の魂を、これほどおろそかにした時代は、過去の日本人の心の歴史にはなかった。

 

 

 

春休みに日本について知ろう\(^o^)/もうすぐ神武天皇祭

 

 

江崎氏の動画がアップされましたので追加しました2019.3.30

 

江崎氏の動画もう一つ追加しました2019.4.3