虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」

チョウの異常型のひとつに、『紋流れ(もんながれ)』というのがある。

本来は丸型や半月型だったりするはずのハネの模様が、筆でこすったように伸びているというものだ。

 

で、そんな紋流れ個体の標本がウチにもいくつかあるので、せっかくなのでご紹介。

 

ヤエヤマカラスアゲハ

石垣島産のヤエヤマカラスアゲハ。

以前は本土のカラスアゲハと同種(亜種関係)とされていたのだが、現在では別の種類とされているアゲハ。

表面の緑がのっぺりしていて、一目見て普通のカラスアゲハとは違うのが分かる。

写真の個体は、後バネ裏面の赤い三日月形紋が付け根に向かって擦ったように少し伸びている

もっと派手に伸びたものもいるようだが、ウチにあるのはこの程度。

←こちらが通常型

 

ヤマトシジミ

普通種中の普通種、シジミチョウといったらコレを思い浮かべるぐらいの有名なシジミチョウ。

裏面は灰色地に黒い点が並び、表は薄い水色をしている。

んで、この写真の個体はその前バネ裏面の黒い点が内側に向かって伸びているのが分かる。

ヤマトシジミは生息している場所なら個体数も多く、いくつも見ているとこういう個体もいる。

←こちらが通常型

ちなみに、紋流れとは逆に斑紋の一部が縮小して消えてしまう斑紋消失というのもいるので、チョウの異常型を探してみたいという人は、まずはヤマトシジミを片っ端から見てみるのも良いかもしれない。

 

モンキチョウ

これも河の土手などで普通に見られるチョウで、黄色地のハネに黒い斑紋があり、縁にピンク色の縁毛がある可愛い種類である。

♂はその名の通り黄色い色をしているが、♀には黄色いタイプと白いタイプがあり、白い♀はたまにモンシロチョウと間違われることもある。

写真の個体は、前バネ・後バネともに裏面のピンク色の部分が伸びてファンシーさ大盛りな紋流れ。

マイコレにある紋流れ個体の中でもお気に入りな1頭で、むしろコレを紹介したいがためにこの記事を書いたまである……かもしれない(笑)

←こちらが通常型

 

チョウ専門ではない自分でも3頭見ているぐらいなので、意外と出逢いやすい異常型なのかなと思うし、気になった方は探してみてはいかがだろうか?

模様のあるチョウならどの種でも出る可能性はあると思うし、家の近所で探してみるのも良いだろう。

 

昆虫採集には、こんな楽しみ方もある。

 

 

 

…で、つい先日、マイコレ4つ目の紋流れとなる、ツバメシジミの紋流れを採集した。

採って網の上から見た段階で「おやっ?」と思い、よくよく見れば一部の黒点がびよ~んと伸びている。

 

久しぶりに書いてみる。

 

3月24日

東京大学(東京都文京区本郷)にて、桜の枝の間をフラフラと飛ぶチョウが目に入り、

「アゲハ?でも早いよな…」と思い、モンシロかな?と目を凝らすが、

 

「やっぱアゲハだ!」と思った瞬間、横からヒヨドリが襲い掛かり、

アゲハと空中戦を始めた。

 

ヒヨドリは数回目のアタックでアゲハの後翅を食いちぎると、どこかに飛んで行った。

一方のアゲハはヨロヨロと近くの木にとまった。

 

位置が高いのでデジタルズームで粗くなった写真しか撮れなかったが、

まぁアゲハとは分かる。

 

アゲハの春型が出てくるといよいよ春も本番…と言いたいが、

まだ桜の開花宣言が出たばかり。

 

例年、お花見の頃に最初のアゲハを見ることが多く、

早い年なら3月末頃ではあるが、今年は開花したばかり。

 

2日ぐらいかなり気温が上がったので羽化のスイッチが入ったんだろうと想像できるが、

なんかちょっと早い気はする。

 

 

北海道で調査のお仕事があったので、

せっかく行くのならばと1日だけ延泊して

少し趣味の採集もしていくことにした。

 

夜、春とはいえ北海道の海岸の海風はまだ冷たい。

朝になって明るくなってからでも良いかと思っていたのだが、

 

待ちきれなかったのと、

夜行性と本で読んだ気がしたため、

夜中に海岸まで来てしまった。

 

まずは砂浜にうち上がった漂着ゴミを探す。

…ゴミと言っても人の出したゴミではなく、

植物片や海藻、鳥の羽根など、自然のモノ。

それらの下に、狙いの虫は隠れているらしい。

 

適当な木切れを使って、漂着ゴミを少しずつ掻き分けながら探す。

あまり大雑把に探すと見落としてしまう可能性があるので、

慎重に、慎重に探していく。

 

…と、ゴミの合間にひっくり返った黒い虫の姿が見えた。

「いたか!?」

 

つまみ上げて表にしてみれば、

やや薄くて、上からみると丸い姿。

黒地にクリーム色の縁取りがオシャレだ。

「ををををを!」

間違いない。

狙いの虫、ホネゴミムシダマシ だ。

 

気を良くして更に探すと、ポツポツと見つかる。

 

この虫、実は背中の模様にバリエーションがあり、

クリーム色の模様が個体によって様々なのだ。

う~ん、カワユス❤

 

日本産ゴミムシダマシ大大図鑑(大が二度重なってるのが重要!)

この虫の存在を知った瞬間に採りたい!」と思った。

 

マダガスカルにいるヘクソドンという虫にも似たフォルムをしており、

個人的に日本のヘクソドン勝手に呼んでいる

 

…尤も、

ヘクソドンはカブトムシ、ホネゴミムシダマシはゴミムシダマシの仲間なので、

実際の系統的には全然近くないのだが。

 

そして、大きさもだいぶ違う。

ヘクソドンが2cmぐらいあるのに対し、

ホネゴミムシダマシは約5mmとかなり小さい。

 

なので、

探すときも漂着ゴミの中に紛れた5mmの虫を

見つけなければいけないワケで、

見落とさないように集中力が必要になる。

 

わざわざ木片を使ってチマチマ掻き分けていたのは、

そういうワケなのだ。

 

1時間ほど採集して、

そこそこ採れたのと寒さの限界が来たので、

採集を切り上げて車に避難した。

 

朝、明るくなってからもう少しやってみよう…と、

そのまま浜辺に停めた車内で就寝。

(※あまり砂が柔らかい所まで入ってしまうと普通車はスタックしてしまう可能性があるので注意!)

 

 

そして朝。

明るさに目を覚ましてみると、

まだ明けたばかりだというのに

浜には等間隔に釣り人が並んで竿を握っている。

春の苫小牧の砂浜海岸、どんな魚が釣れるのか少し気になるが、

それより採集だ。

 

昨日採れた辺りから始めてみる。

 

 

…が、なかなか見つからない。

 

あれれれれ?

 

なんとか1頭見つけるも、2頭目がなかなか見つからない。

それでもなんとか頑張って探して

少しずつ追加を得ていくが、う~ん…

 

夜は小さめの漂着ゴミでもそこそこ見つかったのに、

明るくなった今は小さなゴミでは全く見つからず、

大きい塊でようやく1頭、という感じ。

 

見つかる数も、夜の半分以下だ。

 

もしかしなくても、

コイツら、漂着ゴミの下にもいるけど、

明るいうちは砂の中に潜ってるんじゃなかろうか?

 

実際、

こんな感じで尻だけだして潜りかけ…みたいなのもいたし。

こんな状態の5mmの虫を漂着ゴミの中から見つけ出すわけで、

まぁなかなか骨の折れる採集である…

…ホネだけに。

 

 

…。

 

……。

 

……さて。

前の方でもちょっと触れたが、

この虫、実は背中の模様にバリエーションがあり、

大まかに3種類に分けられるように思う。

 

以下の型名は自分が勝手に付けたもので、

一般的なものではないのでご了承を。

 

(1) 縁取り型

黒地にクリーム色の縁取りがあるタイプで、一番見多い。

 

(2) 斑紋型

(1)の縁取りに追加して、その縁から中央線に向かって横帯状の斑紋が出るタイプ。わりと少ないが、ホネゴミの多い場所で探していれば見つかる。

 

(3) セアカ型

縁取りの内側が赤褐色になるタイプで、最も少ない。

よく見ると、赤褐色部に細い黒帯が見えるので、

斑紋型の帯紋が限界まで広がると赤っぽくなるのかもしれない。

 

3パターンそれぞれの中にも変異があって、

(1)~(2)はある程度グラデーションで並びそうなので、

斑紋をコレクションしても面白いと思う。

 

…実際、

こんな感じで僅かに帯紋が出かかってるような個体もいたし。

 

今回採集した感じでは、それぞれの型の比率は、

 

縁取り型斑紋型セアカ型7.0:2.50.5

 

…という感じ。

 

少し採るだけなら帰りの飛行機前の時間調整に

行ってみるのでも良いと思うが、

 

ある程度の数を採りたいと思ったら、

夜に行って探すのが良いように思う。

 

それか、5mm以下の篩を持っていって、

漂着ゴミの下の砂ごと掬って

篩ってみるのが良いかもしれない。

 

 

なんにしても、

ホネゴミムシダマシ、良い虫である。

ご無沙汰しています、虫けら屋です。

 

2月12日~15日、ケブカコフキコガネ奄美群島亜種(以下、奄美亜種)を採集しに

奄美大島 に行ってきました。

実はこのケブカコフキコガネ、

奄美群島のものは沖縄のものとはちょっと違う…とずっと言われていたのものの、

奄美では♂は見つかるものの♀が見つかっていませんでした。

 

その奄美の♀が初めて採集されたのが、2012年。

そしてソレを採集したのが私だったりします。

 

そうして初めて奄美の♀が採集されたことで亜種記載されたという経緯があり、

亜種小名に私の苗字である井上から「inouei」と付いております。

 

更に、今までは隔年で大発生と小発生を繰り返すと言われていたのですが、

10年ほど各地で採集を繰り返し、他の方の採集データを集めたところ、

実は奄美のものは3年周期で大発生をしていることが分かり、

ちょっと前に専門誌で発表しました。

 

で、その2012年に採れた1♀以降、奄美大島で♀が採れたという話を聞かず、

私自身も何度も追加採集にチャレンジしていたのですが、毎度敗退…


…で、まぁ、今シーズンこそは!と。

 

 

結果としてはついに複数の♀を追加採集できました。

今回は動画も撮影しようと準備していったところに

奇跡的に♀を見つけられたこともあり、

 

ケブカコフキコガネ奄美群島亜種のメスが映る、

世界で唯一の動画…になりました。

 

…まぁ、撮った動画を繋げただけの素人編集なのですが。

 

30分強ほどの動画ですので、

もし良ければお時間のある時にでも観て頂けたらと思います。

  ↓↓↓

 

 

 

…ちなみに、

動画の中で「眼が光る」というコトを何度か言っているものの、

その光る様子が動画の中ではほとんど分からないのですが、

 

実は、懐中電灯などの明かりを当てると、

下写真のように 複眼がオレンジっぽく光ります

写真のものは♂ですが、♀も同じように光るので、

実は林内で♀を探す時に目印になったりします。

コガネムシ上科専門の昆虫雑誌「鰓角通信(さいかくつうしん)」の

最新号(46号)に、私の報文が載りました。

 

私が長年追い掛けてきた ケブカコフキコガネ というコガネムシの、

奄美亜種の生態の話です(※過去記事リンク:→ 亜種とは)。

 

「ケブカコフキコガネは二年に一度大発生」とよく言われますが、

そこに一石を投じたというか、

実は奄美亜種はそうではなさそうだよ、という話です。

 

 

ケブカコフキコガネは以前に当ブログでも紹介しましたが、

隔年で大発生と小発生を繰り返し、沖縄と奄美で交互に出る

とよく言われていました。

 

しかし、何年も沖縄や奄美で採集を続けた結果、

奄美亜種の大発生は3年に一度、つまり3年周期で発生しており、

しかも島や場所によってその大発生年が異なるのです。

 

まあなんてメンドクサイ虫ですこと。

 

…実はそのことに気付いたのはもうだいぶ前で、

そこから何年も採集を重ねながらデータを集めて、

熟成どころか発酵しそうなぐらい時間が経って

ようやく投稿、発表の日の目を見ました。

 

ケブカコフキコガネ自体がわりとマイナーな虫なのですが、

♂は触角が大きく発達して素敵な姿をしていたり、

♀が珍品で見つけられたらラッキーだったりと

魅力たっぷりの虫です。

興味のある方は、ぜひコガネムシ研究会に注文して買ってね

コガネムシ研究会ホームページ(リンク)

 

 

※過去記事リンク

ケブカコフキコガネ(1)~紹介編~

ケブカコフキコガネ(2)~生態編~