2024.8 NO.212 トリプルダウン VS
トリクルダウン
新型コロナ禍も沈静化してき、インバウンド客が日本に戻ってきた。
本年3月産経新聞は「生ガキ5個4千円、ウニは2千円超…。『なにわの台所』として知られる大阪黒門市場に軒を連ねる鮮魚店の店先では、食べ歩きを楽しむ外国人がカキなどを購入し頰張っていた。」と報じていた。
冬のニセコではパウダースノーを求めてオーストラリア人を初め外国人天国となっている。そこでは屋台の天ぷらそば3,500円、ラーメン3,000円も外国人からは自国より安く食べられると言っていたという。地元の庶民は手が出ない。
豊洲では18,000円のうに丼を初め「インバウンド丼」と俗称される海鮮丼にインバウンド客が舌鼓を打っている。
その頃梅沢富美男氏が函館の贔屓店でいつも食べていた3千円の海鮮丼を8千円に値上げされていたのに激怒した。内容・原価が変わらないのであればそれはひどすぎる。
IT長者の『ホリエモン』こと堀江貴文氏ほどではないにしろ豪邸に住み裕福な梅沢氏が庶民感覚を忘れず、我々庶民の代弁をしてくれた。
それに対して、堀江氏が「それくらい気前よく払ってあげりゃいいのにな。ケチくさいな」とXでポストした。梅沢さんは大人の対応をとったが、芸能人の顔も持つ堀江氏が年上で大先輩の梅沢氏(卒職している私と同い年であるが、10億円とも言われる兄の借金を肩代わり完済し、厳しい環境にある大衆演劇の座長として団員の生活を守る為無理を押して多くのTV番組にも出演)に対しての発言に私は不快に感じた。ネット民も反論していたが、堀江氏は歯牙にも掛けなかったであろう。
言論は自由だか、影響あるインフルエンサーは何でも発信すればいいというものではない。迷惑系インフルエンサーとは一線を画すとはいえ、世の中をミスリードしてはいけない。ひろゆき氏に対するインフルエンサー・キラーとして米山隆一議員(その二人が高橋洋一嘉悦大教授のテレビ番組での「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない」の持論に共闘して反論。米山議員は詭弁で国民を愚弄するかのような高橋教授に対してもインフルエンサー・キラーになってもらいたい)がいる。
橋下徹弁護士に対するインフルエンサー・キラーとして泉房穂前明石市長のごとく、堀江氏にも有力なインフルエンサー・キラーが必要なのではないか。
それはさておき、私は今から10年以上前業界団体に籍を置き、アジアの同業団体との連帯を求めてアジア諸国に2年に一度程度アジア諸国への視察ミッションを企画した。
仕事を離れての楽しみは、日本では高くて手が出しづらい魚介類を初めとする食事にあった。
一番感慨を覚えているのは、2009年香港・マカオに行った時、会員で深圳在住の日本人夫妻に案内してもらった中国本土広東省(省都広州市)の沿岸部にある珠海市の『月季軒』。日本なら1万円以上する高級海鮮料理が1/3の値段で食べることが出来た。
韓国では、日本の芸能人が訪問するような高級店ではなく庶民的な名店を知った。一番は『眞味食堂』のカンジャンケジャン(生蟹の醤油漬け)。その他には『神仙ソルロンタン』のソルロンタン(白濁した牛骨スープ)、『土俗村』の参鶏湯、宿泊ホテルの向かいにあり何度か利用したが今は閉店?の『味加本』のあわび粥など。
上海では、店の名前を忘れネットで探したが判明してないがのだが、その店で初めて辣子鶏(ラーズージー:山盛りの唐辛子に小粒の鶏肉が埋められている)を知った。一皿の量が多いので、多人数でないと色んな種類の料理が食べられないことも理解した。それ以来四川料理にはまり、日本に戻ってからも有志3人だけだが赤坂『同源桜』、赤坂見附『望蜀瀘』、池袋『揚』2号店、六本木『シャンウエイ』、御茶ノ水『川菜館』等巡っていた。
シンガポールでは、定番のチリクラブよりブラックペッパークラブの方が好評であった。安くてよいのだが、その店は酒類が高かったのが残念であった。
各国地元の人々が「日本人価格でそんな高い物よく食べられるな」「そんな高級な物食べられてうらやましい」とか思っているのではと想像することはなかった。今は我々庶民の日本人が、インバウンド客に対してそう思うのか。隔世の感がある。
この20年日本は負け続けと言えるか。日本の経済力や豊かさは少なくともトリプルダウンの状態にある。
米国についで2位だった名目GDPは中国に抜かれたのは仕方がないとしても、ドイツにも抜かれて4位となってしまった。円安が是正されドイツを抜き返してもインドに近いうちに抜かされる。
「各国の豊かさ」を平均寿命や教育、所得の観点から測るHDI(人間開発指数)を見れば、日本2015年18位であったが2023年24位に下がった。この間韓国は20位から19位へと上がり、日本を追い抜いた。
実質賃金について、経済学者野口悠紀雄氏は2021.10.3付け『東洋経済ONLINE』にて「年間平均賃金額での2000年に対する2020年の比率を見ると、韓国は1.45倍と非常に高い値だ。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスは、1.2倍程度だ。ところが、日本は1.02でしかない。つまり、この20年間に、実質賃金がほとんど上昇しなかったのだ。実質賃金が上がらず、かつ円安になったために、ビッグマック指数で見た日本の地位が低下したのだ。」と述べている。
2024.1月時点でのビッグマック指数(%)と値段を比較すると、基準となる米国は9位で±0.00、5.69ドルにて、1位のスイスは+43.50、8.17ドル、英国は7位で0.36、5.71ドル。日本は45位で、-46.50、3.04ドル。韓国(31位、-27.80、4.11ドル)、中国(43位、-39.00、3.47ドル)より低くい。欧米人からすれば日本は物価が安いと感じるだろう。
そんな日本にしたのは、対米追随の清和会、小泉首相の新自由主義と後を受けた安倍首相のアベノミクスであろう。とくにアベノミクスは経済を浮上させなかっただけではなく、大きな後遺症を残した。
同志社大名誉教授の浜矩子女史は当初からアベノミクスをアホノミクスと呼び批判していた。首相の政策をそう揶揄するのはABEシンパでなくともいかがなものかと思うが、結果を見れば、仕方がないか。
アベノミクスの目標は低成長から脱する2%の経済成長率とデフレから脱する2%の物価上昇率と言えるだろう。デフレ下であれば経済成長だけ目標に掲げてもよいと思うが。
アベノミクスの3本柱も①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略の順番だが、本来③の成長戦略が「主」として①に掲げられるべきで、その為の大胆な金融政策、機動的な財政政策は「従」として位置付けられるものである。
本来「政府」が経済成長を促し、デフレから脱却させる。勢いあまって過度なインフレにならないように物価を金融政策により調整する。それが「日銀」の役割では。
そのため日銀は日銀法により独立した組織となっている。ある意味政府が暴走しても日銀はそれに追従しない、止める役目もあるだろう。しかるに、2013年1月22日に政府との間で「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という、政府・日銀共同声明を取り決めた為、安倍首相が日銀を政府の子会社と言ったごとく(所管の財務大臣は否定したが)、まるで政府が夫で日銀が妻になってしまった。
さらに、いつの間にか2%の物価上昇率だけが独り歩きとなり、国の目標みたいなってしまった。経済成長なしでも、石油など輸入物価が高騰でもすれば、達成されてしまうものに。
リフレ派は、物価が上昇すれば、賃金も上がり、景気が回復するという。勉強部屋を作れば子供の成績があがると言うのと同じでは。勉強嫌いの子供が勉強に精を出し始め成績が上がったので、それなら勉強部屋があった方がと言うのが正しい流れだろう。
夫の安倍首相は、極端に言えば、自らを支持してくれる、タカ派・自衛隊や友人、地元の支持者の為なること以外は側用人の官邸官僚に丸投げした感がある。モリ・カケ問題、桜を見る会など公権力の私物化疑惑で国内で批判を浴びると海外に外交と称して外遊する(古巣を叱咤する著書の中で前駐豪大使の山上信吾氏は安倍首相ほど外交活動に熱心に取り組んだ日本の首相はいないと書いているが)。
懸命に尽くす糟糠の妻となった黒田日銀総裁は金遣いが荒い夫が国債を発行しその新発債を買った民間銀行からせっせと買い取った(日銀財務勘定:資産・国債、負債・当座預金<民間銀行の債権>)。実質悪名高い財政ファイナンスを内助の功と呼んでいいのか。
夫が新産業への育成・助成や企業の設備投資を促さず、企業の生産性が向上しなければ賃金が上がらないのに、恥も外聞もなく労働組合のごとく夫と一緒になって妻の日銀も企業に賃上げをお願いする。
アベノミクスを後押しするリフレ派は、アベノミクスはトリクルダウンをもたらすとも言っていた。浜女史はこれも、別名“馬と雀”政策と言って、「馬にいっぱい草を食べさせると、それが馬の体の中を通って出て行く。そうすると馬糞に雀がたかって雀も食料にあずかることが出来る。」という差別政策だと批判した。
その通り、異次元の金融緩和が円安をもたらし、大企業の業績回復は株高をもたらした。株高は富裕層に恩恵をもたらし貧富格差が拡大させたに過ぎない結果となった。
この10年程企業の内部留保は倍増の現在555兆円と言われる。その中で、正規雇用を非正規雇用に替え、下請けにしわ寄せさせてきただけなので、賃金はほぼ横ばいに推移した。
1992年にソ連の瓦解を受けて鄧小平が「南巡講話」を発し、資本主義を導入し、市場経済化・グローバル化により、「先富后共富」(先に富だ者がまだ富んでいない者を富ませて共同富裕になる)から進められた国家資本主義も、トリクルダウン理論と同様逆に貧富格差拡大させた。習近平総書記はとり残された農民層、零細中小企業らが共産党一党独裁体制打倒を目指すのを恐れて、経済を停滞させても毛沢東の時代のような社会に戻そうとしている。人民すべてが貧乏にはもうならないから、いわば“豊かな北朝鮮”を目指すがごとく(本家の北朝鮮は、流入してくる韓国文化をシャットアウトして金王朝独裁体制を守ろうとしている)。
リフレ派はトリクルダウンをシャンパンタワーの一番上のグラスから満たしていけば、下のグラスもすべて満たされるのと同じとしか思っていない節がある。
それに関して、後述する河村小百合女史が2016年11月に上梓した『中央銀行は持ちこたえられるかー忍び寄る「経済敗戦」の足音』(以下「2016年本」)のP215にて、みずからの経験からもと言い、大学で学ぶ「金融論」と「生きた金融の世界」とは違う。いわゆる「リフレ派」が、金融機関関係者には少なく、官界に相対的に多いと指摘する。
アベノミクスの指南役であるリフレ派の東京大学名誉教授・イェール大学名誉教授浜田宏一氏は、トリプダウンは起きなかったと認めるものの、責任を痛感するという風な態度には見えない。その頃最低賃金が上がれば生産性があがるという無責任な説も流れていた。普通は逆なのに、韓国がそれを実践して多くの中小企業が倒産した。何のことはない。生産性の低い中小企業が淘汰されれば、全体して生産性が上がるというからくりに過ぎない。
上記2016本の7年後(私の読後感にすれば)河村女史は怒りを込めて2023年4月1日付け『日本銀行 我が国に迫る危機』(以下「2023年本」)を上梓した。それによれば、2013年日銀総裁に就任した黒田東彦氏は2年で2%の物価目標を達成すると大見えを切り巨額の国債やETF(信託財産指数連動型上場投資信託)等を買い入れる、いわゆる異次元の金融緩和を開始したが、2年間で達成できなかった。2016年からは、上記に加え、「長短金利操作」(イールド・カーブ・コントロール)を加え、短期の政策金利にはマイナス金利政策を導入(植田新総裁2024.3.19解除)したほか、10年国債金利を、国債の買い入れを通じてゼロ%程度に抑えることを目標に据えて国債を買い入れるという金融政策運営をしたとする。
黒田総裁は「マネタリーベースを大幅に増加すれば物価は上昇する」が持論だとしても、大学で経済学を少し齧っただけの私でも、ゼロ金利制約下ではマネタリーベースを大幅に増加させても効果は薄いということぐらいは分かる(身を弁えない不遜な私でも現筑駒中・高→東大・法→大蔵省の絵にかいたような秀才の黒田氏を「アホちゃうか!?」とは言えないが)。世界もその壮大な実験に注目したが、予想される結果に終わり、やっぱりねと思ったことだろう。
河村女史は当時の日銀政策委員会の審議委員にも怒りの矛先を向ける。金融調節ターゲット(操作目標)を短期金利(政策金利)からマネタリーベースに変更するのを慎重な議論もなく、オセロゲームで白から黒に簡単に変わるように審議委員が黒田総裁率いる執行部の提案にあっさり賛同し、あっという間に「マネタリーベース・コントロール」に切り替わったと批判する。異次元の金融緩和の拡大・継続、マイナス金利に反対した野村証券出身木内登英審議委員ひとりを除いて。
その木内審議委員が2017年7月任期満了にて退任する。後任には日銀出身で日銀の行き先を案じる河村女史が就任すればよかったが。リフレ派審議委員が就任する(後任は安倍内閣が任命するから当然か)。
黒田総裁は戦前の陸軍幹部の亡霊が乗り移ったかの如く、頑なに異次元の金融緩和を推し進め、奈落の底に入り込む。これが黒田総裁の最大の、あえて罪と言わせてもらう。
当の黒田総裁は2023年4月7日の退任会見にて、黒田総裁は、「持続的安定的な物価上昇率2%」は達成できず、残念だったとするも、「政府の政策と相まって経済・物価の押し上げ効果をしっかりと発揮した。政策運営は適切だった」と述べた。
それを見透かしたように、2023年本を4/1に上梓して、河村女史は黒田総裁の総括を次のように否定している。「10年近くに及んだ黒田日銀の金融政策運営の姿勢には次のような大きな3つの問題点があったのでは」と述べ、3つの問題点を列挙した。
①効果が認め難い政策を、「効果出るまでやる」と押し通し続けたこと。
②「経済を下支えするために“粘り強い”金融緩和の継続が必要」と言い続け、言い換えれば、「金利は低ければ低いほどいい」とでも言わんばかりの素人概念を経済の究極的な専門家であるはずの中央銀行が、先頭に立って流布したこと。
③中央銀行は本来、「いずれ金利は上がる。経済界も政府も備えるべき」と呼びかける立場にありながら、効果が出ない自らの政策運営を効果が出るまで続けるとして「金利はかなり先まで上げない」とまで黒田総裁が断言し、国内の企業、家計、そして政府にゆるみを招き、超低金利状態でなければ経済活動が継続できないような“甘え切った”状態を作り出してしまったこと。
こんな中央銀行の下では日本経済が健全に発展するハズがないと結ぶ。ならば、河村女史は黒田総裁を断罪したと言ってよいだろう。
安倍首相は異次元の金融緩和は効果がないと関心を失って行った。しかし、円安や株高は自らを支持してくれる大企業や富裕層を利する。政治資金パーティの現金キックバックとは違い、安倍首相は黒田総裁に止めろとは言わなかった。その意味で同罪だろう。
企業もそうだが、名経営者は早く後進に譲ろうとし、そうでない経営者が長く居座る。安倍総理も、黒田日銀総裁もともに歴代在任最長だ。
5月末に保有国債の評価損(含み損)は24年3月末時点で9兆4337億円となったと報じられた。それに投稿したネット民は、国債は満期まで保有すれば問題がないという意見が多かった。それは自体は間違いではない。が、資産だけ見て負債の問題に触れていない。
悪名高い財政ファイナンスの誹りを避けるため、一旦政府は民間金融機関に国債を買ってもらい、民間金融機関はそれを日銀に買い直してもらう。くどいが日銀勘定は資産:国債、負債:当座預金(民間金融機関の)資産)となる。当座預金は無利子ではない(マイナス金利時代でもすべての当座預金に適用される訳ではない)。
文末の「日銀資産・負債残高比較」を見ると、黒田総裁就任時の2013年100兆円に満たなかった長期国債残高が退任の2023年においては500兆円弱も増加させている。
日銀の資産としての長期国債は固定金利でしかも超低金利で0.2%程度しかない。一方負債である当座預金(民間金融機関の資産)は変動金利。超円安下短期金利が1.2%上がるだけで、1%の逆ザヤとなる。5兆円以上の赤字が累積し日銀が債務超過になれば、政府が救済することになる。それは国民が負担することを意味する。富裕層の負担は当然だが、恩恵に浴しなかった我々貧困層も尻ぬぐいせざるを得なくなる。
それで1ドルが160円を超えても簡単に金利を上げることができない。2024年5月臨時号NO.208(「NASA VS NISA」
)で論じたように大量に日銀が保有する株式も含み益のある間に売りたいが暴落の誘因となりかねず売れない。
植田総裁でなくとも誰が総裁になってもブロックタワーゲームのごとく崩壊させないよう恐る恐るでしか動けない。
日産のゴーン会長は自社内で処理すべき程度の問題で会社法の特別背任罪で逮捕され起訴された。当然黒田総裁も特別背任罪に問われてもおかしくないと私などは思うが、会社法の対象は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類で、日銀はどれにも当たらない。日銀法の第65条(罰則規定)にも総裁が特別背任罪に該当するような行為をすることは想定していないようだ。
日銀総裁は辞めれば叙勲が待っている。大蔵省出身で名総裁とされた故森永貞一郎、三菱銀行出身の故宇佐美洵、大蔵省出身の故澄田智等は勲一等を受勲した。澄田の前任の日銀生え抜きの故前川春雄は、優柔不断な澄田より断然立派だったと銀行員時代の私は思っていたが受勲していない。なぜかと思えば本人が辞退していた(見かけによらず、武士だと思った)。同じ日銀生え抜きの故三重野康も勲章嫌いとして受けなかった。三重野はバブルの後始末に苦慮しデフレの張本人呼ばわりされるも、金利をなかなか下げなかった理由として、年金生活者の生活を挙げていた。黒田前総裁の辞書には「年金生活者」は載っていなかったのでは。
「間違いなく史上最低の日銀総裁と思うが、それでも叙勲の話がくれば受けるのであろうか」と思っていたところ、この春の叙勲で厚顔にも黒田氏は受けてしまった。
引け目がなくても、がっつくのではなく一度目の打診は断るのが叙勲に足る者の振る舞いとされているのに。
推薦があるにしてももう少しほとぼりが冷めてからではと思っていたが。物価高に苦しむ国民感情を逆なでする、推薦者も、あるいは推薦を指示した者も、ろくなもんじゃない。
総裁も総裁だが、本店の日銀マンも何をしていたのか。指をくわえて漫然と日銀が機能不全に堕ちていくのを眺めていただけなのか。
1963年に刊行された『小説 日本銀行』で作者故城山三郎に大蔵省の「殿様」に対する「御殿女中」と揶揄された日銀マンは、今も、目立つことは忌避されるぐらいなら、上を批判するのはもってのほかなのか。
上述河村女史は1988年に京大法学部を卒業し日本銀行に入行。石の上にも3年我慢したが日銀マンの御殿女中ぶりに愛想が尽きたのか、1991年日本総合研究所(三井住友フィナンシャルグループ)に移っている。OBの河村女史は、黒田日銀を批判するが、日銀マンよりもよほど日銀のことを心配しているように私には思える。
日銀マンは、優秀なだけではなく、家柄もよいのだろう。英国紳士風に装い品がいい。「物言えば唇寒し」としていれば保身と出世は叶うのか。
法王と呼ばれた18代総裁故一万田尚登以降の法王庁と揶揄された日銀に新風を吹き込んだ民間出身の21代総裁故宇佐美も行員の意識改革までは手が回らなかったのか。
歌手故川島英五は『酒と泪と男と女』で「又ひとつ 女の方が偉いと思えてきた 又ひとつ 男のずるさが見えてきた」と唄った。私も最近何かにつけてつくづくそう思う。
日銀資産・負債残高比較 (単位:兆円)
|
||||||||||||
|
(次回213号は8/1アップ予定) |