ことばの物語
〖敗北〗
はいぼく
敗けて北へ逃げる?
もちろんそうではありませんね。ただ敗けること
ですが、なぜ「北」と書くのかとなると、簡単に説
明できる人は、そう多くはなさそうですね。
もともと「北」という字は「右と左を向いて人と人
がを背を向けている姿」で、「そむく・にげる・せ・
せなか」という意味でありました。
これが方位の「北=きた」を指すようになったのは、
王が儀式などを行うとき、南を向いて座ったことか
らで、その背中側(北)を指す意で用いるようになり、
そのため「せなか」の原義を明らかにするために、
身体を表す「月=肉月」を付して作られたのが「背」
であります。
敗北にはいくつかあって、「三北」は三回敗けるこ
と、「大北」は大敗すること、「遁北・逃北」は勝利無
くして逃げることを言うと。
≪仏教語≫
〖真人〗
しんじん
「真人」はもともとは、道家の理想とされる道を体得
した者のことで、道教に到って神仙を指すようにな
りました。
これを仏教で「阿羅漢」の同義語として用いるよう
になりました。
「阿羅漢」はサンスクリット語の「アルハット」の漢音
訳で意味は「供養を受けるのにふさわしい者」とい
うことであります。仏教では真理(仏法)を悟った人
ということで、人々から尊敬、布施を受ける資があ
る高僧を指します。
真ひとについて「荘子」は次のように言ってます。
「無心に天命に随順し、全てを自然としてそのまま
に受け取り、一切の差別と対立を離れて、万物斉
同の境地に生きる人」と。
[禅語:臨済]
赤肉団上に一無位の真人有り
この生身の肉体に何の位階のない真人がいる
常に汝等諸人の面門より出入りす
常にあななたちの目や耳や鼻などから出入りしている
未だ証拠せざる者は看よ看よ
まだはっきり見届けていないものはしっかりとよく
看よ看よ
〖茶席で役立つ禅語/朝山一玄著・淡交社〗に次
のように解説してありました。
<あらゆるものに対する執着やとらわれをなくした
ところに自然に働きだす力、そこに生きている「真
人」と一体化すれば、そのまま真の自由人になれ
る>。
もともと我々に備わっていた無垢な心、この真人
に気付くことが悟りでもあるようですね。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経文庫