以前に宮島の鹿愛護会のブログでも載せましたが、まず鹿の栄養摂取についてお話させていただきます。
大事なことは鹿は植物を消化することで摂取できるバクテリア(タンパク質)を栄養源としています。
だから人工の餌ではその肝心なバクテリアを取り入れるのが不可能になってしまいます。
特に春夏の育ち盛りの子鹿は、この時期に柔らかい植物を食べて消化することで得られるタンパク質を摂取する必要があります。
また、町に程近い山にドングリの木も有るのに町に出れば人間が何か与えてくれるのを期待して、また肝心のドングリの木に気づかず町に佇んでいるそうです。
これは問題です。
山の植生に関しましては今後自ら出向いて行くつもりですが、ずっと鹿は宮島に住んでおりある程度の植生環境は整っている、人間が鹿に関わったのはせいぜい数十年、市街地での給餌を一切止めたら、野生性を取り戻し必ず山に入って行くそうです。
一方で市街地から比較的近い山の入り口では鹿が口にできる下草の生えている所は壊滅状態になっているとも聞きます。
江戸時代から鹿桶に入れて餌をやっていたと言うのも昔は人工的な加工がしてある餌は皆無で、人間も今ほど飽食では無かった為、与えるのは微量でせいぜい芋の切れはし等の野菜くず位だったらしいんです。
昭和40年代高度経済成長期、新幹線が開通してから観光客が押し寄せるようになってから鹿の栄養状態は悪化し始めたそうなんです。
それは先程お伝えした人間の人工的な餌付けがバクテリアの摂取を不可能にしてしまった事に起因するそうです。
私は今や給餌を行う行為は犬や猫などの人が手をかけるのが前提の愛玩動物、牛や豚等の家畜とは違い、鹿の野生動物としての権利を奪う事に繋がると考えています。
芝草地にしても実は増やせば増やすだけ不幸な鹿を増やしてしまう事に繋がると。
そして人間が近くにいることで起こりうるリスクとして
①森林の再生阻害(山の中に分散せず市街地に集中してテリトリーとするため市街地に近しい山の植生から再生不能となる)
②鹿が事故に巻き込まれる
③人身事故
④人獣共通感染症(ライム病、結核、ダニによる感染症、肝臓に寄生虫が湧くなど得体の知れない物が起きる、鹿にとっても人間からの感染の恐れ)
④アレルギー
また、最近はイノシシが島に住み着いており、イノシシが小麦やとうもろこし、野菜など給餌をあてにしておそらく出てきます。
その時に事故が起きたら取り返しが付かなくもなります。更に観光客や地元住民に被害が及んだらなすすべもありません。
そもそも鹿にはどうやって餌を手にいれるかという本能が備わっており、市街地鹿でも餌が在ることさえ判れば人間も足を踏み入れることもできない山の宮島内のどこへでも入って行くそうなんですね。(ここで私が思っていた牝中心の個体群はテリトリーを大きく移動しないと言う持論は崩れました)だからAブロックだのBブロックだので括るのはナンセンスといった所でしょう。
鹿保護に関する考え方は大きくは二つに分かれ、一つ目は個体保護重視の「愛護」と一方、生物多様性の面から種としての保護を考える「自然保護」です。
そこで考えてみたところただ愛護精神だけでは解決できないほど複雑です。
餌やりをすることで糞は必ずそのポイント近辺にします。私は鹿の糞は全く気にならないのですが、商店街の近くですとなおさらやはり住民の方の立場からすると頭が痛いでしょう。
また、同じポイントに鹿が集中定着する原因を作ってしまい、鹿にとっても今後宮島での自然の中で細々と生き残って行く術を奪う事にも繋がっていくのです。
自然保護、生物多様性面で言いますとたかだか数十年生きているだけの私ごときが何とかできるような簡単な問題ではないことにようやく気づきました。
もちろん色んな考え方があると思いますので、皆さんに自分の考えを強制するつもりは毛頭ございません。
私もこれで終わりにしようと言うことではなく次に植生環境や山の中の鹿の生息状況を検証したら、今後は別の角度から動物愛護の先生の話などもうかがって、また裏付けとなる検証をし、自分で何かしらの答えを見つけていきます。
会でいるとひとつ決断するにも役員皆の解答を待たねばならず、個人だと小回りも利きますのでそのような決意に至りました。
餌をずっとやり続けると言うことは野生に返すのが更に困難になると言うことです。となるとその個体群は新たに餌をくれるのを集団で待って食べ物を見つけるのが益々困難になり結局は胃を異物で満たして栄養失調になってしまうのです。
そこで行政へのお願いがあります。
①市街地に比較的近い(海岸線に近い場所に群れを形成している所から近い)山の植生環境の定量調査を季節毎にし、収容密度をデータ化する。
②餌やり禁止を進める一方で山に鹿が戻れるサポート(足らないとされる植生環境を整える)
但し既に山で自立している鹿の居住地域についてはノータッチ。
③現在市街地に定着している20~30頭のメス鹿への環境に悪影響を及ぼさない避妊措置を施す。←何しろ市街地に定着していますので、柵に入れる必要もありません。
以上餌やり禁止をするための取組提案。
これを実現してくだされば外部からの給餌をされる方はいなくなると考えられます。
今後の動きですが、できるだけ山にあるアラカシ等の植生を調べて廻れたらと思っています。
照葉樹林に住む鹿は分散して小さな群れで生きて行くのが理想の形である限りは今の市街地に集中しているのはやはり不自然です。
宮島のドングリの木
愛護会から離れても協力しあえるところはして協調していくつもりです。
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