今回は過去の記事の続報です。
※既に離婚が成立しているので、今回の記事からはハヤー王女と呼んでいます。


2019年6月にハヤー王女が子供を連れてドバイから逃れ、イギリスに亡命を求めたとニュースになりました。日本でも「強制結婚」からの保護を裁判所に求めているとネットの記事等で報道されました。離婚したいハヤー妃と強制的に婚姻関係を続けたいドバイ首長の離婚裁判だと思っていましたが、全く違う内容だったようです。




ドバイ首長ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム(シェイク・モハメド)はアラブ首長国連邦の副大統領と首相も兼任しており、エリザベス女王と親交があります。お名前が長いのでシェイク・モハメドと呼ばせていただきます。シェイク(シャイフ)はアラビア語で首長や長老、賢人を表す称号で、馬主としてはシェイク・モハメドと紹介されることが多いようです。


2009年のロイヤルアスコットではエリザベス女王、フィリップ殿下、アンドルー王子と馬車に乗りました。



2016年のロイヤルアスコットでエリザベス女王と握手をするシェイク・モハメドとハヤー王女



2019年2月7日、ドバイ首長シェイク・モハメドはハヤー王女に告知することなくシャリーア法の下で一方的に離婚しました。 ハヤー王女は、この日付について父親のヨルダン国王フセイン1世の死後20周年と一致しており、「自身への侮辱と動揺を最大化するために意図的に選ばれた」と主張しています。



4月15日、ハヤー王女は長女アル=ジャリーラと長男ザイードを連れてドバイからイギリスへ逃げました。
ハヤー王女のドバイからの逃亡は世界中でニュースとなり、イギリスの新聞「The Times」はドイツの外交官によってドイツへ護送されたと報じていました。また、シェイク・モハメドはアラビア語と英語で元妻を裏切り者と避難する詩をInstagramへ投稿しています。



5月14日、シェイク・モハメドはロンドンの高等裁判所で2人の子供をドバイに返還することを求める訴訟を提起しました。



ハヤー妃との子供達と遊ぶシェイク・モハメド。複数の妻との間に30人以上の子供がいると言われていますが、アル=ジャリーラ王女のことを溺愛しており、誕生日をドバイの祝日に定めているそうです。




5月22日には高等裁判所で最初の公聴会が開かれましたが、この時メディアは訴訟が起きていることさえ知らされていませんでした。



7月18日、裁判所の許可を得て、両当事者は次の声明を発表しました。 「これらの訴訟の当事者は、HHシェイク・モハメド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥームとHRHプリンセス・ハヤー・ビント・アルフセインです。 これらの手続きは、2人の子供の福祉に関係しており、離婚や財政には関係していません。」


7月30日、アル=ジャリーラ王女(12)への強制結婚保護命令とハヤー王女への非虐待命令の申請が承認されました。



2019年11月15日、弁護士のフィオナ・シャクルトンと裁判所を訪れるハヤー王女。フィオナ・シャクルトンについては過去の記事「ドバイ首長夫人・ヨルダン王女 ハヤー妃 離婚へ」で紹介しています。





裁判官は2019年12月と2020年1月に2つの判決を下しましたが、シェイク・モハメドによる控訴裁判所の異議申し立てが出るまで判決内容の公表は延期されました。
この時点まで公聴会は非公開で開催されていました。判決の公表は、判決の公表に異議を唱えるシェイク・モハメドによる控訴が控訴裁判所および英国最高裁判所で審理されるまで保留とされましたが、控訴は控訴裁判所によって満場一致で却下されました。


2020年2月28日、裁判所を訪れるハヤー妃。


2020年3月5日、最高裁判所は上訴の許可を拒否したことと以前のすべての判決内容について公表しました。


※裁判の流れについては要約しています。
記載した日付以外にも公聴会が複数開かれました。


2020年2月26日、裁判所を訪れるハヤー王女



最高裁判所は、シェイク・モハメドの指示により、他の妻との間の王女2人(シャムサ王女とラティーファ王女)が拉致され、強制的にドバイへ送還された事件についても認定し、ハヤー王女に対しては彼女がまだドバイにいた2019年前半から脅迫またはその他の方法で大きな恐怖を与えることを目的とした継続的な嫌がらせを実施したことを認定しました。 また、2人の子供(アル=ジャリーラとザイード)について、母であるハヤー王女の意思に反して強制的にドバイへ誘拐される危険性も認定しました。


ハヤー王女、アル=ジャリーラ王女、シェイク・モハメド(2018年)


この離婚騒動の発端ですが、訴訟内容について声明が発表されてからはアル=ジャリーラ王女の強制結婚を避ける為と考えられていました。また、一部では自由を奪われたシャムサ王女とラティーファ王女の件についてハヤー王女が意見し、シェイク・モハメドが激怒したという説もありました。「虐げられるドバイ王室の女性達の為に戦うハヤー王女」という構図でしたが、なんと今ハヤー王女の不倫問題が報じられているのです。 一方的な離婚や妻に対する嫌がらせは、妻の不貞にシェイク・モハメドが憤慨した為だったようです。一夫多妻の世界、日本とは価値観が違い、私達には理解できない部分もあるでしょうが、イスラム教で妻の不貞となると命が奪われる地域もあるようです。不倫が夫にばれたとなると、身の危険を感じて海外へ亡命した行動も納得です。



イギリスで既に拉致された2人の王女の例も出して、自身と子供の危険性を訴えたのでしょう。ハヤー王女の場合、ヨルダン王室出身という元々の身分や後ろ楯、国際的な知名度がありましたが、他の妻が不倫した場合には騒動が公になる前に命が奪われたかもしれません。



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以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。