恋愛小説家 -76ページ目

肩で息をする

「コーヒー1杯、ご馳走になりに行きます」

そう、宣言したのは
とてもとてもとても
会いたかったから

たとえば
往復に時間がかかって
ほんの僅かな時間しか残っていなかったとしても
一緒の空気を吸いたくて

それなのに
こちらから持ちかけた約束を
こちらから破ってしまった

ごめんね
そうじゃないよ


本当は

走ったの

走ったのに

それでも間に合わなくて
私だってとても傷ついているんだよ
 
約束した時間に
もしかしたら
どうしようもない私のために
コーヒーを淹れてくれていたんじゃないかって
 
やさしさを期待していたから
余計に悲しくてしかたないの

 

君は変わった

長年続いていたパートナーと別れた親友からの電話。

「壊れるはずがない」という驕りがあったこと

後悔して、反省しているとこぼす
そんな弱気なあなたは初めてです。
 
「今の仕事はじめてから、君は変わった」
そう言われたと泣いていました。

彼女には素敵な才能があって、

物を創りだす手を持っているクリエイターなのですが
この言葉は別の意味で、私の胸に突き刺さりました。

 
人はいつも、変化の中にいるけれど
抗いがたい大きな流れを乗りこなすために
勇気を出して、強くなって

もがいて、やっと適応したとたん
いつの間にか自分も周りも

変化していたことに気付くのかもしれません。

 

物事に優先順位をつけることは

自由な発想力と時に矛盾します。

24時間、いったいどこで「何かが降りてくるか」

そんなこと、生み出す人間にだって分からないもので

順位などはそのときどきで変わってこそ

自然でいいものが世に生み出されていきます。

 

その都度、今一番大切にしたいことに

人は没頭していくのですから。

 

一生懸命だからこそ、

死角になってしまう部分はあるでしょう。

「いつもあなたが一番」

そんな口約束をしてみたところで

本物の思いやりの前では、

まるで意味をなさないように思うのです。

 

ときどき思い出す

秋の夜風と沢の水音

キャンプのカレー
花火の煙がほんのり残る広場で

ベンチに寝転がって

満天の星を見ていた
 
あの時の私は
肩に触れるぐらいの髪
ちょっと冒険気分で買った
黄色いタンクトップと
膝の長さに切った白ずんだジーンズで

誰かのことを思いながら

好きな音楽を聴いていた

 

最高に気持ちよい夜だった
 

あの人が細い腕を引いて

輪の外へと連れ出してくれるのを
少しだけ期待していた

 

So what?

おしゃべりが好きなあの子から聞いた

あなたの浮いた噂話

 

私はそれを

ふ~ん・・・と聞いていた


別に何も感じないよ

誰にでも、私にだって

いろいろな付き合いがあって然るべき

大人ってそういうものでしょう

そうやって今日まで

生きて、呼吸してきたんだから

 

たとえその噂が本当で

過去に何があったとしても

 

So what?

 

「いま」のあなたを形作るために

すべての要素は欠かせない

あなたの一部分なのだから

 

信じるとか疑うとか 

意味のないことはしたくない

 

答えは簡単でしょう

  

全部ひっくるめてあなたならば

わたしは全部ひっくるめて愛するだけ

 

それ以外に何があるっていうの?

 

世界はこんなにも美しい

毎日通る見慣れた街道を運転していたら

路肩の樹木がほんの少し黄色になっており

見上げた空は淡い水色で

ところどころにちぎれた雲が浮いていました。

 

今朝私が見た景色は、何の変哲もない日常風景です。

 

それがなぜか、とてもきれいで・・・

込み上げる思いに胸がいっぱいになりました。

思いきり腕を振りながら、通りをスキップしたい気持ちになって

この感覚を、今すぐ大切な人に伝えたい!と思いました。

 

ともすれば意味不明な報告でしょうが

たった一人でもいいのです。

その胸の内を汲み取ってくれる人がいるだけで

どんなにか、毎日がきらめいて見えることでしょう。

 

すこぶるいい天気だったり

ひどい雷雨だったり

遠くに富士山が見えたり

木の葉が舞っていたり

月が満ち欠けたり

 

この世界はどんなことでも美しくて

私はいちいち立ち止まって深く息をついてしまいます。

そんな時に、そっと手を取って

気が済むまで隣りにいてくれる人が

どうしようもなく愛おしく思えるのです。

  

私信伝心

最近の、どことなく弱気(かしら?)なブログを見て

私に優しい声をかけてくださった皆さま・・・!

こんな幸せ者はおりません。心より感謝いたします。

 

そして、私の持った弱点を

「個性」であり、かっこいいと言ってくださったメールも。

嬉しかったから載せていいですか?

 

「一部を見るのでなく、いつも全体を見てる人だからこそ
すべてを受け容れられる人なんだと以前から思ってるし
そこが魅力だと思ってる。
『こだわりがないのがこだわり』
って素敵じゃない。
読んでいて、
その精神を伸ばした方が、ずっとずっと輝くと思ったな。

それを理解できる感性の人は絶対いるから。
わたしもわかるんだ。
みんな好きだから。これとあえて決めない。」
 
 

お言葉、涙がでるほど嬉しかったです。

 

それからそれから、

ちょっと息抜きに散歩をしたときに

縁あってご一緒したお仲間へ。

木々の隙間から同じ景色を見ていたら

ふいに面白いことがあって、

思わず顔を見合わせた瞬間・・・!

まん丸の目が、とても愉快でした。
 

ありがとうございます。

ワタクシ、元気いっぱいですよ。

長い私信でした。


週末は物を捨てよう

次の休みは何をしようかな

 

朝は図書館に行って

借りっぱなしの本を返そう
読書するぐらいのゆとりが手に入ったことだし
次に気になっている本を予約するんだ
 
去年も着なかった服は捨てよう
使っていないかばんも捨てるし
履かない靴も思い切って捨てちゃおう
 
 

お昼は一人でカフェに行って
ぼんやり周りを眺めて

夕方になったら近所の公園を散歩して

鳩の群れを追い掛け回したり
 

風呂上りにはめずらしくテレビをつけて

私の嫌いだったお笑い番組を見ながら

ビールでも飲もうか

 

それとも

レイトショーで泣いちゃおうかな

 
そのぐらいかな
 

暑さと汗と仕事にまみれた今週なのに

一人に戻ったら

手元の時間がやけにたくさんあるね

 

ペーパーバッグ

「私はこれがいい」と

肩の力を抜いて、当たり前に主張できるようになりたいのです。

 

どうしても、私には、それができませんでした。

それは心の深いところに、幼いころから自然と備わった習慣のようなもので、アンバランスな関係を続けていた両親をつなげるために「中立」でいることが自分の役割のようなものと思い込んでいたためかもしれません。

 

私の言う「何でもいいよ」は、妥協やあきらめではありません。

 

ずらりと選択肢をならべられても、「これじゃないとダメ」というよりは、「どれだって嫌じゃない」。

本当に、嫌じゃないんです。

 

それで相手が幸せならば、私は何を選んでも大丈夫だから、自由にしてね、私はそれに付き合うね・・・という意味です。人と違う意見を主張することで、相手の気分を害してしまうんじゃないか。恐れからくる自己防衛といわれれば、否定できませんが。 

 

 

初めて、それでは上手くいかないということを痛感したのは

17か18のころでした。

 

恋していた人と美術館を散歩してから

お茶をすすりつつ、正面の芝生に座り込んでいました。

すると彼が突然

「どれが好きだった?」と質問してきたのです。

 

窮しました。

 

私は、「どれも好き」だけど「これが好き」と、

口に出すことが、本当にできなかったからです。

そんなに簡単なことができないのです、信じられないけれど。

おまけに彼は美術に詳しく、私はまったく無知でしたから

ソムリエ相手に、「このワインが良いね」と

熱く語る素人客のようなバツの悪さで、

この局面を、どう切り抜けたものかと黙り込みました。

 

「う~ん、みんな良くてわかんない」 

こまった笑顔をするしかありませんでした。

 

そんなことを答えた私に、彼はハッキリ言いました。

 

「このままだと、君とは多分、続かない。

君の好きなものとか、気に入るものはなんだっていい。

もしそれがお互いに食い違っているなら、

『そうか』って、その価値観を理解しあえばいいだけじゃん。

そうやって分かり合ってこそ、

ふたりでいる意味があるんじゃないの」

 

初めてのデートで、いきなり突きつけられた別れの宣告に

私は居たたまれなくなり

家から閉め出しを食らった子どものように、めそめそ泣きました。

「一番好きなものだったら、もっと満たされる」と知っているのに

そのために、どうしたらいいのか分からないのです。

 

怖くて仕方ない。

ただ短い一言を言い出すために、

想像以上に努力が必要な人間もいるのです。

 

突っ伏していたら、頭の中に浮かんできたのは

セメントで出来たペーパーバッグのオブジェでした。

美術館の床に無造作に展示されていた

“形そのものはクシャクシャの紙バッグなのに、セメントで出来ている”おかしなアートのことが好きだ・・・と、思いました。

 

そして、私の好きなものは何だったのか、

やっとの思いで伝えました。

彼は聴いてくれました。笑っていました。

 

それだけで充分でした。

「君とは多分、続かない」と、もう二度と言われたくない。

胃の痛くなるような気分で、慣らす努力が必要だとしても。

 

 

どうしてこんなことを思い出したのかって、昔と同じような気持ちに、またなったからです。まるで成長していないことを感じて、情けなくなったからです。

 

言葉は悪いですが、「女は数歩後ろからついて来ればいい」という男性には、あいまいな態度も問題なく受け入れられたようですが、それじゃいけない・・・。せっかく一緒にいるならば、その価値を見出せるように、努力をしなければならないこともあるのでしょう。

 

ラテ、ホット、ショート

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本日は外出です。
外の空気はいいですが
混んだ電車は苦手です。

多摩川の中洲に白い鷺が群れていました。
いい日になりそうです。

寒がりだから髪を伸ばしたくなって
湯上がりにはねた毛先を少し切りました。

小さいですが、蠍座の天然石。
首から下げてみました。

この秋初のブーツは歩き易いです。

打ち合わせが終われば
ごほうび付きです。

2009年・夏

このごろつぶやきが増えておりますが・・・そういう時は大抵、何かが生まれる兆候で、うずいている証拠。私にとって、メモすることが最高のremedyですのでお付き合いくださいませ。

 

2009年・夏を振り返り、印象的だったこと。

 

周囲のあれこれ、そして私自身にとっても、指折りレベルで胸に刻まれる大きな事件が連なって起こった夏でした。はじまりはいつだったのかと辿っていけば、ここ数ヵ月とは限りませんが、でも確実に、「時間をはずした日 」の集い前後から、心が右に左に揺れ動いていたような。表現する世界には誤解や批判が伴うもので、壁にぶち当たれば、蔓を上へ上へとのばして。
  

新しい人と出逢いました。

永遠の別れがありました。

昔からの人と深まりました。

知らない人と楽しめます。

自分も好きになれそうです。

  

悩んでいれば、私の大切な人々に一人またひとりと励まされ、不安になれば貴重な意見や感想をいただき、愛のある言葉に支えられ・・・とても癒されたことに、心からありがとうを。

  

「最初会ったころより目に力がある」、そう言われました。

もしそうだとしたら、確かにその通りでしょう。

子どもが母親と指きりをするように、私もひとつ決めたのです。


自分で決めて、伝えて、自分の見たいものを見る。

素直に、恐れず、飾らない。

ばか正直でも嘘をつかない。

結局人は、童心にかえっていくほど、素のままに近くて。

 

昔から「人の眼を見据える」ことが苦手でした。でも取材や打ち合わせなど、仕事では相手を見つめまくります。ところがプライベートになると、目線が下がります。本当の私は、後者なんですね。

不思議な力が、その角度を少し上向きにしてくれた・・・

一言でいえば、そんな夏でした。