オウゴンオニクワガタの一種で、ローゼンベルグオウゴンオニクワガタという種類がいます。
インドネシアのジャワ島に生息するクワガタで、
その鈍い黄金色から人気があり、有名なのでご存じの方も多いかと思います。
ところで、このクワガタの名前、
近年では「ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ」の呼び名でほぼ定着していますが、
以前は「ローゼンベルギーオウゴンオニクワガタ」という名でも呼ばれていたのをご存じでしょうか。
これはどちらも同じ種を指しているのですが、
なぜ語尾が「グ」か「ギー」か違っていたのでしょう?
(他にも、「モーレンカンプ」と「モーレンカンピ」等も)
実は、これは前回書いた話の学名がその要因となっています。
ローゼンベルグオウゴンオニクワガタの学名は「 Allotopus rosenbergi 」、
つまり、学名の種小名をそのまま和名に当てはめた名前なのです。
そして種小名をそのまま読めば「ローゼンベルギ」と読めます。
では、本来は「ローゼンベルギー」が正しいのでしょうか?
実は、この種小名の「 rosenbergi 」は、
ローゼンベルグ(ローゼンバーグ)という人の名前から取っています。
学名の種小名に人の名前を付ける時にはルールがあり、
男性の名前なら最後に「i」、
女性の名前なら最後に「ae」を付ける、
という決まりがあります(※名前の語尾によっては変化する場合もあります)。
例えば、日本で井上さん(男)という方の名前が付けば「inoue+i」で「 inouei 」、
タケシさん(男)なら「takeshi+i」で「 takeshii 」、
アツコさん(女)なら「atsuko+ae」で「 atsukoae 」という具合です。
さてここで最初の「ローゼンベルグか、ローゼンベルギーか」に戻ります。
つまり、これは和名にする際に末尾の「i」を読むか読まないか、という事なワケです。
…では、日本人の名前が付いている虫の場合、どう呼んでいるでしょうか?
カミジョウオオクワガタ( Dorcus kamijoi )
タナカコクワガタ( Dorcus tanakai )
エサキモンキツノカメムシ( Sastragala esakii )
…どれも基本的に語尾の「i」は入れず、名前だけで呼んでいます。
学名をそのまま和名に当てはめて呼ぶ場合、
人名の語尾の「i」「ae」は和名に入れないのが一般的です。
となると、外国人の名前だけ「i」を発音するのもおかしな話です。
以前はそれを人名だと意識せずに学名をそのまま読んでしまって
「ローゼンベルギー」だったりしていたのですが、
近年では本来の人名である「ローゼンベルグ」と呼ばれるようになったというワケです。
※ただし、学名で呼ぶ場合は当然「i」や「ae」も発音しますから、
「ローゼンベルグイ(ローゼンベルギ)」と呼びます。
末尾を発音しないのは、あくまで和名で呼ぶ時という事になります。
※また、語尾が「a」で終わる男性の場合、
最後は「i」ではなく「e」にして、同じく「イ」と発音するという決まりになっています。
ですので、本来であれば、田中さん(男)の名を付ける場合は、
「tanaka+e」で「 tanakae 」と書いて、「タナカイ」となるのがルールなのですよね…。
全部が全部「i」か「ae」を付ければ良いというワケでもなく、学名のルールが色々あるワケです。