標本教室で教えたりしていても感じるのですが、
昆虫標本を作るというのは、なかなか難しいと思われがちです。
昆虫標本を作るには、専門的な知識と技術が必要で、
小学生が夏休みの宿題で作るようなものとは全くの別モノ…
…ではありません。
実は、
昆虫標本…特に子供も大好きなカブトムシやクワガタムシなどの標本は、
きちんと知れば小学生でも作れます。
実際、私がやっている標本教室も、
小学生から参加できますし、
全員標本を作っています。
(※小学校3~4年生ぐらいまでは保護者同伴でお願いしてますが)
そして、
きちんと作った標本というのは、
小学生が作ったものでも、
素人が作ったものでも、
学者(研究者)が作ったものでも、
同じ科学的価値があります。
言い換えれば、
学者が研究に使えるちゃんとした標本を、
小学生でも作れる のです。
以前に当ブログの記事でも標本の作り方の概要を
書いたことがありますが(→リンク:標本ってどう作るの?)、
私が標本教室で教えているのも、そういった
プロの研究者もやっている基本中の基本の作り方です。
そして、わたし自身、いわゆる昆虫学者(研究者)ではありません。
しかし、
私が採集して標本にした虫が
研究者の役に立ったことが何度もあります。
更に、
実はその標本を基に新亜種(→リンク:亜種とは)として
名前が付いたこともあります。
それがコレ。
ケブカコフキコガネ 奄美群島亜種
学名が Tricholontha papagena inouei
亜種小名が「inouei」。
そして虫けら屋は本名名字を「井上」と言います。
…ええ、はい。
私の名前が付いています。
ケブカコフキコガネ奄美群島亜種については
また別の機会に詳しく書きたいと思いますので
今回は省略しますが、
こんなふうに学者以外の人が採集して標本にしたモノから
新種や新亜種が見つかることもあり、
また、そこまでいかなくても、
アマチュアが作った標本が学者の研究の役に立った、
なんてコトは珍しくありません。
ただし、
そのためには、
きちんとした作り方を知る必要があります。
ヘンな市販キットや、適当な独学での作り方では
研究に使える標本にならなくなってしまいます。
せっかく採集して、標本として遺そうと思ったのに、
ヘンな作り方をしてしまうと一年~数年で腐って
ダメになってしまっては勿体ないですよね。
本来、標本というのは
きちんと保管すれば
何年でも、
何十年でも、
あるいは百年単位でも、
半永久的に遺せるものです。
遺せるから、
後から調べたり古いものと比較して研究したり、
あるいは
思い出として遺したり、
コレクションすることもできるのです。
…沼ですけどね。
…コホン。
昆虫採集、そして標本の世界のいうのは、
プロ(学者)とアマチュアの境界が低く、
趣味が研究の世界にそのまま地続きで繋がるという
面白い一面があります。
標本が研究の役に立つだけでなく、
サラリーマンをしながら自ら研究して
学会発表しているような人もいたりします。
そして、
それらの第一歩は、
小学生でも、素人でも作れる
きちんとした標本作り からなのです。