南米・鳥獣虫魚・探遊 -4ページ目

腕足動物・5

オレはパラ州地質図PDFをかなり前々から持っていた。そして、ダム工事現場付近にデボン紀層が露出しているのを知っていた。そして、三葉虫でも掘れたらイイなぁ、とも思ってもいた。

 

ベロ・モンチ付近の地質図(★がダム位置)

 

ジョイセ嬢に聞いたら、ベロ・モンチ化石採集では必死に三葉虫を探したけど、見つからなかったわ(涙)……、と悔しがっていた(笑)。でも、沢山の腕足類化石は発見できた。

 

ベロ・モンチ産のリンギュラータ類の腕足類化石

 

腕足動物門・舌殻亜門・舌殻綱がリンギュラータである。有明海の珍味シャミセンガイも、ここに分類されている。

 

11シャミセンガイに似たリンギュラータ化石

 

ちなみに、舌殻亜門ってのは、古い分類法で無関節綱とされていたものの中で、キチン質性のリン酸カルシウムの殻を持った腕足類である。

 

続く

 

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腕足動物・4

アマゾン堆積物の古生代層は、地溝の北縁と南縁に平行して露出している。化石が確認されている最も古い層は、シルル紀のトロンベッタス層群で、その上に不整合でデボン紀のウルパディ層群が乗っている。

 

パラ州のアマゾン地域の地質図

 

ウルパディ層群の中部にあるマエクル層と上部のエレレ層は、海棲化石が豊富だ。北縁のデボン系からは、化石掘りマニアの憧れである三葉虫も発見されている。

 

その名もアマゾナスピス属の三葉虫化石

 

南縁でもトロンベッタス層群やウルパディ層群が露出しているが、シングーのベロ・モンチ・ダムは、ちょうどそんな古生代層の露頭がある地点に建造された。

 

続く

 

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腕足動物・3

さてさて、最近のこと。UFPA(パラ州連邦大学)のアルタミラ分館で、ジョイセ嬢と知り合いになった。彼女は、おそらく当僻地では唯一人かも知れない(?)古生物専攻の研究者である。彼女から、『Preliminar results of paleontological salvage at Belo Monte Powerplant construction』という論文があることを教えてもらった。シングーのベロ・モンチ・ダム工事に伴う岩盤の削除で、そこの地層から発見された化石類の記録である。

 

ダム工事現場での採集

 

ここでアマゾンの体積盆(Amazonian Basin)について、ちくっと説明しておこう。この堆積地帯の基盤岩は、いわゆるアマゾニアン・クラトン(安定地塊)、すなわち先カンブリア代の結晶質岩石(下マップのピンク部)である。ピンク2.のブラジル高原側と1.のギアナ高地側は地下でつながっている。

 

アマゾン堆積盆

 

現在のブラジル・アマゾン本流の流れている地底は、すなわち堆積岩なんだけど、本流の流れと同じ方向、つまり東西方向、大西洋中央海嶺の断裂帯と連続する方向性を持った地溝(グラーベン)的な構造になっている。

 

続く

 

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腕足動物・2

腕足類は、アルファベットでブラキオポーダって呼ぶ。ギリシャ語のブラキウム、すなわち「腕」+ポーダ、すなわち「足」だから、和名はまったくの直訳品(笑)。腕足動物門の発生は、いわゆるカンブリアアン・エクスプローション、すなわち古生代が始まって爆発的に生物が多様化した時期に遡る。

 

カンブリア紀の腕足類

 

カンブリア紀に続くオルドビス紀に各種が進化し、続くデボン紀に最大に多様化した。しかし、古生代末(P-T境界)の大量絶滅で、一気に衰退した。すなわち、古生代が彼らの繁栄の舞台だった。

 

燕石(スピリファー類)の一種

 

古生代の腕足類の仲間に、スピリファー類がある。中国語で燕石と呼ばれる所以は、ツバメの翼のように殻の角が尖っているからである。古来、中国4千年の漢方では、石燕(せきえん)と呼ばれて、削って飲んだ。まあ効能はほとんどなかったろう(笑)けど、カルシウム摂取にはなったかも?

 

続く

 

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腕足動物・1

さて、今年も小難しい能書きを垂れるぞ(笑)!

 

腕足動物という門(もん)がある。門というのは、生物のタクソン(分類群)の界(かい)と綱(こう)の間に位置する分類階級のことであり、陰門とは別モンであ~る。

 

生物の分類階

 

腕足類は、一見すると軟体動物の二枚貝に似ているけど、まったく違う分類群である。古い地質時代のテラ(地球)で大繁栄したけど、現在は多様性が失われ、多くが生き残っていない。すなわち、まあ「生きた化石」ってな連中とされてきた。極東島国にもシャミセンガイの仲間が生息している。

 

現生腕足類であるシャミセンガイの一種

 

有明海のミドリシャミセンガイは、メカジャと呼ばれ、珍味として名物になっている。

 

続く

 

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セハード地域からアマゾン・3

どんどん拡張するセハード開発で、もはやサンタレン港だけでは輸出の処理がおぼつかなくなった。そこで、タパジョース河のサンタレン上流にあるイタイトゥーバにも輸出港が最近新造された。

 

イタイトゥーバの新港

 

そして耕作地は、セハード地域だけでなく、徐々にアマゾン熱帯雨林地帯にも浸食が進んできた。マット・グロッソ州の北部やパラ州南部には、素晴らしい環境のジャングルが誇らしげに広がっていた。生物学的な調査も、それほど進んでいないので、多様生物の新種の宝庫でもある。新種の珍・熱帯魚なんかも多い。今、その聖域で、どんどん伐採や農地開発が進んでいる。

 

シングー・ダムの工事

 

アマゾンの巨大ダム工事には、世界中の環境団体が反対活動を行っている。しかし、オレに言わせると、セハード開発のほうが、よっぽどテラ(地球)に悲惨と思える。ダム湖によって破壊される密林と、セハード開発によって伐採されるそれを比べたら、後者のほうが圧倒的に規模が大きいからである。すでに多様性の顕著な魚たちが生息する小型の河川に、土砂が流入して、さながら死の川の様相を呈し始めたところも多い。

 

地平線まで大豆

 

セハード開発は、キミの同胞である極東島国の政治家思惑から始まったプロジェクトだ。ニッポン国の環境屋さんたち、もちろんダム工事反対もありでしょうけど、もっともっとセハード開発の問題も、重要視しませんか?

 

【小論・終わり】

 

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セハード地域からアマゾン・2

ブラジル中部のセハード地域においては、1979年から日本とブラジルの間でセハード農業開発協力事業(PRODECER)という共同の農業開発プロジェクトが始まった。セハード植生を伐採し耕作地とし、主に大豆とモロコシの巨大プランテーションを行うという大規模な自然破壊である。

 

セハードのプランテーション

 

極東島国の大豆自給率は、大変に低いから、日常の醤油や味噌の原料は、輸入に頼っている。セハード農業開発という自然破壊は、極東島国の私欲に主要因であることは間違いない。産物の輸出には、当然に大型船舶が使われるが、大西洋の外洋に面した港は、サハード地帯から、かなり遠い。そこで眼をつけられたのが、アマゾン地方。すなわちパラー州、タパジョース河に面したサンタレンである。

 

サンタレンの港

 

セハードで生産された大豆やモロコシは、国道163号線を使って、大型トラックで運ばれる。国道の北部は、サンタレン・クイアバ街道と呼ばれるが、ここを往復するコンボイの数はメチャクチャにスゴい。

 

コンボイ軍団

 

かなりの行程、とくにサンタレン近くの部分が未舗装で、乾期にはコンボイが巻きあげる泥埃が視界をゼロ状態にする危険街道になった。雨期には、ド~ロドロ街道である。事故も頻繁に起きている。そのため、ブラジル政府はセハード地帯からサンタレン方面に延びる鉄道の計画案を進めている。

 

続く

 

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セハード地域からアマゾン・1

楯状地という言葉がある。ウィキ辞典では、「先カンブリア時代の結晶質火成岩と高度変成岩が露出する広い地域を指す。楯状地を構成する岩石は57千万年以上前に形成され、時には20億-35億年前のものもある。先カンブリア時代後の地殻変動の影響をほとんど受けず、楯状地の縁辺やプレート境界で見られる地質活動と比べて、造山運動、断層運動や、他の構造運動が非常に少ない、比較的平らな地域である……」、と記されている。

 

南米の基盤、古い地図

 

南アメリカ大陸では、ブラジル楯状地(Brazilian Shield)が有名だね。上の基盤地図では、アマゾン堆積盆地を挟んで北側が、ギアナ楯状地になっているけど、アマゾン地底の深くで、この2つは連続していることがボーリングで認められた。楯状地という言葉自体が、最近は廃れ気味で、クラトン(安定地塊)という語で表現されることが多くなった。

 

西ゴンドワナのクラトン

 

さて、ブラジル中央部には、ブラジル高原(Brazilian Highlands)がある。アマゾニアン・クラトンの南側とサン・フランシスコ・クラトンにかけて、先カンブリア代岩盤や堆積盆地で基盤が構成されている。

 

ブラジル高原の一角

 

高原の形状は、いわゆるテーブル・マウンテン型である。すなわち、頂上部が平たい。サバンナ気候にあって、ブラジルでセハードと呼ばれる植生が占めている。

 

続く

 

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夢釣り行脚・南部パタゴニアの秋・その30(最終回)

今回の南部パタゴニア行脚は、オレの夢の一つを実現させた。ボロマスでないブルック・トラウト、スプリング・クリークの大型ブラウン・トラウト、銀鱗が輝くシーラン・ブラウンの3種の神器をやっつけられたのは、たしかに素晴らしい体験だった。

 

美しい野生ブルック

 

小さな河川に生息していた大きなブラウン

 

大西洋から遡上したシートラ

 

さてさて、今回のシリーズは長かった。実際、2週間に及ぶ旅行だった。でもまた、もう一度以上行きたいね(笑)。

 

【本編終了】

 

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夢釣り行脚・南部パタゴニアの秋・その29

さすがに宝庫だけあって、恐竜化石は多彩だった。アルゼンチンは、南から北までいたるところに恐竜産地がある。

 

アルゼンチンの恐竜産地

 

なんで同国に化石が多いのかは、限りなく明白である。堆積盆地が広く分布しているからである。当然、同時に化石燃料も埋蔵量が多い。フエゴ島の先住民が使っていた炎も石油だった。パタゴニアの平原には、天然ガスを採取している施設がたくさんある。

 

アウストロラプター

 

ドロマエオサウルス類という恐竜群がある。小型の種類は、樹上性で羽が生えていて、一部は間違いなく飛べたと考えられている。アルゼンチンからは小型から大型まで数種のドロマエオサウルス類が記載されている。その中でも最大級のサイズで恰好がいい南のラプター。

 

アマルガサウルス

 

ディプロドクス系の草食恐竜だが、首から背中の背骨に奇妙な長い突起があるヘンな恐竜がアマルガサウルスである。

 

恐竜の展示

 

この他にも、たくさんの種類の恐竜があったけど、お話しが長くなるから今はやめておこう。

 

続く

 

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