恋愛小説家 -54ページ目

抜け殻

君が部屋から出て行った

 

地面から這い出してきたセミが

青白い羽を伸ばし

乾いていくようすを見つめていた

飛び立ったあとの抜け殻は

踏んづけて粉々になったら

もう二度と元には戻らないんだ

 

こんな時でさえ

脱ぎっぱなしのシャツが

さっきまで体が入っていたままの形で

ベッドの上に乗っている

 

どうしろっていうの

あからさまな痕跡を残して

君が部屋から出て行った

 

私は抜け殻になっちゃった

 

"Oh, you shouldn't have."

ブリトニー・スピアーズ全盛期、

MTVで頻繁に見かけた「Oops!...I Did It Again」のPVには

こんな台詞の部分があります。

 
"Britney, before you go, there's something I want you to have."
"Oh, it's beautiful, but wait a minute, isn't this...?"
"Yeah, yes it is."
"But I thought the old lady dropped it into the ocean in the end."
"Well baby, I went down and got it for you."
"Oh, you shouldn't have!"

 

うわぁ、思いっきり小悪魔です。

 

火星探索に来た地球人と思しき、宇宙飛行士を

お出迎えするブリトニー&火星人風集団。

いきなりセクシーな誘惑ダンスで魅了し、

しっかりハートを奪っておきながら

バイバイする前には、しおらしく。

 

「さよならする前に、これを君にあげるよ」

「なんてキレイ…!でも、これってまさか、あの?」

「そう、そのまさかさ。」
「だってあのとき、おばあさんが海に落としたはずでしょう?」

「ベイビー、君のために取りに行ったのさ」

「ああ、そんなことしなくてもよかったのに…!」

(※私のためにありがとう…、感激したわ!の意。)

 

何のことを話しているのかというと、

映画「タイタニック」のエンディングで、

年老いたローズが海に「ポチャッ」と落とした宝石を、

君のために、海底から拾ってきたんだよ!ということ。

なんてけなげな地球人でしょう。

 

そして私が何を言いたいのかといいますと

"Oh, you shouldn't have."

この台詞、どこかで使ってみたいなぁ、ということです(笑)

 

偶然なのか、必然なのか

もう何度目か

数え切れないほどの偶然の一致

もはや偶然とは呼べない引き合わせ

 

そうだよ

引き合っているから

不思議なことが起こる

それとも

不思議なことなど

何一つないのかも

 

私はあなたを

あなたは私を

考え思い出している

 

無意識のうちから

互いに向かって手を伸ばして

探り合っていたはずだもの

 

それだけでだんだん

歩幅が近づいてくる

同じ場所に向かっていく

そして大きな街中でも

ばったり出くわしてしまうんだ

 

そうするともう偶然なんて起こらない

すべては引き合い引き寄せられた

「必然」と呼ぶにふさわしい

最初から決まっていたことに思えてしまう

 

Magnolia

恋愛小説家



雨が降ったり雪が降ったり

不安定な空の下で

中休みのように覗いた

一瞬の青空

ふっくら

コートを脱ぎはじめる

やっぱり

木蓮のころだと思った

 

駅までの道を歩きながら
あなたの声を聞きたくなった

ただの一瞬でも

万能薬のようなその声が

いま、とても聞きたい

 

黒い服を着ていこう

昨年から準備にとりかかり

いよいよ今週、本番を迎える仕事のイベントに向けて

黒いジャケットを探しに行きました。

私もキャストの一員で、撮影班として動きます。

 

ドレスコードは黒の上下、ジャケット着用。

一応、そういった服を持っていないわけではないのですが

カジュアルすぎたり、古めかしかったり

用途が違っているもので

どれも中途半端な格好に思えて、しっくりきません。

 

結局、ぎりぎりのタイミングながら服を新調。

フィッティングルームに7枚も持ち込んだのは初めてです。

 

ジャケットのサイズと、スカートの形、丈で悩みました。

ああ、こんなときに専属アドバイザーがいてくれれば・・・。

どちらがフィットしているか、どのデザインがいいか

客観的にズバッと判断してくれそうなのになぁと

誰かさんの顔を思い浮かべつつ、鏡の前で着せ替え。

 

普段ならば選ばないであろう、黒い服。

大人(とっくに大人なのですが)に見える、自分。

表情や姿勢まで、しゃんとする。

新発見があっておもしろい。

 

「きっと上手くいくよ」という一言に

魔法のように励まされました。

分かってくれる人のやさしさに感謝します。

本当のやさしさは押し付けがましい気配りではなく

自然であるからこそ、心にじっと染み入るのです。

 

風呂上りに、手足のつめを切りました。

こうして静かに気合を入れて

夜が明けたのでした。
 

1987

恋愛小説家

 

小学生でした。

父と一緒に、扇島へ釣りに行ったのです。

「海釣り禁止」となっているゲートをくぐるとき

私はたしか、弟と一緒に

後部座席のすきまに隠れて毛布をかぶりました。

 

撒き餌の冷凍エビをシャベルで削って

フジツボだらけのテトラポットあたりに落とします。

すると間もなく、釣り糸についた擬似餌に

小さなイワシだかアジがぶら下がってくる。

濁った海水、この魚が食べるられるのかどうかは別として

ミミズを針につけるのが苦手だったから、

このシンプルな釣りがおもしろかったのです。

 

臨海の埋立地は、今よりもさらに殺風景で

遠くにタンカーが見えました。

羽田を離着陸する飛行機が飛んでいました。

 

水平線がまっすぐでない、曇天の川崎港。

父の古い一眼を手に、初めて撮った写真です。

  

1987年、

あなたは何をしていましたか? 

まだ生まれていなかったという人も、いるかもしれませんね。

 

私たちの知らない世界で

いつか出逢ってつながる点と線は

着々と準備を進めているのだと思います。

 

いつかやってくる、「その時」のために。

 

なかなおり

昨日の夜に、あなたと口論になった。

私はなかなか寝付けなかったし

ふたりして重苦しい空気のまま朝がやってきた。

 

味気ない朝食、喉を通らないトースト

ゴシップを伝えるテレビ

今日は晴天の気配

 

つまらないことで気を悪くしたまま

「いってきます」も言わない寂しい背中。

閉ざされたドア。

 

911の日に、予期せぬ悲劇で

けんかしたまま、仲直りもしないで

離れ離れになった彼らのことを思い出した。

「だから必ず、感情はリセットするようにしているの」

彼女はそういった。

 

 

どんな気持ちでいたって

一日は始まるんだ。

 

私たちの

最後の会話は愛に溢れたものであるべきだし

最後の姿は背中よりも笑顔の方がいい。

 

随想 100306

恋愛小説家
 

柿の種チョコレートを考えた人を尊敬します。

 

割チョコレートが2.4kg届きました。

いろいろな味が混ざっていて楽しい。

食べやすい大きさに切り分けて、自分用はタッパーに。

仲間用はIKEAのジッパー袋に入れて、せっせと準備。

 

横浜は雨模様です。

遠くを旅している人を思い出し

普段は聞き流す各地の天気予報を見ていますと

今日はおおかた雨雲に覆われているらしき、日本。

 

昨日は20℃もあって、日中はスカッと晴れました。

あまりにも気持ちよいので

青空に向かって名前を呼んでみました。

「おーーーい、聞こえる?」

空はつながっているから、届くといいなと願いつつ。

 

きっと聞こえているよね。

お互いのことを考えているよね。

 

ずっと隣りを歩きたい

いつも手を引いてくれること

車道側に立ってくれていること

それって普通?当たり前?

いいえ、そんなことないと思う。


私はほとんどあなたしか見えていないのに

あなたは私よりもずっと

広い視野で遠くを見ていることも

とても嬉しい、ありがとう。

 

たまにくっつける頬は

日向に干してあったおふとんみたい

おまけに何だかいい匂いがする

意味も無いのに近づきたくなってしまう。

 

姿、声、まなざし

寄りかかる重み

くるくる変わる表情、足の大きさ

どれもあなただけのもので

みんな私のお気に入り。

 

好きなものと嫌いなものの線引きが

とてもはっきりしている

創るものや見ている世界も

あなただけのもの。

 

景色が鮮やかに塗り替えられて

あちこちが思い出だらけになったね

それでもまだ

あなたがそこに立っているだけで

空気や風の流れまでも変わってしまう。

 

どうしようもなく占領されているのに

むしろそうでありたいと思っている

私の願望を見透かすように

また優しい瞳がこちらを向いているから


「あなたが好き」という

湧き水みたいな想いにおぼれて

胸が苦しくなるのです。

おてがみ

ペンを持ち さらさらと

徒然なるまま想いを綴る

そんな作業は過去のこと。

 

日記をつけたければキーを打つ。

手紙を書くよりメールする。

ことあるごとに携帯を開く。

 

今となってはそれが主流で、手紙なんてもの年賀状ぐらい。

それでもアナログの良さだってあると思います。

 

誰かに手紙を書くというのは、

自分と向き合う時間であったり

その人のことを考える時間であったり

モニターで見る文字よりも、

ゆさぶり、こみあげてくる

大切なことがあるような。

 

ペンを持って失敗しても

BACK SPACEキーはありませんし

特別な報告など、何もない。

だけど伝えたいことがたくさん・・・

 

言葉たち、

どうか力を貸してくださいな。