恋愛小説家 -6ページ目

割れ鍋に綴じ蓋

割れた鍋に閉じる蓋があったって意味がないと

長いこと言葉の意味を勘違いしていたけれど
実は「綴じ蓋」と書くのだと知ったとき

救い様のないたとえがそうでないものに聞こえた


使い物にならないかのように思えた鍋でも

うまく合った綴じ蓋があれば大丈夫で

きちんと何かの役に立つように出来ている

要は似たもの同士が符合すれば

物事はピッタリと上手くいくということよ


どこかしらが欠けているかもしれない

私たちがお互いを補いあいながら

見事な二人三脚を続けていられるのもきっとそうであって

どっちが割れ鍋になっても

片方が綴じ蓋になるように出来ている

その壊れ具合さえ愛おしく思えるように出来ている


こんな風に

大人になってから知ったこともある

割れ鍋に閉じる蓋は要らないのよ

随想 111208

夕方に、「03」から始まる番号から着信しました。

こんな時間に、東京の誰さんだろう?と余所行き声で電話を受けると

以前お仕事でお世話になった某教育機関の次長さんからでした。

用件は新しく始まるプロジェクトを手伝ってくれないか、というもので

「あなたとなら上手くいくと思って」という直球が飛んできました。


思い立ったら即行動という、歯に衣着せぬお人柄は相変わらずで

久しぶりの会話にもかかわらず、懐かしさに頬が緩みました。

思い出していただき、直接電話をかけてきてくださるなんて

本当にありがたいことだと思います。

こんな時代に、それもたいして若くもない人間にとって

とても光栄なお話であるのは良くわかりました。

それに、次はないかもしれないということも・・・。

だからこそお断りするのが、とても心苦しかった。


単に打算的な考えで仕事を選び、詳細を伺ったならば

魅力的な条件が出てきたのかもしれませんが、

詳しい話を聞くまでもなく答えは決まっていて

「いまのやり方」を気に入っている自分に気付いた訳です。


新しい環境に身を置くことは修行のようで

何をするにも、幾つになっても、学ぶことは楽しいです。

春よりお世話になっている現在のお仕事においても

フリーのライター業とは異なる、組織の一端といった目線から

知らなかったことを勉強させていただいています。


でも、時間は限りあるもので、身も一つ。

やりたい方はどちらなのか天秤にかけたのならば

<自分で選んだことに、きちんと責任を果たしなさい>と、天の声。

この居心地のよさにぬくぬくと惰性で過ごすことなく

一日ごとを積み重ね、限りある時間を意義に過ごさねばなりません。

また、「まずは書け」と尻をたたく人にも感謝しつつ。


人とのつながりにしても本当に必要なものは残り

途絶えたと思っていても、再びつながるとも分かりません。

人生の岐路とかタイミングというものがいつ来るのか

目の前の信号は何色なのか、進むべきか引き返すべきか

冒険(危険を冒?)しながら、未知なる道を往くしかありません。

なんて、大袈裟かもしれませんが。

 

向こうの方からやってきた

「人を余計に緊張させない雰囲気がいい。」

あなたが教えてくれた私のイイトコロは

それまで誰に貰ったどんな褒め言葉より嬉しかった。

だからそれを今も胸に抱いて、大切にして生きている。


大きな樫の下で見上げた15時半の冬空は灰色だった。

煌びやかなオーナメントがぶら下がったツリーの写真を撮りながら

ウェッジソールのパンプスの中で

つま先は冷え冷えと縮こまっていた。

ほとんど徹夜で用意した書類の詰まったカバンを抱えて

いつもより早く家を出た、長い長い一日。

夕方の約束を考えたらスキップしたい気分になって

ひたすら愉快でしあわせだった。

本当の今日は、これから始まるのだと思った。


そこには何の根拠もなく、ただ「予感」だけがあった。

それまで何度となく開いてきた玄関のドアをくぐったら

少し違った場所に、通じているような。

すべての始まりに不安はまったく感じずに

いつしか私はその日が来るのをとても楽しみにしていて

いいことが起こる予感を疑わなくなっていった。


息を切らして階段を登りきったところで

大きな犬が首をかしげて座っていて

黒く潤んだ瞳でじっとこちらを見ていた。


普段はどこかに追いやられている記憶にも

たまには真剣になって向き合いだすと

どうしてそれほど憶えているのかというほど

細かいことまで掘り返されてきて笑える。

偶然そこにあった景色の一齣でしかないはずなのに

ときめきすら憶えていると言いたげに鼓動まで高鳴りだす。


しばらくするとその人は向こうの方からやってきたのだ。


幾年月

カメラを持っていたら「写真とりたい!」と少年に言われ

どうぞ、と貸してあげたのは数日前のこと。

データを開いたら、こんな低い目線からみた世界が残っていました。

安納芋3兄弟、ころころころ。


恋愛小説家


あなたと過ごした幾年月

少しずつ減っていったもの

初々しさ

建前

気障なセリフ

ちょっとした遠慮

人恋しさ

哀しい涙


少しずつ増えていったもの

ツーカーなあれこれ

本音

歩いた町並み

ちょっとした幸福

笑い顔

あったかな涙

あなたと過ごした幾年月

また冬が来た

「好きになってしまいそう」

そう思った時にはもうとっくに恋していて

木の葉が色づくよりもはやく

心があなたの色に染まっていった

いつかの秋のこと


「一番長く一緒にいるよ」

誰かと比べることじゃなくても

それだけで嬉しいと思った


また冬がきた

また冬がきた

それだけ

なのに嬉しいんだ

 
恋愛小説家
 

12月がやってきました

 

切り絵

恋愛小説家


あわただしく過ごしておりましたが、生きております。

街路樹が切り絵に見えるこういった空色は

もうとっくに「冬」しています。

夕方の5時は夜という、ただそれだけで寂しくなる季節です。


どんなに大好物のチョコレートだって

どんなに優しい人のやさしさだって

享受する側は本当に身勝手なもので

急激に欲したと思ったら、しばらくいいわと不機嫌にそっぽを向く。
あるのが当たり前だと思っているから、身勝手になるのですね。


今日も明日もまたバタバタとしてしまうのですが

そろそろ疲れがたまったかな?という自覚症状を

押し切らずに、ときにはスイッチを切る。

「有意義に呆ける。」そんな時間が必要だと思っています。


随想 111120

恋愛小説家


7:00am

濡れた路面がひんやり、蒼かった夜明けの空。

雲行きは今日が晴れることを予感させるもので

まとめて片そうと思っていたニット類を洗う。


観葉植物たちに水を遣り、葉に薄く積もった埃を拭き取る。

放っておいてごめんねと申し訳なく思いながら、緑を撫でる。

皆さん、そろそろ鉢を一回り大きくしないといけない。

植え替えるにはだいぶ寒く、株が弱ってしまうので春まで待とうか。

そう考えると、一年は本当に早く過ぎていく。

昔、大きなパキラを窓辺に置いていた人のことを思い出した。

植木も人も、元気でいるだろうか。誰のこと?というツッコミはなし(笑)


年末調整の書類を整えながら、ぼんやりと自分の足跡をたどる。

社会人になりたてで、何もかも物知らずだった頃よりは年の功。

多少は成長しているのか当時を振り返ると気恥ずかしい。


実際とても若かったし、勉強不足なことだらけだというのに

誰かが踏んだ道をたどり、出来上がったものを模倣することで

「このぐらいなら自分にもできそうだ」と勘違いし

力の入れ方や抜き方の加減すら上手くできなかった。

「習うより慣れろ」とはよく言うし

そのようにして学んできたこともあるのは事実。

それでもやはり、習うに越したことはないはず。


今さら見守られていたことに気付く。

若さゆえの特権を、ぬくぬくと享受していたことに気付く。

感謝しなければならない人が、たくさんいるんだ。


ホットココアが美味しい。お汁粉に塩を入れるのと同じで

塩をほんの少し加えると甘さが引き立つようで。

どうやら少し風邪っぽいから、早めに薬を飲んでしまおう。


・・・と、そんな物憂げ日曜日。

うでまくら

夜中にポテトチップスを食べる背徳感は

一人より二人でいる日の方がいい。

それでも今日はあなたがいない。


本を読みながらうたた寝していて、寒さで目が覚めた。

ストーブはとっくにタイマーが切れているし

もうすぐ空が明るくなる頃だっていうのに

皺だらけになった洗濯物を干して

からまった綿シャツの袖を伸ばしながら、

これはアイロンしないとダメだなぁと肩をすくめる。

ちゃんと寝ないとダメだろうと叱られそうだ。


そして今度こそと布団に寝転がり

ふと、腕枕ってどうなのよと思った。

意外と重い頭の下敷きになって

自分は寝返りも打てないで何時間も同じかたちでいたら

手がしびれるんじゃないの?男の人って大変だ。

「ぜんぜんヘーキ。」と余裕ぶっていたけど

そういうものかと半信半疑になる。


気ままなような、肌寒いような

やけに広い布団の上でわざわざ丸くちぢこまり

今頃どこかで眠っているであろうひとを想像する。


実は嫌いじゃない腕枕、全然平気って本当だろうか。

<それじゃ遠慮なく乗っからせていただきます>

勝手に結論づけ、勝手に報告をし

あと2時間眠れるぞと目覚ましを三重にかけた。

表で新聞配達のバイクの音がする。

もう朝だけど、おやすみ。

おみやげ

しなやかという形容がぴったりの友人からのバリ土産。

おすそ分け・・・というには、申し訳ないぐらいたくさん。


恋愛小説家


「知り合ってどれだけ経った?」と、昼間から白ワインをちびちび。

もうすぐ干支まで一巡りするのだと気付き、驚きました。


いつかの夏、彼女の家を訪ねた日のこと。

居心地の良さについ長居してしまったのですが

夕飯の支度で衣までつけたコロッケを、「良かったら持ってって」と

手際よくタッパーにつめて、持たせてくれました。

はじめから大目に作ってくれていたのですね。


いつも彼女の前では、私はお手上げになってしまいます。

人にしてあげたいと思うことや、こうありたいという身のこなし

すべて、先を越されてしまうからです。


そんな先輩に素直に甘え、ありがたく味わわせていただきます。


恋愛小説家

粉糖をまぶした、チョコレート。こちらもいただきものです。

まったくお土産というのはありがたや、有り難や。


「誰かにお土産を選ぶなんて、かつてないことだ」と、

少し照れくさそうに、一つひとつの品物を机に並べて

それを買った日のことや見てきたものを分けてくれた人がいました。

そもそも旅というのは、自分のためにするものだと思いますし

せっかく旅先で非日常的な時間を手に入れたのですから、

お土産だって自分のためだけに選び、胸にしまってくれば良いのでしょう。


それなのにわざわざ、私のために時間を割いて・・・そう思ったら

バックパックで身軽に飛び出したはずの人が

前より大きな荷物になって帰ってきたことに

たまらず、鼻がツーンと泣きそうな気持ちになりました。

無事に帰ってきてくれたならば、それだけで嬉しいのですから。


恋愛小説家


それから、柚子をいただきました。

季節の果実がなるような庭のある暮らし、素敵です。

しばらく鑑賞してから、お風呂に入れることにしましょう。

 

随想 111111

1が並んだ、2011年11月11日。

棒がいっぱいに見えるからポッキーの日、みたいです。


久しぶりに雨らしい雨が降っている本日。

普段は自転車に乗って出かけますが、こんな日は歩きと電車です。

歩く距離もそこそこあるので、まったく履けなくなったヒール靴が

下駄箱でうらめしそうにこちらを見ています。


自転車に乗っている時間は、往復すると1時間ほど。

ストイックにがしがし漕いでいる訳ではないものの

20km弱の距離を走っています。

その間いつも考える、あれこれ、それこれ。

前にしか進めない自転車で往くアップダウンの区間も

目下つみあがる問題ごとに立ち戻るよい時間になっています。

自分の息づかいとごうごう鳴る風を聞きながら

ペダルを踏み込みます。

これもひとつの修行!?なのかもしれません。


たまった原稿、仕上がっているのもあるのですが

その前に一言、伝えないといけない気がしてまだ送れずにいます。

仕事を抜きにして、まずは友として、伝えたいことがあるので

ここの順番は、守らないといけない気がしています。

でも、今日は送らないと。


もう街はクリスマス色になっているし

表参道だって、イルミネーションの準備が進んでいるようです。

あの、ロマンチックすぎて人の判断力を麻痺させる魅惑の並木道。

人を数割増しに見せる、不思議な光の粒々(笑)


今年も歩こう。

では、行ってまいります。