天国からの１週間バックナンバーあの日のこと①～運命の１日～
あの日のこと②～陣痛室での告知～
あの日のこと③～出産～
あの日のこと④～非現実と現実の堺～
あの日のこと⑤～原因追究～
あの日のこと⑥～初めての夜～
誕生死から２日目→こちら
誕生死から３日目→こちら
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誕生死から７日目→執筆中。
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2012.09.14 娘が天使になって３日目。
今日はパパとママの付き合った記念日。３年９ヶ月記念日の日でもある。
今日はどーしても連れてあげたかった海にでかける日。
ママの大好きな海。
パパも泳げないけど好きになった海。
生まれたら３人で行くのが夢だった。
娘のドライアイスの保存状態を考え、３日くらいで限界とみられていたので、
とにかく早く連れて行きたかった。
朝６時。いつもピクニックが好きな私は、
家族のためにお弁当を作ろうとはりきりだした。
こんなに楽しみになってルンルンになったのは久しぶり。
旦那さんと娘・彩衣里（あいり）の為に作りたいって思ったらすごい心のパワーがみなぎってきたのだ。
こんなに悲しいのにこのパワーはどっから出てくるんだと自分でびっくりした。
さすが、家族への愛、好きな人の為に何かしてあげたいという女性（ママ）の心からの心情なのだろうか。
が、、、。ビックリな事に、
手がおぼつかない。体がうまく動かない。手が言うこときかない。
頭では分かってるのに、ただのおにぎりなのに、
ただご飯をよそってラップで丸めただけなのに、全然うまくいかない。
これが産後３日目の体なのか。
よろよろの体、立つのがやっとな体をムリに使ってるってこのことか。
おにぎりが、まるでヘタクソ。
そんなよろよろで疲れ切ってる子宮をもつ体はこんなにも体に出るんだと実感した。
こんな自分にも悲しくなった。
卵焼きくらい作れるかと思ったが、すぐに諦められた。
おにぎりの海苔も考える余裕もなかった。
ゴマをまぜたご飯に昆布と梅つっこんだだけのおにぎりで１時間かかってしまった。
レンタカーを借りてマンションの下につけてくれたパパ。
平日の午前８時。学校に行く小学生、会社に行く人や、マンションの掃除のおばちゃん等人目を気にしながら白い布をかぶせた棺（ひつぎ）をかついで外に出る。
エレベーターも他の人とかぶりそうになったので先に行って下さいと避けた。
午前８時半。少し遅くなってしまったが出発。
世間は９月といっても残暑が厳しい日だった。朝でさえ３０℃近くの猛暑。
そして車内の室温を１８℃に設定。
私は産後の体を冷やさないためにもセーター、真冬のコートを身にまとい、ひざ掛け、もこもこ靴下、ムートンで防寒をした。
棺にもシートベルトをしっかりしめて、車内の日差しもママの日傘でさえぎり
彩衣里（あいり）が少しでも状態がいいように努めた。
行先は未定。一番近くて早く着く海ならどこでもいい。
理想のロケーションは海が目の前で砂浜に車を置けるところ。
１番近いというと湘南・茅ヶ崎近辺だが、思い当たるとこやネットで調べたがどこもそんなとこがなく、とりあえず車を走らせた。
以前、義父がたまたま買ってくれた室内温度計。
これが今回こんなに役に立ったのは感謝している。
デジタルで温度と湿度とニコちゃんマークみたいなのが表示されるのだが、
適温の良い悪いがニコちゃん動くようになっていて
ずーーとムスッとしてたデジタルニコちゃんが彩衣里（あいり）が初めて我が家に着た時、初めて笑ったのだ。（本当にスゴイ）
車内で１５．８℃。湿度６４％。→ニコちゃん怒ってる
１６．７℃。湿度５９％。→やや笑顔
２１．０℃。湿度６７％。→ニコニコ笑顔
昼に近づくにつれて車内の温度も上がっていくのだが、このくらいがちょうどいいといってくれてるのだろうか。
白い布に覆われた棺で顔が見えない分、このニコちゃんの表情が彩衣里（あいり）に見えて嬉しかった。
「パパ～。彩衣里が笑ってるよ～♪嬉しいって～（＾＾）」
なんて言いながら海へと向かった。
午前１０時半。なんだかんだ平日の朝の渋滞にまきこまれ遅くなってしまったが
ここでも彩衣里（あいり）パワー炸裂。
湘南近辺は砂浜に車が入れる海岸なんてないのに、たまたま車を走らせ茅ヶ崎方面まで流され、なんとなく入った行ったことない横道を流れるまま進んでいくと、
そこになんと、たまたま砂浜に車をつけれる海岸に着いたのだ！！
しかも９月だからなのか無料で解放されていて、ひと気（け）もまったくない。
なんて場所だ！！
すごい！！うちらが全く知らないところ。
「彩衣里（あいり）が連れてきてくれたんだね！ありがとう、あいり！！」
温度計の彩衣里（あいりに見たてたニコちゃん）は笑っている
ニコニコ～ギンギラギンに照りつける太陽。ありがた迷惑なほど暑すぎる快晴。
いったん外に出て厚いコートを脱ぎすて今度は半袖になる私。
パパは泣きながら棺から彩衣里（あいり）を取り出す。
「あいり～。やっと海についたよ～。ママの好きな海みせてあげたかったんだよ～」っていいながら、時間がたって少し紫がかった顔の彩衣里（あいり）を抱き上げた。
外の風は熱風。温かい白い砂浜。全部の行動を急いだ。
パパと抱っこしてる写真を撮った。まるで眩しいよ～といってるような顔していた。
ママと抱っこして２ショット。海とママとあいりの写真数枚撮った。
「ママに抱かれてると彩衣里（あいり）は喜んで見えるよ」とパパは言ってくれた。
が、しかし、産後３日にしても現実が受け止められない私はまだ娘を直視できないでいた。
この時初めて顔を思いっきり近づけたが、顔をつけていいのかいけないのか悩んでしまった。自分の娘なのにおかしい悩み。
チューも怖くてできなかった。おでこにちょっとかするぐらいつけたかつけてないかぐらいの写真になった。でも目はつむり、直視できない現実。抱いている実感。
存在する、彩衣里（あいり）。わからない。必死すぎて涙も出ない。
そして時間は、もうこれ以上私たちのワガママを許してくれない。
冷えきった車内のドライアイスの棺に娘を戻す。なんだか安心してしまう私達。
付き合った記念日でもあるので海をバックに夫婦の写真も撮った。
いつもの記念日よりなんだか悲しそうな写真になってしまったのはあとの現像で気付いたのはいうまでもない。
車内に戻ったところで３人でお弁当にしましょう～♪
海を見ながら、車の中だけど、パパとママと彩衣里（あいり）と３人で
手作りお弁当（ヘタクソなにぎり飯だけど）、小さい５００円玉くらいのおにぎりも彩衣里の分もデジタルニコちゃんの前に置いて３人で食べた。
「いただきます～！彩衣里、美味しいね～。ママが作ってくれたんだよ～」って
パパは泣きながら食べ続けた。
パパは私がどんだけ楽しみにしてたかも知っていたし、夢が実現できて、生きて夢は実現できなかったことに悔しくていたたまれなくてすごく泣いていた。
私は、そんなパパを見てごめんねと思っていた。
彩衣里（あいり）を見て幸せに思ってしまう私。なんだか夢のよう。
まだ産後で気持ちのバランスもとれてないようだ。
滞在時間はたったの１時間。午前１１時半。
夢は叶った。もう帰ろう。暑さに逃げるようにして海をあとにする。
車中、疲れて途中で寝てしまった。あいりとお昼寝。
家に帰る前に、あいりの誕生お祝いのケーキを買おうということに。
出産当日に病室でコンビニで買った小さいケーキでお祝いはしたが、
ちゃんとした大きいケーキで我が家でパーティーしたいという私のワガママにみんなつきあってくれた。
デパートに着き、日陰の駐車場に車を止めた。
家族連れが多いのと体を気遣ってくれたパパは、ここで待っててと買ってきてくれようとしたが、どうしてもケーキは私が選んであげたいと思って、体をムリに動かしケーキを買いに行った。
妊娠中いつも行っていたデパート。駐車場からこんなにも売り場がこんなに遠くて辛いとは思わなかった。
可愛いクマさんのケーキに、パパとママと子供の形をした砂糖菓子を付け、
「０」(0歳)というろうそくに「誕生日おめでとう彩衣里（あいり）ちゃん」の
ネームプレートもつけてもらった。
たくさんの花束と寂しくないようにリスさんの形をした観葉植物も買ってあげた。
写真やさんにも寄って３日分の写真とさっき行ったばっかりの海でとった家族の写真をすぐに現像した。
１時間半もかかってしまった。歩くのにも一苦労なのに大荷物にもなってしまったが、彩衣里（あいり）の為にって思う気持ちが強すぎて時間と自分の体力なんか忘れていた。
心配してパパは何度も電話してくれたが、その時私は車に戻ることもできないでいた。
自分でもびっくりしたが、さっきまで喜んで元気だった体と心が衰え、
体が震え、脳がパニックになり来た道が分からなくなり不安にかられていた。
まるでボケてしまったおばあさんのように、インフォメーション案内所で駐車場の場所を聞く。
体は動かない、場所がわからない、荷物が重くて疲れた、泣きそう、子宮が痛くてもう歩けない、
もうイヤになってしまって途中で泣いた。
駐車場で待っていたパパは駆け寄って心配して抱きしめてくれた。
大泣きする私。何がなんだかわかんないけど、パパと車の娘に会えてホッとした。
情けないママだ。ごめんね。遅くなって。
帰ろう。おうちに。。。
結局帰ったのは午後３時前になってしまっていた。
家には、待っていた葬儀屋の人と義父母が待っていた。
疲れきっていた私はやっと部屋に戻りベットで横になって休んだ。
彩衣里（あいり）も長い時間、お疲れ様ね、と所定の位置のソファに戻ってこれた。
葬儀屋の方は、毎日ドライアイスを交換してくれている。
今日の海に連れて行くことも伝えていたので保存状態を確かめ、
このままなら火葬の日までもちそうだから一緒に居れるとのこと。
ホッと一安心。
火葬のやりとりを終えて、みんな帰っていった。
夜には家族でご飯とバースデーパーティ。
彩衣里（あいり）の為に買ってきた可愛いクマさんのケーキでお祝いだぁ～♪
おうちの電気を消して、ろうそくに火をつけて、
せーので、バースデーソングを大声で何度も歌ってあげた。
０歳の誕生おめでとう。
１歳は一緒にはお祝いできないのだと思うと悲しくなったが、
今精一杯できること、それは笑顔で一緒に過ごすこと。
写真でも動画でも一緒に過ごせるこの瞬間を残しておくこと。だった。
そしてついでに小さいケーキもこっそり買ったのを出した。
「彩衣里（あいり）、今日はパパとママの付き合った記念日でもあるんだよ～。パパとママが出会えたから彩衣里（あいり）がいるんだよ～。そして、彩衣里（あいり）がきてくれたからパパとママは結婚できたんだよ～。ありがとう。お誕生日おめでとうじゃなくてお誕生ありがとうだね」
と、みんなに感謝した。
どこにでもある家庭、家族だんらん、楽しい夜だった。
今日はたくさん思い出つくれたね。
彩衣里（あいり）も喜んでくれたかな？
疲れちゃったから寝よう。また明日ね♪
おやすみ、彩衣里（あいり）。
大好きだよ。
４日目に続く。。。
初めての方はこちらから。
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