恋愛小説家 -50ページ目

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もう少しだけ、マザコン女におつきあいを。

 
恋愛小説家

 

朝から時計をチラチラ見ながら

午前中に入稿したいデータをまとめていましたが

9時をまわる少し前に立ち上がりました。

 

引越しのトラックは、もう来ている時間。

おそらく10時ごろには、すべて終わっているとのこと・・・

まだ間に合うかもしれない。

 

「炊飯器」の箱を助手席に乗せて、母の家へ。

今こそ、行かなければならない。

 

いつだったか、私が一人ぼっちで

引越しダンボールと、おセンチな荷物たちと向き合っていたら

玄関ドアの前に、惣菜を手に立っていたお母さん。

これまで、人生のどんな場面にもやってきて

手伝ってくれたり、見送ってくれたり、出迎えてくれたのです。

母が旅立つならば、今度は私が見送る番です。

  

間に合ってよかった。

炊飯器、使ってくださいな。

「炊いている途中で蓋が開くのよ!」と小耳に挟み

餞別の優先順位、トップに躍り出ました。

3合炊きじゃなくて、5.5合炊きにしたのは

ほら、これからもみんなが集う日もあるだろうし(笑)

 

60年間暮らした神奈川県。

旅行以外では、県外に出たことはないはずです。

これまでは誰かしら、姉弟が近くにいたけれど

何かあったら、どんなに急いでも半日かかります。

いきなり大丈夫?の東北暮らしは

嬉しくもあり、楽しくあり、寂しくもあり。

 

またゆっくり話をしたい。

本当はいつも、聞いてほしいことだらけなのです。

一見しっかり者のようで、口を噤む真ん中の私を

「自分に似ているところがある」と、心配かけていたことも。

 

いってらっしゃい。

田舎のスローライフ、うらやましいです。 

どうか身体を大切に

しあわせで、素晴らしい人生を。

 

たとえばもし「ただいま」と言いたくなったならば

その場所、その人、その瞬間が

誰かにとっての帰る家なのだと思います。

まだ見ぬ「実家」へ帰る日を、心待ちにしています。

マザコンは男だけではない

物心ついたころから

私の母は昼夜に仕事を掛け持ち、働いていました。

でも本当は、専業主婦として家事や育児に勤しみ

丁寧に暮らしたかったのではないかと思います。

ありがたいことに、どんなに忙しい最中でも

「向き合うこと」に手抜きをされた記憶がありません。

 

子どものころ、眠る前によく本を読んでくれました。

「いやいやえん」は童話のお手本のよう。

大人になってからも何度となく手にとりましたが、

時代が変わっても色あせず、読み手の心を捉えます。

 


 

「猫は生きている」。

いざ眠ろうとする枕元で聴くには

怖い夢になって出てきそうなぐらい、悲しい物語です。

 

 

 

東京大空襲の戦火から逃れきれずに

家族が一人、また一人と離れ離れになっていきます。

壮絶なストーリーとともに記憶に残っているのは

朗読の途中で泣き出した母のこと。

「だいじょうぶ?」「だいじょうぶ、ごめんね。」
 

豆電球でぼんやりとオレンジがかった闇。

なかなか眠れないときは

川の字になった姉のパジャマをこっそりつかんでいました。

あったかい毛布にくるまって

安心して「おやすみ」と言える幸せを抱きしめていたころ。
 

いつしか「物書きになりたい」と思うようになったのは

母や家族のお話を、何かしらの形で

記しておきたかったから・・・なのかもしれません。

あなたがいる

恋愛小説家
 

ここ数年、今日中に眠ることのない人生です。
湯船に小説を水没させる寸前でしたが
あんまり反省していません。
だって夜中は楽しくてしょうがないもの。

打ち合わせに向かう途中
遅咲きの桜が舞っていました。
ぶわぁっと風が吹いて
私を包んだあったかい吹雪・・・
 
あなたがいる
そんな気がしました。

相変わらずお待たせしていることも多くて
それが何より不甲斐なく、ジレンマを抱えがちです。
でも今日は少し気持ちが軽くて
スカートもふわふわと喜んでいました。
嬉しいね、日が長くなってきましたよ。
 

 

初めての待ち合わせ

手をつないだ夜
「デート」と呼んでいい約束をしたこと

交わした言葉、見た光景、目配せひとつ。

 

一人のときに思い出せば

泣けてしまうほどなのに

いざあなたを目の前にすると

ルンルン鼻歌 浮き足立って

神妙な気持ちを忘れてしまいます。

 

鈍感すぎる私が

あるとき理屈抜きの勘が働いて

好きになってしまうという予感に

ぐいとひっぱられた!

 

昨日よりも今日、今日よりも明日。
いつも「いま」が一番だと感じられるなんて。
遠くのあなたがよく見えるし、
文字から声が聞こえるのです。

 

あなたがいる。

これ以上素晴らしいことがあるでしょうか?

ありがとう。本当にありがとう。

自家中毒

いきおいでひどい言葉を吐いた
何も言い返せないのを分かってて
わざわざ君が傷つきそうな言葉を選んでいた
効果的に痛むように鈍い切れ味で

お互い様だと思う
最低な君に最低で返したのだから

しかしどうした
喉まで泥に埋もれている
胃袋に石ころが詰まっている
しんどさから抜け出せない
どうやら自分の毒にやられたらしい


最低の上塗りをした

僕は
ただの意地悪だ

前言撤回

友達や趣味を優先されると不機嫌になって

自分も相手も一番じゃないとイヤ。

一日に何度も連絡をとりあって

休みは一緒で当たり前。


やたら嫉妬深く誰彼を勘ぐったり

泣き笑い泣き、寝ても覚めても

相手のことは何でも知ってなくちゃ不安

だって、好きで好きで仕方ないんだもの。


そんな風に愚かで、

かわいらしいことを考えていたのは若さゆえだった。

恋愛だけしていればよかった時代。


いつしか現実に揉まれて

自分の足で立つようになったら

一番と思うバランスが変わってくるもので

「都合のいい付き合い」を選ぶようになっていく。

ネガティブな意味での「都合のいい関係」ではなく

あくまでも、お互いにとって快適であること。


そして、たどり着いたのは


付き合うとか別れるだとかの定義はいらないから

お気に入り同士必要ならば

好きなように連れ添っていればいい。

お互い自由なままで

過干渉も束縛もせず

尊重や好きな気持ちを大切に

付かず離れず。

万が一「おしまい」になっても

再会すれば笑って話せるように

大切なままでいられるように。


未練がましく縋ったり泣いたりしないで

軽く手を振って、離れるぐらいがいい

そうしたら、格好つけたままでいられるし

何より相手を<失わずにすむ>。


ああ、でも。

ここにきて前言撤回したくなるなんて。

彼を見ていたら、

物分りの良い女ぶってもいられない気がした。


年相応に身につけた

大人の流儀だけは、どうか忘れずに

なりふりかまわず恋をしたいと思った。

pantomime

恋愛小説家


「こんなことがあったよ」という報告は

興味のない話題だったみたいで

その反応があんまり冷たいと

なす術がなかった
 

少しのがっかり

小さな悲しみ

落胆のため息


繰り返し味わうと

人はだんだん

何も言えなくなっていくんだよ


ちょっと聞いてほしかった

ちょっと訊いてみたかった


いつも求めていたのは

ただそれだけのことなの

承りました

預かりものをしました。
昭和30年代の産物です。
その時点から「いま」よりも
さらに昔「昭和の始まり」の方が近いだなんて
つながりって、すごいなぁ。
錆びた箱や黄ばんだ紙に触れると
何十年前の春にタイムスリップできそうです。

桜散りゆく土曜日。
電車の最後尾、
ドアの前に男性が立っていました。
無表情に見えた彼は、乗り込むなり笑顔になって
先に乗っていた彼女にハグをしておしゃべりを始めました。
待ち合わせだったのね。

大人の遠足はもう少し。
いい天気で、私は居眠りしそうです。

その向こう側へ

世界は未知であふれているし

数え切れぬほど

見るべきものや 知るべきことがある

だから あなたが往く道をどこまでも往こう


さすらい人になって旅立とう

同じ虹の端を見つけられるよ

次の曲がり角は

もうすぐそこまで来ているから


MoonRiver

すてきに渡ってみせよう

親愛なる友と、そして私と


Moon River, wider than a mile
I'm crossing you in style some day
Old dream maker, you heart breaker
Wherever you're going I'm going your way


Two drifters, off to see the world
There's such a lot of world to see
We're after the same rainbow's end
Waiting round the bend
My huckleberry friend,
Moon River and me


そこはどこかにある桃源郷なのでしょうか。

脈々と静かに、壮大に流れる河は

私たちを魅了する<夢>なのかもしれません。

こおろぎや鈴虫が鳴いていたらいい。

夜空を映す「Moon River 」に思いを馳せて。


心に染みる音楽がたくさんあります。


随想 100408

またしても口内炎です。

3つとも育ってきたので、ビタミンを飲みました。

昨日の出来事を綴っておきます。


ここ数日、近くにあったのに使わずにいた散歩道を歩いています。

公園の池には、カメがたくさん住んでいて

甲羅干しをしている姿が、かわいい。

朝から曇天で、雨がポツポツ降り出しました。


午後になって、甘すぎるチョコレートを持って出かけました。

本格的に土砂降りのタイミングだったので

極力「紙」は持っていかずに、コンパクトにして。


その部屋は、行くたびに物が増えたり減ったりしています。

暮らしている本人の意思を介さず、

人の手から手へと巡って景色が変化し、

必要なものと意味のあるものだけが手元に残る。

だんだんと、淘汰されていく過程にあるようです。


手放すことと、受け入れること。

どちらにも寛容で、力まずに生きていけば

「わらしべ長者」のように、

物も行き着く場所に、落ち着くようにできているようです。


仕事について、それから

私たちの身辺に起こっている不思議な出来事、

理解不能なあれこれを、“真剣に”話しました。

答えを導き出すためではなく「共有」するために。


途中で、とっておきの庭職人がふらりと現れ

ベランダをジャングルにして行きました。

大胆に鋏をいれる、パチンパチンという音と

植物の葉を優しくしごく、しなやかな指先。

自然と対話する美しい所作に見とれました。


別れ際、「わらしべ長者」から、私にも

ダンボール箱ひとつ分の洋服が委ねられました。


夜になり、メールが来ました。

うちの子になった「モンステラ」の鉢について

育ての親からいいことを聞きました。


「モンステラは優しい植物なんですよ

何で葉っぱが割れているかというと

下の葉っぱに光りを当てるためなんですよ

分かち合う奴らなんですね」

 

うん。

分かち合うことは素晴らしい。

私もそうやって、生きていたいのです。


ごめんねはいらない

彼女と会ったということを伝えてくれたのは

私への誠意だったのかもしれないけど

ちっとも嬉しくなかった


彼女と会っていた

それはそれでいいから

謝ってなどほしくなかった

どうか心の揺らぎを見せつけないで


ごめんねと

あなたが罪悪感に苛まれるような

かなしい女でありたくない

次のことばを待つのが

怖くて仕方ないじゃない