タトウ | 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」

標本中心のいわゆる“虫屋さん”の間で、

甲虫やカメムシなどの一時保管や簡易展足等によく使われるのが

「タトウ」というアイテムです。

まぁアイテムと言ったってカット綿を紙で包んだだけなので、

本当に簡単な物なのですが。
 

どういうものかと言うと、死んだ昆虫をカット綿に並べ、

それを半紙や新聞紙など吸水性が良く通気性のある紙で包んで乾燥させ、

軟化するまで保管しておくという保管・整理用品です。

 

半紙や藁半紙など無地の紙で作った方がデータが書きやすくて良いのですが、

旅先などで半紙が手に入らない場合は新聞紙でも構いません。
その場合は、できるだけ印字の少ない部分が表になるように折り、

見やすくデータを書き込みます。
 

なお、

広告チラシなどツルツルした紙は吸水性・通気性が良くない場合が多く、

あまり向いていません。
吸水性・通気性の悪い紙だと、

中の虫が乾燥せずにカビたり腐ったりしてしまう可能性があります。


さてタトウの作り方ですが、

材料は薬局で売っているカット綿と、

百円ショップで売っている習字の半紙の2つだけです。

(あるいはホームセンター等で売っているわら半紙)

 

カット綿を半紙で包むように折ります。

上の写真に折線が見える通り、

「下側→上側→右側→左側」と順に折り、

最後に右側の袖を左側の袖に挟み込んで(もしくは差し込んで)完成です。
 

とっても簡単。

 

(※ちなみに、この折る順番については人によってクセがあり)

(異なる順で折る人もいます)

タトウが折れたら、

表側に、中に入れる虫のデータを書き、

あとは中の虫を乾燥させるだけです。

 

…ちなみに、

タトウに並べる前に、虫の各関節を一度しっかり動かして

死後硬直が解けているのを確認しておいた方が、

後で軟化展足する時にやりやすくなります
 

遠征などですぐに展足できない時や、

一度乾燥させてから軟化展足したい時など、用途は多いです。
 

自分などは、虫は一度タトウでしっかり乾燥させてから

軟化展足をする場合が多く(その方が展足後の乾燥期間が短くて済む)、

このタトウを非常に多用しています。
 

更に、このタトウをタッパー等に入れておけば保管場所も少なくて済み、

誤って破損させる危険も少なく、非常に効率的(防虫剤を忘れずに)。

 

その際に、

タトウの表にデータを書いておくようにしないと、

後から何処で採った虫だか分からなくなってしまうので、必ず明記します。

 

 

また、原則的に1タトウ1データ にしましょう。
 

 

色々な場所で採った虫を同じタトウに入れてしまうと、

万一タトウの上で虫が転がったりした時に、

どれがどのデータだか分からなくなってしまう危険がありますので、

同じタトウには同じ日・同じ場所で採った虫しか入れない

というようにした方が安全です。

また、タトウの大きさに決まりはないので、

入れる虫の大きさや数によってサイズを好きに変えられます。
自分の場合、2種類の大きさのタトウを使い分けています。

・大きい方はカット綿そのままのサイズを藁半紙で包んだもの
・小さい方は、カット綿を1/3サイズにカットして、100均の半紙1/2切で包んだもの

…です。

 

ミヤマクワガタやタガメなど大型種を入れる場合や、

小型種でも大量に採れた場合は大きなタトウを使用し、

コクワガタ1頭とか小さな虫が少量の場合には小さいタトウを使用しています。

展足が追い付かない時、すぐに展足する余裕がない時、

まずはタトウで保管しましょう。

また、

小型の昆虫などではタトウの上で展足し、

そのまま乾燥させて台紙に貼り、マウントする場合もあります。
つまり、押さえ針を使わないで、このまま綿の上で展足してしまうワケです。
 

小さい虫の標本の作り方ついては

また後日、記事にしたいと思います。


保管から展足まで使えるお手軽アイテム「タトウ」。
便利ですよ。



※ちなみに、「タトウ」という名の由来は、

着物を包む和紙から来ています。
 

着物は和紙に包んで保管するのですが、

それをタトウと言い、同じ折り方をするのでこちらも「タトウ」と呼びます。


…ところで近年、

薄いプラスチックケースに綿を敷いて同じように保管使用する

「プラタトウ」なるものも出てきていますが、

名の由来から考えると、これはタトウと呼んで良いものか…

 

……悩むところです(笑)