2023.8 NO.194  オタク VS  オタク
 ギリシャ神話での巨人一族であるタイタン(Titan)は、ゼウスが率いるオリンポスの神々との戦いに敗れ、地底に幽閉されたとする。
 タイタンの形容詞であるタイタニックという名の豪華客船は海底に幽閉された。それを探索するTitan製の潜水艇「タイタン」は爆縮し海底に沈んだ。
 巨人は仮の姿で真のタイタンの姿は人間の「驕り」「過信」に対する戒めの神ではなかろうか。
 今回道連れとなったお金持ち達には、心より弔意を表する。その上で、貧乏人の私から、お金持ちに苦言を呈する。

 親の遺産であれ、自らの才能と努力の賜物であれ、自身のお金を何に使おうと勝手である。我々庶民がディズニーランドに行き喜ぶようなことでは飽き足らないのは理解できる。

 ただ、リュックではなくリスクを背負い宇宙旅行するのは良いが、大勢の乗客が亡くなった悲劇のタイタニック号を好奇心の対象にしたのであれば、それはいかがなものか。

 さて、SHINE! と書かれた文字だけを見れば、普通は「輝け!」と英語読みするだろう。その気になるよう日々妻から「早く逝くように」と言われる私はついローマ字読みしてしまう。

 次はどうだろう。
 OTAKU NO OTAKU NO OTAKU WA OTAKU ? 「なんのこっちゃ?」と理解できないだろう。ローマ字では意味不明でも日本語にすれば意味が通じる。「お宅のオタク(君)の御宅は大田区?」と漢字、ひらがな、カタカナの組み合わせで視覚的にすぐ理解できる(実際は、大田区は、オタクと区別する為ではないが、OTAKUではなくOTA―KUと記す)。
 自身を表すのに、英語ではI(アイ)しかない。日本語では、例えば落語において、「わし」「私」「俺」「ぼく」「拙者」と男を表す語彙だけでも数多い。その一言で、その人の身分や年齢が連想できると何かに書かれていた。
 この世界に誇るべき日本語が、無くなる危機的状況が2度起きた。1度目は明治維新で洋行帰りの学者や作家に母国語を英語にという運動が起ったとき。2度目は敗戦後GHQに(英語が母国語になっていれば、今よりもっと米国の属国になっていたことだろう)。

 明治・大正時代の国語学者上田万年を初め優れた先達が体を張って日本語を守ってくれた。深謝しなければならない。

 中国では「宅男」と言うオタクの聖地は大田区ではない。周知のとおり、東は秋葉原。西は大阪日本橋(でんでんタウン)だ。サブカルチャーで言えば、その聖地は中野ブロードウエイ、池袋乙女ロードとなるか。
 大田区は、東京の、ひいては日本の縮図と言える。「太田区」と書き間違われやすいが、前身の大森区と蒲田区とが合併しそれぞれ一字を採っているから「大田区」。本当なら大と蒲の字を採用してもよさそうなものだが、英語表記がOKAMA-KUになるのを避けたのであろうか(そんなことあるわけないか)。
 大田区は、東京23区総面積の9.6%を占め、一番大きい。現在は便宜上4地域に分けられ、北西の調布地域、北東の大森地域、南西の蒲田地域、糀谷・羽田地域と区分する。
 調布地域は、言わずと知れた高級住宅街田園調布がある。長嶋茂雄氏を始め作家、歌手等多くの著名人が住む。といっても、セレブタウンと言われるほど超高級住宅街と言われるのは田園調布3丁目あたりのごくわずかな地域で、ちょっと高級そうな住宅地へと変貌しつつあると『日本の特別地域⑨ これでいいのか 東京都大田区』に書かれている(高級住宅街と言えば、何といっても芦屋の六麓荘。銀行員時代に車で外観を見回ったことがあるが、大企業のサラリーマン社長ではとても住める所ではない)。
 なお、田園調布郵便局は、東急の田園調布駅の近くにあるのではなく、西島三重子さんの歌で知られる『池上線』(蒲田駅~五反田駅)の中間あたりの雪が谷大塚駅から3~4分の所(近くに田園調布警察署、田園調布消防署も)にある。
 ちなみに、郵便局の斜め向かいに往年のアイドル林寛子さんのカラオケサロン『寛寛』(カンカン)がある。往年の彼女を知る高校の同級生が上京の際に案内すると、すごく喜ばれた。
 北西の調布地域が山の手なら北東の大森地域、南西の蒲田地域は下町と言える。蒲田地域は日本の物づくりを支える中小企業のメッカと言える。世界に羽ばたく、タシロイエール、ツクモ電子工業、三信精機、下町ボブスレー、桂川精螺製作所、北嶋絞製作所等がある。TV化もされた、池井戸潤氏の小説『下町ロケット』もモデル企業はないとするも舞台は蒲田となっている。
 “両班”への憧憬から抜け出せない韓国人は、物づくりを良しとせず、一流大学から財閥企業へとしか考えない。韓国経済は日本の中小企業依存から脱却するのは容易ではない。  
 蒲田地域はB級グルメの宝庫とも言える。羽根つき餃子は食の地場産業と言えるほどに拡大した。蒲田3大餃子、長男の『ニイハオ』、弟の『金春』 (コンパル)、妹の『歓迎』 (ホアンヨン)に加え、『春香園』、『大連』(大森)も、長男八木功氏の一族。八木氏は旅順から中国残留孤児として45歳の時帰国。八木氏の料理と人柄に魅かれた地元の人々78人のカンパにより小籠包と焼きまんじゅうをヒントにした羽根つき餃子の店が誕生したという。
 餃子の店だけではなく、とんかつの店も蒲田に多いという。“とんかつ御三家”と言われる、(TV番組『ラヴィット!』にて俳優上川隆也さんが食べるを待ち望んでいたと言う)『とんかつ檍(あおき)』や『丸一』、『まるやま食堂』がある。
 蒲田の鳥料理『鳥樹』もよい。若鳥の水たきや唐揚げが美味しい。私は品川区旗の台駅に近い東口店を公私に亘ってよく利用させてもらった。
 蓮沼にお好み焼き『福竹』がある。店の売りは、大女将の技と口上。大女将の焼くお好み焼きは小麦が少なく分厚くふっくら(断面は骨粗鬆症の骨みたい)焼くのは技術がいる。うるさく、やや高圧的な物言いは賛否が分かれる。私ら4人で行った時も評価は半々に分かれた。10年以上前になるかグルメ雑誌『大人の週末』にこの店が掲載され、推奨人に世界の王貞治さんが載っていた。大女将が人により態度を変えると思わないので、よほど王さんは懐の深い人物だと思ったことを覚えている。
 さらに、蓮沼では欧風カレーと透明であっさりとした志那そばの店『インディアン』も有名。セットで頼むと先に志那そばが出てくるが、関西人の私でもスープの味が薄いと感じる。頃合いを見てカレーが提供される。カレーを食べた後スープを飲むとちょうどよい塩梅になってくる。たしか初代は資生堂パーラー出身と何かで観たが、よく計算されていると感じた。
 洋食店も、大きな生姜焼きが評判の『ぐるり スズコウ』が有名だが、大森には、大森海岸の『洋食入舟』はアジフライ、カキフライが美味しい。インドカレーでは、南インドカレーの先駆け的存在の『ケララの風Ⅱ』があった。
 ちなみに、南インドカレーは、他には、船堀『ゴヴィンダス』、虎ノ門『ナンディニ』に加え、TV『孤独のグルメ』Season8で紹介された小川町の『三燈舎』ぐらいしか私は知らないが、都内に50店ほどあるらしい。
 仏国・伊国・中国と同じく印国も北は肉中心で、南はシーフード主体で、さらにさらっとしているので北インドカレーより南インドカレーを好む。ランチでミールス(南インドのベジ料理を中心とする定食)を食べることが多い。上述ケララの風Ⅱ(前身『ケララの風』)の店主はミールスが認知されてきたので、ティファン(南インドの軽食)を世に広めたいと『ケララの風モーニング』で再出発したという。この前そのティファンを食べに大森に出かけた。辛くなくさっぱりしている。これなら毎朝食べても苦にならない。ただ、北インドの人はカレーと認めないかもしれないと思った。昼には蒲田に足を延ばし手軽に一品ずつ揚げたてが食べられる『天ぷらすずき』の暖簾をくぐった。
 糀谷・羽田地域は、言わずとしれた、成田空港と並ぶ日本の空の玄関口羽田空港がある。最近隣接して(天空橋駅) 先端産業と文化産業を融合させた大型複合施設『羽田イノベーションシティ』もできた。
 この他、大田区は、青果の大田市場があり、公営3大ギャンブルの内競馬場(大井)、競艇場(平和島)がある。競輪は隣の川崎に行けばよい。国立大学も一つあるし、他に無い物と言えば、大きな音楽ホールか。私にはそれぐらいしか思いつかないが。
 いい事ばかりの大田区ではあるが、一つ不満がある。押上から京急蒲田駅から近い上記ニイハオに行くのに私は都営・京急を利用する。乗り換えなしで便利なのだが、そこから池上線沿線に行くのに不便を感じる。それ以上に不満感が擡げてくる。
 京急蒲田駅から東急池上線蒲田駅まで10分前後かかること自体はとくに珍しいこととは言えない。栃木県の東武宇都宮駅からJR宇都宮駅へ行くのに徒歩で20分はかかる。
 私が独身の頃芦屋と神戸との境に近い神戸市の東端に住んでおり、下町を通る阪神芦屋駅を通勤に利用していた。阪神芦屋駅からJR芦屋駅には北東に10~15分歩く。さらにJR芦屋駅から山手を通る阪急の芦屋川駅に行くには北西にまた10分~15分かかる。不便ではあるが、不満は感じない。これが、JR芦屋駅と阪急芦屋川駅が隣接していて阪神の芦屋駅だけ離れていたら、下町に住む住民は不満を感じるに違いない。
 不満感が擡げてくるのは、東急(多摩川線・池上線)蒲田駅とJR蒲田駅が隣接しているのに、京急蒲田駅だけ離れている、そのためだろう。私は大田区民ではないのだが。

 (次回195号は8/1アップ予定)

2023.7臨時号 NO.193  にくい VS にくい(1/2)
 本ブログ2022年12月号NO.182(「こなもんVSこんなもん」)にて、私の体は粉もんで形づけられたと書いた。今回は70余年食生活の変遷を振り返ってみたい。長々と凡庸な話が続き「知らんがな」(知ったことか)と言われそうだが。
 今は本籍も移し東京に居を構えるが、生まれも、育ちも神戸。関西の神戸では「肉」と言えば、牛肉を指す。
 落語の立川志らく師匠がTVで美味いと紹介する神戸新開地にある『たつの』の肉うどんは牛すじのぼっかけうどん。師匠が同じくお気に入りと言う東京府中や中山などの競馬場にある『梅屋』の肉南蛮そばは豚肉が使用されている。
 60年前の頃神戸ではお好み焼きのことを「にくてん」と呼んでいた。漢字では肉天か(「天」は天かすとの説があるが、私には馴染みがない)。
 肉は言わずもがな牛肉。小学生の私は一人で店に訪れ、当時月見天をよく食べていた。卵が入っていない(キャベツが混ざった)生地の上に牛肉の薄切りを乗せ、真ん中には生卵を乗せ、さらに生地を上から少しかけていた。焼きあがると卵は半熟状態で美味しかった。当時は生地に卵を入れないのが普通で、社会が豊かになるにつれ生地に卵を入れるようになり、周知だろうが「天」ではなく「玉」と呼ぶ。具が牡蠣なら牡蠣玉となる。
 牛肉は火の通りが速すぎるのでじっくりと蒸すように焼くお好み焼きに向かない。時代が進むにつれ豚のバラ肉が関西でも主流になっていったと思う。
 当時の神戸は牛肉と豚肉の値段にそれほど差がなかったと記憶している。「トンカツ」という言葉をはじめて知った時、母が店屋物を買うと言うので、私はトンカツを父がビフカツを選んだのだが、母が間違って私にビフカツを渡し、私は赤身のビフカツの虜になった。
 映画鑑賞や記念日とかに新開地にあった『赤のれん』という洋食屋に連れられていたが、オムライスからビフカツに替えてもらうようになった。今は「牛かつ」がブームになっているが、カツにデミグラスソースのようなソースがかかっているのを見ると、当時が懐かしく甦ってくる。
 
 私はアレルギー的には何でも食べられる。アレルギーと言えは、花粉と妻の小言が少しあるぐらいか。人気俳優ディーン・フジオカさんのようなグルテンアレルギーもないが、食べ物の好き嫌いは無いとは言えない。
 私は子供の頃から変わらず肉の脂身が好きでない。すき焼きで関西は牛脂で油を引くがその牛脂を取り合う人たちがいる。が、私は食べるとえずきそうになる。とんかつも脂身が要らない。分厚いトンカツなら脂身の部分を残したりする。脂身が甘いと表現する人がいるが私には理解できない。なぜ脂身を油で揚げないといけないのか、ポークソテーでいいではないかと思ってしまう。
 神戸に居た頃はよくサンチカにある『KYK』にて棒状のヘレ(関東はヒレ)カツを食べていた。上京してからも家でよくフライを揚げていたが、最初に棒状のヒレカツを揚げ、その後冬場は牡蠣フライや娘が好きな蟹の爪フライを揚げていたものだ(キッチンを汚すと妻に言われ今はすっかりフライやてんぷらは揚げなくなってしまったが)。ヒレカツは、お店ではカツ丼やカツカレーに一口カツで提供されることが多い。ロースより衣の表面積が増えると思え、カツ丼やカツカレーではヒレカツを選択しない。
 なお、カツの衣も油をより吸収し易い粗目のパン粉より人形町『小春軒』のような細かなパン粉を好む。子や孫と行く串カツ食べ放題の『串家物語』では、ある程度串カツを頬張ると後は水に溶かした小麦粉、パン粉をつけずにオイル・フォンジュにして食べている。
 鶏の唐揚げも、胸肉の唐揚げが好き。あっさりしているからフライにする意味があると思うのだが、子供たちはモモ肉の唐揚げの方が好きなので、胸肉の唐揚げを取り合うことはなかった。今も子供と孫が来たときはケンタッキー・フライドチキンを買い求め皆で食べるが、キール(胸肉)は皆が敬遠するので、私がヒールになることはない。
 タルタルソースが盛られた鶏南蛮は敬遠し、野菜が敷き詰められ甘酸っぱいタレがかかった油淋鶏を私は歓迎する。
 天ぷらも、豚肉を揚げたものは要らない。動物性ならエビとホタテで十分。鮑、鱧、稚鮎、松茸など高級食材も要らない。昔は高級江戸前の天ぷらに野菜を提供するのは邪道だったらしいが、インゲン、ナス、ゴボウ、レンコン、カボチャ、季節野菜ならふきのとう、たらの芽などポピュラーな野菜を天ぷらにしたものが私は好きだ。子供の頃から口に出来ない野菜はなかったが、おせち料理は苦手だった(父が香川出身で白味噌の甘い雑煮も。京都と同じなのは保元の乱に敗れ崇徳上皇が讃岐に流されたことに起因するとか)。

 子供の頃正月はお年玉が貰えるから嬉しかったが食事は憂鬱だった。とくに根菜などの煮物が好きではなかった(今も筑前煮が好きでない。妻に体にいいから食べろと強制される。薬だと思って半分食べる。また残したと叱られる)。
 そんな野菜も天ぷらにすると好物に変わる。しかも、揚げたてが食べられたらそれで満足。御茶ノ水『山の上』、銀座『天ぷら近藤』、門前仲町『みかわ是山居』、京橋『てんぷら深町』などの有名店に無理してでも行こうとは思わない(無理しても行こうとするのは河豚だけ。他はB級でOK)。
 一つずつ揚げたてを大根おろしが入った天つゆで食べられ、値段もリーズナブルな福岡『ひらお』には出張で福岡入りするときは空港近くの本店や天神店によく寄ったものだ。

 こんな店が東京にあればとずっと思っていたら、『丸亀製麺』系列の天ぷら『まきの』が池袋にあると知ったが、閉店していた(神戸三宮にもあり里帰りした時立ち寄りたい)。
 有楽町駅と新橋駅の間のガード下にある「日比谷okuroji」に大阪から『天ぷらとワイン大塩』が出店してきた。さっそく妻と出向いた。場所柄店が狭いのが難点か。
 蒲田に一品ずつ揚げたてが食べられるB級天ぷら店『すずき』があるのを知った。近々寄る予定だ。

 その気になれば、探せば私好みの天ぷら店は思いのほか多く存在しているかもしれない。
 立ち食い蕎麦屋では、好きなインゲンの天ぷらを出す店は少ないが、ゴボウ天は、新型コロナ禍前の頃銀座で映画を観る前に『よもだそば』でスティック状で厚みのあるゴボウ天そばとミニカレー(立ち食いでは珍しいインドカレー)をよく食べていた。家でもランチに、店屋物の天ぷらを買っても、天丼にすることはなく、天ぷらそばにして油を落としている。
 他人より脂肪分の摂取が少ないと思うのだが、親からの遺伝からなのか高脂血症と尿酸値の値が高い。生涯毎日薬を飲まねばならぬ、不条理だ。

 実家で親と同居していた頃までは野菜もそれなりに摂っていたと思うが、銀行に入り翌年東京に転勤となり独身寮に入った頃23、24歳ぐらいから野菜を摂らねばという意識が欠落していった。1974年当時私が勤務していた新宿支店は西新宿にあり、帰りにはよく駅に直行せず歌舞伎町にある飲食店に繰り出していた。アルタ裏にある、ベージュ色したロールキャベツシチューが売りの『アカシア』(今も健在)を同僚は彼女(同僚)とよく訪れていたが、私はロールキャベツはトマトソースで煮た方が好みということもあり、アカシアの斜め向かいあった『レンガ屋』?の方に足を運んでいた。そこでハンバーグや肉質は落ちるが半ポンドのステーキを食べていた。
 寮があった神田に直帰する場合は、駅裏の焼トンの店で甘辛タレのハツ(心臓)やレバーを立ち食いしていた。小さなカレー専門店もよく一人で利用したが、ゆで卵をトッピングしてもサラダなど一緒に食べることはなかった。もっともその店にはトッピングにサラダはなかったように思う。
 日曜日は寮の賄いがないので、お昼には『肉の万世』神田駅前店に行くのが常であった。寮生と散歩がてらぞろぞろと歩いて行った秋葉原本店を含めると年間40回、神戸に戻るまでの5年間で200回は万世にお世話になったか。ほとんどハンバーグ定食を食べていた。私の青春の味なのだ。
 神戸に戻り、結婚もし子供もできた30代の頃、お昼は銀行の食堂を使わず近くのうどん店でかつ丼や海老天蕎麦とおにぎりのセットをよく食していた。後はラーメンや鰻丼など。 

 野菜を摂らなければとの意識はまだ芽生えて来なかった(今ではかつ丼や牛丼を頼むときミニサラダをセットにするし三食野菜を摂るようになったが)。妻からもっと野菜をと言われていたが、エスキモー人は野菜など食べない。食べなくても死なないと嘯いていた。
 そんな食生活でもストレスがなく心穏やかに暮らして居れば、大きく健康を崩すことはなかったのかもしれない。平成の世に変わり、元年に支店長となり、翌2年1月(1990年)には新宿支店長となりバブル末期支店の最高益を上げる頃までは良かったが、同年10月バブルがはじけ証券不況が吹き荒れる最中証券部長に指名されてから平成5年(1993年)末に銀行を辞め翌新年早々上京し今で言う公益社団法人に転身した15年間程は心休まぬ日々が続いた。まさに中年期であり、体の不調が顕在化するようになる。
 平成4年(1992年)証券部長として悪戦苦闘している中ストレスで右頬が鼻の高さまで晴れ上がった。慢性副鼻腔炎が悪化し手術した(20年後前立腺がんが発覚したが、この時期に免疫力が低下しがん細胞を見逃したのだと思う)。しかし、手術して間もないのに、平成6年(1994年)春社団設立に追われ、ストレスか右だけ副鼻腔炎が悪化した。医師にはすぐ手術と言われたが、設立総会前であり手術する余裕はなかった(それ以降30年弱経つが一度も大きな炎症は起きていないが)。

 無事社団も設立され、副鼻腔炎も治まったものの、翌平成7年(1995年)初夏から痛風に悩まされることになる。子供2人をつれ墨田区白髭橋近くにあるレストラン『カタヤマ』に行き300グラムのオージービーフのステーキを食べ、これからは手軽にステーキがと喜んだ。が、数日経つと足の親指がチクチクと痛んだ。ガラスの破片でも踏んだかと思って足の裏を見ても傷がない。それが痛風の始まりであった。発症する度に症状が重くなり、夜中トイレに立とうとすると激痛が走り立てない。ガラスの破片で膝の中を串刺しにされているみたいで、ホラー映画でテレビから出てくる貞子のように這ってトイレに行く羽目になる。
 それでも当時はできるだけ薬に頼らないとしていた。口養生ということで、好物の牛肉を食べるのを15年以上控えることになってしまった。牛肉に比べ、豚肉、鶏肉は食べても症状が余りでない。尿酸の元になるプリン体の100グラム当たりの含有量は、牛モモは110.8mg、豚ヒレは同119.7mg、鶏ムネは141.2mgと言われる。含有量が多い鶏肉を食べても発症せず、好きな牛肉では発症しやすいのは、どういう訳か。
 口養生と言っても、まだ野菜を多く摂取しようとはならなかった。
 そうこうしているうちに平成14年(2002年)の暮れ、胆石で大げさに言えば死にかけた。随分前から体調が優れなかったが、昼に牡蠣フライを食べたその晩高熱に魘され寝られなかった。翌朝血尿も出るし(原因不明)、町医者に診てもらったら、黄疸が出ている。胆のうの中の胆石が胆汁の通り道である胆管に蓋をしかかっているとのことで、知り合いの病院に直に行けと言われた。おっとり刀で出向くと即入院と言われてしまった。そう言われてもと翌日入院することで家に帰らせてもらった。肝臓と胆のうとの癒着を直さないと手術できないとのことで翌日から3週間ほど固形物はとらず点滴での入院生活となった。一旦退院して再度入院して胆のう摘出手術を受けた(本ブログ2020.11臨時号 NO.142 「ますい VS まずい(2)」参照)。

 胆のう摘出手術でさすがに反省した。母親の胆のう摘出手術の際病院で終わるのを待っていた。末娘であった母の姉たちも皆胆のうが無かったのを聞いていた気もするのに、肉ばかり食べ野菜を摂らなかったかと。それで一日三食、毎食の初めには野菜を摂ることにした。ラーメンも、胆のう摘出手術以降は「タンギョウ」こと、あっさりした塩味のスープに野菜がたっぷりと入った「タンメン」+野菜が多めの「ギョウザ」がほとんど。好きだったチャーシュー麺は食べなくなった。
 だが、その反省も失敗に終わった。肉も食べそれ以上に野菜を摂るべきなのに、肉を控え、野菜とか魚の刺身とかに偏ってまず肩に来た。すぐに五十肩(正式名称:肩関節周囲炎)になり、腕が上がらなくなった。55歳(2005年)前後になると前立腺肥大の症状(前立腺がんでもあったのだが)も出ることになる。平成20年(2008年)暮れからの冬は家の暖房環境は変わらないのにすごく寒いと感じた。カロリー不足かとようやく食生活が間違っているのではと疑い始めた。
 持病の慢性副鼻腔炎に対して動物性たんぱく質が必要と(医師から教わったのか)母から聞いていた。動物性たんぱく質なら、豚も鶏もそうで栄養価は変わらないと思うのだが、私の場合は牛肉が不足すると鼻の調子が悪くなることが経験則から分かってきた。どうやら前立腺もそのようである(私はヒンドゥー教徒にはなれない)。
 特定の食べ物を好きになるということは嗜好の問題ではなく体が求めているのだと思い始めた。大の肉好きの、お笑いの寺門ジモンさん、バイオリニスト兼毒舌タレントの高嶋ちさ子さん、1年365日のうち300日焼肉と言う貴景勝関は、大きなお世話だが晩年になっても必ずしも癌になるものではないと思うようになった。
 とはいえ、痛風があるので、私自身はそんなには牛肉を食べることができない。牛肉のたんぱく質が不足状態にならないように気をつけて定期的に摂るようにしているのが実情。食べすぎれば痛風というサーモスタットが発動する。尿酸を排出する薬を飲んでいるので発症というほどにはならないが歩くとき足首や膝が痛くなって歩きづらくなる。牛肉を摂り過ぎないようにと教えてくれる。

2023.7臨時号 NO.193  にくい VS にくい(2/2)
 もうすぐ73歳になる。充分生きた。皆平等に死が訪れる。死ぬより怖いのは、無駄に長生きして認知症になり、悪夫愚父の私に尽くしてくれた良妻賢母の妻に向かって「どちらさんですか?」と言うことだ。
 好きな物を食べることを我慢して生きながらえ認知症になるのは私にとって最悪(葉真中顕氏の単行本『ロストケア』を10年弱前読んだ時介護に関する厚労省行政の理不尽さに関心が向いたが、映像化された同名映画を観て認知症による本人及び家族の過酷さを痛感した)。
 それなら好きな物を食べて癌で逝く方がましだ。知人たちを見送ってきた80歳を超えた官僚OBが70歳を過ぎれば努力するか否かはあまり関係がないと言っていた。個々人に定められた天寿次第なら、なおさら好きな物を我慢してもしょうがない。
 ただ、大酒のみは長生きしないとも言っていた。お酒は毎日呑む。卒職してから私は毎日が休日だが、肝臓には休日はない。ただ、そんなに量は呑めない。お酒の強い人は吐いてからまた呷るほどに呑む。負けん気は強い方だが、早い段階で「私の土俵ではない」と悟った。今は一日日本酒で2合程度の酒量なので、“百薬の長”の域を超えないと言え、肝臓にも支障はない。
 お酒は催淫作用や他人への攻撃性を高めたりするが、私は、理性が飛ぶほど呑み過ぎては、気分が悪くなりのたうち回るだけなので、他人にセクハラしたり、危害を加えることはない。(こんな機会は私にあるハズないが)酩酊し前後不覚になり翌朝同衾の女性から事を成したと嘘をつかれても反論できずただただ困惑するようなことは、私には考えられない(キャッシー中嶋さんは結婚前一目惚れしもうアタックした夫の勝野洋さんにそれらしきことを言ったと『徹子の部屋』?で話していた)。

 10年前ぐらいまでは歳を重ねれば肉よりも魚を摂るべきと言われていたが、今は老人こそ肉を食べるべきだと変わってきた。元々欧米人より肉の摂取量が少ないのだから、欧米人を対象にした、それも恣意的な統計もある「統計データ」をそのまま日本人に当てはめて鵜呑みにすべきではない。
 日本人は、明治以降特に戦後赤肉と牛乳で体が大きくなり今やメジャーの大谷翔平選手のように米国人に体格で勝る日本人も現れてきた。医療体制の向上もあり日本人が一番長生きするようになれば、癌患者も最も増えるのは、当たり前のことに過ぎない。体にいい物でも食べ過ぎはよくない。体によくない物でも少なく摂るなら問題ない。世界で最も雑食性が高い日本人の食生活で癌が他国より増えるとは思わない。
 もう私は原則好きな物を我慢せず食べることにしている。体重管理もできている。定期的に体重計に乗る。体重が増えれば炭水化物の摂取を調整する。お酒を呑む夕食で炭水化物である白米やパンは極力食べない。口が淋しいときは妻がお通じによいと常食している炭水化物ながらビタミンCや食物繊維も含まれるサツマイモで好きなタイプなら少し口にする。
 サツマイモは「栗(九里)より(四里)うまい十三里」と言われる。私は粉が吹いた栗のような芋(かながわブランド「くりまさり」のごとく)が好きで、今どきの甘たるくねっとりとした芋は(女も)好みではない。
 なお、芸能人が(消化されて最終的にブドウ糖になる)炭水化物を一切摂らないと発言したりする。ぶどうなどの果物やはちみつなどからブドウ糖を摂取していれば問題ないが。そうでなければ、ブドウ糖のみをエネルギー源とする脳にダメージを与える。カッコつけでないとしても、ファンがマネしないようその理由とデメリットを伝えるべきだ。それが煩わしいなら口外すべきでない。テレ朝の『関ジャム』でシンガーソングライター石崎ひゅーいさんがステージで集中力が落ちてきたらブドウ糖を口にすると言っていた。理に適っている。
 好きな牛肉も、上述の『カタヤマ』、チェーン展開する『いきなりステーキ』、浅草橋『わかき』(コロナ禍閉店)のB級グルメ店で食べていたヒレステーキも食べなくなった。代わりに、内科、眼科の病院、映画館等へ行くときにランチとして焼肉、ハンバーガーを食べるようになった。焼肉は、錦糸町『三千里』、西新井『くに家』、春日『新香園』、平井『三幸園』(大塚に移転する前)に一人で。長男ファミリーとの会食には、京成曳舟『くいどん』、新小岩『プレミアムカルビ』、北葛西『焼肉きんぐ』等に寄る。
 ハンバーガーは、45年ほど全く食べたことがないと言えばウソになろうが、食べた記憶がない。その間ハンバーグは、ピン芸人としての『ハンバーグ師匠』井戸田潤さんが叫んだ回数には届かないだろうが、数えきれないほど食べている。

 昭和49年(1974年)からの新宿支店勤務の時残業や組合オルグの際マクドナルド(以下「マック」)のハンバーガーが出されたが、日本に進出して3年が経った当時のハンバーガーを食べていつも胸やけを起こしていた。当時子供の頃から慣れさせられてしまえば日本人は味音痴になってしまうと心配の声も聞かれていた(今日本人の舌はそんなことにはなっていないようだが)。
 2~3年前病院での待ち時間が長く抜け出して簡単に小腹を満たせるかとマックに入ってハンバーガーを食べてみた。あにはからんや、中々いけるではないか(私の味覚が麻痺してるのではなく品質が向上したということか)。それから錦糸町のTOHOに行くときはオリナスにあるマックでビックマックセット(ドリンクはホットコーヒー、ポテトはサイドサラダに替えて)を頼む。
 ひとりカラオケの際は錦糸町の『バーガーキング』に寄ることが多い。ワッパーJRセットがお得なのだが、ポテトが多い。半分にしてもらうのだが、それでも多い。ポテト不足の折には残すのは悪いので、ワッパー(とてつもなく大きいと言う意味。一般のバーガーの1.4倍。661カロリーもある。ビックマックは525カロリーだとか)単品とホットコーヒーを頼んだりしていた。
 グルメバーガー店巡りも始めた。草分け的存在の人形町『ブラザーズ』(高島屋店)、上野駅『ハードロックカフェ』、本郷3丁目『ファイヤーハウス』、蔵前『McLean OLDFASHIONED DINER』、この他新宿、銀座、錦糸町にある店にも行ったが今は閉店となっている。新型コロナ禍マックなどチェーン店より割高感からリピート率が低いのが要因なのだろうか。
 肉以外の具はトマトとレタスのみでよい。simple is bestで肉を頬張る感じがよい。トッピングするなら、A(アボガド)、B(ベーコン)は不要。C(チーズ)だけでいい。
 家では、あまり牛肉を食べない。と言うより牛肉料理を作らない。少ない年金での物価高の中、ぶ分厚いステーキなど大蔵大臣の妻が許してくれない。八宝菜、回鍋肉、酢豚、家常豆腐、麻婆ナス、青椒肉絲(タケノコの代わりにジャガイモの細切りを使うので、それしか知らない娘は高校の友人たちに笑われた)など炒め物の中華料理を作ることが多く、豚肉がメイン。なお、“中華の鉄人”陳建一氏が間質性肺炎で亡くなった。過去には肺がんも。新型コロナ禍が去っても毎日鉄鍋を振り油の煙を吸う料理人はマスクをつけ続けるのがよいと思う。味見には不便だが。
 昼食にそばやうどんを食べるときには牛肉を使う。明石家さんまさんが言うように輸入肉より和牛の方がよい出汁がとれる。お店と変わらぬ味になる。ちなみに、さんまさんはうどんをいれず「肉吸い」にして食べるという。「肉吸い」のネーミングには疑問を感じていた。キスのことを昔「口吸い」と呼んでいた。肉を吸うのでなく喰らうのだから、「肉吸い」ではなく「肉喰い」ではないかと思っていた。何のことはない。「肉の吸い物」ということであった。
 なんばグランド花月1Fにあるうどん店『千とせ』の元祖「肉吸い」は、伝説の漫才師花菱アチャコの子息で吉本新喜劇の俳優であった故花紀京が二日酔いで店を訪れ、肉うどんのうどん抜きを頼んだことから誕生したと言われており、吉本の芸人で知らない人は少ないか。
 4/25の日テレ番組『それって⁉実際どうなの課ゴールデン』にてお笑いのチャンカワイさんが肉うどんを食べているときテロップに「肉吸いうどん」と書かれていた。「肉うどん」―「うどん」=「肉吸い」であって、「肉吸い」+「うどん」=「肉吸いうどん」ではない。
 ちなみに、釧路にある、昭和天皇も御幸の際寄られたことのある蕎麦屋『竹老園』の「かしわぬき」は、かしわそばのそば抜きのことだという。
 
 45年程ではないが10年以上食べなかった物もある。某社の冷凍ギョウザだ。発売から65年経ってもまだテレビでコマーシャルが流れる、いわば国民食の『日清チキンラーメン』が食べられない(コンプレックスと言っていい)、神の舌ではなくアホ舌を持つ私ではあるが、スーパーに行くと『味の素』の冷凍ギョウザと『大阪王将』との二者択一しかない場合は常に大阪王将の冷凍ギョウザを買っていた。
 東京オリンピックの折選手村でギョウザがおいしいと評判になった。それが味の素の冷凍ギョウザ(市販とは別物らしいが)と判り、「ホンマかいな? 外国選手は食べつけてないだけやろ」と思った。早速市販の冷凍ギョウザを購入し、一口食べて、「そんなわけ…ホンマやっ!」と明石家さんまさんの往年のギャグを口ずさんでしまった。それからは味の素の冷凍ギョウザも買うようになった。
 我慢していたと言えば、50年程フルーツサンドを食べていなかった。若い時は食べる機会がなかったとも言える。コンビニも立ち寄らなかった。子供の頃日曜日に父と散歩して喫茶店にて夏は氷すいか、その他の季節はフルーツサンドを頬張っていた。中年になると、それを何度か懐かしく思い出されていたが、洋菓子やアイスは食べようとしなかった。甘味はときどき小豆の大福かおはぎを食べるだけであった。今は、コンビニでフルーツサンドをよく購入する。
 歌手吉幾三さんは演歌『娘に』で「長い旅 疲れたら 時々帰れ」と唄うが、我が娘は毎週土曜孫を連れて戻ってくる。親に孫の面倒をみさせて自分の体を休ませる為に。週を追って目に見えて成長する孫の姿が見られてよかったが、愚娘は他家に嫁いだとの意識が希薄すぎる。同居の義母にどう思われているかと、私が言いかけると妻が「子供が3人もいて何もしなかったアンタは、黙ってなさい!」とピシャリ。二の句が継げなくなる(今の家庭生活は大リーグの大谷選手張りに二刀流が進んでいるが、私はジャッジ選手には及ぶべくもないが仕事だけ。家事・子育ては妻に任せきりだった。その点も妻に頭が上がらない)。
 やや小太りの妻が隔世遺伝かと心配し孫をこれ以上太らせないでとの声をよそに、私は週刊誌と孫の3時のおやつを買うためにコンビニに毎週木曜か金曜に向かう。その折、私が食べるためにフルーツサンドを買うことが多い。
 新型コロナ禍旅行は難しかったが、地方へ出かけた時はその地の回転寿司以外にもフルーツサンド専門店に寄りたいと思っていた。1泊で宇都宮に妻と行った時、都心から少し離れた『フルーツダイニングパレット』下戸祭本店に行ってきた。クリームの甘さが私の好みに一致して美味しいと思った。都内では数年前だが赤羽の喫茶店『プチモンド』は6切もありコーヒーとセットでも伊藤博文先生1枚で済む。コスパが最高だ。
 函館『ロクテンハチ』へはなかなか訪問できるものではないが、錦糸町PARCOに期間限定で出店したときに購入した。埼玉上尾・丸八青果の『先手家』が来た時もイチゴサンドを買った。フルーツサンドはイチゴに始まりイチゴに終わる。マンゴーやキウイも合うが、イチジクやシャインマスカットはそのまま食べた方が美味しいと思う。
 中年の頃成人病予防から甘い物を制限した。が、無性に食べたいとも思わなかった。この頃は甘い物も間食もするようになった。子供に戻ってきているのかもしれない。追っ付け妻に責められオムツを穿くだろう。最後は母のお腹ではなく、土に帰っていく。
 
 エリザベス女王は96歳までピンピンころりで大往生なされた。2日前まで元気でおられたという。女王自身節制され、医療体制も万全。何しろ即位から70年女王の仕事を続けてこられたら認知症にもならないのであろう。我々庶民はそうは問屋が卸さない。私は認知症になるぐらいなら癌でその前に死んだ方がよいと言っても、気が小さく「食」を含め破天荒な生活などできない。下手をするとずるずる生きながらえ認知症になるかもしれない。
 娘の親友の父親が若年性認知症になったという。65歳までを若年性と呼ぶらしい。私は8年も過ぎもうすぐ後期高齢者になるが、ネットで認知症になりにくい性格として、a.誠実で責任感の強い人、b.ストレスに強く、くよくよしない人、c.生活習慣病がない人、が挙げられていた。私は全て該当しない。
 この前の中国党大会の胡錦涛元国家主席の変わり果てた姿を見て愕然とした。人間としての尊厳を失う前にと思っても、私が死ぬ頃までに安楽死や(自身の自由意志でという意味での)尊厳死が認められることはない。
 「75歳以上が自らの生死を選択できる」尊厳死制度が出来た(架空の)社会をテーマにした映画『PLAN75』(主演倍賞千恵子さん)は、不寛容な社会にあっては却って現代の「姥捨山」にならないかと問題提起する。
 仕方なく、自ら人生を終わらせる「自殺」という選択肢をとる人もいる。『工学部 ヒラノ教授の終活大作戦』(青土社)で楽に死ねる方法を決めている先生もいる。
 手段としては多種多様にあるが、液体窒素について触れる。自殺の手段として紹介するのではなく、知らないで誤って亡くなる人が出ないように。家庭にて液体窒素でアイスクリームを作る人は少ないと思うが。
 我々素人は「窒素は大気の78%を占めているから安全」と思いがちだが、液体窒素は違う。気化すれば700倍に膨張し密室では酸欠に陥る。私は業界団体に居た時委員会で知ったが、実際30年前に北海道の大学の実験室で2名亡くなっている。昨秋封切られた、福山雅治さん主演映画『沈黙のパレード』の中でも殺人事件の手段として登場する。
 私に認知症の症状が出始めた時には、もう一人では死ねないのかもしれない。認知症ではないが保守の論客・故西部邁には自殺ほう助の罪に問われても手伝うシンパがいた。が、妻を筆頭に私が憎く早く逝けと思う人は多くても罪を犯してまで手伝ってくれる奇特な人はいない。さて、どうしたものか。
 そう思案していた矢先、PSA(前立腺腫瘍マーカー)が急に上がり、前立腺がんが10年振りに再発した(がん幹細胞が生き残っていた)疑いがあると医師に言われた。その後のCTスキャン、MRIでは転移は見られなかったが、MRIでは5mm以下の癌は映らないし、今はグレーとしか。今後PSAが右肩上がりに推移するかどうかだ。再発が確定すれば(餌となる男性ホルモンを止める冬眠させる)ホルモン療法となる。数年後癌が冬眠から目が覚めれば、抗がん剤となる。抗がん剤は使わないと決めているので、死期と悟り、出来れば在宅の緩和ケアを選択したい。
 なお、TVなどで芸能人が前立腺がんで亡くなったとの報道を目にする。強い違和感を覚える。前立腺がんは生殖に関係しても生命の維持に関係しないので、癌が前立腺内に留まるかぎり死ぬことはない。前立腺がんが、全身に(全身がん)、あるいは生命維持に不可欠な臓器(肺、肝臓、脳等)に転移し悪化した場合に亡くなる。例えば肺に転移して亡くなったのであれば、メディアは、「前立腺がんを原発とする肺がんで亡くなった」と報道してもらいたいものだ。
 愚娘に言うと「自分の好きなように生きたから、もう思い残すことはないでしょ」とぬかしおった。介護福祉士の有資格者としての発言としてはどうかと思うが、その通りで、再発だとしても怖くも後悔もない。食べ物も変えたりしない。もっとも「渡りに船」と言えるほど元気は出ないが。

(次回194号は7/10アップ予定)

2023.7 NO.192   にちいどうめい  VS  

 にちいどうめい
 昨年2022年2月24日ロシアがウクライナに軍事進攻した。ウクライナを舐めていたプーチン大統領は首都キーフを数日のうちに陥落させられると思っていたが、そうはならなかった。英米等からの支援と愛国心に燃えたウクライナ兵士の奮闘により、戦争は泥沼化している。
 遡ること約120年前1904年2月10日に日本が宣戦布告し日露戦争が勃発した。当時ロシアは日本を黄色人種の野蛮な国と見くびっていた。日本は国の存亡を賭けた大国との一戦に全国民が一丸となり、また直前に同盟を結んでいた英国の陰日向における支援もあり、大戦に勝利した。
 フランス革命の影響を受けロシアのツアーリズム(ロシア皇帝の専制政治及びその体制)の動揺は、日露戦争の敗北により内乱へ拡大し、最終的に1917年3月第2次ロシア革命が勃発し皇帝ニコライ2世が処刑され、ロシア帝国が滅亡する。
 歴史は繰り返されるのか。ウクライナ戦争に核の使用もせずに負ければ、勝っても(頼みの綱の中国習近平総書記も反対する)核を使用したなら、プーチン権威主義体制は崩壊することになろう。なんにしろ、プーチン大統領が生き残っても、世界から孤立し旧ソ連圏諸国への影響力すらも低下し、中国を宗主国とする同盟国にロシアはなり果てるのか。
 歴史に造詣が深いハズのプーチン大統領はどうしたことか。裸の王様になったのか、あるいは、噂される健康状態がことを急がせたのか。それとも、互いに毛嫌いするバイデン大統領の挑発に乗ったのか。

 日露戦争開戦の2年前の1902年1月に締結された日英同盟は、海洋国家同士の「露国の南下を阻止する」政略結婚であるが、見方を変えれば、没落しつつある貴族の令嬢が成金で社会的地位のない新興企業の青年社長、しかも黄禍論が高まっている中での日本人に、嫁ぐようなもの。
 英国としては小国日本が露国と戦争することを望んでいなかったし、戦争となってしまえば娘婿を何としても助けなければならない。日本が負けてしまえば、七つの海を制した大英帝国が世界の笑いものになる。
 平間洋一氏の『日英同盟 同盟の選択と国家の盛衰』(角川ソフィア文庫)によれば、日英同盟は、戦時の場合日英は互いに「厳正中立」を維持するという条約で、中立条約に反する武器や弾薬などの軍事的援助は出来ないとする。それでも、英国は、軍事情報や戦費の調達、仏独に対する中立維持の外交的圧力、日本への同情を高める国際的世論の醸成、露の他国から戦艦調達に対する妨害など、日露戦争勝利に大きく貢献していたという。
 当時軍事力に大きな差があった日本が露国に勝ったのは、奇跡的であり、露国の側の油断と同盟国の英国に加えて米国の支援があってこそ。日本は大国の仲間入りを果たしたけれど、実態は瀕死の状態と言わないまでも露国からのリターンマッチを受ける余裕がないことを政府は国民によく理解させるべきであった。
 日露戦争前の日清戦争(1894年7月~1895年4月)に勝ったが、得た遼東半島を中国に返還すべきと干渉する独仏露三国の軍門に下り返還した。その屈辱を晴らすべく「臥薪嘗胆」をスローガンに国民は増税に耐え、その後10年に亘り軍事力増強に努めたという(今国民は若い人を中心に軍事力の増強の必要性は認めるが、増税してまで急ぐ必要性は感じていないか)。
 日露戦争勝利で屈辱を晴らし溜飲を下げるハズだったが、講和会議で日本が12億円の賠償金の取り下げと樺太北半分の無償返還に応じた。世界はその寛容さを絶賛したが、大手新聞がこぞって「屈辱の和約」と大批判する中、激怒した民衆が1905年9月5日に日比谷焼き討ち事件を起こした。仲介した米国の大使館だけではなくキリスト教の教会まで破壊したことより米国は日本に対する同情的態度を一変させた。民衆による焼き討ちの火が燻ぶり続け36年後日米開戦の火蓋が切られる。
 昭和に入っても民衆の怒りの炎は暴走する軍部を焚きつけ、その民衆の怒りの炎をメデイアがさらに煽り、日本は奈落の底に落ちていく。ドイツ人が戦争責任をナチスだけに押し付けてはいけないように日本人も東条英機ら軍部だけにその責任を負わせてはいけない。

 ただ、現在の民衆はおとなしくなり(その一方で一部の国民がテロに走るのも)、メディアは右も左も権力を監視する第4の権力としての地位を放棄しているように見えるのも、反省の望ましい態度とは言えない。

 今から100年前に日英同盟が破棄されたあと日独伊三国同盟を締結し悪の枢軸国として連合国側に攻撃され、敗れる。それから80年弱経った今も戦勝国連合でしかない国連の中で日本は敗戦国扱いを受けている。
 現在米国と同盟を結び、日米同盟と呼ぶが、正確には同盟ではない。日米安全保障条約関係でしかない。第二次世界大戦で身に染みて日本の軍事力を恐れた米英は、憲法第9条で戦争を放棄するよう仕向けた。
 日本が攻撃されたら米国は日本を護るべく反撃するが、日本はそれができない。NATOのように相互防衛義務を負うのが同盟とするなら、それに当たらない。
 1950年の朝鮮戦争の前後から米国は日本の再軍備を指向していたが、吉田茂首相以下米国の要請に応えず軽武装を維持してきた。
 安倍政権になり、いまだ国民の支持が高い憲法第9条を触らず、(違憲との批判もあるが)集団的自衛権で米国の要請に応えようとした。「重要影響事態」(日本に関わりのある国や地域で日本の平和と安全に対して大きな影響を与えかねない状況が起きること)になれば、日本は米国の後方支援ができる。「存立危機事態」(放置すれば日本も同様の被害にあう可能性が高く国としての存立が危機に立たされている事態)であれば、必要最小限の武力行使による自衛が可能となった。
 その後、安倍政権下河野防衛大臣が突然イージス・アショアの配置の断念を発表し、「敵基地攻撃能力」の保有が浮上する。初めてそれを聞いた自衛隊幹部OB3名がBS情報番組で「防衛措置の代替なら防衛措置がしかるべき」と憤慨していた。しかし、その内メディアによく登場する一人はしばらくして評価へ態度を変えていく。外交を司る外務省OBも「防衛より攻撃の方が安上がり」と痴れたことを言い出した。
 解せぬ、とずっと思っていたが、岸田政権がその答えを示してくれた。「防衛費GDP2%、5年で43兆円」が答え。自衛隊は弾薬等の不足が解消されると喜ぶ。財務省は防衛費増額を大義名分として増税路線を拓く。防衛予算の増枠を政治家は利権として奪い合う。米国に貢いだ岸田首相は、バイデン大統領の覚えめでたく、たとえ自国民から見放されても心強い。
 習近平総書記が失政する可能性もあり時期がズレるとしても近い将来中国が経済力、軍事力両面において米国を凌駕することは有力視される中で対抗上米国が日本の軍事力に期待するのは想像つく。日本政府が拒否しない。否、拒否できないのであれば、米国の要請に応える代わりに、真の独立国となれるよう、地位協定等の見直しを求めるべきである。
 現在、横田空域は、東京西部にある在日アメリカ空軍横田基地を中心に、南北で最長約300㎞、東西で最長約120㎞の、1都9県に及ぶ広大な空域。高度約2450mから約7000mまで6段階の高度区分で立体的に設定され、日本の領空ながら、米軍が航空管制している。
 吉田敏浩氏の『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』(角川新書)によれば、同じ敗戦国ドイツ、イタリアでは「自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立させ、米軍の活動をコントロールしている」という。
 日本もそうできるよう米国に要請すべきところだが、米インド太平洋軍(司令部・ハワイ州)で、在日米軍の各軍種を束ねる統合運用の指揮権を在日米軍司令部(東京・横田基地)に付与することを米国検討しているという。
 米国にとっての当面の最大の懸案は台湾有事。日本が「反撃能力」の対象について、相手国領域内の基地だけでなく、指揮統制機能や相手国の「中枢」への攻撃を対象にしているぐらいだから、台湾有事が起きれば真っ先に横田基地が狙われる。
 正義感からのきれいごとでは済まないもののコストとリスクを負った“世界の警察官”の座を降りたら他国を犠牲にして利を得る身勝手な国に成り下がった?(今のバイデン政権だけなのか。米国内の分断が80代の老人を再選させるなら米国離れは加速しよう)米国は好戦的ながら自国を戦場としない。その為にハワイから横田に移すとも言えまいか。しかも、米国が台湾海峡や日本で人民解放軍と交戦しても(米国本土が攻撃されないよう)中国本土には攻撃しないなら、まさに日本はウクライナの二の舞にされてしまう。
 日本が戦場(日本の米軍基地が攻撃されれば台湾有事ではなくまさしく日本有事)とならない為には、米国に盲従するのではなく、何としても台湾有事が起きないよう最大限の外交努力が不可欠。属国では身動きが取れない。その意味でも真の独立国になる必要がある。
 米国の要請に対し今の国民に誤魔化しながら日本の軍事力を増強しても米国の属国から抜け出せることはできない。
 安保法制だけでは、憲法第9条を改正しない限り、どんな時でも米軍を助けられるという訳にはいかない(米国も議会の承認を盾に日本を助けない場合も起こりうる)。
 属国から抜け出せない「自衛隊明記」と論外の「緊急事態条項」による改憲ではなく、平和国家の看板を降ろし、抜本的な第9条の見直しにより真の同盟条約の締結、真の日本独立を果たすのか、それを主権者たる国民にきちっと政権与党の自民党は問うべきであろう。国民がYESと言うか分からないが。
 国民が反対するならその声を盾として米国の無理な要求を拒むこともできる。そんな駆け引きが宏池会政権なら可能と期待したが、清和会政権より対米従属的とは思わなかった。
 属国としての日本から何のバーターも求められず43兆円(すべてではないにしろ)も朝貢してくれるなら、バイデン大統領にとって岸田首相に対して「真の友人」との賛辞ぐらいのリップサービスはまことにお安い御用であろう。
 5/11付け日テレNEWSから、タイム誌が発表した次回号では、表紙の顔に岸田首相が掲載され、「日本の選択」とのタイトルで「岸田首相は何十年も続いた平和主義を捨て、日本を真の軍事大国にすることを望んでいる」と記されていると報じられた。
 外務省はクレームをつけたが、フェイクニュースの類ではなくタイム誌がそう感じとっただけだろう。岸田首相の首相としての行状からすれば、私自身も違和感は覚えない。
 G7広島サミットは、世論では評価の方が上回るが、私は評価しない。核被災地広島がシンボルとなる「核廃絶・平和希求」に向けて岸田首相は議長として指導力を発揮できたとは言えない。広島で開催したことが却って岸田首相が信念の無い政治家との見方を強めさせたのではないかと思う。
 核軍縮に関する「広島ビジョン」の内容が後退したことに関して、カナダ在住の被爆者サーロー節子さんは「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と厳しく批判した。歌手松山千春氏が自身のコンサートで紛争を解決する為のG7に対し「武器、戦闘機までくれというゼレンスキー大統領だけ呼んでどうする」との主旨の発言があったことを鈴木宗男議員が紹介しそのとおりだとした。
 こうしたG7の姿勢に対して、拡大会合に参加したブラジルのルラ大統領は「ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援する米国のバイデン大統領はロシアへの攻撃をけしかけていると批判した。平和実現のためには『意味がない』と述べ、ウクライナ問題はロシアと敵対するG7の枠組みではなく国連で議論すべきだと訴えた」という。新興国の協力を得るために参加してもらったのに批判されてしまった。

 今や大国のエゴに唯々諾々と従うグローバルサウス(以下「GS」)ではないだろう。G7の影響力はますます低下していくのではないか。
 日本は、今のままではGSへの働きかけは容易ではない。経済力も低下し、唯一の被爆国なのに核兵器禁止条約ではなく核大国の既得権を守る核兵器不拡散条約(NPT)維持に尽力している。GSからも米国の属国と見られていよう。

 GSへの影響力を有するのは9月に行われるG20の議長国インドとなるか。インドは、経済成長著しく、さらに不公平としてNPTに不参加であり、GSに対する求心力を発揮できる立場にあろう。

 2022年11月臨時号 NO.181 (「きしだVSききだ」)にて佐藤優氏が紹介した東郷和彦外務省元キャリア官僚の「官僚観」(「官僚」には4通りある。それは、第一が『能力があり意欲もある』、第二が『能力があるが意欲がない』、第三に『能力がないが意欲はある』、第四が『能力がなく意欲もない』のどれかだ。どれが最低かといえば、『能力がなくて意欲がある』ヤツだ)をとり上げ、それを準用して、岸田首相を『能力があるが意欲がない』と品定めした。が、それを取り下げる。代々の議員世襲家としての首相と子息(前首相秘書官)との関係性だけを見ても失望する。

 天下の開成高校卒を買い被りしていた。ある意味安倍元首相以上だ。米中対立の中トランプ共和党政権と安倍政権はロシアに対し敵対行動をとらなかった。トランプ政権が続投していればウクライナ侵攻はなかったハズだ。

 岸田首相は、プーチン大統領に敵意をむき出しにするバイデン民主党政権に追従した結果、海洋進出を目指す中国と緊張関係にあるのにそうでないロシアまで敵に回した。二大核保有軍事大国は日本海のすぐ対岸にあるのに。
 絶えて久しい官僚出身(官僚派)の首相の再登板が再三必要と言っているが、その意味では岸田政権が迎え入れた齋藤健法務大臣(元通産官僚、元農水大臣)に期待する(週刊新潮も注目しているのか。3/16号で『美人秘書官を連れまわす』と題して、セクハラ批判ではなく、ワーカホリック気味な大臣が秘書を酷使していると言われないよう、総理を目指すならまず自身の足元を見直せばと新潮が気遣う?)。
 いきなり首相とはいかないから、次の内閣改造の折に、斎藤大臣を官房長官に登用すべきだろう。3K(「志」「教養」(歴史観)「気骨」)のある官僚出身の官房長官なら、首相の盾にも矛にもなれるし、矜持とプライドを捨てたヒラメ官僚ではなく、志のある有能な官僚を結集できるのではないか。

 1923年8月17日に日英同盟は失効した。圧倒的な経済力を背景として世界を制する覇権国家の地位が、第一次世界大戦後英国から米国に替わる過程において、中国における日米の利害衝突とともに、海軍力において日英連合>米国を解消させるために日英間の分断を米国が図った。

 英国は離縁されるのを望まなかったが、駐米大使の幣原喜重郎が日英同盟を破棄した。破棄した幣原を日本が世界から孤立化する元凶と呼ぶ人もいる。たしかに悪手ではあるが、「敗着」を言うなら、ドイツと同盟したことであろう。それで新旧覇権国の二大海洋国家である米英を敵に回してしまえば、日本には悲惨な結末しか残されていない。
 その100年後日英がまた連携する。日本の自衛隊と英軍の共同訓練等に向けた「円滑化協定(RAA)」が結ばれた。その前の昨年末には、空自次期戦闘機の「日英伊同開発」の合意が得られたとする。元海将香田洋二氏は著書『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(中公新書ラクレ)で「アメリカの戦闘機と競争してどうする」と懸念を示す。怒っても不思議ではないハズの米国も、上手くはいかないと思い、高みの見物を決め込んでいるのか。
 今回の日英の連携は120年前とは意味合いが違う。植民地だったインドに名目GDPが抜かれ、ブレグジットの後遺症もあり、首相に足る男性議員がおらず(ならばと女性議員が手を上げ結局女性議員の評価を落とす)、国防省等がウクライナ戦争でプーチン死亡説などピンボールを投げることからすれば、もう昔の栄光ある英国とは思えない。騎士道の矜持を見失った英国と武士道を忘れた日本。輝かしい日英同盟が復活する訳ではない。軍事面の観点からすれば、今のところ米国を宗主国とする第1同盟国英国とよくて第2の(準)同盟国の日本とが連携するに過ぎないのでは。

 英国の新首相となったスナク首相ははっきりと「中国離れ」を明言した。短期間で退陣したトラス前首相の頃に、英国を「実利主義の国」と言う財務省の縄田恵子氏は『英国と中国の二国間関係 ~実利主義の国・英国の対中戦略~』と題して「・・・大きな市場規模を持つ中国との完全なデカップリングは困難な上、HSBC等、香港・中国との関係が深い金融機関の存在もあり、今後、中国に対して敵対的で鋭い言説が増える可能性はあるが、実際の行動との間のギャップは広がるかもしれない。」と述べている。米国の退潮が隠し切れなくなった時英国は中国と同盟することはないのか。
 覇権国の挑戦者としての中国は、かつて日英に対して米国がしたように、ゆくゆくは欧米の間に楔を打ち込んで来よう。そう私は思ったが、そうする前に中国にとつては望外にも、元々米国と一枚岩でない仏国のマクロン大統領が台湾問題について「欧州は米中に追従すべきでない」と訪中後発言した。西側の結束を揺るがすと批判を受けたマクロン大統領は発言を修正したが、「米同盟国は下僕でない」と意地を示した(武士の末裔にあたる日本の政治家は何と聞く)。
 日本は、結果論的には、パックスブリタニカのときは覇権国英国と同盟し、パックスアメリカーナの今は米国と(準)同盟関係にある。2度あることは3度あるのか。いずれパックスチャイナの時代が到来すると見られている。また日本が時の覇権国と同盟関係を結ぶことはどうなのか。
 戦前「鬼畜米英!」と叫んでいたのに負けたらゴロニャンと米国に従順になった。今国民のほとんどが反中だが中国が覇権国なれば宗主国と仰ぎ見る、そんなことは絶対起こり得ないと言えるのか。それとも、専守防衛で自国を戦場とする日本が自国を戦場とはしない米国との一蓮托生を続けるのか。

 永世中立国のスイスはその看板を降ろしてしまったが、米中の狭間の中で中立国となること(私は“平和大三元論”として、「青牌」の米国と「赤牌」の中国との大国の間で日本が傲慢な盟主ではなく世話役としてアジア諸国を束ねる「白牌」になるべきとしたが)はもうあり得ないのか。

 爺の私はそれを見届けることはできないだろうが。
 右派系左派系を問わずBS情報番組での軍事研究者らによる連日のウクライナ戦争の戦況分析等はもう十分だ。我々庶民がウクライナ戦争から学ぶべきことは、ウクライナ兵の奮闘ぶり、(裏で女性や子供が悲惨な目に遭っている中での)ウクライナ住民の忍耐力と辛抱強さではなく、いかに戦争に巻き込まれないか、代理戦争させられないかということだ。
 パックスチャイナの後、人口世界一、GDP世界5位のインドがパックスインディアーナの時代を迎えよう。世界は、現覇権国米国、囲碁型陣地拡大で覇権を狙う中国、我が道を行く印国を核とする3極化し、より複雑化していく。

 その中でどう日本が生き残るべきか。BS情報番組には、右派左派交えての真剣な「政治」の話を取り上げてもらいたい。
(次回193号は6/20予定)

2023.6 NO.191 さいこう!  VS さいこう!
 本号では日本中が湧きかえった野球WBCを振り返る。漫画のラストシーンのごとく、日本チームの主砲がクローザーとして登場して最終回2アウトで米国チームの主将でMLBの現役最強打者トラウト選手と相対峙する。3ボール2ストライクのフルカウントとなり、世界中が固唾を呑む中大谷投手が芸術的と形容してもおかしくない進化系スライダー(スイーパー)で空振り三振に仕留めて、ゲームセット。日本代表チームが優勝した。
 エンゼルスの同僚で互いに尊敬しあうトラウト選手ではあるが、優勝を逃した上大谷選手の引き立て役になったので、内心非常に悔しい思いをしただろう。3年後の大会にもリベンジの為尽力するのではないか。今回今までの大会以上に盛り上がったのは、米国代表チームにナ・リーグの昨年MVPのゴールドシュミット選手、三塁手として10年連続ゴールドグラブ賞の受賞及び2015年・2016年の打撃二冠達成のアレナド選手、ナ・リーグ昨年ホームラン王のシュワーバー選手、MLB史上最多タイの3度のサイクル安打達成のターナー選手等メジャーのスター野手が揃ったということであり、それはトラウト選手の呼びかけの賜物。
 今回日本に負けたのは投手陣の差もあるだろう。次の第6回には、サイ・ヤング賞を3度受賞しているカーショー投手、シャーザー投手、バーランダー投手、2度受賞のデグロム投手のほかにヤンキースのエース・コール投手等が参加すれば、日本代表連覇の最大の難敵になろう。出場には米球団の理解が必要だろうが。

 父親が米国人で母親が日本人のラーズ・テイラー=タツジ・ヌートバー選手は、メジャーリーガーだが、ナ・リーグは観ていないので全く知らなかった。彼は聞きしに勝る大のmama's boy(ママっ子)で子供の頃から日本代表チームで活躍することを夢見ていた。栗山監督の依頼を受けた水原一平氏(大谷選手の通訳)がヌートバー選手に打診したという。
 他に優れた日本選手がいるのにと外野では起用に反対の声もあったが、日本代表チームは、たっちゃんTシャツを着て出迎えた。大谷選手は率先してヌートバー選手の出塁時のペッパーミルのパフォーマンスをマネした。日本語も話せない不安な彼を皆が暖かく支えた。
 それに応え、彼は大活躍した。とくに日本ラウンドでは打撃は“切り込み隊長”として、守備もファインプレーを連発した。試合前の円陣においても、2度ほど英語で皆を鼓舞した。最後の檄(げき)を飛ばす時日本語で最高!と聞こえ一瞬「?」となったが、当然「さぁいこう!」ということであった(最高!と言ったのは、シャンパンファイトで仲良しの村上宗隆選手と一緒に岡本和真選手が。天然キャラの岡本選手はお立ち台でも「最高です! 」を連呼した)。
 ヌートバー選手については、WBC終了後も、カージナルスでの成績(試合はほとんど観ていないが)を毎日確認している。WBCの勢いそのままに開幕戦2番に入り活躍が期待されたが、突き指にて戦列を離れたのは不運であった。復帰後の米時間4/15、16の両試合共四球が3で相変わらず選球眼がよい。今も出塁率は0.432と高出塁率を維持している。
 注目された米時間5/3の大谷投手との対戦は3連続三振に終わったが、翌試合は4安打の固め打ち。打率も0.289と上がってきた。外野守備の美技もファンの心を掴む。このままレギュラーに定着し“切込み隊長”として活躍していけそうだ。

 大谷選手については昨年から出場試合をほぼすべて観て成績も自分なりに記録している。大谷選手の今季1か月余りをふり返ると、昨年の“投高打低”から“投高打高”になりそうなよい滑り出しを見せている。
 投手としては、ピッチクロックの影響により、米時間5/8(日本時間5/9)時点の四死球率は5.77で(2021年3.74、2022年2.49)が悪化しているが、被(安)打率は0.125である。とくに開幕数試合は試合を支配しマウンド上で余裕があった。
 米時間4/27の登板は3回まで完全試合で防御率が0.58となりグレイ選手の同0.62を抜いてメジャーリーグ全体で1位に躍り出た。また、かのノーラン・ライアン選手のエンゼルス時代の本拠地33イニング無失点記録も抜いた(35イニング)。

 続く4回に味方が5点をとり、勝つのは確実で投手部門で月間MVPは当確と思われたのだが。
 ところが、好事魔多しか、突如4回の登板で乱れる。足の速い先頭打者に死球をあたえる。それは完全試合が途切れただけ。その後盗塁を許し、ノーアウト2塁となるも、地区断トツ最下位のアスレチックス相手に5点もあるのでこの回の1点は仕方がないと思えばそれで済んだはずたったのだが。ホームラン2本、5点を献上してしまった。
 次の試合米時間5/3のカージナルス戦で立て直すと期待したが、初回ホームランを打たれたのを観て、今日は負け投手になるかと嫌な予感がした。
 昨年の悪夢が蘇る。米時間2022年5月26日のブルージェイズ戦、続く同6月2日のヤンキース戦でともに初回先頭打者にホームランを打たれ、ブルージェイズ戦は2ホーマー、5失点、ヤンキース戦で3ホーマ―、4失点で、両試合敗戦投手になった。
 嫌な予感どおり、魔の4回にホームラン1本を含む3安打を許し3点を献上した(5回4失点13Kで降板。“逆なおエ”で負け投手にはならなかったが)。ピッチクロックに急かされる中ランナーを背負った時に投球メカニックが狂うことの修正が課題となった。
 サイ・ヤング賞受賞の呼び声も高いが、ピッチクロックに煩わせられる今季の大谷投手は、前季先発登板28試合の中複数被本塁打は3試合しかなかったが、今季は既に2試合。

 7度のサイ・ヤング賞受賞の剛腕ロジャー・クレメンス投手より、5,714奪三振が燦然と輝く史上最強投手ながら一度も受賞していない豪腕ノーラン・ライアン投手を彷彿してしまう。
 今季の受賞争いのライバルには、ロケットスタートで強豪チームがひしめく東地区で首位を独走するレイズのマクラナハン投手(勝利数トップの7勝)もいるが、一番の強敵はヤンキースのエースにてまだ未受賞のコール投手と言えるか。米時間5/8(日本時間5/9)時点で、8試合登板、勝利数5、防御率2.09、奪三振数58、奪三振率10.10、被安打率0.197。
 足し算の、勝利数と奪三振数は、屈強打線と強力リリーフ陣に支えられて中4日で投げるコール投手に対して、中5日の大谷選手(7試合登板、勝利数4勝、防御率2.54、奪三振数59、奪三振率13.62、被安打率0.125)は試合の消化が進むほど分が悪くなっていく。  

 ピッチクロックに加え、今季から全チーム総当たりとなり初めてのマウンドに立つことも投球メカニックに影響を与える。その中では容易とは言えないが、昨季上記ヤンキース戦での3.99から最終2.33まで下げたように、2.54に悪化した防御率をこれから1.5前後までに下げていき、割り算の、防御率、奪三振率、(今メジャー全体でも1位の)被安打率で対抗していくしかない。
 打者としては、大谷選手は、今季からバットを1インチ(2.54㎝)長くした。今季ホームランは4月だけで7本(5月はまだホームランがない)。打った7本のホームランはすべて変化球のみ(スライダー3、チェンジアップ1、カーブ1、シンカー1、カットボール1〔特大の第7号はスライダーでは。138キロしかないし〕)。
 ホームラン46本の2021年のオールスター直前からカウントを取りに来た速球、とくに95マイル(153キロ)以上の速球を仕留めることができていない(解説の山下大輔氏が言うように、相手投手が警戒してまともなストレートを投げてこないこともあるか)。

 それが改善されれば、本命ジャッジ選手は右股関節負傷欠場もあり昨年の勢いはなさそうで、ホームラン王も夢ではないが。
 打率は、大谷シフト(守備シフト)が禁止されて、開幕前3割もと期待されていた。1、2間を抜くヒットがとくに増えたとのイメージはないが、米時間5/8時点で0.301と好調さが窺える。昨年もそうだが、打率が下がってきても、0.25まで落ちると反転する。大谷選手は悪くても4回に1回は安打できる実力をMLBでも備えている。
 フルカウントでのパフォーマンスの改善を大谷選手が今季の課題に挙げていると紹介されたが、3-2からの打撃成績は米時間5/8時点の27機会で、四球5、ヒット1、打撃妨害1、三振11、アウト9。四球5に対し三振11で、それだけを見ても、今のところ改善されたとは言えないか。
 二刀流は疲れる。疲れが出ると、投手では、球にキレがなく160キロ以上の球も出にくくなるが、それでも悪いなりに大谷選手は抑えられる。が、打者では、振り遅れる、スイングが波打つ。シーズンの終盤になると力まないと振れないのか引っ張るような打ち方になりホームランが出ずゴロが多くなる。打者の方が影響が大きいと思う。

 より問題である疲れた時の打撃力の低下に対して、バットを長くするのは逆効果ではないかと素人の私はそう思うのだが。常識を超える大谷選手のバッティングが暑く疲れも出て来る7月以降実際どうなるか注目したい。

 私はメジャーの大谷選手の出場試合はほぼすべて観ていると言ったが、日本の野球は全然観ていない。恥ずかしながら、日本野球を代表する選手については、160キロ以上の球を連発し、完全試合も成した佐々木朗希投手、史上最年少三冠王の村上宗隆選手ぐらいしか知らない。
 WBCで投げた佐々木投手は強心臓だ。大谷選手と同様大舞台でどうじない。二人は同じく岩手県南部育ち(大谷選手は県内陸南部の奥州市、佐々木投手は県南東部の陸前高田市)。
 故祖父江孝男の『県民性の人間学』(ちくま文庫)によれば、岩手県人は、「粘り強く、たくましい人柄」という。寡黙さは東北人全体の特徴ではあるが、雪深い県北部は宮澤賢治、石川啄木のごとく家で読書にふけり思索的になるのとは違い、県南部の県民性はより行動的であけっぱなし(開放的)で発展的であるという(なお、大谷選手は県北部の気質も兼ね備えている。飲み会、合コンよりも独りで本を読むのを好み、理知的。女性にとって理想の結婚相手か)。
 メジャーリーグ挑戦が確実とみられる佐々木投手は、メジャーリーグに転戦するまでに時間がある。豪速球とフォークだけではメジャー打者に対応されてくるのでは。会得したスライダーを大谷投手のような変幻自在のスライダーにレベルアップする必要があるか。
 それ以上に、故障もせず中4日で先発続けられる(規定投球回数162イニングには登板試合毎6イニング投げるとしても27試合登板が必要)強靭な肉体と体力づくりが課題となろう。また、クローザーが先発しているような投げ方から、大谷投手も変えたように、初めチョロチョロ、中パッパの、いわゆる炊飯投法を覚えないと現行中6日を中4日することは難しいのでは。
 今回のWBCの日本代表チームの試合をすべて観て、日本で優れた選手が多くいると分かった。山本由伸投手、今永昇太投手、(20歳で代表入りの)高橋宏斗投手や私と同じ172㎝ながらメジャー移籍もなるほどと思わせる吉田正尚外野手に、感銘すら覚えた。
 とくに、沢村賞をパ・リーグ所属選手として初めて2年連続で受賞した山本由伸選手は、178㎝で、大谷選手193㎝、ダルビッシュ投手196㎝のような威圧感は感じない。が、球が速く球種が豊富(ストレート、フォーク、カーブ、カットボール等)で制球力も抜群で、私は巨人の元エース桑田真澄選手(174㎝)を彷彿する。背番号も18番になったことでもあるし。
 今回のWBCで日本代表チームが史上最強と謳われていたが、私自身は半信半疑であった。が、その通りだと理解することができた。とくに日本の投手は十分メジャーに通用する。(プレーヤーの飛距離が伸びればコースを伸ばす)ゴルフと違って市街地の箱の中で行われる野球は外国人投手が170キロを平気で投げる時代にならない限りマウンドとホームの距離18.44mは不変だろうし。

 明るく楽しくチーム一丸となった今回のWBC優勝は、表のMVPは大谷選手であるが、影のMVPは最年長ながら兄貴面せずフレンドリーに皆と接したダルビッシュ選手だ。米紙も「メジャーリーガーとして唯一、(所属球団の)春季トレーニングに参加せず、若い選手たちとの友情を築くために日本のトレーニングキャンプを選んだ」とその献身的な姿勢を讃えた。
 そして、その2人を擁した黄門ならぬ栗山監督は、故野村監督とはタイプの違う名監督となった。3年後の日本チーム監督は今まで以上にプレッシャーが襲う。貧乏くじを引かされるのかとの日銀総裁とは事情が違うが、優勝以外批判されそうなら成り手がいないか。3年後も大半は同じ選手になるだろうし、栗山監督の再登板でよいのでは。恩師の栗山監督でさえ大谷選手への応対は易しくないようだし。
 来年、夏のパリ五輪や11月に開催が見込まれる第3回プレミア12(世界のトップ12の各国・地域代表がWBSCにより招待されて競われる国際大会)には栗山監督が采配を振るっているかも。
 第5回WBCを制した日本は5大会で3度優勝したことになる。サッカーのブラジルはWCの第1回~第9回で3回優勝(故ペレが全て貢献。通算では5回)した。サッカーで喩えれば、MLBは、メッシ選手がバルセロナにC・ロナウド選手がレアル・マドリードにいた頃のスペインのリーガ・エスパニョーラに相当し、世界一である。が、日本代表チームは国の代表チームとして世界一。当然世界ランクも1位である。日本はもう“野球界のブラジル”と言ってよい。

 野球の日本代表チームは5大会すべてベスト4以上(第1大会、第2大会、第5大会は優勝)。サッカーの日本チームは、予選ラウンドを突破したベスト16止まり。ベスト8の前には大きな壁が立ち塞がる。昨秋のカタールで開催されたWCのベスト8(選手敬称略)は、優勝国アルゼンチン(メッシ:背番号10、キャプテン)、準優勝国フランス(エムバペ:同10)、ブラジル(ネイマール:同10、キャプテン)、クロアチア(モドリッチ;同10、キャプテン)ボルトガル(C・ロナウド:同7キャプテン)、イギリス(ハリー・ケイン:同9、キャプテン)、オランダ(フィルジル・ファン・ダイク:同4キャプテン)、予想外のモロッコ(ロマン・サイス:同6キャプテン)。
 ベスト8では、ほとんどが得点力もあり、強烈なリーダーシップのあるFWやMFのスーパースター選手がいる国ばかりだ。しかも、年齢からまだキャプテンになっていないエムバペを除けばみなキャプテンとなっている。ディフェンダーのキャプテンは、オランダ(現役最高DFとの呼声高いダイク選手)、アフリカ初のベスト4のモロッコ(ロマン・サイス選手)のみ。
 日本の歴代キャプテンを見ると、中田英寿選手を除いて、井原正巳選手から吉田麻也選手まで、ディフェンダー、ゴールキーパーがキャプテンを務める。日本人の特質“和の精神”からするとチームの心が一つになるには良いのかもしれないが、厳しい決勝ラウンドで自らの一発で苦境を打開することはディフェンダーではできない。PK戦で真っ先に蹴り成功させて、オレに続けと鼓舞できるストライカーが必要だ。今回の野球の日本代表は、実質キャプテンとしてまとめ役としてダルビッシュ選手がおり、試合の柱として大谷選手がいて優勝した。
 サッカーでの試合の柱と言えば、故ペレ以降エースナンバーとなった10番をつけた選手だとすると、日本代表における歴代日本選手を見ると、敬称略で、名波浩、中山雅史、中村俊輔、香川真司など卓越した技術をもったファンタジスタが多いが、決定力に欠ける。背番号10番以外では、中田英寿、小野伸二、本田圭佑、大迫勇也がいるが、やはり世界の中では決定力が高いとは言えない。
 1968年メキシコ五輪で日本の銅メダルに貢献し得点王となった釜本邦茂氏を継ぐストライカーが55年経っても現れていない(野球では、王選手を継ぐ大谷選手や村上選手が現れているが)。野球よりサッカーの方がより素人の私には説明できないが。

 ただ、5大リーグより格下だが、スコットランドリークで古橋亨梧選手が、ベルギーリーグで上田綺世選手が、20以上ゴールを決め得点王争いしている。
 この二人より今柱の候補と言えるのは、5大リーグに名を連ねる、プレミアリーグのブライトンに所属の三苫薫選手とリーガ・エスパニョーラのレアル・ソシエダ所属の久保建英選手が挙げられよう。
 試合の中で中心的存在になる日は、三苫選手(プレミアリーグのアーセナルへの移籍の噂はあるが、ファンは噂にすぎないと見ているか)がトップチームでレギュラーとして定着する、久保選手がレアル・マドリードに復帰するかバルセロナのような強豪チームに移籍し存在感を示すときであろう。
 Sportivaの記事によれば、解説者の風間八宏氏は、もう一皮むけるには、三苫選手は、マークされてもボールを受けられるか、狭い場所でも相手を外すことができるようにすることだとする。相手の前でプレーしていることが多い久保選手は相手の視野から消える動きを覚えることが必要と言う。

 来年2024年にはパリ夏季五輪もあるが、2026年は、2月にスノーボード・ハーフパイプの平野歩夢選手の二連覇が期待される冬季五輪がイタリアのミラノとコルティナダンペッツォで共同開催される。その後3月にはWBC(第6回)が開催される。6月か7月にはサッカーのWCがアメリカ、カナダ、メキシコの3か国の共同開催にて実施されるという。
 2026年また日本中がスポーツで熱狂する。1,000日は短くないが、待ち遠しい。

(次回192号は6/1アップ予定)

2023.5臨時号 NO.190 アナ・デ・アマス VS

アナ・デ・アマス
 旧統一教会との関係の方が問題となっているが、細田衆議院議長のセクハラ疑惑はどうなったのか。議長は否定しているが、セクハラをする気持ちは議長になかったとしても相手の女性がセクハラと思えばセクハラとなろうが。

 私は、実際何があったか仔細にではなく、それは若い頃からの裏の顔として他の議員らが知っていたのか、それとも老いによる「色ボケ」なのか、ということに関心がある。
 15年以上前のこと。細田議長と同じ東大法学部卒の官僚OBが80歳を過ぎてから官能小説を書いたから本にしたいと言っているのを小耳に挟んだ。私は普段の言動からは想像すらできず、その時は裏の顔があるのだと理解した。しかし、少し欲ボケの兆候もあったと思い返すと、老いによる色ボケだったのかもしれないと今は思い直している。
 カミソリと呼ばれた官房長官故後藤田正晴は、晩年頻繁に脳の検査を受けていたと、たしか保阪正康氏の本に書かれていたと思う。墓場まで持っていくべきことを頭が壊れて話してしまうこと恐れての行動ではと見られている。
 新自由主義の旗頭、米国レーガン大統領と英国サーチャー首相は分刻みの激務から一転引退後身の回りを含めて自身ですることがない為か認知症になった。国のトップならケアは万全かもしれないが、私は死ぬ時まで家族に迷惑を掛けたくない。認知症になる前に癌で逝くことを選びたい。意図的に癌になることはできないが。
 悪い頭をひねり本ブログエッセイを書き、ひとりカラオケに精を出し、毎日自身の昼食を作り夕食も妻の分も一緒に作り(粗大ゴミ扱いされない為もある)、認知症予防に努めている。が、最近色ボケに対して心配になってきた。色ボケも、賢しい人だけでなく、誰にでも起こりうる。
 66歳で卒職し、もう夜更かししても構わないのだが、5年を経過した時点までは深夜にR-15の映画を観ることはなかった。
 昨年3月頃WOWOWにて韓国の官能映画特集が連日あった。韓国の著名な官能映画は今まで観たことがなく眠い目をこすりながら連日観ていた。韓流映画・ドラマに関心が高くなってきていたので、その延長として思っていたが、老いにより頭が壊れることを考えれば、私は単なるスケベから色ボケへ天国への階段を一段上がろうとしているのかもしれないと思うようになった(心配しているうちは大丈夫だが)。金も権力もなく、仙人のような生活では、外で問題を起こすとはないと思う。が、色ボケになってしまえば、家人から指摘されても「色ボケてない」と言い張るのだろう。
 その矢先、前立腺がんが10年振りに再発した疑いがある(この癌では珍しくないらしい)と医師に言われた。40年以上前に観た『エイリアン』(初作)を思い起こした。宇宙貨物船の乗組員の体内に侵入したエイリアンが腹部を破って飛び出してくるのだが、その前にその乗組員が異様な食欲を見せ無茶食いする。それと同じで、色ボケではなく、男性ホルモンを餌とする前立腺がん幹細胞が私を操ったのか。それは、さすがに荒唐無稽と言われるか。
 何にせよ、癌の再発が確定すれば、男性ホルモンの産生を止めるホルモン療法を受ける。ホルモン療法を受けるとどう変化するかは本ブログ2021年7月臨時号NO.155(「アンポVSインポ(1)」)で触れたが、一言で言うと、私としたことが性的なことに関心が向くことが全く無くなるのである。そうなれば色ボケも他人事となることだろう。

 ともあれ、韓国官能映画への理解が少し進んだ。儒教の国韓国ではR-18でも原則ヘア等映らない。WOWOWはR-18をR-15に変更してボカシを入れているが、あまり意味がない。
 それでも驚いた。『スキャンダル』(公開2003年)では純愛ドラマ『冬ソナ』で日本でも人気沸騰したぺ・ヨンジュン(180㎝)さんの初の主演映画がR-18の官能映画。『情愛中毒』(同2014年)では米映画のリメイク版『ゴースト もういちど抱きしめたい』(2010年)で松嶋菜々子さんと共演したソン・スンホン(180㎝)さんが女優のきわどい所をまさぐり、同じく同年公開の『愛のタリオ』にて『私の頭の中の消しゴム』でヒロインのソン・イエジンさんの相手役を務めたチョン・ウソン(187㎝)さんが尻丸出しで裸の女優と絡む。今や人気NO.1のコン・ユ(184㎝)さんまでが『男と女』(同2016年)で韓国を代表する女優の一人チョン・ドヨンさん(上記ペ・ヨンジュンさんの相手役でもある)と裸でラブシーンを演じる。    
 韓国でAVが表向き禁止されているからとはいえ、スター俳優がポルノ男優の役割を担わなくてもと思うが、それをしないとトップスターとは認められないのか。「リアリティ」の追及という側面もあろうが、独身、高身長のイケメン俳優が鍛えて引き締まった裸の上半身を見せるだけでは韓国の女性はセックスアピールとは感じないのか。それでは儒教で抑えなければどうなってしまうのか。                        
 日本では、故石原裕次郎、小林旭さんなど大スターはあってもキスシーンまでか。今でも(岐阜の「信長まつり」での女性ファンの様子を見ていたら)木村拓哉さんを初め福山雅治さんなど人気俳優が尻丸出しで丸裸の女優と絡まっていたら日本の女性は悲鳴をあげるのではないか。                        
 女優の方は、他の映画界と同じく韓国映画界においても、脱ぐのが大女優の道となっている。上述のチョン・ドヨンさんは、(私は未観だが)1999年の『ハッピーエンド』の脱ぎぷりが評判を呼んだという。それ以降韓国の多数の賞に輝き2007年の映画『シークレット・サンシャイン』で第60回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞している(男優は、昨年の『ベイビー・ブローカー』で名優ソン・ガンホさんが初めて受賞している)。今では韓国を代表する演技派女優として俳優仲間から一目置かれている。
 非英語圏で初めてアカデミー賞作品賞に輝いた2019年の『パラサイト 半地下の家族』で社長夫人役で韓国版アカデミー賞の一つ青龍映画賞の主演女優賞を受賞したチョ・ヨジョンさんは30歳前後の2010年『春香秘伝』、2012年『後宮の秘密』で見事なプロポーションの裸体を披露している(パラサイトを観た時はそれを私は知らなかった)。人気が上がるにつれて露出が減っていくのは「女優あるある」で、上述の2014年『情愛中毒』では主人公の妻役で出演しているが裸は若手女優イム・ジヨンさん(最新韓国ドラマ「ザ・グローリー~輝かしき復習~」でのヒロイン対する壮絶ないじめ役が話題に)に任せている。チョさんは、今は『99億の女』『浮気したら死ぬ』『ハイクラス~偽りの楽園~』等韓流ドラマの主演で活躍している。
 日本も同じだが、ハリウッドでは人気女優はほとんど脱いでいると言っても過言ではない。アカデミー賞主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンさんやシャーリーズ・セロンさんはヘアまで見せている。ケイト・ウィンスレットさん、ミラ・ジョヴォヴィッチさん、レイチェル・ワイズさん、エヴァー・グリーンさんも同じ。

 この他ジョディ・フォスターさん、キャメロン・ディアスさん、アンジェリーナ・ジョリーさん、アン・ハアサウェイさん、ロザムンド・パイクさん、ダイアン・レインさん等脱いだ人気女優を挙げたら切りがない。
 キューバ出身でスペイン国籍のアナ・デ・アルマスさんは今最も旬の女優ではあるが、2009年に来日している。「アナであります」と挨拶したのだろうか。片言の日本語は話しても戦前の軍隊用語みたいな言い方はする訳ないか。私は、007シリーズのボンド役でお馴染みのダニエル・クレイグさん主演の『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2020年日本公開)で彼女を初めて知った。最も美しい顔とまでは思わないが、清純で感じの好い女優と記憶に残った。その彼女が何度も脱いでいると知って驚いた。同じくクレイグさん主演の昨年公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で短い出演ながらアナさんの格闘シーンが評判を呼んだ。
 何でもこなせる演技力よりもセックスシンボルとして目が向けられることは彼女にとって不本意かもしれないが、昨年9月Netflixから配信された映画『Blonde』(NC‐17に指定。日本のR18に相当)に主演した。今年のゴールデン・グローブ賞で映画部門の主演男優賞を受賞したコリン・ファレルさんが受賞スピーチの時間を削ってまでプレゼンター役の(『Blonde』で主演女優賞にノミネートされていた)アナさんを大絶賛したという。
 私が高校生の時ファンだったジーナ・ロロブリジーダさんが95歳で亡くなった。美しい顔と豊満な胸で一世を風靡したが、セックスシンボル扱いされなかった。アナさんもジーナさんのような大女優になってもらいたい。

 一般女性にも美しい人はいっぱいいよう。一般の美人と女優との違いは、女優は画面を通して公衆に裸を晒す覚悟を持っているということか。共通点は、一般の美人は地位が高い人や裕福な人から見染められる。その反面ストーカーに狙われる。女優はセレブになれるが、プロジューサーや監督からセクハラされるということか。
 代表作『コレクター』『ダブル・ジョパディー』で主演を務めたアシュレイ・ジャッドさんは1996年の映画『ノーマ・ジーンとマリリン』で人気女優マリリン・モンローになる前のモデル時代の彼女に扮し史実通りヘアまで見せている。

 その彼女が、ハリウッドの大物プロデューサー・ハーベイ・ワインスタイン氏のセクハラ疑惑で、最初に被害を告白したと報道されている。その後アンジェリーナ・ジョリーさんやグウィネス・パルトローさんなどの多くの人気女優らが相次いで被害を告白するに至る。

 女優にとって仕事とは言え脱ぐのは大変なことであり、それを軽んじ容易くモノにできるとする男の言動に対する女優の怨念の火は消えることはない。
 昨年日本においても映画監督らのセクハラ騒動が起きた。日本では被害を訴えた女優本人以外は他の被害者たちが声を挙げず、被害を受けずに済んだ、眞鍋かをりさんやさとう珠緒さんなどの女優・タレントがコメントしている。
 高学歴タレントと呼ばれる眞鍋さんは、TV番組の中でMCからの枕営業に対する問いに答えて、「女性たちにとっては今声上げることが、必ずしもそれで報われてる結果になってないのがすごく残念です」と訴えたという(今年に入って映画監督を告発していた女優千葉美裸さん36歳が自殺したという)。
 今や大山鳴動して鼠一匹の様相か。氷山の一角に過ぎずそれよりももっと大きい氷塊が水面に顔を出すのを業界は恐れているかのようである。
 セクハラ騒動に対して、『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和氏を初め諏訪敦彦氏、岨手由貴子氏、西川美和氏、深田晃司氏、舩橋淳氏の6人による「映画監督有志の会」が、昨年3/18に「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」という声明を発表した。しかし、それに水を差すかのように、是枝監督の『万引き家族』(2018年6月公開)の撮影現場でハラスメント疑惑 (脚本にない濡れ場が急に監督から求められ俳優が困惑したのか。監督の構想を実現に近づけつつ、俳優側の不安を取除き尊厳を守る「インティマシー・コーディネイター」が日本でも増えるとよい) があったと今頃報じられた。
 眞鍋さんが言うように「やったやつが悪い」じゃなく「これを見過ごしてる業界が悪い」との方向に向かうことを期待したいが、一筋縄ではいかないようだ。

 スター男優の濡れ場には悲鳴を上げると上述した日本女性が、一方で、ウイキペディアによると、(データは少し古いが)毎年3,000人がAV女優になるという。2011年時点で延べ20万人のAV女優がいるという。

 積極的に出演する女性が多いことに対して、『言ってはいけない』シリーズで著名な橘玲氏は、近著『バカと無知―人間、この不都合な生きもの』(新潮新書)で、「低い自尊心を埋め合わせるために無意識のうちにより強い承認を求めるとの観点から、(マイノリティである)女性の自尊心が低いことから説明できる」と言う(かなり「言ってはいけない」領域に近づくのでとそれ以上話を敷衍していないが)。

 AV女優が20万人ということは、姉妹や双子がいなければ、20万人の実父がいるということか。もうママになっているが娘を持つ父親として何と言ってよいやら。

 ただ、世間の風向きは変わってきている。AV女優からタレントに転身した元祖故飯島愛が若くして芸能界を引退し孤独死?した14年前と時代は明らかに違う。前後して人気が出てきた蒼井そらさん(ポルノが禁止されている中国ではネット民から女神様と呼ばれる。今は結婚して子供も産んでいる)の存在が大きいか。見方が変わればさらにAV女優になる女性が増えるかも。大食い界のギャル曽根さんの場合と似ているか(大食いながらきれいな食べ方と人柄の良さでお茶の間の人気者になった。“市民権”を得たことにより、奇異な目で見られることを恐れ隠していた女性たちが特性・特技として自慢していいんだと積極的に大食いタレントやユーチューバーとして表舞台に上がってきている)。
 AV女優を卒業し、タレント業に進出、あるいは復帰したAV女優も出てきた。それをメディアだけではなくファンも好意的に見ているようだ(男性は依然として「総論賛成各論反対」かもしれないが。2021年のチェコ映画『エマ 晒された裸体』は、彼女が過去にポルノビデオに出演していたことを彼女の告白からではなく知ってしまった彼の葛藤を描いている。ハッピーエンドで終わるが)。
 人気女優になる為に、声優からスタートしようとしても、声だけで演技するため俳優よりも却って演技力が必要。演技力がそれほど必要としないAV女優が早道とAVから最初の一歩を踏み出す人が増えてくるのではと見られている。
 
 AV動画は若者だけの為にあるのではない。男の原動力である男性ホルモンを刺激すべく(男性ホルモンを餌とする前立腺がんの罹患者及び疑いがある人は除いて)、「現役」でなくなった老人も、健康で長生きする為には肉を食べることと同じく(家族の理解を得て)AVを観ることを精神科医の和田秀樹医師が推奨している(以前その週刊新潮の記事を妻に見せたら「ふん! どうせ観てるんでしょ!?」と言い捨てられたが)。
 我々の時代と違い今の若者は恵まれているのか。中学生でも無料のAV動画サイトを観ようと思えば観ることができる。それを阻止することは容易ではない。女性へのあこがれには、女性の核心の神秘は、長くそのまま神秘にしておくのがよいと私は思っている。
 そんな個人的な想いはさておき、女子よりも性教育が遅れている(わざわざ「寝た子を起こす」必要がないとのスタンスか)男子に対しては、『射精道』(光文社新書)を上梓した聖隷浜松病院今井伸リプロダクションセンター長兼総合性治療科部長は「昨今では、アダルト動画を観すぎて健康や性生活に支障が出る『ポルノ中毒』の懸念も広がりつつある。オナニーの方法も含めた細かな指導と包括的な性教育が必要」と主張している。
 正しい性教育が教育現場で、家庭内で、十分に進んでいない中で、AV動画を青少年が観ることの問題に対して、国会でも議論されてしかるべしと思う。
 一方、AV業界については、私はWikipediaに書かれていることぐらいしか知らない。が、国会議員の先生方は、とくに女性議員は、とれだけAV動画を観察し、AV業界関係者に聴取したのであろうか。戦前の5・15事件の時代背景にあるような農村から娘が売られるような時代とは違う。今やそんな暗いイメージはなく、素人投稿動画としてならともかく、競争が激しく美形でないともはやAV女優になれないのだ。
 貧困や無知により身を落とす女性がいると捉え、それを問題視するのなら、それはAV業界の責任ではない。貧しい人を下支えしてこなかった国会議員の問題であり、それをAV業界に責任転嫁するようなことがあってはならない。
 AV業界への世間の風向きが変わってきたのは、AV業界が健全化への努力していることも一因であろうが、その中で「AV出演被害防止・救済法」(通称AV新法)が制定された。私に言わせれば、拙速な議論により所期の目的からも実情からもズレた、悪法とまで言わないまでも問題の多い法律ではないか。
 成人年齢引き下げで18歳、19歳のAV出演の強要が増加するとの懸念から与野党で検討されたハズなのだが、年齢に関係なく、契約から撮影までには1か月、撮影終了から公表までには4か月間をあけるよう求め、この間は、無条件で契約を解除できる。また、作品が公表されたあとでも通常1年間は無条件で契約を解除できるという。
 これではAV業界つぶしだろう。AV新法はAV禁止法と言った方がいいと言う声も多い(赤線が廃止されても性欲の捌け口となる施設は無くならないのだが)。
 セクシー女優の金苗希実さんは「7月決まってたAVの撮影が全部中止… AV新法で女優が守られるどころか仕事が無くなって現役の女優たちが苦しむ構図って誰得なん。。」とツイートすると6万件のいいね!がついたという。

 ENCOUNTの記事によれば、セクシー女優の月島さくらさん、天使もえさんたちが署名活動を展開していたという。天使さんは「適正と違法の区別が本当についていない。性産業事業者ということで一緒くたにされている。性事業者への差別をなくしてほしい」と言う。月島さんは「もともとは18歳、19歳の出演被害を守るための法律だったハズ。それがいつの間にか年齢関係なく、未成年者取り消しより強い権利が与えられている。セクシー女優は未成年より判断力がなく、未成熟と言われているのと同じ。あまりにもバカにしている」と訴える。

 多くの批判がある中最近AV新法で女性が救われているとの記事がネット上であがるが、問題点が薄まるわけではない。
 (「結社の自由」から暴力団を適用除外しない中で)暴力団を撲滅させようとすると暴力団が表から姿を隠し裏で半グレ等を使ったオレオレ詐欺等により却って高齢者を初め弱者の被害が増えてきている。無論事情は違うが、拙速な国会論議により、様々な制限を遵守する適性AV業界が縮小し、むしろ地下に潜る業者が増え被害女性も却って増える、個人のユーチューバー等警察が把握しづらい違法スレスレの動画が氾濫する方向に向かわないか懸念される。
 もっと問題視されてよいが、何にでも口出しする著名弁護士や識者もこの問題には関わるのを憚るのか。

 (次号191号は5/10予定)

2023.5 NO.189  タカハ VS  タカハ
 ウクライナ戦争で日本ではウクライナが攻勢との情報が多く流れてきたきらいがあった中、3/1に『ウクライナ軍はまもなく大敗北喫し戦争終結、これだけの証拠』と題してJBpressに掲載された。私は、記事の内容自体より、今までウクライナ側に立っての発言が多かった自衛隊OB達の中での陸上自衛隊元陸将補(拓殖大客員教授矢野義昭氏)の発言であることに、不勉強だけなのか少し驚きを覚えた。
 私はそもそも(後述のようにバイデン大統領が核の抑止力を放棄したような発言をした時点で核の傘もない)核非保有の経済的・軍事的小国と核保有の経済的・軍事的大国の戦争はあり得ないと思っていた。ゼレンスキー大統領は話が違うとプーチン大統領との和解に方向転換すべきであった。プーチン大統領もNATOへの中立性だけ守れば武装もEUへの加盟も黙認したハズ。プーチン大統領の側近も兄弟国への侵攻に反対していたわけだし。
 ウクライナという金網リングでセコンドが多くいてもバンタム級とヘビー級が格闘するようなもので、ロシア側セコンドが隠し持つ放射性物質を使わなくとも、ラウンドが進めば進むほど体力差が顕著になる。いずれ当人が続行したくてもレフリーが試合を止める。
 潮目が変わったと見ているのか、そろそろ潮時と見ているのか、NATO諸国も表向きウクライナへの支援を強化する一方水面下で停戦への模索、停戦後のウクライナ復興への検討を始めているという。
 蚊帳の外にいた中国は、ウクライナ戦争が長期化すればするほど、友好国のロシア、ウクライナが疲弊するのも困るが、米国も支援により台湾有事に回す兵器在庫が枯渇する事態は歓迎する。
 そんな思惑の中で、中国もウクライナ戦争の停戦に向けて仲介するとの姿勢を見せ始めてきた。習近平総書記がプーチン大統領に会いに行き会談している。どれだけ本気が判らないが、少なくともグローバルサウス(新興国・途上国)にアピールできる。
 米国ととくには友好的な関係にない国にとっては、西側の価値観を上から目線で押し付けてくることに不快感を持ち、ウクライナ戦争では世界の警察官を降りたと言いながらウクライナを犠牲にしてウクライナに代理戦争させる米国よりも犬猿の仲にあったサウジとイランの国交回復を仲介した中国の方にシンパシーを感じるのかもしれない。
 日本は、米国との同盟国であるが、(一面的な見方ではあるが)キリスト教の排他的攻撃性とアングロサクソン気質(白人至上主義と残忍性)を共和党より色濃く受け継ぐ民主党政権とはもともと肌合いがよくない。しかもウクライナ戦争を仕向け小麦粉、エネルギー価格の高騰等世界に大きな副作用を生じさせ米国の威信を汚す(再選もありそうにない)バイデン民主党政権に本気で追随する必要はなかったと思う(宏池会政権に替わればと思ったが、ある意味安倍政権より対米追従傾向が強い)。
 米国と戦い敗北し焦土と化した日本がウクライナに対してとるべき行動は、体面を繕う遅ればせの電撃訪問ではなく、ゼレンスキー大統領に戦争前に「絶対ロシアと戦争してはいけない」と忠告することだったと思う(事が起こってしまえばウクライナの被災住民や避難民を救援するしかない。する必要のない戦争による奪われた大勢の無辜の命を戻すことはできない)。
 ウクライナは、日本の敗戦を教訓とせず、敗戦後の復興を手本としようとしている。
 日本は来月広島G7サミット(日、米、英、仏、独、伊、加の7か国の首脳並びに欧州理事会議長及び欧州委員会委員長が参加)が開催され、岸田首相が議長となる。
 岸田首相は、ゼレンスキー大統領に“必勝しゃもじ”を贈呈したぐらいなので、停戦を呼び掛けるつもりはないだろう。が、唯一の被爆国として「核の抑止力による平和は幻想だ。戦術核としての使用が現実化してきた現状ではもはや『核軍縮』ではなく『核廃絶』でなければ」と世界にアピールしてもらいたい(問題提起だけでもよい。核廃絶は無理としても、核軍拡から核軍縮の流れに戻る契機になれば)。そう言わないなら広島で開催する意味がない。首相個人にはあっても。
 防衛研究所の高橋杉雄室長は、今や「第3の核時代」に入り、核抑止の考え方も、冷戦期に主流だった「核は存在していれば抑止力になる」から「使用を前提にしないと抑止力にならない」に変わりつつあると言う。
 私に言わせれば、“環境破壊の20世紀”の遺物であるべき核兵器が実際の兵器としてゾンビのごとく復活したのは、バイデン大統領が、プーチン大統領がウクライナに攻め込むよう、米国はロシアと核戦争しないと事前に発言したことによる。そんなことを言えば、プーチン大統領は核兵器を使うと脅し、実際にもウクライナ戦争で進退窮まったとき核兵器を使う危険性が高まってしまった。さらに米国と合意している新START(新戦略兵器削減条約)からもプーチン大統領は一時離脱を表明してしまった。
 戦争するプーチン大統領、ゼレンスキー大統領よりバイデン大統領の方が罪深いと思っている。

 私は連日ウクライナ戦争に関するBS情報番組を観ていて次第に疑問が湧いてきて、2023年2月号NO.185 (「ファン VS フアン」)でこう書いた。
 「攻撃される最悪の事態を想定し、軍事力で対抗することを考えるのは、防衛省であり、国の軍事研究者たち。憲法第9条を擁し平和国家を標榜する国のトップは、それを指示する一方で、なんとしても戦争にならないよう外交努力に傾注しなければならない。病気は『治療』よりも『予防』なのだ。紛争は、『戦争』よりも『外交』なのだ(米中戦争となれば日本が戦場とされる)。それなのに、BS情報番組では、産経系に限らず、朝日系、毎日系までもが軍事研究者等を招いて連日ウクライナ戦争の戦況、使用兵器や自衛隊幹部OBのロシアへの攻め方の話ばかり。観続けて疑問が湧いた。BS情報番組は自衛隊員の為にあるのか。私達一般住民は何のために見せられ続けているのか。」
 この疑問について本号で敷衍しようと思った時少し不安になった。私だけの的外れな見方ではないかと。そこでネットで学識者などが同じ疑問・問題意識を持っていないか探してみた。
 あった。もう1年前に配信された元読売新聞記者でジャーナリストの中村仁氏の『ウクライナ解説で防衛研究所の突出したテレビ出演を懸念』と題した記事(アゴラ言論プラットフォーム:2022.5.1付け)を見つけた。
 右派系の新聞記者出身でありながら、中村氏は「ロシアのウクライナ侵略の報道で、連日連夜、防衛研究所のスタッフがテレビ番組に登場するのを見て、『ジャーナリズムの一環に食い込んでしまったようで、やりすぎではないか』と、思ってきました。国家・国家機関とメディアは適度の距離を置いた存在でならなければならないのです。」と言う。
 たしかに、これまで防衛省・防衛研究所の現役スタッフが出演することはなかったのではないか。BS情報番組等にて北朝鮮問題でよく見かける武貞秀士氏も大学教授(防衛研究所OB)として出演している。防衛研究所が国民にその存在をアピールするのが目的とするなら、それは見事なまでに達成されたであろう。兵頭慎治政策部長、高橋杉雄政策研究室長、山添博史米欧ロシア研究室主任研究官等さすがに国の軍事研究所には優れた人材がいることが我々にも分かり、安心もした。もう十分だろう。  

 BS番組でウクライナ戦争の戦況分析等を観ている人は、自衛隊員、タカ派議員、軍事ジャーナリスト、軍事オタクなど日本人だけではなく、仮想敵国の中国、ロシア、北朝鮮の諜報員もウオッチしているだろう。国の防衛に関わる現役スタッフが頻繁にTVで発言するのは避けるべきではないのか。ウクライナ戦争の戦況分析等を防衛研究所の現役スタッフが行うなら、防衛省内で行えばよいではないか。
 我々一般住民は、憲法第9条、第18条(何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。 又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない)がある現在において、緊急事態条項でも創設されない限り、我々がロシア・ウクライナ国民のように強制的に兵士にされることはない。

 政府もそれには触れようとはしない(自衛隊員は25万人前後。中国人民解放軍は予備役も含むと10倍以上なのだが)。

 BS情報番組は何を目的に我々に連日戦況分析等を見せ続けようとするのか(最近のロシアの攻勢下では心なしか番組で触れるのが減っている気もするが)。
 防衛研究所のスタッフは、「日米同盟」と「ロシアを仮想敵国とすること」を前提として、ロシアがウクライナに侵攻した時点から戦況の分析を語っている。自衛隊員だけではなく国の軍事研究者までもシビリアンコントロールを守るべきか否か判らないが、番組の中で高橋室長は「政治の話は守備範囲ではない」と断っている。立場を弁えておられる。

 ただ、高橋室長は、研究員として優秀なだけではなく、サッカー日本代表チームのユニフォームを着てバラエティ番組に出演したりするので、親近感を抱く視聴者も多いと思われ、感化されるだろう。高橋室長自身は日本が普通に戦争する国になるべきか否かなど発言していないが、視聴者は戦争する国になるべきと考えるようになるのではないか(今3月内閣府の調査で「自衛隊『増強した方がよい』が過去最高41.5%、前回から12.4ポイント増」と報道された)。それが政府の狙いなのか。
 中村氏はこうも言う。「名前が研究所であっても、防衛省そのもの、国家そのものです。そこの職員が連日、テレビのコメンテーターとして“送りこまれている”か“組み込まれている”ことに、メディアも問題意識を持つべきだと思うのです。メディアが知らぬ間に“国家の論理”に歩調を合わせる結果を招くことになりはしないか。」
 中村氏が危惧したとおり、「国家の論理」に歩調を合わせる結果になっているのではないか。右派のBSフジLIVEプライムニュースだけではなく左派系と思うBS-TBSもBS朝日も上記防衛研究所の上記スタッフ3名と国に近い民間の笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員、小原凡司上席研究員、学者としては、慶応大廣瀬陽子教授、筑波大東野篤子教授、東大小泉悠専任講師ら、その他朝日新聞駒木明義論説委員や自衛隊幹部OBなどの中から組み合わせを変えるだけで、同じ内容を流し続けている。これでは“令和の大政翼賛会”と言えるのではないか。今安倍政権下での放送法の「政治的公平性」の解釈変更問題がメディアへの言論弾圧かとの疑念が生じているが、その延長戦にあるのか。
 大国ロシアの研究者は多いハズだが今どきロシアを非難しない立場での出演を憚る面もあるのか、それともメディアが意図的に呼ばないのか、ロシア側を弁護する出演者がいない。その典型が2/24付けの『BSフジLIVEプライムニュース』でゲストは防衛研究所の高橋室長とウクライナ側に立つと見られる筑波大東野教授のみ。これでは韓国の反日番組ならぬ反ロ番組となってしまう。
 刑事裁判においては、検事側だけではなく、たとえ極悪被告人であっても弁護側の主張も聞き入れ裁判長が判断する。『BSフジLIVEプライムニュース』においても、中国問題では、中国側として東洋学園大学朱建栄教授等に出演してもらっている。

 裁判長にあたる主権者たる国民は、ウクライナ戦争においてもロシア・ウクライナ双方の立場側の意見を聞く必要があるハズだ。兵士でない我々が知るべきなのは、「ロシアが軍事侵攻するに至った政治的背景は」「日本がアジアのウクライナにならない為の採るべき道は」など「政治」の話だ。しかも、ロシア側に立った識者も入れての話だ。
 (次号190号は4/20を予定)

2023.4 NO.188  べ VS 
   60年前の1963年11月24日ケネディ大統領が暗殺された。当時私は中学一年生であったが、大変驚いた上日本でも人気が高かったので悲しく思ったことを覚えている。

  容疑者とされるオズワルドはすぐにマフィアとの関係が疑われるジャック・ルビーに警察署の地下駐車場で銃殺されるというあり得ないことが起こったことから、「オズワルドは犯人ではない」「犯行は複数人」との声が上がり、これまで多くの陰謀説が語られてきた。
   私自身も陰謀説に与し、2015年8月号NO.50(「コンクラーベ と コンクラベ」)にて「軍産複合体説、CIA説、FBI説、マフィア説等諸説あるが、アガサ・クリスティ女史の原作を映画化した『オリエント急行殺人事件』ではないが、諸説のすべてが犯人ではないかと思う。」と書いている。
 日本の初代総理大臣伊藤博文も、満州のハルピン駅で韓国人安重根に暗殺されたとする。伊藤暗殺においても安重根が犯人ではないとの諸説が出ていた。が、真相は藪の中。
   1909年10月26日に暗殺され翌1910年8月26日に韓国併合がなされた。過去本ブログで韓国併合に反対していた伊藤が暗殺されていなかったらと書いたが、暗殺される前の9か月前の1909年1月には伊藤も併合に同意し(韓国総監を5月に辞任)、韓国併合方針が決定していたという。歴史が替わることはなかったのであろう。
 しかし、併合という直接統治でなく、皇室を擁する日本でも間接統治であれば李氏朝鮮王朝を存続させたかもしれない。GHQに統治された敗戦国日本は、指揮したマッカーサーを恨むより天皇制を存続させたことに日本国民は感謝した。高山正之氏が週刊新潮のコラム『変見自在』でいくらマッカーサーを貶しても覆ることはない。それだけ大きいことなのだ。
 日本が廃絶させなくとも李氏朝鮮王朝は自壊したかもしれないが、日本と違い今でも韓国では時代劇、とくに李氏朝鮮王朝時代のドラマを好む。李氏王朝を廃絶させなかったとしたら今の日韓関係はもう少し違う形になっていたのかもしれない。
 憲政史上最長在任期間の安倍晋三元総理も2022年7月8日暗殺された。国会議員の青山繁晴氏が自身のブログにて9/30付け「安倍さんの命を救うために奮闘された現場の医師の見解と、その後の司法解剖の所見が、大きく食い違っています。医師は「心臓の心室に穴が開いていた」と明言され、解剖所見は、逆にそれを明確に否定していると当局者が明らかにしています。」と報じたこともあり、またぞろ暗殺に関して陰謀説が湧き出ている。
 元神奈川県警の小川泰平氏は致命傷となった銃弾が見つからないことを公表しない奈良県警の隠ぺいが疑惑を招くとしたが、3発撃たれたその内の1発が逆の首(右前頸部)に当たっていることから、「山上容疑者が犯人でない説」「共犯説」が浮上している。週刊文春は今年に入って「疑惑の銃弾」として特集を組み疑惑を追及しようとしている。
 仮に共犯がいたとしても、共犯者は山上容疑者と同じ境遇の者で海外との関係はないと私は思っている。警察は旧統一教会への恨みによる単独犯行で捜査を終わらせたが、政治家、検察・警察など権力者に対して不満を持つ者は少なくない。山上容疑者への減刑嘆願が多いのを見ても。

 昔から日本は、「死ねば仏。死者にムチ打たない」が美徳とされてきた。今アベノミクスの批判・検証はあるものの安倍氏個人への批判が影を潜めがちになっている。一方で安倍元首相への礼賛・擁護が大手を振っている。
 櫻井よしこ女史は週刊新潮2/23付け連載NO.1037の『日本ルネサンス』で安倍氏の回顧録の感想を「国民と日本の為にこれほど戦った政治家がいた。そのことに深い感動を覚えた回顧録であった。」と結んだ。それに私は不快な感情を覚えた。
 総理は戦士でもボクサーでもない。所詮政府内の権力闘争に過ぎない。総理の評価は日本をよくした否か。失われた20年を30年にしたのは、安倍氏が戦ったとされる財務省ではない。3本の矢と言いながら異次元の金融緩和しかできなかったアベノミクスの失敗である。その間、新産業の育成や企業投資の喚起もできず、一人当たりの名目GDPにおいては2012年49,175ドル(世界14位)から2021年39,301ドル(同27位)と低下させた。今日本に殺到する韓国旅行客にまで物価が安いと言われてしまう。貧富の格差も拡大させた。

 尋常でない副作用を残し終焉に向かいそうな異次元の金融緩和は、安倍総理に日銀の独立性を盾に取られ経済低迷で旗色が悪かった白川方明前総裁が屈服承知させられ(2013年1月に「物価上昇目標2%導入」が決定。さらに、これをできるだけ早期に実現することを政府と日銀の共同声明とした。これが起点)、3か月後に就任した後任の黒田総裁が異次元と名付けた大幅な金融緩和を推し進め、その守るべき独立性を放棄したかのように安倍政権に追従した。その後安倍総理自身が成果の出ない金融緩和に関心を失うが、黒田総裁はもはや後戻りできず続けたことによるものではないか。

 当事者意識もなく今頃になって黒田総裁の政策を批判する白川前総裁や賛成したのにBS番組で反対だったと言う元副総裁は、批判する立場になく、批判されるべき立場のハズだ。
   安倍元総理が暗殺されてまもなく、誰よりも安倍元総理から寵愛されたとやっかまれる元NHK政治部岩田明子記者が月刊文藝春秋に連載を始めている。ジャーナリストの高野孟氏が日刊ゲンダイDIGITALの昨年10/13に付けで『岩田明子氏の目を通すと「安倍外交」の貧困が礼賛にすり替わってしまう不思議』と題し、早くも11月号の第2回で「もう勘弁してよ」という感じになってきたとあきれる。
   それに関係なく私は連載を全くスルーしていたが、今年の3月号の連載『安倍晋三秘録』⑥「金正日、正恩との対決」で初めて読んでみた。予想していたよりは客観的だとは思った。拉致問題解決期待で総理になったが、総理になってから成果がないことについて岩田氏もある程度認めている。
   小泉首相時代に官房副長官として訪朝に帯同し強硬な態度をとり、帰国した蓮池薫氏ら拉致被害者5人が北朝鮮に戻るのを安倍氏が止めさせたこと(後述の本で蓮池薫氏の兄透氏は否定しているが)を武勇伝として評価するが、そうだとしてもその反作用も大きかった。
   一枚岩であった拉致被害者の家族会が、帰国組と非帰国組とに二分され、帰国組側の蓮池透氏は進退窮まったのか断末魔のごとく『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)を出版した。それ以上に、約束を破ったとして北朝鮮が態度を硬化させた。
   総理となった安倍氏としては、なんとしても関係を修復し、拉致問題の交渉を復活させなければならない。が、あろうことか2016年北朝鮮のミサイル開発が問題になっている折、2017年安倍元総理は国連総会で演説し、「盾」としての核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を「史上最も確信的な破壊者」などと強く批判したという。西側諸国と歩調を合わせる必要があるとはいえ、なぜ世界に突出して強硬な態度をとったのか。安倍元総理の頭の中は、拉致被害者及びその家族ではなく、トランプ大統領一色だったのであろうか。
   自国民の救出は独立国のトップとしてなすべき根幹でありながら北朝鮮との交渉は金正恩総書記と会談するトランプ大統領に仲介を依頼する以外方法がなくなってしまった(見返りもありトランプ大統領は言及したが、金総書記は聞き流したのであろう)。
   大国ロシアに勝ち米国には負けたとはいえ独立の希望の火を灯してくれたと日本を仰ぎ見てきたアジア諸国は日本が米国の属国になったと再認識し落胆したのかも。
   こんな総理でも難しいと口をつぐむ賢い?政治家たちよりは頼りにせざるを得なかった家族会の方々の安倍元総理の悲報に接したときの心情は察するに余りある。
 上記二人の女史の安倍元総理の政治家としての評価には賛同できないが、一方で、二人の女史が自らを正当化する為というより、死後も変わらず敬愛の情を抱き続けているとは思える。女性問題も浮上せず、育ちの良さとフェミニストぶりから安倍元総理が女性議員・記者らから慕われていたことが偲ばれる。

 なお、自衛隊関係者に安倍氏に感謝の念を抱く人が多いのも事実である。直接接点のない庶民は評価が二分するが。
 

 一方、安倍元総理という大きな壁がなくなると、俄然進捗したのが、五輪汚職への捜査である。東京五輪(2020年夏季オリンピック&パラリンピック)はなぜ問題が噴出したのか。

 それは「大義」がないからだと思う。日本で五輪を開催するなら、私は、東北大震災復興後の仙台市か、沖縄の那覇市だと思っていた。1964年の東京五輪は敗戦後の日本の目覚ましく復興した姿を世界にアピールするとの大義あった。国民も一丸となっていた。
   なぜ今回東京なのか。「大義」はなく、あったのは「利権」であろう。私の独断と偏見かもしれないが、親ばか(侮蔑の意味はない)が少し過ぎた故石原慎太郎都知事が子供のことも念頭に東京開催をぶち挙げたと思っている(都知事肝いりと言われるも大きな汚点となった破綻した「新銀行東京」も石原本人の発案ではないという)。
   後任都知事となった猪瀬直樹氏は、お金の問題で刺されたのか、東京開催が決定(2013年9月)したIOC総会からわずか3カ月半後に都知事を辞任した。主導権は、「フクシマはアンダーコントロール」と強弁した安倍総理と森元総理サイドに移る。小池都知事の晴れ舞台であるリオでの五輪旗の引継ぎ式(2016年8月)も、森元総理のアイデア?でマリオに扮した安倍総理がサプライズ登場して、水を差された。
 東京開催に決定後、動機が純粋でないから物事は上手くいかないものなのか、利権をめぐって政治家、電通等が暗躍したからなのか、信じられないほど、ゴタゴタが起きた。開催1年延期は新型コロナ禍で別として、より大きな事柄だけでも時系列に並べると①2015年7月、2012年11月コンペで選ばれた女性建築家故ザハ・ハディドの新国立競技場デザインの白紙撤回、②2015年7月公募コンペで選ばれたエンブレム、類似問題で2か月後白紙撤回③2019年1月JOC竹田恒和会長対する仏予審判事による贈賄容疑での起訴④開会式(2021年7月23日)直前での開閉会式演出における権力闘争を疑う辞任騒動(総合統括野村萬斎氏の辞任→後任の電通出身佐々木宏氏の辞任→五輪開会式演出の実質的な責任者振付師・演出家のMIKIKO氏辞任→五輪開閉会式ディレクターの小林賢太郎氏の解任等)となる。
 そして、安倍元総理逝去の1か月後の2022年8月17日に、2020東京五輪大会組織委員会のスポンサーであったAOKIホールディングスの会長から数千万円を本人が代表の会社で受領した容疑で、元電通社員で2020東京五輪当時大会組織委員会理事であった高橋治之氏が東京地検特捜部により「受託収賄」で逮捕された(今年に入ってからも、東急電鉄から日本陸連に移り五輪当時組織委員会運営局次長であった森泰夫氏が「談合容疑」で逮捕された)。
 「電」がつく3大会社、NTT(旧電電公社)は、初代社長がリクルート事件に連座して、NTT法違反(収賄)容疑で逮捕された(執行猶予付き有罪)。東電(東京電力)は、福島第一原発事故をめぐり旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴された(その刑事裁判は一審、二審とも無罪。民事の株主代表訴訟では旧経営陣に東電への総額13兆円を超える懲罰的?損害賠償支払いを地裁が命じた。自己破産せよということか)。電通(旧社名日本電報通信社)は、東京五輪を舞台に、収賄容疑で電通OBが、談合容疑で電通幹部ら4人が逮捕された。
   「驕る“電家”久しからず」か。国に近い大手企業が驕ると、やりすぎ、一線を越えてしまうものなのか。

 安倍元総理も安倍一強時代が長く続き傲慢になっていたか。何をしても許されるかのように。公権力の私物化問題もすり抜け、禁じ手の検察人事にも介入した。

 さらに、ロシアがウクライナに侵攻した時、その1月後の2022年3月24日安倍元総理が手のひら返しに「私たち日本はウクライナ国民とともにある」とツイートした。岸田現総理がウクライナ支持を表明しているのだから国民が疑念を抱くことをわざわざ言う必要がない。必要があるとすれば、「西側の一員として歩調を合わせないといけないが、隣国ロシアのプーチン大統領とは没交渉にしてはいない」と言う場合であろう。森友学園問題での「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」との発言に匹敵する衝撃発言だと思う。
 色々擁護発言があっても国民は大きな違和感を内に秘めたのでは。北朝鮮のミサイルで拉致被害者及び家族のことが頭から飛んだように今回も北方領土返還交渉及び返還を悲願とする人々のことを一瞬忘れただけと大きな問題とはしない人も多くいたであろう。だが、安倍元総理を良く思わない人々にあっては、極めて心証が悪く元々そんなこと念頭にないのだと憎悪の眼差しを送る人もいたであろう。
 台湾に行き講演して中国を激怒させたときと違い、(手のひらを返されても哀悼の意を表したプーチン大統領なら会ってくれるハズで)安倍元総理がたとえ勝手に会いに行ったとしても日本国民は非難しないのではないか。
 昨年3/24のツイート後4か月足らずで山上容疑者の犯行が行われたのを考えれば、(自費による個人的関係を築く為ではなく、父外相安倍晋太郎の遺志を引き継ぎ北方領土問題の解決に向けての)過去27回の会談を無にするのではなくプーチン大統領に会いに行き(あるいは電話会談し)戦争を中止させられないとしても日本が置かれている立場を説明しておれば、山上容疑者も安倍元総理は日本国にとって必要だと思い、犯行を思い止まったかも。暗殺自体は止めなかったとしてもターゲットは替えたのかもしれない。と私はそう思っている。
 総理は舞台上の人気歌手と同じだ。薄暗い会場の中舞台から聴衆の顔は観づらいが、スポットライトが当たった歌手を聴衆一人ひとりが見詰めている。私を含めて下々も総理(の言動)を注視している。
   検察が正義を果たしている今国民の不満は少し解消されているかもしれないが、総理の警備を強化すること以上に岸田総理自身が国民と向き合いその声を聞く必要がある。防衛費の増額、原発再稼働など、安倍元総理を反面教師とせず、より独断専行しているように見えるから。

 (次回189号は4/1予定)

2023.3 臨時号NO.187 せんう VS せん
 昨年の10月16日から、5年に1度の中国共産党第20回全国代表大会(以下「20回党大会」)が開催され、異例の習近平総書記の3選が決まった。来月3月5日から全国人民代表大会が開催され,国家主席に再選され習近平体制の3期目が本格的に始動する。
 

 昨年の20回党大会の中で、胡錦濤前主席が退場したことについて、「病気説」と「権力闘争説」が飛び交った。
 戦前の中国に生まれ過酷な体験(親族が殺され、本人も5歳の時中国共産党軍の流れ弾に当たり負傷。7歳の時中国共産党軍による食糧封鎖により餓死体が敷き詰められた長春郊外で野宿)から中国問題をライフワークとする、私が最も信頼を置く遠藤誉女史、中立かやや反中の神田外国語大興梠一郎教授、中国寄りと見る拓殖大富坂聰教授達は病気説を主張している。私もそれに賛同する。
 遠藤女史は近著『習近平三期目の狙いと新チャイナセブン』(PHP新書)にて改めて権力闘争説を否定している。胡氏は前総書記として主席団として党大会を管理監督する立場で全人事を事前に承知していた。中国共産党一党独裁が最大の命題である彼らが全世界に放映される中で争う姿を見せるハズはない。その意見を支持する。2008年訪日し余興なのに鋭い目つきで卓球に興じていた胡氏の変わり果てた姿を見て私も驚いた。党大会で横でやり取りを見ていた習総書記も鋭い視線も緊張感もなく「やれやれ、困ったもんだ」といった風情に見えた。
 民間のシンクタンクに移籍した朝日の元著名記者峯村健司氏が権力闘争説を唱えたのには意外に思えた。

 ともあれ、習総書記は中国共産党一党独裁おける習一強体制を樹立させた。
 戦後1955年の鳩山一郎内閣から宮澤内閣まで自民党一党が38年間与党を独占した自民党は総裁2期4年が遵守され、中選挙区制の下での派閥間の切磋琢磨・競争があり自民党に活力がありかつ自浄能力もあった。黄金時代の自民党と中国共産党の一党独裁は似ている。今や経済力、軍事力双方に米国と肩を並べるに至り、世界が、西側の代表制民主主義(間接民主主義)による二大政党制がうまく機能しているとは言えず、中国一党独裁の共産党内での厳しい競争に勝ち抜いた政治エリート達(チャイナセブン)による政治運営システムも悪くないと思い出した時に、習総書記はそれを壊そうとしている。二大政党制を目指し小選挙区制に移行したが理想とは真逆の自民党の安倍一強体制をもたらした結果隣国日本が、そして安倍元首相が、どうなったか。習総書記は学習しないのか。
 自民党の総裁任期は1978年以降2期4年が長らく続いた。が、小泉首相の時2期6年となり、安倍首相の時3期9年となった。安倍首相は、新型コロナ禍がなければ、4期12年になっていたと思う。
 賢者は「権力は腐敗する」ことを理解し自戒している。「権力は腐敗する」の好例はプーチン大統領。KGBの一介の部員から大統領に上り詰め極めて有能であったが、晩年の秀吉を彷彿させるかのごとく、2036年まで大統領が可能にすべく憲法改正し、宮殿のような別荘を持ち、挙句の果てウクライナへの侵攻には“裸の王様”呼ばわりされてしまった。
 政界、財界を問わず、賢者ほど早く後進に道を譲ろうとし、周りから続投を求められても固辞する。一方、ダニング=クルーガー効果と言われるのか「実際の評価と自己評価を正しく認識できずに、誤った認識で自身を過大評価してしまう、それでなくとも、コンプレックスから自身を大きく見せようとする、賢者でない者の方が、権力に長くしがみつこうとして、国や会社を傾城させる。
 その意味では胡錦涛前総書記は賢者と言える。胡前総書記は2期10年を守り、任期満了後すべての役職から自主的に退いたという。
 賢者の後任がなぜ習総書記なのか。胡錦濤氏直系である共青団出身天才肌の李克強氏がいたのに。反腐敗運動を展開していた胡総書記と暗闘していた故江沢民前総書記が推す習氏が何故。
 2007年10月の第17期党中央委員会第1回全体会議(17全大会)において、同年3月に江前総書記に呼ばれて上海市初書記に就任したばかりの習氏が中央政治局常務委員にまで昇格するという「2階級特進」を果たしたという。
 慶応大小嶋華津子法学部教授は『胡錦濤政権の回顧と中国18全大会の注目点 ―政治状況に関して(1)』の中で、「『党内民主』の具体的とりくみとして特筆すべきは、17全大会に向け、2007年6月に実施された、中央委員・同候補による政治局委員候補者リストへの無記名投票である。この投票の結果、習近平の得票が李克強の得票を上回ったことにより、胡錦濤は、自らの腹心である李克強への権力委譲をあきらめざるを得なかったと伝えられている」とする。
 「党内民主」を推し進め党員の無記名投票を実施した胡総書記は、共産主義の中国の中にあって民主主義的な考え方の持ち主なのだろう。
 ただ、民主主義は独裁者を生むという。民主主義(多数決)は、民度は一定との理想を前提している。現実は賢者<賢者でない者。民主主義は根本的矛盾を内包している。賢者でない者は、賢者でない者ならではの反応を示すのか、賢者でないトップの方が親しみを感じるのか。野心ある側近たちも賢者でないトップの方が、立身出世や権力の掌握が容易いと思い担ぎ上げるのか。かくして、雄弁だが凡庸な、ヒトラーが、ゼレンスキー大統領が、独裁者となる。
 日本は、首相公選制を採っていないが、事実上自民党総裁=総理であるなら、総裁選で党員・党友を参加させるべきではない(直接選挙と変わらない)。賢者でない独裁者が誕生する危険性がある。
 
 習総書記は任期制限を撤廃した。プーチン流の終身の権威主義による独裁を目指しているのか。習総書記は賢者とは思えない。賢者でないトップは、賢者でない者が賢者でない行いを成した権力者を反面教師とすべき。権力を手にして腐敗した為賢者とは言えないまでも、プーチン大統領は、聡明であり、ソ連崩壊後の混乱後のロシアを立て直し、独自の歴史観、世界観からの思想がありそれを国民に浸透させる話術を持ち、曲がりなりにもロシア人に誇りを取り戻させてきた。習総書記がプーチン大統領を真似て独裁しても上手くは行かないだろう。
 その見方を後押しするかのように、文藝春秋2023年正月号で、『「習近平は裸の皇帝」元部下の女性学者が日本メディアに初めて答えた』と題して、習独裁体制を批判し米国に亡命している政治学者蔡霞女史が、習総書記を酷評する。

 米外交問題評議会(CFR)の発行する国際政治経済ジャーナル「Foreign Affairs」に掲載した論文『習近平の弱点』の中で、習氏が総書記に就任する直前中央党校の名目上の校長であったが、そこの著名教授がインタビューにて習氏を「勉強不足でIQが低い」と言い放ったのを驚いたものの今は女史もその通りだと発言している。
 そんなコンプレックスを持った権力者はエリートを嫌う。議論しても勝てないから。盲従する部下を好む。
 欧米がジェノサイドが行われていると非難する新疆ウイグル自治区に関して、2017年3月新疆大学のタシポラット・ティップ学長が北京の空港で拘束された後「党に忠誠を尽くすよう見せ掛けて、実は民族主義者であるという『両面人(二面性を持つ者)』」として執行猶予2年付きの死刑判決を受けたという。
 今や自治区だけではなく、共産党内のチャイナセブンにおいても、両面人としての面従腹背を許さないばかりか積極的に習総書記に忠誠を誓い行動で示す者しか登用しない。
 NO.2であった経済通の李克強首相は任期満了で引退し、習総書記は「克」(己の欲望や邪念に打ち勝つ)の字が無い李強氏をNO.2に据えた。厳しい上海のゼロコロナ政策で李強氏が失脚するのを期待していた上海市民は唖然としたことであろう。
 李克強氏に続き、汪洋氏もいなくなった。経済通の二人なくして、不動産バブルの崩壊、少子高齢化、金融不安、20%に近い若者の高失業率等山積する難問に習総書記一人で解決できるとは思えない。
 民間企業、起業家も自らの敵とらえる。「習のミクス」として、日経出身のジャーナリスト土谷英夫氏は、①民間部門を自らの支配への脅威と見なし計画経済を復活させた、②国有企業を強化し民間企業にも共産党組織を設置した、③汚職や反独占を口実に民間企業や起業家から資産を奪った、と言う。
 政治システムと同様「国家資本主義」は「資本主義」より宇宙開発や新分野への意思決定や取り組みスピードが速いと世界から評価されつつあるときに社会主義に戻ってしまう。
 ただ、社会主義への回帰は独裁への野望だけではない。鄧小平が唱えた「先富后共富」(先に富だ者がまだ富んでいない者を富ませて共同富裕になる)から進められた国家資本主義も、トリクルダウン理論と同様逆に貧富格差拡大させた。とり残された農民層、零細中小企業らが共産党一党独裁体制打倒を目指すのを恐れてもいる。
 一般個人においても、「社会信用システム」にて面従腹背する者を許さない。『習近平の中国』(東京大学出版会)によれば、スマートフォン等を通した電子決済情報、学歴、職歴、交友関係を変数として個々人の信用を数値化する。信用失墜者は様々なペナルティを課せられるという。要するに、排除される。
 総じて、習総書記は、少しぐらい経済が停滞しても、人民を心服させるのではなく力ずくで習独裁体制を確立させようとしている。いわば、“豊かな北朝鮮”を目指すということか。
 厳しいゼロコロナ政策も、独裁体制の為でもある。上記『習近平の中国』の主編者の東大大学院川島真教授は、「ゼロコロナ政策は、ワクチン利権との関係もあるが、同時に監視統制の強化に正当性を与えているのである」と述べる。
 厳し過ぎるゼロコロナ対策に対し中国全土において抗議デモが行われ、上海では、「習近平打倒、中国共産党打倒」と叫んでいた。学生か一般市民かが習総書記を名指しして批判するのは驚き。国が亡ぶとの強い危機感を持つ胡総書記が院政を引かずすべて一任するとした条件の反腐敗運動を約束通り維持・強化する習体制に恩知らずと反発する江沢民派が裏で扇動しているのであろうか。
 都市部の中産階級は、「政党選択の自由」は無いものの、それ以外は割と自由で、そこそこの裕福な生活が送れるなら中国共産党一党独裁体制でもよいと思っていた。だが、こんなに雁字搦めにされることには耐えられない。一度自由の味を知ると厳しい監視・統制時代には戻れない。アリババのジャック・マー元会長が箱根に出没しているらしいが、中国の富裕層が日本の投資移民制度である経営管理ビザを通じて昨年1月から10月までの間に日本に新たに入国した数は2,133人に達したと言われている。
 我慢の限界を超えたところにサッカーWC2022会場でのノーマスクを見て、ゼロコロナ政策が実は不当な強圧ではと捉えた抗議デモに習政権はあわてて緩和した。12/7新型コロナウイルスの感染対策の緩和→12/1~20で人口の2割近くにあたる2億4800万人が感染したと推定する中国政府の内部資料がインターネット上に流出→中国各地での新型コロナウイルスの感染急拡大→人民は抗議デモどころでなくなる、の流れは、まるで新型コロナの新しい大波が押し寄せてくるのに門を開き経済が水浸しになり、多数の溺れ死ぬ人が出ても、習政権にとっては体制批判の方が怖いということか。
 後は「抗議すれば習政権の政策を変えさせることができる」と知った人民への監視・統制を強化することにある。中国共産党の脅威は14億人の約1/3を占める農民層(5億人)の一斉蜂起であろう。ただ、今回の11/26~の抗議デモはSNSで全土で拡散しているだけで、1989年の天安門事件の時のような指導者がいないのか。農民の蜂起を導くエリート指導者の芽を事前に摘むのが、「社会信用システム」であり「監視統制システム」なのだ。
 
 一部には、人民からの体制批判をかわす意味で台湾の軍事進攻があると予想する向きがあるが、そのようにはならないと思っている。
 来年1月に台湾総統選がある。前回2020年の折は、前年に香港での大規模な民主化運動を弾圧したことより、台湾人のナショナリズムが高揚し、劣勢にあった民進党の蔡英文総統が再選された。その反省から台湾に対する軍事行動は控えるであろう。
 “戦狼外交”と呼ばれるように、中国は脅して、相手に従わせる。譲歩させる。米国は、とくに民主党政権は、言うことを聞かなければ、すぐに武力行使するが、戦争に負け続けた中国にはそんな蛮勇心はない。経済的な嫌がらせはしても。
 中国は、脅しによるペロシ米国下院議長の訪台阻止を図ったが、米国に無視されメンツを潰されても、直接米国に対抗措置はとれない。怖がってくれる台湾、日本に対する軍事演習・示威行動で(国内向けにも)虚勢を張るしかない。
 オバマ政権のように「戦略的忍耐」とカッコつけて譲歩してくれればまた別だが、トランプ政権からバイデン政権に代わっても、中国に対して強硬であり、台湾への手出しは出来ない。
 中国は、1979年の中越戦争以来大きな戦争をしたことがない。どれだけ軍事力を強化しても、ウクライナ戦争を見ても分かるように、実際の戦争ではどうなるか分からない。中国共産党を守る為の人民解放軍にどれだけ愛国心があるかも分からない。
 米国と対決姿勢を見せるどころか、ブリンケン米国務長官を招いて会談しょうとする(偵察気球が米国に侵入したことにより訪中は中止になったが、ミュンヘンでブリンケン氏と王毅氏が会談した模様)。
 習総書記が「平和統一を目指すが、軍事侵攻も排除しない」と言うのは、台湾が独立を宣言することを差す。その時は、米国をトップとする連合軍との戦闘も覚悟して、漢民族を支配・蹂躙した外夷も含めた「中華民族の偉大な復興」を賭けた乾坤一擲の勝負に出る。
 遠藤女史はむしろ「アメリカはそこに中国を誘い込みたい」と次のように言う。
 「武力統一をすると台湾人が反共になり共産党の一党支配体制を脅かすので中国は平和統一を狙っている。しかし平和統一だと中国が栄えるので、アメリカは中国を潰すために、中国に台湾を武力攻撃して欲しい。そのためにアメリカは『台湾政策法案2022』を制定して台湾をほぼ独立国家に近い形で認める方向で動いている。これに力を得て台湾政府が独立を宣言すれば、中国は台湾を武力攻撃する。」
 GHQから与えられた日本人と違い、長い苦難の中で血と涙を流し民主主義を勝ち取ってきた台湾人の政治的民度は高い。ウクライナを他山の石として、ウクライナの二の舞は演じないだろう。米国が台湾に肩入れしてくれるのは頼もしいが、内心グイグイ来られるのはありがた迷惑と思っているのでは。台湾が戦場にならない為には「現状維持」を貫くしかない。

 日本政府は台湾有事に伴う日本有事をどう思っているのか。防衛費増額の正当性からも喫緊の問題としていようが、本気で考えているようには見えない。台湾有事に備え、台湾には防空壕が10万か所以上あると言われる。日本にはどこにあるのか。中国が攻撃するとなれば、沖縄を初めとする南西諸島だけではなく首都など本土も攻撃してくるだろう。
 防衛費増額すれば抑止できると思っているのか。反撃力を強化すれば、日本が被弾することがないと言いたいのか。増税してまでの防衛費5年43兆円は米国への朝貢と防衛利権が主眼としか思えない。
 昨年末海自特定秘密漏洩問題で情報の受け手の元海将だと噂される3人の中の1人である香田洋二元海将の新刊『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(翌1月に発刊。防衛省にとって煙たい香田氏が問題の元海将であれば名前を公表されているだろう)の中で、「イージスアショア配置断念」の問題に触れている。不勉強にて私は過去代替措置が放置されていると書いたが、そうではなく、イージスアショアに使用するはずだった弾道ミサイル防衛システムを護衛艦に搭載し「イージスシステム搭載艦」(2隻)とする代替案が出されていた。それを①6か月の検討でしかなく拙速、②ミサイルの専門家である制服組を入れず背広組で決めた、③結局イージスアショアよりも費用が増えるかもしれないがまたぞろ国民にごまかすのか、と香田氏は指摘する。その根底にあるのは、国民に対する防衛省の責任感の欠落と、高価格・高性能装備を国民の前で一点の曇りもなく説明し、導入を実現しようとする防衛省と自衛隊の決意と覚悟の欠如と、批判する。防衛省、自衛隊幹部にとって、主権者たる国民は足でまといぐらいにしか思っていないということなのか。
 中国は混乱と停滞が続き、習総書記は内政問題に追われる。台湾有事で得するのは米国だけ。日本にとって今やるべきことは、本来粛々と進ませるべき軍事力の強化を無い袖を無理やり振ってまで声高に行い中国をことさら刺激するのではなく、与那国町議会が避難シェルターの設置を防衛大臣に求めた如く、まず防空壕、核シェルターとなる地下施設などの国民保護の整備が先決だ。それに並行して、軍事力にしろ外交力にしろ、その基盤となる経済力の向上・経済の立て直しに注力すべきではないのか。
 (次号188号は3/10を予定)

2023.3 NO.186  かつみみ VS かつみ
 ゴルフの日本女子ツアーに先立ち米女子ツアーの2023年度が開幕した。
 昨季について振り返ってみる。2022年2月号 NO.166(「さそう VS むそう」)で予想したが、私の予想は当たったとは言えない。カメに擬えたコ・ジンヨン選手とウサギと喩えたネリー・コルダ選手が女王争いする確率が一番高いと思ったが、共に故障するとは想像しなかった。ネリ―選手が腕に血栓ができ手術した。コ・ジンヨン選手も手首を故障し休場した。
 その間に米ツアーではルーキーのアッタヤ・ティティクン(ンはルとも)が台頭し、2022年8月号 NO.176(「 ふるえ VS ふるえる」)にて次のように期待した。
 「同166号で笹生選手を筆頭として新世紀世代と呼ばれる2001年以降生まれの世代のNO.2にアッタヤ・ティティクン選手を挙げていた。タイの天才プロゴルファーと呼ばれ、アマ時代の成績は笹生選手に勝るとも劣らず、米ツアーでも活躍すると思ったが、早くも1勝を挙げた。世界ランクも5位(笹生選手は19位に後退)。新人王争いでも韓国チェ・ヘジン選手や渋野選手、古江選手を抑え、トップに立っている。メジャー優勝も時間の問題であろう。」
 そのアッタヤ選手がルーキーオブザイヤーになるのは確実だと思ってはいたが、(日本時間の昨年11/1)世界ランク1位なるとは予想外であった。
 ゴルフの天才少女と呼ばれたアッタヤ選手は、14歳で欧州女子ツアーのタイ開催のトーナメントにてリディア・コ選手の記録を抜いて史上最年少でのプロツアー優勝を果たした。さらにアマのまま同トーナメントを再度勝ち、2020年1月プロ入り後翌年欧州女子ツアーで2勝(通算4勝)した。昨年から米国女子ツアーに転戦しすぐに3月に早々に勝利を挙げると、9月の「ウォルマートNWアーカンソー選手権」で2勝目を挙げる。
 順風満帆のアッタヤ選手であるが、私が思うに挫折と言えるのは、2021年のタイでの米ツアートーナメント(ホンダLPGAタイランド)で優勝を逃したこと。最終日首位のパティ・タバタナキット選手を抜きもう少しで米ツアーのツアーカードが取得できるところであったが、前でプレーするアリヤ・ジュタヌガーン選手が最終18番でイーグルを奪い、1打逆転されてしまった。18番のセカンドでアッタヤ選手は2オン可能で初日イーグルのようにイーグルで優勝、バーディでもプレーオフだったのだが、打つ直前にスコールがあり、まさに水を差された。中断後バーディもとれず敗れた。それで欧州女子ツアーへの出場を続けることに。無駄ではなかったが(年末渋野選手、古江選手らと8日間に及ぶ過酷な米プロテストを受け3位で合格)。
 アッタヤ選手は飛距離などスタッツで飛びぬけたものはないが、体操のレジェンド内村航平選手と同じ個人総合で1位というところか。前季26試合出場し10位以内が16回(トップ)で成績が安定しているだけではなく、ベテラン選手かと思うほどメンタルも安定している。
 しいて課題があるとすれば、パッティング(平均パット数ランク32位)か。10/20からの韓国での米ツアーBMW選手権で初日9アンダーでトップに立ち最終日もトップで迎えたが、優勝したリディア選手(同2位)にパット力の違いを見せつけられた。優勝賞金200万ドルの最終戦もポイントランキングトップのリディア選手と2位のアッタヤ選手が初日ツーサムで回ったが、一日でアッタヤ選手はリディア選手に8打差もつけられてしまった(優勝したリディア選手は、ポイントでの年間女王、賞金女王、年間最小平均スコアのベアトロフィーの3冠となる。さらに11/29史上最長5年半ぶりに世界ランク1位に復位。12/30の結婚に華を添えた。前季はまさにリディア選手の年となった)。
 19歳で世界ランク1位となったアッタヤ選手(今季1/31時点同4位)は17歳で世界ランク1位となった元祖天才少女ゴルファーのリディア選手の歩んだ道を辿れるか。今季のプレーが注目される。

 そのアッタヤ選手と笹生選手が昨年(日本時間)9/24~26に開催されたアーカンソー選手権で優勝を争った。初日笹生選手が首位に立つ。そこに2日目に10アンダーを叩き出しアッタヤ選手が追いついてきた。新世紀世代のフロントランナーNO.1、NO.2の優勝争いだ。私は両者ともファンであるが、直接対決なら日本人笹生選手を応援する。笹生選手はパターのシャフトをカーボンからスティールに戻してパットが好調で予選2日間でノーボギー。ようやく2勝目が得られると期待した。
 ただ、最終日に向けて、笹生選手が「緊張する」と言ったのを知って驚いた。いつも「楽しんで」としか言わなかったのに。やはり全米女子オープン優勝後早くもう一勝してほしいとの心配が当たってしまったか。笹生選手には無縁だと思いたかったのだが。
 笹生選手は最終日風向きが変わったと言っていたが、それは皆同じ。優勝したアッタヤ選手も2勝目へのプレッシャーがあったらしいが、1勝後も順調で来ていた。1年以上優勝できなかった笹生選手の方がプレッシャーが大きかったのであろう。
 2019年以降で2021年全米女子オープンを制した笹生選手のように米ツアーの初優勝がメジャー大会である選手のほとんどがその後メジャー大会でなくても勝てていない。2019年全米女子オープン覇者イジヨウン6選手、同全英女子オープン覇者渋野日向子選手、2020全米女子オープン覇者キム・アリム選手、同全英女子オープン覇者ソフィア・ポポフ選手、2021年ANAインスピレーション(22年から「ザ・シェブロン選手権」に名称変更)覇者パティ・タバタナキット選手が勝てないでいる。
 その中でも、大柄なキム・アリム選手は出場数トップの29試合に出場し予選落ちが2回だけと安定している。対照的に心配なのは、親日国タイのパティ・タバタナキット選手。上記21年ANAインスピレーションを初日から他を圧倒する飛距離で首位を続け完全優勝を21歳で果たした。アリヤ・ジュタヌガーン選手に変わり世界を牽引するかと思われた。だが、翌2022年に入ると、前半はよかったが、6月の全米女子オープンに予選落ちしてから、4連続予選落ちとなり、次の試合で29位の後また3連続予選落ちと棄権。次の予選落ちのない2試合でも73位、72位。ラス前も予選落ち。上位60人で争う最終戦も最下位。スコアが悪いから画面に登場しないのでよく分からないが、スタッツを見ると飛距離が15位でフェアウェイキープ率が160位であるからして武器のドライバーが暴れているのか。年が改まったので心機一転を期待したが、今季初戦も29名中28位(優勝したブルック・ヘンダーソン選手とは30打差)に終わる。
 運も味方し、自身のゴルフが完成されていない、確固たる自信もない間にメジャーに勝ち、周りからの見る目が変わり期待も大きくなり、期待に応えないとのプレッシャーが大きくなる。期待に応えられないと声援は誹謗・中傷に変わる。日米韓のナショナルオープン制覇かつメジャー3勝のチョン・インジ選手でさえ鬱に悩まされたと告白した。
 逆に、ジェニファー・カプチョ選手は、2018年に世界NO.1アマとしての勲章「マコーマックメダル」を受賞。19年に「オーガスタナショナル女子アマ」で初代チャンピオンとなり、鳴り物入りでプロになるも、3年間優勝できなかった。が、2022年のメジャー初戦シェブロン選手権でツアー初優勝を飾ると、その後すぐ立て続けに2勝を挙げた。

 米ツアーに挑戦している日本選手の中ではルーキーイヤーの古江彩佳選手の活躍が光った。今季さらに昨季の最終予選会に5位で合格した勝みなみ選手が米ツアーに参戦する。
 勝選手は全盛期が過ぎたとはいえ実力者の申ジエ選手を抑えて日本女子ゴルフの最高峰日本女子オープンを畑岡奈紗選手と同じく二連覇したのだから、勝つ見込みがあると挑戦する勝選手を誰も止めることができない。他の日本選手に比べれば米ツアーに向いている。
 ただ、日本で飛距離が抜きんでいても米ツアーではざらにいる。同じ270ヤードでも思い切り振ってのものとコントロールしてものと意味合いが違う。
 米ツアーは選手層が厚い。爆発力はあるが年間平均スコア70.52を70そこそこまでに改善することが必要だろう(日本女子ツアーで70を切ったのは2019年69.93の申ジエ選手と前季69.97の山下美夢有選手のみ。なお、勝選手FWキープ率60.38%、76位VS山下選手77.18%、5位)。
 4日間開催が主でコース設定もよりタフな米女子ツアーでは前季ランク14位の畑岡選手までも70を切る(1位リデイア選手68.988、2位キム・ヒョージュ選手69.390、3位アッタヤ選手69.458)。
 同じく最終予選会を受けた西村優菜選手は、24T位で終わり多くの試合に出場できる20位以内に入れなかった。インタビューでは涙涙で言葉にならなかった。飛距離が出ないのに日本ツアーでの年間平均スコアが70.46では厳しいか。そんな声に反発するかのように、それでも本人は米ツアーに参戦(昨季米ツアー21位古江選手の平均スコア70.34が目標となるか)するという。西村選手(150㎝)は、同じような体格の古江選手(153㎝)の活躍に刺激を受けて、プロテストに挑戦したのであろう。それに際しこう述べている。
 「自分の中では海外メジャー優勝という目標があるので、そこに向けて海外でいろいろな技術を身につけて強くなって日本に帰ってきてプレーしたい。それもあって早い方がいいかなと思った。」
 成功した選手は戻ってこない。戻ってくるのは引退するとき。帰ってくる選手は見切りをつけて戻ってくる。岡本綾子さんが言っていたように米ツアーに行ったから技術が上手くなるとは限らない。上手くなっても日本ツアーでそれが発揮できるか分からない。帰ってきた選手で米ツアーに行く前よりも成績が大きく上がった選手はいないのではないか(上田桃子選手は長く第一線で活躍しているとは言えるが)。たった1年ちょっとで帰ってきた河本結選手も行く前の状態に戻らず2年連続シード権を逃している。
 日本のサラブレットは欧州の競馬場で力が発揮できない。が、日本の女子選手は欧州のゴルフ場と相性がよい。古江選手が米ツアーで優勝したのも全英女子オープン(以下「全英女子」)前哨戦・スコットランド女子オープン (欧州ツアーとの共同開催。欧州ツアー名:スコティッシュ・オープン)。圧巻のプレーを披露し、“静かなアサシン”キム・ヒョージュ選手を逆に圧倒し戦意喪失させていた。
 翌週の全英女子では、米本土では予選落ちも少なくない渋野日向子選手が優勝争いをした。リンクスコースの難しさは、強風とポットバンカー(タコ壺バンカー)。ポットバンカーは馬力の差は関係なく、入ればだれでも一打罰となる。飛ぶけど曲げる選手は敵ではない。渋野選手は、球が風に強い。リンクスはフェアウエイが平坦で、改造スイングの弱点、左足下がり、つま先下がりがない。加えて全英女子チャンピオンとしての自信からかパットも好調であったことが要因として挙げられる。
 全英女子の前月に開催されるメジャー・エビアン選手権もアップダウンのある日本のコースと似ており、現メジャー昇格前で宮里藍(2回)さん、小林浩美(現協会長)さんが優勝しており、前季も、西郷真央選手が3位、畑岡選手、西村選手が15位と上位に並ぶ。
 一方、米本土で開催される世界最高峰全米女子オープンは、距離もさることながら、ラフが深い。日本選手同士のプレーオフとなった2021年の全米女子でサドンレスとなった3ホール目、畑岡選手がフェアウエイで、笹生選手がラフ。畑岡選手が一打分有利のハズだったが、馬力のある笹生選手はラフからパーオン。なんと2mにつけ、優勝した。
 新世紀世代(2001年~生まれ)は、世界の頂点に立った天才肌・練習の虫のアッタヤ選手や全米女子オープンを制した努力家・爆発力の笹生選手だけではなく、米ツアーの最終予選会でトップ合格した韓国ユ・ヘラン選手(21歳、176㎝)が参戦する。さらにタイの300ヤード放つナッタクリッタ・ウォンタウィラップ選手(愛称シム20歳)が最終予選会で28T位ながらメンバー入り(45位まで)した。欧州女子ツアーで、アッタヤ選手の14歳に次いで16歳で優勝したドイツ人プロのチェイラ・ノジャ選手もいずれ米ツアーに参戦するだろう。
 上述のBMW女子選手権で世界が瞠目したアマの韓国キム・ミンソル選手(高校1年生16歳 177㎝)、全米女子アマチュアゴルフ選手権で優勝した日本の馬場咲希選手(17歳175㎝)等アマの大型選手が控えている。米ツアーはますます大型選手が席巻する時代に入る。
 米男子ツアーで3勝を挙げた丸山茂樹プロは日本男子ツアーの2022賞金王比嘉一貴プロ(158㎝)の米ツアー参戦に対して「ドライバーの飛距離が爆発的に伸びてますからね。相当自分に自信がない限りは行かない方がいい。僕らのときみたいに技術が何とか手助けしてくれるって時代じゃなくなりましたから」と反対している。比嘉プロ本人も今季はDPワールドツアー(旧名ヨーロピアンツアー)を軸とすると表明。女子の方は丸山プロのような影響力のある忠告者はいないのか。
 西村選手を初め日本の体格が大きくない選手は、日本ツアーに居て、(暑い夏の日本を離れて)7月からの欧州におけるエビアン選手権→(スコットランド女子オープン)→全英女子オープンに挑戦して欲しい。どれかに優勝すれば、その時点で米ツアー参戦を検討すればよいのではないか。
 初代メルセデス女王と公式戦2勝(特典5年シード権)の山下選手は、西村選手と同じ身長でもあり、米ツアーへの転戦を急がず今季以降も多勝し日本でスーパースターになってもらいたい(2021年度年間8勝の稲見萌寧選手は昨季2勝に終わる。西郷選手は序盤5勝したが、終盤大スランプに)。
 ツアーを最盛させるためにはスーパースターも必要だ。男子ツアーの尾崎将司選手や米ツアーのタイガー・ウッズ選手みたいに。

 私は、今の日本女子ツアーは、風呂に喩えれば、今のままではいつまでもぬるま湯にしかならないと思っている。たしかに風呂の平均温度は35度から39度に上がっている。しかし、それ以上沸かしても上にあがってきた熱い湯を掬ってしまえば、温度は上がらない。笹生選手や古江選手らの代わりに外から熱い湯を入れればよいが、それがない。
 今は強かった韓国アン・ソンジュ選手は産休中?で出ていない。申ジエ選手はまだ頑張っているが、李知姫選手、全美貞選手、イ・ボミ選手やテルサ・ルー選手はもう熱い湯とは言えない(韓国選手が日本のプロテストに合格し、実力ではなく容姿で人気のアン・シネ選手の代わりは出来たが)。ぬるま湯の中では、強い者が勝つのではなく、ベテランであれ、ルーキーであれ、その時々調子のよい者が勝つだけに過ぎないのでは(1/7配信の『みんなのゴルフダイジェスト』は「誰もが主役になり得る時代が到来」と盛り立てるが)。
 渋野選手が目標とする朴仁妃選手は石の上にも3年日本ツアーで実力を磨き米ツアーで現役最高選手になったが、今は日本ツアーを経由せず直接米ツアーに行き、いきなり何人もの韓国選手が全米女子オープンに勝っている。加えて、韓国女子ツアーも最近は試合数が増え、賞金額も日本ツアーに匹敵するぐらい上がっており、海外に行く必要がなくなっている。さらに韓国女子ツアーは、規定を緩和し、海外から選手を呼び込み、ツアーの活性化を図ろうとしているという。
 その中でJLPGA(以下「協会」)は強い韓国選手を呼ぼうとせず、実質締め出している。キム・ヒョージュ選手は日本ツアーへの転戦希望を表明していたのだが。そのヒョージュ選手ももう日本ツアーに見向きもしないのか。韓国での開催の次は日本での日米共同開催のTOTOジャパンクラシックなのに、韓国からそのまま米国に戻ってしまった。
 日本女子オープンに次いで伝統と格式のある公式戦日本女子プロゴルフ選手権では、強い海外選手のスポット参戦もなく、コースセッティングも難しくなく(優勝スコア16アンダー。女子オープンは3アンダー)、臨時の高校生をキャディーとしたルーキーに勝たれ、シード権3年と優勝賞金3,600万円を与えた(優勝した川崎春花選手を批判してはいない。はんなりした物腰の中に芯の強さを垣間見せる彼女に好感を抱くし、彼女自身は何も悪くない)。ぬるま湯の中では、選手たちに公式戦の重みも勝つことの難しさも身をもって分からせることはできない。
 そんなぬるま湯の中で、すぐに熱い湯になれる日本女子選手は、「井の中の蛙で終わるのはイヤ!」とますます米ツアーを目指すのだろう。
 世界ランク100位内に日本の女子プロが19人(今季1/31現在)いる。喜んでばかりはいられない。ぬるま湯の日本ツアーだけの出場で(五輪の出場枠にも関係する)15位内に数人入ってくると米ツアーの選手から不満表明が出て、日本ツアーの難易度が下げられ優勝しても前ほどポイントが上がらなくなることも予想される。
 ファンは日本女子ゴルフ界の現状をどう思っているのか。あるネット民が「何年か前までの韓国勢に優勝を半分以上持っていかれた頃と様変わり。日本女子プロゴルファーは本当に強くなった。」と投稿していた。他のファンもそう思っている人が多いのであれば、協会は今のままでも安泰だ。

 もっとも、今が良ければそれでよいと思うのは、政財界も同じかもしれないが。

 (次号187号は2/20予定)

2023.2 NO.185 ン VS フ
 昨年は年初よりウクライナ戦争が起こり年末恒例の一字は「戦」となったが、新年は昨年より平和な年になるのでは。小康状態でもそうなると私は信じたい。
 昨秋米国の中間選挙が終わった。民主党が上院での勝利が確定した後も共和党優位予想の中接戦の下院について中々全国紙は触れようとしなかった。11/15の『NHK米国中間選挙2022-NHK特設サイト』の15時01分時点で共和党が217議席となったのに、11/15中で「共和党217議席獲得 過半数まであと1議席」と報じたのは、地方紙などで、全国紙ではいち早く報じた日本経済新聞のみ。大手4紙は、『Yahoo!』で確認する限り、報じていないのでは。政府だけではなく、権力を監視するハズの大手メディアも米国に従属しているのかと唖然とした(翌16日米国メディアが「共和党が下院で過半数確実」と報じると一斉に報じ始めた)。
 ともあれ、予算の先議権を有する下院では辛勝ながら共和党が勝利した。新春早々下院議長選が共和党保守強硬派の造反により難航したが、これから共和党が下院にて主導権を発揮していく。
 10月時点でバイデン民主党政権は、ウクライナに総額182億ドル(約2兆7千億円)超に上る軍事支援を実施してきた。非軍事支援を含むと520億ユーロ(約7兆6,200億円、約7割)を超えるとドイツのキール世界経済研究所は見ている。
 これだけの支援をして得たものは、何があるのか。たしかに米軍産複合体は潤った。バイデン大統領が蛇蝎のごとく嫌うプーチン大統領を窮地に追い込んだ。しかし、経済制裁はルーブルの価値も下がらずロシアを弱体化させたとは言えない。代償の方がはるかに大きいのではないか。エネルギー価格や小麦価格等の高騰を招き、戦争を仕向けた米国だけではなく世界中の低所得者の生活を困窮させている。代理戦争させられたウクライナは国土が荒廃し多くの住民が犠牲となっている。西側が民主主義の敵とするロシア、北朝鮮、イランの結束を固めてしまった。
 さらに、第3次世界大戦に向かう、ひいては核戦争かとの危機感を世界中に覚えさせた。バイデン大統領はロシアを戦争に引きずり込ませる為に「(米国はロシアとの核戦争を避けるために)参戦しない」と言ってしまった。核の抑止力は、「敵が核兵器を使えば必ず核兵器で報復する」ということにあるのに。それで、非核保有国ウクライナと核保有軍事大国ロシアとのあり得ない戦争となった。バイデン政権の誤算は、予想するよりはるかにロシア軍が弱かったことではないか。NATOがウクライナに加担するとはいえ、ロシアが核兵器を使わなければ挽回が不可能になる事態は想像していなかったのではないか。西側支援のウクライナとロシアとが通常兵器でほぼ互角の戦いが続きウクライナを犠牲にしてロシアを疲弊・弱体化させることを想定していたのではないか。
 頼りの綱の習近平総書記も反対しているので、プーチン大統領は自重しているが、戦況がより悪化すればロシアの強硬右派の圧力に屈するかもしれない。ロシアが戦術核であれ使用すれば、米国が窮地に陥る(表向きはロシアの黒海艦隊への壊滅的報復などと脅しているが、水面下ではどうか分からない。ロシアは核を使わせないなら米国が手を引けと言い返しているかもしれない)。報復として米国・NATOが通常兵器でロシア軍を猛攻撃せざるを得ないが、そうするとロシアが戦略核戦争への構えを見せるかもしれない。
 囲碁で喩えれば、60年前のキューバ危機は、米国にとって足元のキューバは本コウ。ソ連にとっては花見コウ(元々敵方のもの。取られても痛くない)。それでソ連が回避した。今般のウクライナはプーチン大統領にとって本コウ。米国にとっては花見コウ。チキンレースから降りるのは米国の方。バイデン大統領はチキンとのそしりを受けても。
 逆にバイデン大統領に不退転の決意があったとしてもそれを許す環境ではなくなる。ウクライナ支援の2023年予算は民主党で確保したかもしれないが、思うように支出できるとは限らない。それもあって昨年末ゼレンスキー大統領を米国に呼び議会で支援継続要請の演説をさせたのであろう。

 トランプ元大統領の神通力が陰りを見せても、トランプイズムは残る。MAGA(Make America Great Again)の共和党下院議員たちがバイデン大統領を攻撃するのでは。バイデン大統領の次男ハンター・バイデン氏とウクライナや中国との疑惑に対する追及によって。
 何にせよ、バイデン大統領の思惑通りに事は進まないだろうから、共和党の圧力に屈したと言われる前にウクライナ戦争の休戦の方向に舵を切ることもありうるのでは。それでも、攻勢にあり戦闘を止める気のないゼレンスキー大統領が従うとも思えず、時間を要するだろう。今もロシアからの直接の砲弾だけではなく、砲弾によるインフラ破壊に基づく酷寒さがウクライナ住民の命を奪おうとしているのだが。


 我々一般住民は、ウクライナ戦争を見て、初めて「専守防衛とは何か」に気づいた。ウクライナと同じ自国が戦場になることを意味する。日本は島国であり、まずミサイル攻撃で日本の軍事基地や通信施設等が破壊される。その後に上陸される(陸路で避難できるウクライナ人のようには海に囲まれた日本の人々は容易には国を脱出できない)。その後はウクライナと同じ。たとえ戦争に勝っても、国土が焦土化し、経済が壊滅的になり、大勢の無辜な住民が犠牲となる。
 日本が攻撃されたら、平時住民を救援・救助する自衛隊の自衛官は戦時は本職の兵士となり、我々は護ってもらえず、IT技術者、医師等特別なスキル・資格を持たないなら人道回廊も墓場に続くだけかもしれない。日本を攻撃するとすれば民間人の生命を重んじる?西側先進国からではない訳だし。
 ウクライナの惨状を見ていながら、明日は我が身だと思わず、我々一般住民が、国民の生命と財産を守ることを後回しにしているような政府の軍事力増強に対し、尻馬に乗って世論として“加油”するのなら、歯ぎしりするほかはない。
 攻撃される最悪の事態を想定し、軍事力で対抗することを考えるのは、防衛省であり、国の軍事研究者たち。憲法第9条を擁し平和国家を標榜する国のトップは、それを指示する一方で、なんとしても戦争にならないよう外交努力に傾注しなければならない。病気は「治療」よりも「予防」なのだ。紛争は、「戦争」よりも「外交」なのだ(米中戦争となれば日本が戦場とされる)。

 それなのに、BS情報番組では、産経系に限らず、朝日系、毎日系までもが軍事研究者等を招いて連日ウクライナ戦争の戦況、使用兵器や自衛隊幹部OBのロシアへの攻め方の話ばかり。観続けて疑問が湧いた。BS情報番組は自衛隊員の為にあるのか。私達一般住民は何のために見せられ続けているのか。

 安倍政権下、暴走しがちな河野防衛大臣が突如イージスアショア配置の断念をぶち上げた。敵国からのミサイル攻撃による大きな被害から国民を護るために配置するのに、大事の前の小事でしかないブースーターが自衛隊内や海上に落とすことが確実でないからとして。それから自民党は突拍子もない敵基地攻撃に替えると言い出す。腑に落ちぬ(日米同盟における「米国は攻撃。日本は専守防衛」の役割分担の見直しを米国から要求され、憲法9条の制約の中での過渡期的な対応なのか(どう見ても“ふつうの国”に変わろうとしているのに、憲法第9条をどうするか政府は国民に問おうとしない)。

 そして住民を護る代替措置が検討されず放置されていると言っても過言ではない。戦争のゲーム「将棋」でもまず守りを固めてから攻めに転ずる。サッカーWCで決勝トーナメントに進出した森保ジャパンも前半守りを固め後半から攻める。
 米国で最もファンが多い「アメフト」でもヘッドコーチ(首相)の下に「オフェンス・コーディネーター」と「ディフェンス・コーディネーター」がいる。日本には今ディフェンス・コーディネーターがいないのではと不安視するのは私だけであろうか。そんな中宏池会政権に代わり見直しを期待した。しかし、評判の悪い「敵基地攻撃能力」を「反撃力」と文言を変えただけで、安倍政権での方針を追従しているだけではないか。
 今や中国が筆頭仮想敵国であり、国土が日本の25倍ありかつ核大国の中国に対して年間国防費が中国の1/7?の日本が敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有したからといって抑止力につながると本当にそう思っているのか。抑止力はあくまで日米同盟と米軍の日本駐留であろう。極論ではあるが、米国が日米同盟を破棄することを心配するなら、(ウクライナのように)攻撃されないようにするには、知の巨人・トッド氏が再三日本に提言する核武装は政治的にも物理的にもできないので、米国が嫌がる中国と同盟し人民解放軍に駐留してもらうほかはない。
 万が一の為と言うなら、反撃力を強化しても、すべてのミサイルや砲弾の着弾を防ぐことは出来ない。世界一強の米国と同盟し米軍が駐留する日本に攻撃を仕掛ける他国はないと高を括ってなおざりにしてきた硝煙弾雨に対する国民の保護措置を最優先課題とすべきだ。
 軍事力の基盤となる経済力が低迷したままなのに、米国・NATOに「防衛予算をDGPの(5年後)2%に」を勝手に約束し、国会議員が身を切ることもせず、「歳出改革」の一言では本気度も怪しい中で、1兆円で済みそうにない増税により国民に負担させるのか(政府にとって主権者は米国。国民には、安全保障での大転換の説明も相談もなく、その為の防衛費増枠の手段についてのみ政府と自民党との国債か増税かの議論を通じて知らしめる。そして増税を押し付ける)。

 矜持を失ったのかメディアも、防衛費の財源論議をとり上げるが、根本の安全保障の大転換の問題を大きく報道しようとはしない。この国は極めて不健全になりつつある。

 日本国民も軍事力増強で生活が犠牲にされている北朝鮮の人民を哀れんでいる場合ではないが、その北朝鮮の脅威をタカ派はことさら強調する。しかし、トランプ前大統領と同じく、ICBM発射時に娘をお披露目した金正恩総書記も娘思いでは。政治的意味合いがあるにせよそんな愛娘を堂々と表に出す独裁者は、核兵器を盾にする(核実験は何回しても実験に過ぎない)、あるいは他国に売るだけで、戦争などするとは思えない。金総書記の目的は、何よりも金王朝の存続であり、他国への侵略などにはないだろう。

 そんな北朝鮮の軍事的示威行動としての度重なるミサイル発射(吠えるだけの黒毛犬を前の金毛犬のように構うのならまだしも目の前で金毛犬が吠えたら黒毛犬がよけいに吠えるのは当たり前)を理由に先制攻撃と非難されかねない自民党の敵基地攻撃路線を容認する(平和の党としての看板が古ぼけてきた)公明党山口体制をいつまで創価学会は許すのか。旧統一教会問題の火の粉が降りかかりそれどころではないにしても。
 国家財政が厳しくかつ少子化で国が縮んでいく中で平和国家を標榜する日本の反撃力の主力は、米国から購入する大型高額の軍事兵器ではなく、直接人を殺傷せず核攻撃等攻撃システムを狂わせる、事前に阻止する積極的サイバー防衛(アクティブ・サイバー・ディフェンス)になるべきハズだ(サイバー防衛に金も人も投入せず、中国、ロシア、北朝鮮等からも大幅に遅れている。その改善が焦眉の急なのに兵器増強による敵基地攻撃能力の強化はどうなのか。しかも厳密に必要な物を積み上げていくのではなく、防衛予算を拡大したからと利権として予算を奪い合うのであれば)。
 そんなオフェンス・コーディネーターは宏池会所属の小野寺五典議員(自民党安全保障調査会会長)が担っているように見える。その小野寺議員は、11月初め北朝鮮のミサイルが日本上空を過ぎ去った後にJアラートが鳴ったことに関し、他人事のように「恥ずかしい」と言い捨てた。大臣とか政府の重職についていないとは言え、「(3度の)防衛大臣の職にあった者の一人として責任を感じる」と陳謝すべきなのでは。

 TV番組で観る限り元海将の香田洋二氏の方が政治家よりよほど日本国、日本国民を守るべくバランスの取れた発言していると思う(海自「特定秘密」漏洩問題において、敵国側に渡った訳でもないのに海自幹部が懲戒免職されたのに対し法的に問題はないしろ元海将の名前が公表されないのはバランスを欠く。それは「防衛費増額は身の丈を超えている」と警鐘を鳴らし政権の方針に盾突く形の香田氏がその元海将ではないということも意味するか)。

 専守防衛から逸脱すると敵基地攻撃能力に異議を唱え見識あると期待した岩屋毅元防衛大臣は、匙を投げたのか、四面楚歌なのか、大分県知事選に出馬意向を表明(結局出馬辞退に)。
 

 小野寺議員が宏池会に所属することがおかしいのか、首相も首相だから宏池会自体が変節したのか(古賀誠宏池会前会長は、奥歯に物が挟まった言い方ではなく、叱責してもらいたいのだが)。宏池会であれば、日米同盟があるとはいえ日本の独自の国益も考えて隣国中国、ロシアと「外交」すると期待した。が、米国の代弁しかしていないように映る。
 11/18鈴木宗男参院議員のパーティで共に北方領土返還に向け尽力してきた森元首相が挨拶に立ちウクライナの(自身の保身の為に国民を戦争に巻き込んだ)ゼレンスキー大統領を「多くのウクライナの人たちを苦しめている」と批判した(江川紹子さん程の人でも揶揄するが、いつものような失言ではない。政治的背景を踏まえた一つの見識。日本人はいい加減プーチン「悪」、ゼレンスキー「善」とのステレオタイプ化した見方から卒業しては。私にすれば両大統領及び米大統領も皆が「悪」)。
 その返す刀で、ロシアに厳しい姿勢の岸田首相も「米国一辺倒になってしまった」と森元首相に言われてしまった。対米追随の清和会に言われて、どうする(対ロシアに関しては必ずしも一辺倒でもないが、岸田政権は中国寄りと疑う米国に認めてもらおうと躍起になるあまり、北方領土の返還を積年の悲願とする北海道住民の気持ちに思いを馳せることができないのか。防衛費に復興特別所得税を転用と言われた東日本大震災の被災者の気持ちに対しても同じだろう)。
 本来味方でなくとも敵ではないハズの作家保阪正康氏に「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」と言われる。叱咤激励とは言えない。

 2000年世界2位にあった一人当たり名目GDP(39,172ドル)を2021年27位(39,301ドル)にまで押し下げ近い将来台湾、韓国に抜かれるとされ、バブル崩壊後失われた10年を30年にし、さらに貧富の格差を拡大させてしまった清和会政権からようやく宏池会政権に代わり、私は大いに期待した。決断力ないとの批判に岸田首相は独断専行すると悉く裏目に出て首相としての資質を疑われても、それでも支持する気持ちは変わらなかった。

 しかし、金額ありきの「国防費5年で43兆円」を土産に岸田首相は1/13?から訪米する(朝鮮李王朝流に言うと、岸田チョナーがバイデン・ペーハーに朝貢に行く)のを聞くに及び、支持率が下がる一方の岸田宏池会政権を庇う気持ちが急速に萎んでしまった。

(次号186号は2/1予定)