腕足動物・14
③のタイプは、腕足動物門、嘴殻亜門、嘴殻綱(リンコネラータ類)のアティリディダ目・アティリディダ科じゃあないかと思う。
これが③のタイプ
論文の図版で見て、コンポシッタ属に似ているように見える。
論文図版のコンポシッタ・カイマエンシス
ウルアラでの③のタイプは、数が多くないようである。
続く
腕足動物・13
②のタイプに進もう。腕足動物門、嘴殻亜門、嘴殻綱、すなわちリンコネラータ類のオルティダ目・リピドメラ科じゃあないかと思う。
これが②のタイプ
同科のリンコネラータは、リピドメラ・ペニアーナが1種類が記載されているみたいだから、それが合ってるのかも知れない。
同じ個体の別アングル
このリピドメラと思われる化石は、往々にして、両殻が張り付いたままで産出する。小型だし、なかなか可愛いらしい。
続く
腕足動物・12
昨日の続きをやる。
コズロウスキア sp.
ブラジリオプロダクタス・チャンドレシィ
ブクストニオイデス属
以上がプロダクタス科の連中である。もちっと詳しく論文を読めば判別キーも判るだろうけど、今のオレにはヒマとパシエンシア(忍耐)がない(笑)。次にリノプロダクタス科の連中。
リノプロダクタスの一種
Marginovatia cf. catinulus(オリジナル画像)
アマゾノプロダクタスのカラー画像はなしだ。こうやって参考画像を並べてみても、実際に採集した化石と比較・同定するのは困難だった。
続く
腕足動物・11
① のタイプ、すなわちイタイトゥーバ層石炭紀のプロダクタス目の記載種には、プロダクタス科&
リノプロダクタス科の2つのファミリーがある。前者には、Inflatia cf. gracilis、Eomarginifera oddonei、Kozlowskia petrii、Brasilioproductus chandlessi、Buxtonioides itaitubensis。後者には、Linoproductus delbyi、Marginovatia cf. catinulus、Amazonoproductus amazonensis などの化石写真が論文に載っているけど、その論文図版の画質がかなり悪くて、細部が判別し難い。
この画像じゃ最低だ
最近の記載学術論文では、きれいなカラー画像を使うものも増えてきてはいる。しかし、ちょっと以前まで写真はモノクロ・オンリーが普通だった。もちろん、予算の関係だが、比較図譜として使えないものも多い。さて、しかたないから(汗)…… 論文とは別のエスピーもの、種類は違うけど、(一部は、合ってる)同属の少し判りやすいカラーを載せよう。
インフラティア sp.
エオマルジニフェラ sp.
このように外観上は、どれもよく似ている。どうやら殻内側の構造を比較する必要があるみたいである。
続く
腕足動物・10
化石採集の後日、ジョイセ嬢の管理している化石コレクションを見せてもらった。文献には、イタイトゥーバ層ペンシルバニア紀の腕足類は、20数種くらいが記載されている。その文献写真とブツを比べてみたけれど、画像比較だけでは種の同定までは、かなり至難であることが判った(汗)。今のオレに判るのは、4つのタイプの概要である……
① 大きめで、ずんぐりむっくり系で丸みが強く、細めの溝が殻頂から殻縁に、背面でやや並行的な感じに刻まれていて、それと交差して同心円状なうねがあるタイプ。
② 楕円型で薄べったく小型、①より細かい溝が殻頂から殻縁に、放射状に刻まれている、殻の裏側の殻縁にも同じような溝があるタイプ。
③ 半開きの扇子のような三角形、同心円状に弱く細かい溝があるが、放射状の溝はないタイプ。
④ 殻の両端が尖っていて燕型、深めでやや幅広の溝が殻頂から殻縁に、放射状に刻まれているタイプ。
これが①のタイプ
別アングルから
こいつらは、腕足動物門、嘴殻亜門、ストロフォメナ綱、プロダクタス目(もく)のブツに違いない。イタイトゥーバ層腕足動物化石の論文では、この仲間は、10種類ほどが記載されていている。
続く
腕足動物・9
早々に地質図でウルアラ付近を見てみると、やっぱりがバッチリ(笑)、イタイトゥーバ層が分布している。ウルアラは、アルタミラからトランスアマゾニカ街道を西に200km弱ほどいったところにある。イタイトゥーバ近郊のカイマよりも、ずっとずっとアジトから至近距離だ。これは、行くっきゃない!
ウルアラ近郊で、久しぶりの化石の採集
そこで、ジョイセ嬢に相談してみると、「ウルアラ化石の産地は、よく知ってるわ。案内してあげる……」、と早々に話がまとまった。同行の参加者は、ラボ主任のマッセーロ、そしてカリーナ教授となった。
ウルアラでゲットの腕足類化石
当日、早朝にアルタミラを車で出発。途中かなりな悪路なので、片道4時間くらいかかった。まだ乾期の終わり時期だったけど、雨期に入ったらドロドロ道になって、小型乗用車じゃ、ちとキツイ。ジョイセ嬢の話では、ウルアラ付近には、50カ所もの化石産地があると言う。当日は、そのいくつかを探索した。
両殻のついた腕足類
ジョイセ嬢の談だけどウルアラ化石採集でも必死に三葉虫を探したけど、見つからなかったわ(涙)……、ここでも悔しがっていた(笑)。ところで化石の採集って、ワクワクするんだよね。もしかしら、お宝級の逸品がポロっと転がっているかも知れない期待感……
続く
腕足動物・8
イタイトゥーバ層の腕足類化石の研究は、中国地質大学(China University of Geosciences)のZHong-Qiang Chenがファースト・オーサー(筆頭記述者)で新潟大学のJUN-ICHI TAZAWAやブラジル石油公社のメンバーなどがまとめた論文が2編あり、早々に入手した。
論文に載っているイタイトゥーバ層の腕足類化石
研究論文の腕足類化石の産地は、イタイトゥーバ近郊のカイマという場所にある石灰岩採掘地である。
カイマの化石ポイント
カイマの化石産出、柱状図
論文写真を見ると、まあまあ保存良好の化石のようである。以前から持っていた古い文献に、
「砂岩にプロダクタス、頁岩にはリンギュラなどの腕足類、魚の鱗が産出し、その他にコケムシ、コノドントなどの化石が石灰質砂岩から産出。上部に向けて粘土質になり、440mの厚さに達するイタイツバ累層では、細粒砂岩、頁岩、ドロマイト、石灰岩の中に、三葉虫、ウニ、腕足類、コケムシ、二枚貝及び巻貝などの化石を含む……」、という記述もあった。
続く
腕足動物・7
シルル紀のトロンベッタス層群やデボン紀のウルパディ層群の上には、不整合でクルア層群が乗り、さらに上にタパジョース層群がある。タパジョース層群の中のイタイトゥーバ層は、ペンシルバニアン(古生代・石炭紀後期)の化石が多産することが古くから知られていた。アマゾン南岸のイタイトゥーバ層は、ベロ・モンチ付近での露出は見られない。分布するのは、アルタミラの西方にあるメディシランディア付近から、タパジョース河畔のイタイトゥーバ方面である。
南岸のイタイトゥーバ層の分布(矢印の色部分)
さて、某日のこと。UFPA(パラ州連邦大学)のアルタミラ分館敷地内にある熱帯魚養殖施設内に部屋を持っているカリーナ教授から、いくつかの化石を持っているという話を聞いた。彼女は、水棲昆虫の専門家だけど、オレも熱帯魚養殖の主任マッセーロたちと、何度かシングー採集に同行している。見せてもらうと……
カリーナ所有の腕足類化石
おっと、この化石の感じ。何だかどっかで見たことある。そうだ、以前のこと「ブラジル産・化石」というカラー小図版に似たブツの写真が載ってたんだ。たしか、イタイトゥーバ層産じゃなかったけか?
タパジョース河畔にあるイタイトゥーバの街の近郊に化石産地があるのは、文献などで知っていた。しかし、カリーナ教授のブツは、そこからかなり離れた、ウルアラって場所の近くだという。こりゃあ、面白くなってきたゾ。
続く
腕足動物・6
腕足類には、舌殻亜門の他に頭殻亜門と嘴殻亜門ってのもある。前者は古い分類法で、無関節綱とされていたものの中で、炭酸カルシウムを主成分としている群である。
後者は古い分類法で、有関節綱とされていた仲間の中で、その殻が炭酸カルシウムを主成分としている群であり、燕石(スピリファー類)もこの嘴殻亜門に含まれている。
ベロ・モンチ産のリンコネラータ類の化石
腕足動物門・嘴殻亜門・嘴殻綱がリンコネラータである。さて、腕足類以外のベロ・モンチ産化石も紹介しよう。
フデイシ類の化石
グラプトライト、すなわちフデイシ(筆石)は、古生代に生息した半索動物、すなわち浅海の砂泥中に生息するギボシムシなんかに近縁と考えられている絶滅群。まったくの余談なんだけど、ブラジルでは、「フデ」という発音は、超禁句であ~る(笑)。ズバリ低俗な隠語で、おマ◎コするという言葉に聞こえる。
魚の鱗?化石
魚類らしい化石も発見されている。上の写真は、無顎類(ヤツメウナギが含まれる)、すなわち甲冑魚などのウロコでないかい?、と考えられている。
続く
腕足動物・5
オレはパラ州地質図PDFをかなり前々から持っていた。そして、ダム工事現場付近にデボン紀層が露出しているのを知っていた。そして、三葉虫でも掘れたらイイなぁ、とも思ってもいた。
ベロ・モンチ付近の地質図(★がダム位置)
ジョイセ嬢に聞いたら、ベロ・モンチ化石採集では必死に三葉虫を探したけど、見つからなかったわ(涙)……、と悔しがっていた(笑)。でも、沢山の腕足類化石は発見できた。
ベロ・モンチ産のリンギュラータ類の腕足類化石
腕足動物門・舌殻亜門・舌殻綱がリンギュラータである。有明海の珍味シャミセンガイも、ここに分類されている。
シャミセンガイに似たリンギュラータ化石
ちなみに、舌殻亜門ってのは、古い分類法で無関節綱とされていたものの中で、キチン質性のリン酸カルシウムの殻を持った腕足類である。
続く





























