前回の記事の続きです。
離婚について発表したルイ大公子とテシー妃は、養育費や財産分与の金額をめぐって長期間の法廷闘争を繰り広げました。訴訟はロンドンで行われた為、イギリスとルクセンブルク両方のメディアが取り上げました。

裁判所を訪れたテシー妃

テシー妃は2017年1月にロンドンで離婚を申請し、離婚と別居についての発表から約1か月後の2月にDecree nisi(条件付き法令)が与えられました。 


公開された裁判所の文書は「離婚の判決を受ける資格があり、結婚は取り返しのつかないほど崩壊し、その原因は不合理な行動であることが証明された」ことを明らかにしました。

ルイ大公子とテシー妃の紹介としてネットの記事などで度々2017年に離婚と紹介されていますが、それは誤りであり、この時点では離婚は成立していません。



「8か月の分離の後、私たちは自分たちのバランスが取れて幸せであることに気づきます---チームとしては強いはずです。 私たちが一生統一された友情と信じられないほどの親子関係を大切にしている限り、人々は判断することができます。 ルイはとても素晴らしい人で、私はいつも彼を愛します。」2017年2月13日のテシー妃Instagram


イギリスでの離婚は基本的に裁判所の判決が必要であり、日本のように離婚届1枚では済みません。
Decree nisi(条件付き法令)とは、離婚をするための法的および手続き上の要件を満たしていると裁判所が納得したときに発布される暫定的な離婚判決です。Decree nisiの発布後も婚姻関係はまだ継続しており、離婚手続きは完了していません。 離婚を希望する人は、Decree nisiの判決が下されてから、少なくとも43日(6週間と1日)待ち、離婚を申請する必要があります。 その後、発布される Decree absolute(絶対法令)が、実際に結婚を解消する最終法令で、これが許可されると離婚が成立します。



2006年9月に結婚した2人の関係は、結婚10周年を祝う直前の2016年夏に崩壊したと言われています。離婚の原因とは??




2016年9月
左から長男ガブリエル公子、ルイ大公子、ノア公子



イギリスでは、下記のいずれかの理由により「結婚が取り返しのつかない程崩壊した」と認められれば、離婚することができます。
①姦通・不貞行為
②2年以上の逃亡 ・失踪
③不合理な行動 
④双方が合意する離婚かつ2年を超える別居
⑤一方が離婚を希望かつ5年を超える別居
ルイ大公子とテシー妃の離婚理由は③でした。

③不合理な行動 はイギリスでの離婚の最も一般的な理由であり、夫の36%と妻の51%がこれらの理由で離婚を申請しています。

「不合理な行動」を理由に離婚を申請するためには、一緒に暮らすことが耐えられないと感じるほど不合理な行動を相手方がとったことを示さなければなりません。


「不合理な行動」の例を法律事務所のホームページで調べてみました。
穏やかな例には
・一緒に社交することの欠如
・長時間働いて一緒に時間を過ごさない
・一方の配偶者がもう一方の配偶者に金銭的に頼っている
等が含まれます。

より深刻な申し立てには、身体的暴力、脅迫的な行動、過度の酩酊、または借金の増加が含まれることがあります。

 具体的な例として以下も紹介されていました。
 ・配偶者よりもペットと一緒に時間を過ごすことを好む
 ・夫婦間の問題について話すことを拒否する
 ・家事について一般的なサポートを提供しない
 ・長時間働き家庭を顧みない為、ストレスと孤独を感じる
 ・テレビゲームを長時間プレイし、配偶者を放っておく
 ・被告はビーガンになり、配偶者に自分の意見を押し付ける

 相手に対する不満があり、その内容を証明することができれば大抵の不満は「不合理な行動」に該当しそうです。
双方が離婚に合意していたとしても、2年の別居期間を待たなければならない為、離婚を急ぐ夫婦が何かと証明できる理由を挙げて「不合理な行動」として訴えるケースも多いようです。



2017年9月22日 Instagram
裁判は続いていますが子供の誕生日をルイ大公子と祝ったようです。「学校での誕生日のお祝い-ラウンド1❤️❤️❤️私の赤ちゃんは10歳です🦋❤️」



ルイ大公子とテシー妃の不和についてテシー妃の友人がメディアに語っています。
「テシーが勉強を始めた時、2人の関係は複雑になったと思います。テシーはフルタイムでの勉強、家事、2人の子供の世話、家族の行事…とても大変でした。彼女は時々大学を辞めたいと思いましたが辞めませんでした。彼女が最後まで勉強を続け、生物化学的テロに関する論文を書いたことを誇りに思います。
しかし、ルイ大公子は自身が何をしたいのかを理解するために1年を費やしました。彼は公人であるために就職先を探すのが難しいと感じたようです。」


ルイ大公子が仕事を見つけるのに苦労している間、テシー妃は慈善活動家としてのキャリアを築いていきました。ルクセンブルクとロンドンを中心に慈善イベントに積極的に参加し、若い女性のためのUNAIDS(国連エイズ合同計画)のグローバル・アドボケイト(国際支援者)を務めるなど活動の幅を広げていきました。



 「彼女は成長したと思います。 彼女はマスター(修士課程)を終えて仕事を得ました。 本当に一生懸命働いています。 それはすべて彼女との汗と血でした。 しかし、高エネルギーで活動的なあなたが家に帰って、夫が何もしていないことに気付いたとき、それはイライラするに違いありません。」
 「引火点は、ルイがベルギーで6か月のインターンシップを終えた後でしょう。  彼は非常に魅力的な特定の自由を見つけたと思います。」と友人は付け加えました。

 妻や子供と離れて暮らしたルイ大公子は「自由に外出して、楽しんで友達に会い、門限がなく、家に帰って好きな事をする時間ができました。 彼はまた子供だったと思います。」
19歳で第一子が誕生し、結婚、第二子誕生…と家庭を優先してきたルイ大公子にとって、家族と離れてベルギーで暮らした時間は久しぶりの自由な時間であり、おもいきり羽を伸ばしたことでしょう。

 「彼らはますます口論し、去ることを脅かし、最終的にテシーは法的手続きを扇動しました。 」

 「しかし、ルイ大公子は彼らがもう結婚生活をめぐって争うことはないだろうと非常に安心したと思います。
 彼は、友達に戻ることがどれほど素晴らしいかを妻に話しました。 彼は新たに見つけた自由を楽しんでいると思います。」




  

離婚裁判の際、ルイ大公子は有給の仕事がないので多額のお金を払うことができなかったが、仕事を探していると述べました。

裁判の詳細は公式には公開されていませんが、テシー妃は家族4人で住んでいたケンジントンの住まいに留まることを求めていると報じられる一方、夫の実家であるルクセンブルク公室の援助で、自身と2人の息子が暮らす新しい家を購入するための資金として150万ポンド(約2億1,133万円)を要求したとも言われています。









裁判所を訪れたテシー妃

いくつかのタブロイド紙はテシー妃を「ゴールドディガー(金採掘者・金の亡者のような意味だと思います)」と表現するなど、テシー妃を非難する報道が多かったようです。高等法院裁判長であるマクドナルド裁判官は「表現の自由の権利の合法的な行使であり、私が決定することは正式には重要ではありませんが、私が入手できる詳細な証拠に基づいて、私は妻テシー妃について評価します。 その悪性の特徴づけを使用することによって報道機関のいくつかのセクションで印象操作されたのは、不公平であり、不当である。」とテシー妃を擁護しました。


2018年9月 African Fashion week 2日目





2018年10月28日、33歳の誕生日を迎えたテシー妃はInstagramの投稿で、「厳しい年に別れを告げ、新しく刺激的な思い出を作ることを楽しみにしている」とコメントをしました。この時、離婚の申請および発表から1年9ヶ月が経過していました。


マクドナルド裁判官は、2018年10月にロンドンで行われた私的裁判での金銭に関する議論を分析し、12月に判決を下しました。
裁判官はルイ大公子の実家であるルクセンブルク公室に支払いを強制することはできないと判断しました。
ルイ大公子は2人の息子それぞれに年間3000ポンド(約422,900円)を支払うと申し出ていましたが、裁判官は4000ポンド(約563,700円)の支払いと「最年少の子供が最初の学位を終えるまで、ロンドンのかつての家族の家を占有する権利」を与えられると判決を下しました。

この判決に対して、2人の子供の母親であるテシー妃は「自身と子供たちのために家を求めているだけ」であると主張し、控訴を検討していることが報じられましたが、結局控訴はされませんでした。


一般的な養育費の相場を知りませんが、ロイヤルファミリーの離婚、Princeの称号を持つガブリエル公子とノア公子の養育費として一人あたり年間4000ポンド(約563,700円)は少ないように思います。
(ガブリエル公子とノア公子の学費と医療保険はアンリ大公とマリア=テレサ大公妃が支払いを申し出てたようです。)




裁判ではルイ大公子の財政状況が明かになりました。
ルイ大公子は両親から年間35,000ポンド(約4,935,000円)の手当てを受け取り、年間最大6回の休暇をとり、家族で海外旅行を楽しんでいました。宿泊費も実家の負担のようですが、ルイ大公子は飛行機の代金を自分で支払っていると主張しました。


2016年5月 スペイン マヨルカ島


ルイ大公子は別居後、家族が経営するパリの高級アパートに無料で住み、メイドとハウスキーパーによるサービスを受け、光熱費、通信費、健康保険等もアンリ大公とマリア=テレサ大公妃によって支払われていました。


テシー妃は別居前後のそういった生活を贅沢だと発言しましたが、ルイ大公子は控えめな生活を送っていると主張しました。10年間一緒に暮らしても金銭感覚は一致しないようです。育った環境が違いすぎます。
別居前後の贅沢な暮らしぶりを裁判で明かにして、養育費や財産分与の額を増やしたいテシー妃。対して実家であるルクセンブルク大公家の援助あっての生活であることを明かにして、自分の収入から支払う金額を抑えたいルイ大公子という構図のようです。



2016年8月マヨルカ島でのサマーパーティーに出席


ルイ大公子は以前に510,750ユーロ(約64,870,000円)の相続金を受け取り、将来さらに100万ユーロ(約1億2,700万円)を受けとる可能性があると言われています。
ルクセンブルク公室はルイ大公子の生活費の大部分を負担していますが、ルイ大公子はすぐに仕事を見つけることが期待されていると裁判で語りました。




ルイ大公子「私の家族の慣例と現在の期待は、HRH大公、法定相続人(大公世子)を除いて、他のメンバーは財政的に自給自足です。私は したがって、私自身の収入能力を開発し、私が完全に意図している私自身の手段に従って生きることが期待されています。」



2018年6月23日 ナショナルデーを祝う式典に出席したルイ大公子


 裁判官も「ルイ大公子の家族は彼が自由に頼ることができる財源ではなく、他の兄弟よりも彼を寛大に扱うつもりはない」
「ルイ大公子は、余裕ができ次第、この物件から自分で資金を提供する賃貸住宅に移動する意向を裁判所に表明した」と述べました。
ルイ大公子は方向性カウンセリングに焦点を当てたコンサルティングを設立しましたが、まだ十分な収入を得ていないと主張していました。




2019/03/11


離婚についての発表から2年以上が経過した2019年4月4日にDecree absolute(絶対法令)の判決が出され、ついに離婚の手続が完了しました。


離婚成立当日のテシー妃のコメント
 「私はde Nassauという名前を維持し、2019年9月1日から、Antony –de Nassauとして使用します。それまではタイトルを持っています。
 人生で最も困難な3年間で、人々とその本当の姿について多くのことを学び、安心しました。
ルイと私は子供たちに関してはとても親密です。 私たちは素晴らしいチームであり続けます。」



離婚が成立した翌日の2019年4月5日、ルクセンブルク公室は離婚後も同年の9月1日までテシー妃がPrincessの称号と殿下の敬称を維持し、それ以降は称号と敬称を失い、テシー・アンソニーが自身の姓にナッソーを追加してTessy Antony-de Nassau(テシー・アンソニー・ド・ナッソー)と名乗ることを通知するプレスリリースを公開しました。
Princessの称号と殿下の敬称は失いましたが、Nassau(ナッソー)の姓を使い続けることは公式に認められているようです。




左から次男ノア公子、テシー元妃、長男ガブリエル公子

ガブリエル公子とノア公子の親権はルイ大公子とテシー元妃が共同で持ち、ガブリエル公子とノア公子のPrinceの称号は変わらず維持されます。



金銭面の主張の相違はありましたが、ルイ大公子は裁判で「私たちは若くして結婚し、Princessとして多くのことが期待されていましたが、彼女は優雅に役割を果たしました。 彼女に感謝しています。」と語りました。




②で終わる予定でしたが、長くなりましたので近況は③に続きます。

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