マザコンは男だけではない
物心ついたころから
私の母は昼夜に仕事を掛け持ち、働いていました。
でも本当は、専業主婦として家事や育児に勤しみ
丁寧に暮らしたかったのではないかと思います。
ありがたいことに、どんなに忙しい最中でも
「向き合うこと」に手抜きをされた記憶がありません。
子どものころ、眠る前によく本を読んでくれました。
「いやいやえん」は童話のお手本のよう。
大人になってからも何度となく手にとりましたが、
時代が変わっても色あせず、読み手の心を捉えます。

「猫は生きている」。
いざ眠ろうとする枕元で聴くには
怖い夢になって出てきそうなぐらい、悲しい物語です。
東京大空襲の戦火から逃れきれずに
家族が一人、また一人と離れ離れになっていきます。
壮絶なストーリーとともに記憶に残っているのは
朗読の途中で泣き出した母のこと。
「だいじょうぶ?」「だいじょうぶ、ごめんね。」
豆電球でぼんやりとオレンジがかった闇。
なかなか眠れないときは
川の字になった姉のパジャマをこっそりつかんでいました。
あったかい毛布にくるまって
安心して「おやすみ」と言える幸せを抱きしめていたころ。
いつしか「物書きになりたい」と思うようになったのは
母や家族のお話を、何かしらの形で
記しておきたかったから・・・なのかもしれません。