エピソード2・IMAX版(その1)/SWとIMAX(中編) | アディクトリポート

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IMAXといえば教育映画で、上映時間はせいぜい40分と相場が決まっていたのには、それなりの理由がある。
通常の35ミリフィルムが4パーフォレーション(フィルムの送り穴4つ)のところ、IMAXは70ミリサイズで15パーフォレーションという規格で、フィルムもけたはずれに巨大なら、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-規格
フィルムを送るドラムマガジンも巨大、したがって映写室も通常映画よりも広くなければならない。
そうなると上映時間は40分がいいところ、それ以上はドラムよりもフィルムの束がはみ出てしまうので、物理的にムリだった。
40分で完結する映画となると、本格的な劇場映画ではなく、筋立てが単純で、教育関連施設に併設されたIMAX館で上映がふさわしい教育映画が一番……というより、それしかないと言うことになる。

しかし2000年に、ディズニーの「ファンタジア2000」(1999)が、新宿高島屋のタイムズスクエア内の東京アイマックスシアターで上映された時には、「あれ?」と思った。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ファン2000
上映時間は75分。
劇場映画としては短めでも、IMAXとしては長目だった。
通常の40分の倍近くもある!

どうなってんの?

今調べたら、本作はそもそもIMAX用に製作されたが、日本では上映館が少ないので、一般劇場で通常版が上映された。いわば「お下がり」をあてがわれたようなものである。
そうとは知らず、とりあえず2000年の夏休みに、シネマイクスピアリ(2000年7月開業)で、通常スクリーンサイズのデジタル上映版を観ていた。
これまた今知ったが、日本でも同2000年1月1日から全国4ヶ所で、先行独占限定ロードショーされていた。その4館とは----
*東京アイマックス・シアター(東京・タカシマヤタイムズスクエア12F)
*サントリー アイマックスシアター(大阪・天保山)
*パラマウント ユニバーサル シネマ11(札幌・ファクトリーサッポロ1条館内)
*穂高アイマックスシアター(長野)
……知らなかったよ。
とにかく、夏の一般劇場公開に合わせて、タカシマヤでも再上映されたのを観た。
さすがに画面はデカくて生々しかったが、デジタル上映と印象がそれほど変わらなかった。

IMAXの上映時間と施設については、わかりやすい解説がネットで見つかった。
以下はマックスウェル・クルーガーという人の、2007年3月15日のブログの〈無断〉転用である。
劇場はメリーランド・サイエンスセンターのIMAX館。

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-映写1
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-映写2
IMAXのロゴのあるのが映写機。彼方の青紫がスクリーン。映写機は空冷と水冷の併用。上部の巨大なパイプは空冷の排気用。
映写室に隣接したもう一つの部屋に巨大な装置があり、それはAC/DC変換器。他にもエアコンプレッサー兼クーラーがあって、空気をフィルムに吹き付けてレンズからの適切な距離を保ち、また二つのキセノン電球を冷やして寿命を長持ちさせる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-映写3
↑これが3D上映用のセッティング。新方式のセッティングで、右目用と左目用の上下ドラムがそれぞれ中央の2つのドラムに巻き取られるのでフィルムを巻き戻す必要がなく、傷みや劣化を最小限にとどめることができる。

↓こちらは20年前の開館当初からあった旧式の上映機で、3D上映には対応できず、上映後にフィルムを巻き戻す必要がある。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-映写6

↓上映準備中の映写技師。このときの上映作品は「ディープ・シー3D」

$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-上映準備

3D上映機は新しいとはいえ、いわゆる劇場用作品のIMAX版(=上映時間2時間前後)には対応していない。ドラムに収容できるフィルムの長さは60分が限界だからだ。
長編の上映には、より大型のドラムと、その重量を支えられる、もっと頑丈なスタンドが必要になる。
このシアターに装備された最大のドラムがこれ(↓)だが、上映時間は75分(『ファンタジア2000』と同尺)が限界だという。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-大型

映写室も広大なら、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-施設1
スクリーンも巨大。客席もたくさん。これがホントのIMAXだぜ!
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-施設2

というわけで、まあ75分まではIMAXでも上映できると2000年には知っていたが、2002年にアニメ『美女と野獣』のIMAX版上映が行われると聞いた時にはビックリした。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-美女アイマックス
通常版が上映時間1時間24分なのに、IMAX版は新場面が追加されて、1時間30分もあるのだ!
『ファンタジア2000』より15分も長い。
またまた「どうなってんの?」と思った。
『美女と野獣』IMAX版は見逃した。

そんなこんなしていたら、(これはアメリカだけとはいえ)『アポロ13』までIMAX版になると、ネットで知った。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-アポロ
実写映画のIMAX版? そもそも通常の35ミリで製作されたのに、それをどうやってIMAXに引き延ばすの?
上映時間はどうなるの?
謎が謎を呼んだ。
今調べたら、『アポロ13』の通常版は140分。
IMAX版は116分で、2時間にちょっと足りない。

またまたそんなこんなしてたら、アメリカでは『エピソード2 クローンの攻撃』がIMAXになって、2002年の11月1日から公開されるという。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-クローン

けっこういきなり決まった感じだった。

ここら辺の経緯については、当時のルーカスフィルム社マーケティング部門の副社長、ジム・ウォードに聞いたウェブインタビューが見つかったので、その訳文をここに掲載しよう。
(親切だなあ……)
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ウォード
↑ジム・ウォードは2005年の『シスの復讐』の頃にはルーカスアーツの社長だったが、2008年2月1日までに、「一身上の都合」で退社している。

----『エピソード2 クローンの攻撃』の製作中から、IMAXでの公開を念頭に置いてたんですか?
「いいや、全然。2002年の7月に急浮上してきた話だから。IMAXの関係者がやってきて、『新しいDMRという処理方法がありまして、それを〈アポロ13〉(1995)に応用してる真っ最中ですけど、同じことを〈エピソード2〉でやってみる気はないですか?』って訊かれたのさ。
だからこっちからも訊き返したよ。『そのDMRとかいう処理法を、デジタル映画でやってみたことはあるのかい』ってね。当然向こうは未経験だった。だからなおさら、テストさせてくれたら結果を示してご覧に入れますと言われた。そこで任せてみて、8月の半ば頃に再集合になって、結果を見たら行けそうだったんで、そのまま最後まで仕上げてもらうことにした」

----そうなると、公開中の作品から短縮版のIMAX版まで、ずいぶんと駆け足で進んだ企画だったんですね。
「全くその通り(笑)。なかなかあわただしかったよ。8月半ばのテスト結果に基づいて本格的に着手。上映限界の2時間に作品を縮めて、11月1日公開に間に合うように2ヶ月でDMR処理をやり抜いたんだから」
----ILMは再デジタル処理でIMAXに変換するに際して、指導や助言にあたったんでしょうか?
「まず最初のテスト段階があって、進行状況に合わせたチェック期間が設けられて、それで次が最終版という段取りだった。だからILMは非常に密接に関わっていたよ」
----秒24フレーム上映で、大画面のIMAXで上映した際に生じる不都合は気にならなかったんですか?
「いや、これは他のどんな映画でも同じだと思うけど、まずは大画面でどう見えるかが一番の気がかりだったよ。秒24コマで上映できればフィルム粒子の問題はそれほど気にならないけど、逆にどれだけ画面が安定してくれるかの方が気になるからね。もう一つの気がかりは、イフェクツ(特撮・VFX)のアラが目立たないで済むかってことさ。つまり普通の映画館で普通の映画を観ている時の感覚が損なわれちゃいないかってことだね。その次に目をむけるのは、コントラストだとか色調だとかで、そういうことに途中過程で気を配る必要が出てくる」
----IMAX(大画面)化に際して、ILMがオリジナルの映像から変更したところはありますか?
「いいや、データファイルをIMAXのスタッフに渡して、彼らは総出でDMR処理の仕上がりが特上になるように取り組んだだけだよ」
----どうして『エピソード2』オリジナル版の画面比率の、2.4:1(正確には2.39:1)を、IMAX版では変えちゃったんですか?
「実を言えば、いろんな画面比率を検討したんだよ。で、結論として、1.81:1(訳注:該当するフォーマットサイズなし。ヨーロッパビスタが1.85:1。アメリカンビスタの16:9は、1.78:1程度)が、全体を通せば一番いい比率だろうって話に落ち着いた。『これなら一番画像を大きく映し出せるし、同時にトリミング作業にかかる手間も、最低限で済みそうだ』ってね」
↓代表的な画面比率。上からスタンダード、ヨーロッパスタンダード、アメリカビスタ、ヨーロッパビスタ、シネスコ。←ちょっと怪しいので信用しないように!
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-比率
----いかにもトリミング版だなあと思えるショットが、どの場面かでありますか?
「一応ガイドラインとして、テレビサイズ(トリミング版)のDVD(発売はアメリカ国内のみ)を使ったからね。観てからずいぶん経っちゃったんで、今この場では思い出せないな」

↓インタビュー内容と一致しないが、結局IMAXフィルム最大画角を生かす、スタンダード4:3比率で『エピソード2』は上映されました。くしくもフルスクリーン・パン&スキャン(日本で言うテレビサイズトリミング版)のDVDと同比率です。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-フォーマット
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-スクリーン


----撮影監督のデビッド・タターソルは変換作業に立ち会いましたか?
「いいや、立ち会ってない」
----「彼はIMAX版は観たんでしょうか?」
「いや、そこまではボクも知らないんだ」
----「『エピソード3』のIMAX版もあると思われますか? それともトップシークレットで、教えてもらえませんかね」
「いやいや、別に秘密でも何でもないけど、まだうんと先の話だし、今回はあくまでも試験的なもんだしね。今回『エピソード2』のIMAX版の製作と公開に踏み切ったのは、絶好の機会でもあり、好企画だとも感じたからだよ。ファンへの恩返しみたいなもんかな、もう25年以上も共に歩み続けてきた強固なファンの支持基盤ってのがあるところに、IMAX側が提案を持ちかけてきたんで、もしもテスト作業がうまくいったら、ファンへのごほうびにできるんじゃないかって思ったんだよ。で、結局はまさにそのとおりになった。ファンはことあるごとに自分たちの夢や希望を語るものだから、ネットの会議室や何やらで、ふとだれかが、『SWをIMAXの大画面で観たらスゴイだろうな』なんて言い出しても不思議はない。で、実際にやってみて、なるほど狙い通りに仕上がったら、ファンにも得難い体験になるだろうと感じたわけだよ。それが実現に踏み切った最大の理由さ。今、公開2週目だけど、興行は大成功で、思惑通りに運んだけど、『エピソード3』については、まだ何も決まってないんだよ」
----興行成績は?
「公開最初の週末だけで145万ドルから150万ドルを稼ぎ出した。1館の平均が2万5千ドルだから、スゴイ成績だよ」
----それはスゴイですね!
「全米58館でね。これは通常館で通常版の『エピソード2』を公開したのに匹敵する数字だし、『アポロ13』IMAX版の全館平均の2倍にあたる。公開第2週の週末でも130万ドルだから、前週からわずか2~3パーセントしか減っていない。これまた記録的だ。一番最近の週末でも91万ドルってことで、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』なんかの新作が一般劇場で公開されている状況でも、35パーセントしか落ち込んでないんだから大したもんだよ。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ハリポ
↑まだこの時点での『ハリー・ポッター(秘密の部屋)』はIMAXのことではない。
IMAX版があったのは、『アズカバンの囚人』(2004・6/4公開。141分)から。
『炎のゴブレット』(2005・11/18公開。150分)は品川のメルシャンIMAXシアターでも上映。
『不死鳥の騎士団』(2007・7/11公開。138分)は一部分20分ほどが3D上映。しかしこの時期、日本には実質上のIMAX劇場作品上映館がなかった。
最新作『謎のプリンス』(2009・7/29公開。154分)はデジタルIMAX館の109シネマズ3館で公開。

ってことで、成り行きには大いに満足してる。ファンもできばえに満足して、一様に興奮気味で劇場から出てくるしね」

----たしかにそのようですね。満足度をはかる出口調査を実施したりしましたか?
「いや、その手の調査はやらなかった。だけどまあ控えめに言っても、ファン主導のブームをオープニング週末の動員に転用できたと思う。しかしこれだけの動員を保ち続けるってなると、単にファンだけにアピールしたとか、彼らにお楽しみや再集結の場を提供したってだけでは片付けられないと思うよ」
----ここに来て様々な上映・再生形式の『エピソード2』がそろいましたね。35ミリのフィルム版、デジタルDLP上映版、IMAX版。VHSにDVDと。あなたはどの形式が観客にとってベストだと思われますか?
「これで決まりっていう、究極の『エピソード2』ってのはないと思うよ。なんと言ってもジョージ・ルーカスは映画作家なんだから、その流れから言えば、映画館でデジタル(DLP)上映を観るのが一番だとは思うけど。だけどそれを見逃してしまう人たちだっているから、だったらDVDが次の鑑賞手段だと思う。なぜかと言えば、鮮明なデジタル映像って言うのが、ジョージが観てもらいたいもののはずだから。というわけで選択肢はまあ、その二つがピークかな。IMAX版はたしかに見物ではあるけれど、『エピソード2』に一番最初に接する機会としてはふさわしくはない。言ってみればケーキの飾りみたいな位置づけだから」
----ジョージ・ルーカス本人は、IMAX版のできばえに満足してるんですか?
「ああ、そうだと思うよ。そうだとも(Yes, I think so. Yes.)
----公開は何週単位なのでしょうか。まだしばらくは上映されていますか。それともそろそろ上映終了なのでしょうか?
「それは劇場ごとに契約が違うんだ。だいたいは11月の1日から、今年(2002)いっぱいは上映される予定だよ」

長くなったので、このインタビューの分析や説明はこの次に。

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