エピソード2・IMAX版〈その2〉/SWとIMAX(後編) | アディクトリポート

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本題に入る前に、前々回の補足。
SWインサイダーの該当号が手元になかったが、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-インサイダー
同時期のトップス社のSWギャラクシーマガジンで、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ギャラ
とりあえず代用できた。

前々回のブログを直しても、きっと誰も見直さないので、ここで紹介します。

まずはIMAX版『スペシャル・エフェクト』(1996)で再現した、有名な『スター・ウォーズ』(1977・エピソード4 新たなる希望)の冒頭シーン。
(右下の文字は、元の記事にあったものなので、ご了承ください)
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-全景

比較のために、オリジナルの同じ場面。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-全2

対比できるように、二つを縦に並べたもの。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-合体4
IMAXの正方形に近い画面に合わせて、スター・デストロイヤーの進入角度(傾斜?)が急になっているのがわかる。

ついでなんで、前に載せたものも再掲載。

まずはIMAX版。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-アイマックス

次にオリジナル。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-原点

最後に比較のために縦に並べたもの。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-合体
『スペシャル・エフェクト』では、オリジナルの『スター・ウォーズ』の画像を損なわず、さらに上下の画面を付け加えているのがわかり、これは2002年の『クローンの攻撃』IMAXの、左右をカットするトリミング(パン&スキャン)とは逆の方向だというのがわかる。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-スクリーン

ご満足いただけましたでしょうか?

ようやく、『クローンの攻撃』IMAX版に話がつながったところで、前回の続き。

2002年の11月1日から年末をめどに公開された『エピソード2 クローンの攻撃』IMAX版は、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-クローン

評論家にもファンにも大好評だった。
高評価のポイントはだいたい共通しており、
*大音響と大画面の迫力
*冗漫だった通常版をタイトに刈り込んで、簡潔にまとまっている
*そのためにカットされたのが、SWに観客が期待しない、アナキンとパドメの恋愛のあれこれ
ーーーーといったところ。
あるレビューサイトの集計では、通常版の評価が6.7あたりなのに、IMAX版は8.3の高スコアだった。

IMAX版の監督は、通常版のジョージ・ルーカスではなく、1996年にIMAX映画『スペシャル・エフェクト』を経験済みのベン・バート。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-2作目

バートといえば、旧三部作のサウンドデザイナーで、第1作でアカデミー賞を受賞している。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-バート

興行的にも世評的にも、つまり〈対外的〉には成功だったIMAX版『エピソード2』ではあったが、ルーカスフィルム〈社内的〉には、まずかった。
『エピソード2』の物語の要(かなめ)として、ルーカスが苦心して紡(つむ)ぎ上げた恋愛の部分を、バートのIMAX版がごっそりそぎ落としてしまい、しかもそれが世間から圧倒的に支持されてしまったのだ。
面目をつぶされたルーカスは、バートを粛清することにした!

この仕打ちは、アメリカのSWファンやマニアなら知るところだが、日本には肝心のIMAX版が来ていないため事情がわからず、知らない人が大半である。

私だってルーカスの報復を知ったのは、2005年の『エピソード3 シスの復讐』公開少し前、C3(セレブレーション3)の会場だった。
コレクター仲間のダンカン・ジェンキンスに、彼なら当然観ているであろう3年前のIMAX版『クローンの攻撃』の感想を訊いてみた。
「通常版よりずっと良かったよ。尺的にはコンパクトにまとまっていて、だけど大画面にふさわしい見せ場はしっかり残ってたからね。でもその方が良かったと世間に評価されちゃったのに腹を立てたルーカスは、ベン・バートを冷遇したんだよ」

そういわれると、『エピソード1』(1999)『エピソード2』(2002)のDVDや、公開前の公式サイトのウェブドキュメンタリーで露出の多かったベン・バートは、『3』ではすっかり引っ込んでしまい、編集には彼の名前より先に、新たにロジャー・バートンという編集者の名前がクレジットされていることが目についた。
『3』のクレジットにベン・バートが一応編集で名を連ねているのは、あくまでも対外的な言い訳でしかなく、それまでは撮影現場(イギリス、オーストラリア)に同行していたバートは、『3』ではスカイウォーカーランチに足止めを食らっている。

『エピソード1』『2』では、従来のサウンドデザインに加えて編集まで任せたベン・バートを、つまりルーカスが編集の手腕を買っていたからこそ連投させていたくせに、その手腕が自分より鮮やかだったというだけで、 『エピソード3』の編集から外すことにしたわけだ。

そこで『シスの復讐』(2005)日本公開に併せて来日したリック・マッカラムに、雑誌インタビューを機会に、「編集のベン・バートですけど……」と少し話題をふってみたが、マッカラムはまるではじめから答えを用意していたかのように、「ちゃんとクレジットに名前が出てるだろ」と、こちらの質問を遮った。
↓2005年10月6日の『シス』DVD発売記念の際の、リック・マッカラム(右)↑と、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ランチ
当時上級副社長だったジム・ウォード(左)↓


前回のジム・ウォードへのインタビューでも----
----ジョージ・ルーカス本人は、IMAX版のできばえに満足してるんですか?
「ああ、そうだと思うよ。そうだとも(Yes, I think so. Yes.)
----と、具体的なルーカスの反応が語られておらず、質問への若干の戸惑いが見て取れる。
ということは、すでにIMAX版の公開中に、ルーカスは不満を表明していたのであろう。

こうした経緯もあって、2005年の『シスの復讐』に合わせて刊行された「ザ・シネマズ・オブ・ジョージ・ルーカス」では、
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ジョージ
IMAX版『クローンの攻撃』に関する記述は、以下のようになっている。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-記事
2002年の秋に『クローンの攻撃』のIMAX版が公開された。
IMAXの観客席の高さは8階建てのビルに相当し、1万2千ワットの非圧縮サウンドの迫力で上映される。
この規模のスクリーンに通常の35ミリフィルムを映し出しても、粒子のザラザラ感ばかりが目立って、とうてい見られたものではなくなってしまう。そこでIMAX DMRという画像処理技術を用いて、リマスターが行われた。
このDMRでは35ミリフィルムをスキャンし、元の画像の情報量や画質を損なわずに、高画質化の画像処理を施してサイズを拡大する。
IMAXの映写機は重量が2トンを越えるもので、通常の映画であればフィルムを縦に送るところ、IMAXでは大判フィルムを水平方向に送る。フイルム送りのドラム部分やそれを支えるスタンドの部分は、これまたかなりの重量と大きさがあるため、上映時間(=かけられるフィルム全長)には限界があり、120分以上の作品は上映できない。
このため『クローンの攻撃』のIMAX版は、あらかじめ2時間以内に短縮編集されてから、DMR処理に回された。
この画像変換には約14週間を要し、2002年の9月までには完成していた。
作品はIMAX映画の上映限界に迫り、全長58インチ(=147センチ?・原文のまま。58フィートなら17.68メートル。58マイルなら93.34キロメートル)に及ぶプリントの総重量は360ポンド(163.29キログラム)に達した。
このIMAX版『クローンの攻撃』は、全米の58館の専門館で2002年11月1日金曜日から公開され、公開最初の週末だけで、143万5259ドルを稼ぎ出し、ファンからも評論家からも、おおむね好意的な評価を勝ち取った。その評価のポイントは、3年後の最終章にますます期待を高める、テンポの良い編集に集中していた。


この記事からは、いろいろなことが読み取れる。

*ベン・バートの名前が、意図的に外されている。
しかしバートは、何も「ジョージのバージョンは、てんでなってないから、俺が短く刈り込んでやる!」とイキがって、142分18秒(と、6本のSW映画の中でも最長)の通常版から、23分もカットしたわけではなく、あくまでも2002年当時のIMAX上映の最大限界に納める必要があってやっただけのことであって、90分とか100分にまで縮めているわけではないのだから、良心のある苦肉の編集だったと思う。
またIMAXという大画面映画で、SWというスペクタクル映画を上映するとあっては、観客が期待するのも当然VFX満載の戦争絵巻であって、それを全部盛り込むとなると、大画面で見る意味のない退屈な恋愛部分が犠牲になるのはやむを得ず、したがってベン・バートならずとも、「まともな」編集者であったら同じ方法を採ったはずである。

*それでもIMAX版の高い興行成績と高い評価は、さすがに認めざるを得ない。
クリエーターよりは商売人の傾向が強いルーカスにとって、作品の中身を突き詰めるよりも、採算を優先することは昔からあった。
1、2作目までのプロデューサー、ゲイリー・カーツと袂(たもと)を分かったのも、監督以上に中身にこだわるプロデューサーのおかげで、『帝国』の期日通りの公開が危ぶまれたからだ。
カーツの主張する部分を直したからといって、ルーカスにはそれが興行成績に差をもたらすとは思えなかった。
IMAX版『エピソード2』はまた、三部作の真ん中で中だるみ気味に終始した興行を、後押しするカンフル剤にもなってくれた。
2002年と言えば前年に9・11があり、年頭にはイラク派兵と、アメリカの世相は戦争ムードに染まり始めた。
平和な時代の〈戦争ごっこ〉映画ならいざ知らず、物騒な時期に物騒な映画は敬遠されて、この年の夏の興行は、9・11で失意の淵にあるNY市民やアメリカ国民に支持されて、「スパイダーマン」こそが一番のヒットとなり(たしか4億5千万ドルくらい)、二番手の『クローンの攻撃』は、その2/3の3億ドルまで、なかなか達せずに苦戦したまま、くすぶり気味で本興行を終え、しかたなくDVD商戦に舞台を移そうとしていた時期だった。
そんな時期、つまり『エピソード2』を見るだけなら、DVDのセルやレンタルでも済むという時期なのに、人々はIMAX版に押し寄せてくれて、しかも短縮版だったことに誰も文句を言わなかった!


つまりベン・バートは、興行面でも2002年のルーカスフィルムの救世主だったのだ。

そんな救世主さえ冷遇してしまうルーカス。

いったい彼には、仕事仲間への感謝の気持ちとか、共同作業者への才能への信頼というものがあるのだろうか。
それよりも嫉妬や報復、冷遇の気持ちが先立ってしまうところに、彼の「シス性」がよく表れている。

『エピソード1』(1999)で16年ぶりにシリーズを再開するにあたり、ルーカスは旧三部作を作ったスタッフにもう一度声がけをしている。
しかしデザイナーのジョー・ジョンストンにも、脚本のローレンス・キャスダンにも参加を断られている。
2人とも映画監督に立場を昇格させていたこともあるだろうが、いくら貢献しても利益は全部ルーカスのもの、という当たり前と言えば当たり前の事実も彼らを萎えさせ、拒絶に導く一因だったろう。

だから旧三部作の主要メンバーで新三部作にも続投したのは、
音楽のジョン・ウィリアムズ、
ILMのデニス・ミューレン(『3』には不参加)、
そしてサウンドデザインのベン・バートぐらいのものだった。

特に音楽と音響は、新三部作成功のかなめだった。

VFXのデジタル化で、映像は旧三部作とは大きく異なることになり、とりわけ「まともな」デザイナーに事欠いた新三部作は、技術的には高度でも、その芸術性で旧三部作に見劣りする恐れがあり、実際その通りになった。
そうすると見た目が大きく変わった新SWを、旧SWと同じ物語世界だと示す唯一の手がかりは、音だけということになる。
逆に言えば、音まで旧三部作と変えてしまったら、それがSWだと示せるものが、何もなくなってしまうことになる。

というわけで、散々酷評された『エピソード1』なのに、予告編の時点では世界中で熱狂的に支持されたのは、ジョン・ウィリアムズの音楽に負う部分が大きかった。

みんな『エピソード1』の陳腐なビジュアルに「あれえ?」と思いながらも----
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-カエル
↑あのー、リーアム・ニーソンの左側のカエルみたいなやつ、脇役ですよね?
まさかメインキャラじゃないですよね?
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-平和
↑これはアレですか、平和な未来の宇宙開発の様子ですか?
後ろのガスタンクみたいな宇宙基地から、平べったい宇宙船がどこかに発進してるんですよね?
スター・ウォーズにそぐわない、なんとものどかな絵づらだなあ。
俺が見たいのは、戦いなんだよ!
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-依田3
↑まさかこの不細工なのが、ヨーダじゃありませんよね?
でも声はヨーダだなあ。
だけどこんなのヨーダじゃねえよ!

----旧三部作の使い回しの音楽に「だまされて」、昔ながらのSWが、もうすぐ帰ってくる!と思いこんでいた。

そしてまた、バートの音響の功績も欠かせなかった。
↓セブルバのポッドレーサーの
「グングングングングングングングングングングン……」とか。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-セブ
↓サイズミックチャージ(輪切り爆弾?)の
「(一瞬の沈黙の後の)ビーーーーーーーーーーーーーン!」とか。
$オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-サイズ


そういえばこのブログを始めた当初に、
「武田はルーカスフィルムに入れなかったことを逆恨みして、それまでの愛情が逆転して攻撃に転じている」と分析した名無しさん(笑)がいたようだが、それは違う。

今回書いたこと以外にも、まだまだ書いていないあれこれを把握した上でなお、それを救えると信じていたし、その能力はまだ他のことに使えると確信している。

だからゴミ匿名掲示板にさらっと書いて、「以上終わり」にしてしまえるようなもんではないんだよ!

自分の人生や生き方の問題だからね。

何もしないで済む方に桁揃えして、無責任に事態を中途半端に把握して、「はい、そういうこと」で終わりになんか、できないってことです。

っていうか、アレを書いたやつ! 
最近の俺の記事を読んでも、まだそんな短絡的で知った風な口をたたけるのかね?
というより、おまえいったい何様?(怒!)
じゃあ、君には何かしら、世の皆様に提供できるネタでもあんの?


と、ちょっと話がそれましたが~、現在IMAX版『エピソード2 クローンの攻撃』は、黒歴史もしくは「なかったこと」にされてしまい、IMAX社のページの「過去の作品」欄でも、グレー表示にされてしまっている。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-依田2
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-依田

これは来るべきSW全6作のDLP3D(=立体・飛び出す)上映の最上位バージョンに、IMAX版が予定されているためと思われる。(憶測ですので念のため)

そう思う根拠は、2008年に幕張でドルビーがデモをした、『エピソード2』の3D上映(2~3分程度)を見たのと、ずいぶん前からアナウンスされている、旧三部作のDLPでの3D上映のことがあり、またその発表会に同席していたキャメロンの12月公開の『アバター』に、IMAX3D版が用意されているからだ。

IMAXのその後については、「ダークナイト」鑑賞記に添えて書くことにします。

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