虫の図鑑などを見ていて、あるいはインターネットで虫を調べていて、
日本語の名前の他に、アルファベットで書かれた英語のような名前を
見たことがあるでしょうか?
実は、日本で使われる「虫の名前」には、2種類があります。
ひとつは和名(わめい)と言われる日本での名前。
これは「ミヤマクワガタ」や「モンシロチョウ」など
日本人にだけ通じる名前です。
この呼び名は日本国内だけで使われていて、
海外の人には通じません。
一方で海外に行けばそれぞれの国でそれぞれの呼び名があります。
日本で蝶(チョウ)と呼ばれる虫は、
アメリカやイギリスではバタフライと呼ばれ、
フランスではパピヨン、
インドネシアではクプクプと呼ばれます。
普通に生活する分には
それぞれ自分の国の言葉での呼び名を知っていれば十分なのですが、
研究したりする場合にはそう簡単ではありません。
日本のチョウを調べる場合でも、
海外にいる近い種類のチョウを調べたりする必要が出てきますが、
これが国ごとに呼び名が違っていては非常に不便なワケです。
そこで世界共通の名前が必要になります。
それが学名(がくめい)です。
ミヤマクワガタなら「Lucanus maculifemoratus」、
モンシロチョウなら「Pieris rapae」という学名が付いています。
図鑑などで、虫の名前の横(または下)に
斜字体のアルファベットで書いてあるのがその学名です。
イタリック体という字体で表記するのが基本なのですが、
その字体がワープロソフト等で入っていない場合も多く、
多くの場合は学名である事が分かるように斜体で書く か下線を入れます。
…と、ここまでが学名の概要のそのまた概要。
ここから先はちょっと難しい話になりますが、
虫に興味のある方は頑張って付いてきてください(笑)
種を表す学名は2つの名前の組み合わせで出来ています(二名法)。
「属名(ぞくめい)」+「種小名(しゅしょうめい)」という組み合わせで、
属名の「属」は生き物を分類する時の単位のひとつで、
例えばミヤマクワガタの学名である「Lucanus maculifemoratus」では
「Lucanus」の部分が属名になります。
「ミヤマクワガタ属」に含まれる全ての種がこの「Lucanus」が最初に付き、
同じグループに含まれることが分かります。
(例)
ミヤマクワガタ:Lucanus maculifemoratus
アマミミヤマクワガタ:Lucanus ferriei
ヨーロッパミヤマクワガタ:Lucanus cervus
エラフスミヤマクワガタ:Lucanus elaphus
後半の「maculifemoratus」や「cervus」は種小名と呼ばれ、
Lucanus属のcervus種という虫がヨーロッパミヤマクワガタを指すワケです。
なお、後半の種小名だけではどの虫かは断定できません。
例えば、奄美大島にいるアマミミヤマクワガタ( Lucanus ferriei )の種小名「 ferriei 」は、
同じく奄美大島にいるフェリエベニボシカミキリ( Rosalia ferriei )にも使われています。
そのため、何という種かを確定する名前は、
あくまで「属名+種小名」という組み合わせになります。
…まぁ、もっともっと学名のルールは色々あるのですが、今回はそのさわりだけ、という事で。
……ちなみに学名は英語っぽく見えますが、
ラテン語(もしくはラテン語化した言語)という言葉です。