ことばの物語
≪びんぼうー貧乏≫
何でもかんでも売り物で、有名になると貧乏も売り物
になる時代。
貧乏神も形無しであります。
貧乏にも段階があります。単なる貧乏から貧困、赤
貧と進むようで
あります。
貧乏ーまずしいことで、生計が思うようにならない。
貧困ーまずしくて生活が苦しいこと。
赤貧ーひどくまずしくて、何にも持っていないこと。
「赤」は「真っ赤なうそ」と同じように「何にも
ない」という意味であります。「赤貧洗うがご
とし」というと「洗い流したように所有物がな
にもないこと」であります。
貧乏神
痩せこけて薄汚れた老人の姿で、顔は青ざめ、渋
団扇を持っています。家の押し入れに住み着くとい
う。
貧乏神は怠けものが好きだと。果たしてどうですか
ね?
働けど 働けど 我が暮らし楽にならず
じっと手を見る (啄木)
そうなんです。貧乏人ほど働いているのであります。
遊んで暮らせるのはお金のある証拠であります。
貧ーまずしい・ヒン・ビン
字の成り立ちは「分=わける」に「貝=財貨」で、財
貨が分散して少なくなる、まずしいの意味。
似たような字に「貪=むさぼる・ドン」がありますが、
こちらは「今=含む」で、財貨を含みこむことで、む
さぼるの意味であります。
『貧交行』 杜甫
手を翻せば雲となり 手を覆えば雨となる
紛々たる軽薄 何ぞ数うるを須(もち)いん
(くるくる変わる人の態度。軽薄な連中が入り
乱れる。そんな人のなんと多いこと。)
君見ずや管鮑貧時の交わり この道今人棄てて
土の如し
貧者の一灯
貧しい人が苦しい生活の中から真心を込めて
神仏に供える。
金持ちのささげる万燈よりもまさると。
貧にて楽しむ
貧しいながらも楽しんで生活する。
貧乏=不幸ではありませんし、人と比較して不幸
を呼び込むことはしないように心掛けないとね。
乏ーとぼしい・ボウ
字の成り立ちは「反対方向を向いた足」の形で、
足りないの意味。
乏月
陰暦の4月の別名。
前年、冬取り入れた穀物が尽きて、今年の麦が
まだ実らない。
穀物の乏しい時期。
貧乏徳利(びんぼうとっくり)
円筒形の上の方に長い口をつけた陶器制の徳利。
貧乏人の子沢山
子という宝に恵まれても、これではたまりません
よね。
皮肉っぽく使われます。
貧すれば鈍する
食を求めてあくせくするうちに、才知ある人もや
がて道徳意識も鈍って、悪事を働くようになる。
「お金がすべてではない」と言えるのは、お金持ち
のはなし。
明日の食にもことかくの者には「お金がすべて」
であります。
貧乏も富貴も「過ぎたるは及ばざる」であります。
2017.10掲載再考
今日一日幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編