ことばの物語
≪いけにえー犠・牲≫
通常は「生け贄」と書くことが多いようですが、「いけに
え」は神に捧げる供え物であります。
「人の犠牲(ぎせい)になる」を「人の犠牲(いけにえ)に
なる」と読むと、
なにか神がかりでありますね。事実、「犠牲」には故
事がありました。
<殷の湯王がひでりの時、自分の身をいけにえにし
て天に祈り雨乞いをした。>これに基づくのか犠牲だ
そうです。
「贄=にえ」の字義
1.君主、師などに面会するときに贈る礼物、てみやげ。
2.古く、早稲(わせ)を刈って神に供え、感謝の意を表し
て食べ行事。
3.朝廷や神に奉る土地の産物、特に食用に供する魚、
鳥なと。
「生け贄」は、生きたまま捧げるものであるので、「贄」
と区別するために特に「生きたもの」という意味をつけ
たものであります。
字の成り立ちは「執=てにとる」に「貝=財物」で、手に
取って土産とする財物の意味。
【犠】ーいけにえ・ギ
「義」に「牛」で、「義」は「羊」に「我=のこぎり様の刃物」
で、いけにえの意味。あえて「牛」をつけているのは、
いけにえで最も重要なものが牛だったようです。
【牲】-いけにえ・セイ
「牛」に「生」で、生きたままの神への捧げもの。
生け贄の動物で犬と馬は特定の目的をもって用いら
れ、羊、牛、豚は
供えた後の神聖な食物として、祭祀の参加者に分け
与えたものらしいと。昔からこれらの動物は食用が主
だったんですね。
<生け贄の犬から生まれた字>
献ーたてまつる・ケン・コン
「頭部が虎の形をしたこしき」に「犬=血でその器を
清める生贄の犬」で、その器で神に物を捧げる意
味。
哭ーなく・コク
「犬=生け贄の犬」に「二つの口=多くの口」で、人
の死に臨んで、犬を生け贄にして多くの人が口を
開けて大きな声でなく。
器-うつわ・キ
四つの口の中の「大」は「犬」で、この犬は血でその
器を清める生け贄の犬。器は儀礼の時に用いられ
る清められた「うつわ」の意味でありました。
祓ーはらう・フツ
「犮=はりつけにされた生け贄の犬」に「示=祭壇」で、
犬を生け贄にして不吉なものをはらい除くこと。は
ら う、除くの意味。
今日一日幸運でありますように
2017.9掲載再考
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編