4月16日から配信開始された、
『McCartney Ⅲ IMAGINED』
様々なアーティストが、ポールの最新作『McCartneyⅢ』を"再構築"した楽曲が収録されています。
ベックがリミックスした「Find My Way」は以前ブログでご紹介しました
Find My Way - Paul McCartney & Beck
今回はアルバムを通して聴いた感想を曲順にサラッと記していきたいと思います
(基本ポールありきのアルバムなので、アーティスト表記はタッグ相手の名前のみとしています)
#1 Find My Way
&Beck
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オリジナル⬇️
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この曲については前述のとおり、単発でも記事にしたので少しだけ
オリジナルはポール特有の「陽」な感触ですが、ベックの浮遊感漂うリミックスにより若干「陰」な感触に変化するのが不思議。しかも、それがだんだん心地よくなってきます。
2人の世代は違えど、音で遊ぶという点では共通している気がします
#2 The Kiss Of Venus
&Dominic Fike
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オリジナル⬇️
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こちらは完全なるカバーです
歌うのは米フロリダ出身のSSW/ラッパーのドミニク・ファイク。1995年生まれの彼は、ギターをYouTubeで学び、自作曲をSound Cloudに投稿していたというんだからイマドキですよね〜。こういった若い世代がクロスオーバーするのはファンとしては嬉しい限りです。
シンプルなオリジナルに比べると、演奏や歌い方を大胆にアレンジしていますが、メロディの良さは失われず 高揚感あふれるモダンな仕上がりとなっています。
#3 Pretty Boys
&Khruanbin
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オリジナル⬇️
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Khruanbin(クルアンビン)は米ヒューストン出身のインストファンクトリオ。過去にはYMOの「Firecracker」をカバー、フジロックでトリを務めるなど日本でも注目が高まっています⤴️
今回のリミックスではポールのボーカルを最小限に切り取り、効果的に当てはめています。ほぼインストのような感覚で聴けるので、楽器の音が自然と耳に入ってきます。特にベースラインが良い
オリジナルよりだいぶ湿度を感じるアレンジで、もはや別の曲にも聴こえますが、私は好きです
#4 Women And Wives
&St. Vincent
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オリジナル⬇️
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ほのかに「While My Guitar Gently Weeps」を感じるリミックス。ベースラインからかな?ギターソロもフィーチャーされていますしね
セイント・ヴィンセントは米オクラホマ出身のSSW。グラミー賞を複数回受賞した実力派です。前出のベックも彼女のファンを公言しています。それにしても名前がカッコ良すぎる
時折入るブラスと、ヴィンセントのコーラスが独特の世界観を生み出しており、中盤のポールとの掛け合いもばっちりハマっています。
#5 Deep Down
&Blood Orange
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オリジナル⬇️
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ブラッド・オレンジは英ロンドン出身のSSW、プロデューサー。自身の作品だけでなく、ケミカルブラザーズとのコラボ、ソランジュ(ビヨンセの妹)やカイリー・ミノーグへの楽曲提供など多方面で活躍しています
今回のリミックスでは清涼感ある彼のボーカルから始まり、良い意味で楽曲に軽さを与えています。オリジナルではポールの新たな歌唱法を見た気がしたのですが、アレンジの妙によりさらにフレッシュになった印象です。
所々出てくる逆回転サウンドがなんともビートリー
#6 Seize The Day
&Phoebe Bridgers
オリジナル⬇️
フィービー・ブリジャーズは米カリフォルニア出身のSSW。昨年の2ndアルバムがグラミーの最優秀新人賞にノミネートされた注目株です
ビリー・アイリッシュに通ずるささやき系ボーカルの彼女。しかしながら、骨太のギターサウンド(おそらくオリジナルのものを加工)を合わせてきたり、ちょっと不穏な終わり方をするあたり、単なる癒し系で終わらない柔軟性が見えます
今作のアーティストは全てポールの人選ということですから、彼女のそういった側面を気に入ったのかもしれませんね。
オリジナル⬇️
EOBことエド・オブライエンはレディオヘッドのギタリスト。本作のプロデューサーであるポール・エプワースと共にリミックスを手がけています。
エドといえば、エフェクターを駆使したギターサウンドの魔術師。今回はあくまでオリジナルを下地にしながらも、塗り絵のように独自の色を付けています
ポールとはまた違う音像はまさにレディオヘッド。テンポを速め騒々しさと激しさを増したリミックスについて、エドは「『Helter Skelter』のようだ」と語っています。
#8 Long Tailed Winter Bird
&Damon Albarn
オリジナル⬇️
ブラーのフロントマン、デーモン・アルバーンによるリミックス。
デーモンといえば…ポールがカニエ・ウェストとコラボした際、「カニエには気をつけろ」とメールしたにも関わらず、無視されたというエピソードが思い出されます( ̄▽ ̄;)ただ、今回のタッグを見る限り、関係は良好そうですね
オリジナルはアコギの鋭いリフが印象的ですが、リミックスでは終盤にアクセントとして登場。全体的にエレクトロニカかつミステリアスな雰囲気をまとっています。
#9 Lavatory Lil
&Joshua Homme
オリジナル⬇️
ジョシュ・オムはQueen of the Stone Ageのギターボーカル。過去にはジョン・ポール・ジョーンズ(Led Zeppelin)とデイヴ・グロール(Foo Fighters)でThem Crooked Vulturesなるスーパーバンドを結成したり、イギー・ポップやArctic Monkeysのアルバムをプロデュースするなど多彩な活躍を見せています。
今回のカバーは、煙草に火をつける→煙を吐き出す、という面白いオープニング
🚬気だるい雰囲気そのままにセクシーなジョシュのボーカルが聴けます。 バックで鳴るギターがこれまたクール
#10 When Winter Comes
&Anderson .Paak
オリジナル⬇️
アンダーソン・パークは米カリフォルニア出身の歌手、プロデューサー。ポールと同じくマルチプレイヤーでもあります。グラミー賞は過去2度受賞、最近ではブルーノ・マーズとのユニット"Silk Sonic"で全米No.1ヒットを記録しています👑
そんなノリにノっている彼が担当したリミックス。テンポアップ&重低音を効かせることで、牧歌的なオリジナルを軽快なポップに変化させています。ポールのボーカルは92年録音なので、流石に若い
。 2021年の今、若手アーティストとしてポールが活動していたらこんな音になるのかなぁ、なんて妄想が膨らみます
#11 Deep Deep Feeling
&3D RDN
オリジナル⬇️
3D RDN(ロバート・デル・ナジャ)はMassive Attackの創設メンバー。今話題の覆面芸術家、バンクシーの正体ではないか?とも言われています
今回のリミックスは個人的にとても興味がありました。というのも、オリジナルは私のお気に入りで、且つ8分を超える長編。単純にどんな仕上がりになってるんだろう、と。
で、蓋を開けてみるとさらに3分延びた大長編(°▽°)しかも、『Mccartney Ⅱ』に収録された「Temporary Secretary」をサンプリングしています♬嬉しいサプライズであると共に、しっかり曲にハマっているんですよね。やはり作者が同じだと親和性が高いのか…。オリジナルは深い森に入っていき最後は抜けるようなイメージですが、リミックスはより混沌としており、結局抜け出せないまま…といった感覚に陥ります。
【あとがき】
ほぼポール1人で完成させた『McCartney Ⅲ』は、言うなれば自家農園で育てたオーガニック野菜。それらを様々なシェフが自分の好きなように料理したのが『McCartney Ⅲ IMAGINED』なんだ、と感じました。
最新機器を使ったムースもあれば、彩りを加えたサラダ、コトコト煮込んだスープもある。そのまま生で食べても美味しいけど、こんな食べ方もあるよ!と教えてくれた気がして また、参加アーティストの半数は20〜30代。若い世代にも"映(ば)える"ようなスタイルを提示し、オールドファンとの架け橋にもなることで、ポールの新たな可能性を広げたのではないでしょうか。
CDは7月23日発売予定