ベン・バート伝説を語り尽くすSWユーチューバー | アディクトリポート

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ベン・バート伝説を語り尽くすSWユーチューバー

 

今回アップされたスターケースチャンネルも

Mayuさんがホストで私はノータッチなので、

 

2023/07/22

 

私は前回(ひたすら情報補完に努めるSWユーチューバー)に続いて、

この動画の情報・画像補完に努めます。

 


2023/07/19

 

お題はこの記事(ジェイミー・フッド伝説)に引き続き、

ベン・バート伝説

 

ベン・バートについて紐解くには、

段階を経なければならず、

まず第一弾は、『SWエピソード2 クローンの攻撃』IMAX版について。

 

この記事(エピソード2・IMAX版(その1)/SWとIMAX(中編)・2009年09月14日)と、

この記事(エピソード2・IMAX版〈その2〉/SWとIMAX(後編)・2009年09月15日)から、

編集再掲。

 

(前略)アメリカでは『エピソード2 クローンの攻撃』がIMAXになって、2002年の11月1日から公開されるという。


けっこういきなり決まった感じだった。

ここら辺の経緯については、当時のルーカスフィルム社マーケティング部門の副社長、ジム・ウォードに聞いたウェブインタビューが見つかったので、その訳文をここに掲載しよう。

ウォード

↑ジム・ウォードは2005年の『シスの復讐』の頃にはルーカスアーツの社長だったが、2008年2月1日までに、「一身上の都合」で退社している。

----『エピソード2 クローンの攻撃』の製作中から、IMAXでの公開を念頭に置いてたんですか?
「いいや、全然。2002年の7月に急浮上してきた話だから。IMAXの関係者がやってきて、『新しいDMRという処理方法がありまして、それを〈アポロ13〉(1995)に応用してる真っ最中ですけど、同じことを〈エピソード2〉でやってみる気はないですか?』って訊かれたのさ。
だからこっちからも訊き返したよ。『そのDMRとかいう処理法を、デジタル映画でやってみたことはあるのかい』ってね。当然向こうは未経験だった。だからなおさら、テストさせてくれたら結果を示してご覧に入れますと言われた。そこで任せてみて、8月の半ば頃に再集合になって、結果を見たら行けそうだったんで、そのまま最後まで仕上げてもらうことにした」

----そうなると、公開中の作品から短縮版のIMAX版まで、ずいぶんと駆け足で進んだ企画だったんですね。
「全くその通り(笑)。なかなかあわただしかったよ。8月半ばのテスト結果に基づいて本格的に着手。上映限界の2時間に作品を縮めて、11月1日公開に間に合うように2ヶ月でDMR処理をやり抜いたんだから」
----ILMは再デジタル処理でIMAXに変換するに際して、指導や助言にあたったんでしょうか?
「まず最初のテスト段階があって、進行状況に合わせたチェック期間が設けられて、それで次が最終版という段取りだった。だからILMは非常に密接に関わっていたよ」
----秒24フレーム上映で、大画面のIMAXで上映した際に生じる不都合は気にならなかったんですか?
「いや、これは他のどんな映画でも同じだと思うけど、まずは大画面でどう見えるかが一番の気がかりだったよ。秒24コマで上映できればフィルム粒子の問題はそれほど気にならないけど、逆にどれだけ画面が安定してくれるかの方が気になるからね。もう一つの気がかりは、イフェクツ(特撮・VFX)のアラが目立たないで済むかってことさ。つまり普通の映画館で普通の映画を観ている時の感覚が損なわれちゃいないかってことだね。その次に目をむけるのは、コントラストだとか色調だとかで、そういうことに途中過程で気を配る必要が出てくる」
----IMAX(大画面)化に際して、ILMがオリジナルの映像から変更したところはありますか?
「いいや、データファイルをIMAXのスタッフに渡して、彼らは総出でDMR処理の仕上がりが特上になるように取り組んだだけだよ」
----どうして『エピソード2』オリジナル版の画面比率の、2.4:1(正確には2.39:1)を、IMAX版では変えちゃったんですか?
「実を言えば、いろんな画面比率を検討したんだよ。で、結論として、1.81:1(訳注:該当するフォーマットサイズなし。ヨーロッパビスタが1.85:1。アメリカンビスタの16:9は、1.78:1程度)が、全体を通せば一番いい比率だろうって話に落ち着いた。『これなら一番画像を大きく映し出せるし、同時にトリミング作業にかかる手間も、最低限で済みそうだ』ってね」
↓代表的な画面比率。上からスタンダード、ヨーロッパスタンダード、アメリカビスタ、ヨーロッパビスタ、シネスコ。←ちょっと怪しいので信用しないように!
比率
----いかにもトリミング版だなあと思えるショットが、どの場面かでありますか?
「一応ガイドラインとして、テレビサイズ(トリミング版)のDVD(発売はアメリカ国内のみ)を使ったからね。観てからずいぶん経っちゃったんで、今この場では思い出せないな」


↓インタビュー内容と一致しないが、結局IMAXフィルム最大画角を生かす、スタンダード4:3比率で『エピソード2』は上映されました。くしくもフルスクリーン・パン&スキャン(日本で言うテレビサイズトリミング版)のDVDと同比率です。
フォーマット
スクリーン
----撮影監督のデビッド・タターソルは変換作業に立ち会いましたか?
「いいや、立ち会ってない」
----「彼はIMAX版は観たんでしょうか?」
「いや、そこまではボクも知らないんだ」
----「『エピソード3』のIMAX版もあると思われますか? それともトップシークレットで、教えてもらえませんかね」
「いやいや、別に秘密でも何でもないけど、まだうんと先の話だし、今回はあくまでも試験的なもんだしね。今回『エピソード2』のIMAX版の製作と公開に踏み切ったのは、絶好の機会でもあり、好企画だとも感じたからだよ。ファンへの恩返しみたいなもんかな、もう25年以上も共に歩み続けてきた強固なファンの支持基盤ってのがあるところに、IMAX側が提案を持ちかけてきたんで、もしもテスト作業がうまくいったら、ファンへのごほうびにできるんじゃないかって思ったんだよ。で、結局はまさにそのとおりになった。ファンはことあるごとに自分たちの夢や希望を語るものだから、ネットの会議室や何やらで、ふとだれかが、『SWをIMAXの大画面で観たらスゴイだろうな』なんて言い出しても不思議はない。で、実際にやってみて、なるほど狙い通りに仕上がったら、ファンにも得難い体験になるだろうと感じたわけだよ。それが実現に踏み切った最大の理由さ。今、公開2週目だけど興行は大成功で、思惑通りに運んだけど、『エピソード3』については、まだ何も決まってないんだよ」
----興行成績は?
「公開最初の週末だけで145万ドルから150万ドルを稼ぎ出した。1館の平均が2万5千ドルだから、スゴイ成績だよ」
----それはスゴイですね!
「全米58館でね。これは通常館で通常版の『エピソード2』を公開したのに匹敵する数字だし、『アポロ13』IMAX版の全館平均の2倍にあたる。公開第2週の週末でも130万ドルだから、前週からわずか2~3パーセントしか減っていない。これまた記録的だ。一番最近の週末でも91万ドルってことで、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』なんかの新作が一般劇場で公開されている状況でも、35パーセントしか落ち込んでないんだから大したもんだよ。
ハリポ

↑まだこの時点での『ハリー・ポッター(秘密の部屋)』はIMAXのことではない。
IMAX版があったのは、『アズカバンの囚人』(2004・6/4公開。141分)から。
『炎のゴブレット』(2005・11/18公開。150分)は品川のメルシャンIMAXシアターでも上映。

sina

えれれ

『不死鳥の騎士団』(2007・7/11公開。138分)は一部分20分ほどが3D上映。しかしこの時期、日本には実質上のIMAX劇場作品上映館がなかった。
最新作『謎のプリンス』(2009・7/29公開。154分)はデジタルIMAX館の109シネマズ3館(川崎・菖蒲・箕面)で公開。

まるきゅう

 

ってことで、成り行きには大いに満足してる。ファンもできばえに満足して、一様に興奮気味で劇場から出てくるしね」
----たしかにそのようですね。満足度をはかる出口調査を実施したりしましたか?
「いや、その手の調査はやらなかった。だけどまあ控えめに言っても、ファン主導のブームをオープニング週末の動員に転用できたと思う。しかしこれだけの動員を保ち続けるってなると、単にファンだけにアピールしたとか、彼らにお楽しみや再集結の場を提供したってだけでは片づけられないと思うよ」
----ここに来て様々な上映・再生形式の『エピソード2』がそろいましたね。35ミリのフィルム版、デジタルDLP上映版、IMAX版。VHSにDVDと。あなたはどの形式が観客にとってベストだと思われますか?
「これで決まりっていう、究極の『エピソード2』ってのはないと思うよ。なんと言ってもジョージ・ルーカスは映画作家なんだから、その流れから言えば、映画館でデジタル(DLP)上映を観るのが一番だとは思うけど。だけどそれを見逃してしまう人たちだっているから、だったらDVDが次の鑑賞手段だと思う。なぜかと言えば、鮮明なデジタル映像って言うのが、ジョージが観てもらいたいもののはずだから。というわけで選択肢はまあ、その二つがピークかな。IMAX版はたしかに見物ではあるけれど、『エピソード2』に一番最初に接する機会としてはふさわしくはない。言ってみればケーキの飾りみたいな位置づけだから」
----ジョージ・ルーカス本人は、IMAX版のできばえに満足してるんですか?
「ああ、そうだと思うよ。そうだとも(Yes, I think so. Yes.)
----公開は何週単位なのでしょうか。まだしばらくは上映されていますか。それともそろそろ上映終了なのでしょうか?
「それは劇場ごとに契約が違うんだ。だいたいは11月の1日から、今年(2002)いっぱいは上映される予定だよ」

 

2002年の11月1日から年末をめどに公開された『エピソード2 クローンの攻撃』IMAX版は、
クローン
評論家にもファンにも大好評だった。
高評価のポイントはだいたい共通しており、
*大音響と大画面の迫力
*冗漫だった通常版をタイトに刈り込んで、簡潔にまとまっている
*そのためにカットされたのが、SWに観客が期待しない、アナキンとパドメの恋愛のあれこれ
ーーーーといったところ。
あるレビューサイトの集計では、通常版の評価が6.7あたりなのに、IMAX版は8.3の高スコアだった。

IMAX版の監督は、通常版のジョージ・ルーカスではなく、

2作目

1996年にIMAX映画『スペシャル・エフェクト』を経験済みのベン・バート。

Special Effects(1996)

スペフェ

スペシャル・エフェクト』(日本公開1999/7/19)


バートといえば、旧三部作のサウンドデザイナーで、第1作でアカデミー賞を受賞している。
バート

興行的にも世評的にも、つまり〈対外的〉には成功だったIMAX版『エピソード2』ではあったが、ルーカスフィルム〈社内的〉には、まずかった。
『エピソード2』の物語の要(かなめ)として、ルーカスが苦心して紡(つむ)ぎ上げた恋愛の部分を、バートのIMAX版がごっそりそぎ落としてしまい、しかもそれが世間から圧倒的に支持されてしまったのだ。
面目をつぶされたルーカスは、バートを粛清することにした!

この仕打ちは、アメリカのSWファンやマニアなら知るところだが、日本には肝心のIMAX版が来ていないため事情がわからず、知らない人が大半である。

私だってルーカスの報復を知ったのは、2005年の『エピソード3 シスの復讐』公開少し前、C3(セレブレーション3)の会場だった。
コレクター仲間のダンカン・ジェンキンスに、彼なら当然観ているであろう3年前のIMAX版『クローンの攻撃』の感想を訊いてみた。
「通常版よりずっと良かったよ。尺的にはコンパクトにまとまっていて、だけど大画面にふさわしい見せ場はしっかり残ってたからね。でもその方が良かったと世間に評価されちゃったのに腹を立てたルーカスは、ベン・バートを冷遇したんだよ」

 

「ここらじ」では記憶違いでガス・ロペスの証言だったとしていたのでここで訂正。

 

そういわれると、『エピソード1』(1999)『エピソード2』(2002)のDVDや、公開前の公式サイトのウェブドキュメンタリーで露出の多かったベン・バートは、『3』ではすっかり引っ込んでしまい、編集には彼の名前より先に、新たにロジャー・バートンという編集者の名前がクレジットされていることが目についた。
『3』のクレジットにベン・バートが一応編集で名を連ねているのは、あくまでも対外的な言い訳でしかなく、それまでは撮影現場(イギリス、オーストラリア)に同行していたバートは、『3』ではスカイウォーカーランチに足止めを食らっている。

『エピソード1』『2』では、従来のサウンドデザインに加えて編集まで任せたベン・バートを、つまりルーカスが編集の手腕を買っていたからこそ連投させていたくせに、その手腕が自分より鮮やかだったというだけで、 『エピソード3』の編集から外すことにしたわけだ。

そこで『シスの復讐』(2005)日本公開に併せて来日したリック・マッカラムに、雑誌インタビューを機会に、「編集のベン・バートですけど……」と少し話題をふってみたが、マッカラムはまるではじめから答えを用意していたかのように、「ちゃんとクレジットに名前が出てるだろ」と、こちらの質問を遮った。

 

2005年10月6日の『シス』DVD発売記念の際の、リック・マッカラム(右)と、
ランチ
当時上級副社長だったジム・ウォード(左)

 

前回のジム・ウォードへのインタビューでも----
----ジョージ・ルーカス本人は、IMAX版のできばえに満足してるんですか?
「ああ、そうだと思うよ。そうだとも(Yes, I think so. Yes.)
----と、具体的なルーカスの反応が語られておらず、質問への若干の戸惑いが見て取れる。
ということは、すでにIMAX版の公開中に、ルーカスは不満を表明していたのであろう。

こうした経緯もあって、2005年の『シスの復讐』に合わせて刊行された「ザ・シネマズ・オブ・ジョージ・ルーカス」では、
ジョージ
IMAX版『クローンの攻撃』に関する記述は、以下のようになっている。
記事
2002年の秋に『クローンの攻撃』のIMAX版が公開された。
IMAXの観客席の高さは8階建てのビルに相当し、1万2千ワットの非圧縮サウンドの迫力で上映される。
この規模のスクリーンに通常の35ミリフィルムを映し出しても、粒子のザラザラ感ばかりが目立って、とうてい見られたものではなくなってしまう。そこでIMAX DMRという画像処理技術を用いて、リマスターが行われた。
このDMRでは35ミリフィルムをスキャンし、元の画像の情報量や画質を損なわずに、高画質化の画像処理を施してサイズを拡大する。
IMAXの映写機は重量が2トンを越えるもので、通常の映画であればフィルムを縦に送るところ、IMAXでは大判フィルムを水平方向に送る。フイルム送りのドラム部分やそれを支えるスタンドの部分は、これまたかなりの重量と大きさがあるため、上映時間(=かけられるフィルム全長)には限界があり、120分以上の作品は上映できない。
このため『クローンの攻撃』のIMAX版は、あらかじめ2時間以内に短縮編集されてからDMR処理に回された。
この画像変換には約14週間を要し、2002年の9月までには完成していた。
作品はIMAX映画の上映限界に迫り、全長58インチ(=147センチ?・原文のまま。58フィートなら17.68メートル。58マイルなら93.34キロメートル)に及ぶプリントの総重量は360ポンド(163.29キログラム)に達した。
このIMAX版『クローンの攻撃』は、全米の58館の専門館で2002年11月1日金曜日から公開され、公開最初の週末だけで143万5259ドルを稼ぎ出し、ファンからも評論家からも、おおむね好意的な評価を勝ち取った。その評価のポイントは、3年後の最終章にますます期待を高める、テンポの良い編集に集中していた。


この記事からは、いろいろなことが読み取れる。

*ベン・バートの名前が意図的に外されている。
しかしバートは、何も「ジョージのバージョンは、てんでなってないから俺が短く刈り込んでやる!」とイキがって、142分18秒(と、6本のSW映画の中でも最長)の通常版から23分もカットしたわけではなく、あくまでも2002年当時のIMAX上映の最大限界に納める必要があってやっただけのことであって、90分とか100分にまで縮めているわけではないのだから良心のある苦肉の編集だったと思う。
またIMAXという大画面映画で、SWというスペクタクル映画を上映するとあっては、観客が期待するのも当然VFX満載の戦争絵巻であって、それを全部盛り込むとなると、大画面で見る意味のない退屈な恋愛部分が犠牲になるのはやむを得ず、したがってベン・バートならずとも、「まともな」編集者であったら同じ方法を採ったはずである。

*それでもIMAX版の高い興行成績と高い評価は、さすがに認めざるを得ない。
クリエーターよりは商売人の傾向が強いルーカスにとって、作品の中身を突き詰めるよりも、採算を優先することは昔からあった。
1、2作目までのプロデューサー、ゲイリー・カーツと袂(たもと)を分かったのも、監督以上に中身にこだわるプロデューサーのおかげで、『帝国』の期日通りの公開が危ぶまれたからだ。
カーツの主張する部分を直したからといって、ルーカスにはそれが興行成績に差をもたらすとは思えなかった。
IMAX版『エピソード2』はまた、三部作の真ん中で中だるみ気味に終始した興行を後押しするカンフル剤にもなってくれた。
2002年と言えば前年に9・11があり、年頭にはイラク派兵と、アメリカの世相は戦争ムードに染まり始めた。
平和な時代の〈戦争ごっこ〉映画ならいざ知らず、物騒な時期に物騒な映画は敬遠されて、この年の夏の興行は9・11で失意の淵にあるNY市民やアメリカ国民に支持されて「スパイダーマン」こそが一番のヒットとなり(たしか4億5千万ドルくらい)、二番手の『クローンの攻撃』はその2/3の3億ドルまで、なかなか達せずに苦戦したままくすぶり気味で本興行を終え、しかたなくDVD商戦に舞台を移そうとしていた時期だった。
そんな時期、つまり『エピソード2』を見るだけならDVDのセルやレンタルでも済むという時期なのに、人々はIMAX版に押し寄せてくれて、しかも短縮版だったことに誰も文句を言わなかった!


つまりベン・バートは、興行面でも2002年のルーカスフィルムの救世主だったのだ。

そんな救世主さえ冷遇してしまうルーカス。

いったい彼には、仕事仲間への感謝の気持ちとか、共同作業者への才能への信頼というものがあるのだろうか。
それよりも嫉妬や報復、冷遇の気持ちが先立ってしまうところに、彼の「シス性」がよく表れている。

『エピソード1』(1999)で16年ぶりにシリーズを再開するにあたり、ルーカスは旧三部作を作ったスタッフにもう一度声がけをしている。
しかしデザイナーのジョー・ジョンストンにも、脚本のローレンス・キャスダンにも参加を断られている。
2人とも映画監督に立場を昇格させていたこともあるだろうが、いくら貢献しても利益は全部ルーカスのもの、という当たり前と言えば当たり前の事実も彼らを萎えさせ、拒絶に導く一因だったろう。

だから旧三部作の主要メンバーで新三部作にも続投したのは、
音楽のジョン・ウィリアムズ、
ILMのデニス・ミューレン(『3』には不参加)、
そしてサウンドデザインのベン・バートぐらいのものだった。

特に音楽と音響は、新三部作成功のかなめだった。

VFXのデジタル化で、映像は旧三部作とは大きく異なることになり、とりわけ「まともな」デザイナーに事欠いた新三部作は、技術的には高度でも、その芸術性で旧三部作に見劣りする恐れがあり、実際その通りになった。
そうすると見た目が大きく変わった新SWを、旧SWと同じ物語世界だと示す唯一の手がかりは音だけということになる。
逆に言えば、音まで旧三部作と変えてしまったら、それがSWだと示せるものが何もなくなってしまうことになる。

というわけで、散々酷評された『エピソード1』なのに、予告編の時点では世界中で熱狂的に支持されたのは、ジョン・ウィリアムズの音楽に負う部分が大きかった。

みんな『エピソード1』の陳腐なビジュアルに「あれえ?」と思いながらも----
カエル

↑あのー、リーアム・ニーソンの左側のカエルみたいなやつ、脇役ですよね?
まさかメインキャラじゃないですよね?

平和
↑これはアレですか、平和な未来の宇宙開発の様子ですか?
後ろのガスタンクみたいな宇宙基地から、平べったい宇宙船がどこかに発進してるんですよね?
スター・ウォーズにそぐわない、なんとものどかな絵づらだなあ。
俺が見たいのは、戦いなんだよ!

依田3
↑まさかこの不細工なのが、ヨーダじゃありませんよね?
でも声はヨーダだなあ。
だけどこんなのヨーダじゃねえよ!

----旧三部作の使い回しの音楽に「だまされて」、昔ながらのSWがもうすぐ帰ってくる!と思いこんでいた。

そしてまた、バートの音響の功績も欠かせなかった。

↓セブルバのポッドレーサーの
「グングングングングングングングングングングン……」とか。

セブ
↓サイズミックチャージ(輪切り爆弾?)の
「(一瞬の沈黙の後の)ビーーーーーーーーーーーーーン!」とか。

サイズ

現在IMAX版『エピソード2 クローンの攻撃』は、黒歴史もしくは「なかったこと」にされてしまい、IMAX社のページの「過去の作品」欄でも、グレー表示にされてしまっている。
依田2
依田

※2009年09月15日の時点

お次のブログ記事再掲は、

この記事(セレブレーション1日目/サイン会兼インタビュー2010年08月13日)より。

 

ベン・バート
ば0と
----サインに肩書きを加えていただけますか。スター・ウォーズ・サウンドマスターとかなんとか……
「(〈サウンドデザイン〉と記して)これがボクが名乗り続けている役職だからね」
----あなたの手がけたサウンドは、どれも鮮明で濁った感じがしませんが、どうやって個々の音を際立たせてるんですか? フィルタリングとかサンプリングの過程で、夾雑物を取り除いたりしてるんでしょうか?
「ふむ、答えるのに厄介な質問(タフ・クエスチョン)だな。フィルター処理はしてないよ。しいて秘訣を挙げるとすれば、手抜きをして複数の素材をまとめて録音したりしないことかな。どうせ最後には重ね合わせることになるけど、その時にあれもこれも混ざり合って、収拾がつかなくなっちゃうからね」

 

お次はこの記事(『ようこそ映画音響の世界へ』2020年10月29日)からの再録。

 

『ようこそ映画音響の世界へ』

2020/10/27 新宿シネマカリテ C-4

 

 

本作については、

まずは映★画太郎さんのブログ(2020年10月07日)で、

「ふうん、こんな映画があるとはね」

と認知はするも、

近場のシネコンにこのタイトルが挙がることはなく、

いつの間にか忘れていた。

 

すると

10/25にひさびさに、

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

「ようこそ映画音響の世界へ」映画音響の世界ってこんなに広いのだと知りました。面白い映画です。

で同じタイトルに再びふれて、

あらためてチェックすることに。

 

そしてようやく、

どうやら現在のところ、8/28から新宿の単館公開しかないと知る。

(今後順次全国展開予定・調査不足で、他館での上映もあるかも知れません

11/6からはアップリンク京都

 

上映館の新宿シネマカリテでも、

10/22で終映のはずが、

好評につき、29日まで1週間延長が決まりはしたが、

しかし午前中上映の1回きりと知り、

別の試写(『NETFLIX/世界征服の野望』)があった

2020/10/27 京橋の試写室

27日の火曜日にギリギリ駆け込み鑑賞。

 

ということは、

この記事公開の本日(10/29)の鑑賞を見逃せば、

関東首都圏での鑑賞機会も失われてしまうわけ。

 

くり返しますが、

調査不足で、他館での上映もあるかも知れません。

 

ならば卑屈な「私は観ましたよ」自慢はやめて、

他の誰にも書けない関連情報を記しておこう。

 

映画音響に革命をもたらしたのは、

コッポラ

ルーカス

スピルバーグ

がらみの人材だったから、

かつての私のように、

スター・ウォーズを取り巻くあれこれを追い続けていれば、

サウンドスタッフの何人かとは、直接対面の機会があった。

 

この映画で該当する人物は2人いて、

ビッグネームから言えばベン・バート。

 

会ったのは、

2010年のSWC5(スターウォーズ・セレブレーション5)

ぼっばあ

 

他でベン・バートがらみと言えば、

プリクエル三部作(『エピソード1/2/3』)ではサウンドデザイナーだけではなく、

編集にも参加しており

『エピソード2 クローンの攻撃』のIMAX版も編集を受け持った。

2002年の11月1日からアメリカ国内のIMAX館で公開。

依田

IMAX版『エピソード2』は、

なぜか現在は、「なかったこと」にされている。

 

通常版の長尺を、

フィルム式IMAX用に刈り込んだため、

アナキンとパドメのイチャイチャはごっそりカット。

全体に構成が引き締まり、

迫力の大画面と大音響で、

通常版より評価が高かった。

(日本未公開なため、未見です)

 

これをルーカスが怒り、

バートは『エピソード3 シスの復讐』での編集権を剥奪された。

 

——と、2005年に来日したガス・ロペスから聞いた。

※「ここらじ」でのガス・ロペスとダンカン・ジェンキンスの混同は、この時点で始まっていた。

こうした経緯を知っていると尚更、

『ようこそ映画音響の世界へ』の締めくくりは、

ベン・バートの独白なため、

いっそう感慨深かったよ。

…って、

そんなの世界中の観客の中で、

何人があてはまることか。

 

そうそう、ベン・バートで思い出すことと言ったら、

「カフーン」ですけど、

これまた、どれだけの人が、

「ああはいはい、あれね」と思い浮かぶことやら。

 

スター・ウォーズのキャラって、

英字綴りだけでは発音が日本人には推測不可能なものが多い。

 

そこで日本の送りだし側仲間うちには、

映画公開に先駈けて、

ルーカスフィルムから発音テープか音声データが送られてきているわけだが、

劇中に名称が台詞で登場しない場合、

音声データもあてずっぽうで、

あてにならないことが多々ある。

 

『エピソード2 クローンの攻撃』で、

ザム・ウェセルが放ち、

パドメの寝込みを襲った多足虫の名は、

「コウハン」となっている。

 

Kouhun=コウハン?

 

2002年に『エピソード2』のDVDアメリカ本国版の、

ベン・バートによるオーディオコメンタリーを聞いていたら、

「カフーン」という聞き慣れない言葉が出て来た。

 

それがまさか、

この虫のことだとは!

Kouhun=カフーン

 

今回のベン・バートについてのまとめは、これぐらいにしておきましょう。