ポンコツ日記

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07Sep
- バサラオ
  劇団☆新感線44周年興行、作、中島かずき、演出、いのうえひでのり『バサラオ』観劇。　　　　　いつも観劇の感想はダラダラと書いてしまいますが。こういうんは、こうで良いんです。　　　　　　すげえ面白かった！主演の生田斗真、すげえ格好良かった。　以上です。
23Aug
- 日蓮
  所有DVD初見もの、萬屋錦之介主演、中村登監督、『日蓮』鑑賞。ネタバレ注意。　最近ある事情で、所有DVDがどっと増えました。なので、逆に貯めてしまい、よってこのカテゴリで書くことが減ってしまいました。確認すると5ヶ月ぶりくらいなようです。そんな理由ですから今後一気に書くかもしれませんが。　私には映画を自分なりのポイント制で判断するルールがあります。好きな俳優・スタッフ・原作小説・ジャンル・シチュエーションなどで、それぞれポイントを加算していくのです。もちろんあくまで、目安であって内容の良し悪しとは別問題ですが。本作『日蓮』はそんなマイポイントがかなり高得点でありながら未見であったことから少し古い(1979年)ではありますが、手に取ったという訳です。　タイトルロールの日蓮を演じるのは萬屋錦之介さん。大好きな『柳生一族の陰謀』に主演した頃とほぼ同時期の作品ですね。そんな日蓮宗宗祖である。日蓮の生涯を描いた一大スペクタクル映画な訳です。　今回は自分も少し興味があったのか珍しく隣で観ていた妻が日蓮をWikipediaでブツブツと読みながら観ていたので、煩えな。と思いつつも、参考になりました。その生涯をかなり忠実に描いているようでした。　但し後半、二度の蒙古襲来、佐渡への流罪などの暴風雨のシーンとなると若干のファンタジー的要素が入って来て。今観るとチャチではあるが、当時としては最先端技術であったろう特撮シーンはちょっと違うかなとは思いつつ結構好きです。　キャストで言うと、この次期いい意味で大芝居の多かった(『柳生一族の陰謀』『赤穂城断絶』『真田幸村の謀略』など)錦之介さんそういう意味で抜群。そして、日蓮の淡い初恋相手(実らない)役の松坂慶子さんの美しさ。二度の蒙古襲来に立ち向かう執権北条時宗に松方弘樹さん。皆さん適役で素晴らしい。そんな俳優達を重厚な曲で包み込む芥川也寸志の音楽が素晴らしい。本作のプロデューサーである永田雅一氏は熱心な日蓮宗の信者で、本作以前にも『日蓮と蒙古大襲来』と言う映画(日蓮役は長谷川一夫、北条時宗役は市川雷蔵)も製作しているらしいので、そちらも観てみたいものです。
15Aug
- 天使たちのメリークリスマス
  　劇団コシガヤン公演、作演出音楽、熊谷英雄『天使たちのメリークリスマス』観劇。一日だけの公演なようなので、ネタバレ気にしません。　コロナの事や自分の体力的なこともあり、大好きな観劇を控えておりました。一年前にリーディング。その前にダンスの公演を鑑賞いたしましたが芝居（演劇）と言う意味では3年前の2021年以来3年振りとなります。配信や映像という手もありますが、舞台って、生で、観客と作り手が同じ空気を共有しないと意味がないと考えているので、それでは駄目なのです。私だけかも知れませんが。　地元近くの地域アマチュア劇団です。低年齢層から大人までの参加者でオリジナルの楽曲を使用したミュージカルが多いようです。　その楽曲がとても良かったです。キャラクターに合わせつつも、柔らかな曲が多く、好きです。加えてキーボードの生演奏が入っていることもポイントでした。やはり、音量的にはカラオケに劣るとしてもキーボード一台とは言え生演奏はいいです。それによる芝居合わせの単音のSEも効いていました。それでも悲しいかなおそらく予算的には厳しい中での公演なので、スタッフワークや劇場費にはあまり予算は割けないのでしょう。もう少し。惜しいです。こればかりは仕方のないところなのでしょう。しかし、自立するキャスター付きのパネルを自在に動かして転換するセットは考えられていました。それによって登退場を効果的に見せたり。別色の布を垂らして、袖幕の延長とする飾りを見せたり。時折俳優が動かすことによって、場所が替わったということを印象づける効果もありました。良かったです。　しかしです。肝心の演技のことですが。まあ、もちろん年齢的なこともあるでしょうが、感情が相手役にも、観客にも当たらない（届かないんですよねえ。）その要因の一つとして声量のなさ。歌の発声は出来ている気はしますが、演技の発声はまた別ですから。でかけりゃいいってものじゃないですが、演技の質に関わるし、生声、生歌とPAした声、プレスコの声の差異が激しく、滑舌の問題とは別として聞き取り難いものとなってこの辺りはもっと訓練の余地はありそうですね。　全般的に予想以上の出来ではありましたが、後一歩ですね。でも面白かったです。　でもやっぱり生の舞台はいいなあ。　
09Aug
- 冷凍食品
  『つむぎや焼きそば革命』近年の冷凍食品ってレベルが高くなりましたよねえ。代表的なものはうどんとして、他にも餃子や炒飯などは驚くべきハイレベルです。お店で食べるくらい、いやそれ以上のものも多々あります。そんな先日テレビの情報番組で、美味しい冷凍食品ランキングみたいのやってまして、その中で焼きそば部門で一位だったのが、『つむぎや焼きそば革命』なんて商品だったわけです。これは探して食してみなければじゃないですか。調べてみるとつむぎやと言うのは我が埼玉県の久喜市栗橋に本店をもつ老舗小麦粉問屋だそうで、様々な小麦粉加工品があるようです。埼玉県ですからうどんはもちろん、フィナンシェやどら焼きのお菓子を始め、点心まであるようです。そんな中の一品が焼きそば革命というわけです。埼玉の会社なので、大宮駅の駅ナカにも店舗があるようで。先日大宮に出かけた妻が買ってきてくれました。で、早速実食です。流石は小麦粉問屋。麺作りには長けているのでしょう。麺が美味しいです。少し硬めというかコシのある食感。堪らんです。味付けはちょっと甘めで私の好みではありませんでしたが、そんなものを補って余りある一品です。美味い！
01Aug
- 沖縄焼きそば
  『南与野、沖縄料理縄玄ケチャップ焼きそば』沖縄焼きそば、以前からずっと食べたかったんです。それが、最近転居した先近くに沖縄料理屋があり、調べてみると。ありましたよ、沖縄焼きそば。しかし残念ながら、中々行く機会に恵まれず。漸くの訪問となりました。注文はもちろん一択なのですが、メニューを見てみると。塩味、いかすみ味ケチャップ味とあるじゃありませんか！早速お店の人に聞いてみます。この中でスタンダードなのはどれですか？と。答えて沖縄ではケチャップが多いけど最近は塩も増えてるみたい。ってそれはケチャップ味がスタンダードってことですね。んで、それを注文。聞くと、麺は沖縄そばと同じものを使うとのこと。沖縄そばというのはご存知かとは思いますが日本そばとはまるで違うもので、小麦粉と鹹水を使って作った麺を使うので、どちらかというと硬めで、もちもちとしたうどんとラーメンの間って感じの麺です。それで結構太麺ですから、言うたら太麺焼きそばですよ。食べ応えある。堪らん。ただ、予想はしていたのですがかなりのナポリタン感。そして、ケチャップ味なので、かなり甘い。途中、タバスコ気分で、卓上のコーレーグース（泡盛に島唐辛子を漬け込んだ沖縄の辛味調味料）を少しかけてしまいました。うん美味い。とは言え、具には、豚小間やソーセージではなくポーク（所謂スパム。沖縄ではそう呼ぶ）を使っているところに沖縄焼きそばとしての矜持を感じます。相対的にはとても満足です。本当は、泡盛やオリオンビールも合わせたいところでしたが妻の戒めと、日中のこの暑さの中ほろ酔いで帰ることの不安さから我慢しました。　ただこのお店。メニューを見ると、ランチは他に、沖縄そばソーキそば、ポーク卵の定食、ゴーヤチャンプルの定食、タコライスにソーキ丼、ゴーヤ入りチャーハンなどもある様だからそれらも試したいし、海ぶどうに豆腐よう、もずく酢、ミミガーもあるので、そんなん完全にお酒でしょう。　また行きたいです。考えてみたらソーメンチャンプルーなんてのもある種の焼きそばだし。
- ぽっぺん先生と帰らずの沼
  舟崎克彦著『ぽっぺん先生と帰らずの沼』（ちくま文庫刊）読了。ネタバレ注意。　小説というより、童話・児童文学ですね。なので、初読は小学生の時です。そのある種気持ち悪いと言ってもいいような得も言われないような不思議な世界観に魅了されたものです。それを再読したく手に取りました。　物語の主人公はぽっぺん先生と呼ばれる（_突っ掛けているサンダルの足音が由来＝身なりにはそれほど気を使わない）大学の生物学の先生です。彼の教える大学構内には周りに自然の残った帰らずの沼なんてのがあって、そこで起きる不思議な冒険譚です。先生は生物学が専門なので、帰らずの沼周辺の生物体系についても研究しています。それを論文に書いて専門誌に発表することもあります。そんな論文の締切も近付く、夏のある日の物語。　先生が食堂でランチをとっていると、見たこともない桃色の羽のウスバカゲロウが飛んでいくのを見つけます。学者魂に火がつき、早速、それを追い、沼を囲む森へと。その時先生愛用の腕時計は一時八分を指して止まってしまっていました。しかし、気付くと先生は空を飛んでいました。正しくは飛んだというよりは、飛んでいる桃色のウスバカゲロウの身体に先生の魂と記憶が乗り移ってしまったのです。　そこからぽっぺん先生の冒険が始まります。縄張りを荒らしたとヤンマなどの攻撃を受け傷付いた羽は徐々に飛ぶ力もなくなり、力尽き沼へと落下。息絶えるかと思いきや。意識が戻ると今度は魂と記憶は沼に住む魚へと移る。そこでは沼の主である殿様蛙とその従者である蟇蛙。他にも大鯰なんかとも交流を持ちます。しかし、会話をする彼らの理屈は分かりにくく面倒で、先生はもちろん読み手としても苛立ちます。どうなんだろうか、彼らが分かりにくいのではなく実は逆で、人間という存在が分かりにくいのだろうか？そうも思わせます。今一つ分かり合えない。その後は気付くと、カワセミになっていました。そして生物学者で、沼の環境に詳しい先生は気づきます。自分は沼周辺の食物連鎖に則って転生を繰り返しているのだと。読み手としても薄々は感じていたが、面白い設定です。しかし、愛する雌カワセミにも出会い、人間の時にはなかった幸せな家庭を作ることとなり、このままカワセミでも良いかもなんて考え始めます。そんな矢先、二人（二匹）の幸せな新居に侵入者が。二匹は鼬に襲われてしまい、当然先生は鼬に乗り移ります。こうなったら、なんとか現実の本人を探し当て、食べてもらうことで、自分に戻るしかないと思い至ります。しかし、鼬が人間に食べてもらうなど出来る筈もなく。馬を中継することも考えるもままならず。愛する人を失った悲しみも加わってか、辺りをあてもなく彷徨い歩きます。しかし、暑い夏のことです。今でいう熱中症みたいなものでしょうか。力尽き倒れ伏します。気が遠くなり、再び気が付いた時には、先生はキノコになっていたのです。倒れた死骸が土となり、それを栄養分にキノコになったってことですね。ただ、これだと全く動けませんから、先生の実体に戻ることはまた遠のきます。そしてまた気が遠くなり気付くと女王蟻が産んだ卵の中におり、間も無く孵化しました。女王の子供（つまりは王子蟻）である先生を大事に思う乳母蟻や働き蟻の制止を振り切り、蟻の巣を脱出。まだ羽化まもない羽を羽ばたかせ、ランチを頬張る先生の実体の元へ。そしてランチのライスにダイブ。無事先生の魂は実体に戻ったのです。その時一時八分で止まっていた腕時計も再び時を刻み始めます。僅か零分零秒というほんの一瞬の大冒険でした。そんなラストもちょいとお洒落。　本作は児童文学とは言っても、生物界の食物連鎖や、人間とはなんぞや？と言ったことも教えてくれるかつては少年少女であったおじさんおばさんにも是非読んで欲しい一冊です。このぽっぺん先生が主人公のお話はシリーズ化しているらしいので、また読んでみたいなあ。
29Jun
- 2024年上半期総括
  本日6月29日、まもなく六月も終わり、今年も半年が終わろうとしています。皆様はどう過ごされたでしょうか？私には様々なことがありました。　まず歩行機能の急激な衰えを感じ、再びリハビリを開始しました。とは言え、老健（介護老人保健施設）のデイケアサービスのものですが。その方が送迎車もあるので、家族への負担も少なく続けられます。しかし、さすがに毎日の様にというのも大変なので、現在は週一回のペースですが。慣れたら少し増やしたいなとも考えます。　そして、合わせて少し古びてきた補装具も新調することにしました。その場合、病院の補装具外来というところで診察を受け、区役所の許可を得なければならないのですが、その折りに担当医の方に補装具の新調も大切だが酷い内反を軽減させることも大事なので、ボトックス注射の施術を勧めると言われ、早速決め、行いました。通常のリハビリは少しお休みをいただき注射を行ったことを鑑みた別メニューのリハビリも行いました。　現在は通常リハビリを再開しております。　そういった身体のこととは別に大きなことも一つありました。偶々SNSが縁で、大学時代の友人と30年以上振りに交流を持つこととなりました。そして彼から仕事を少し手伝ってくれないか？という申し出があったのです。リモートも可能なデスクワークです。大変嬉しく喜んで引き受け、精一杯やったつもりです。結果、多少なりとも一助となったようで、大きな一歩を踏み出せた気がします。このように大変盛り沢山で充実した半年間でした。これら全てが総合され、生活が向上すると感じています。そして、また大好きな観劇など再開したく思います。それにはまだクリアしなければならない問題もあるのですが。下半期も顔晴ります。精一杯。
18May
- 映画悪党伝
  　バロン吉元著『映画悪党伝』（双葉社刊）読了。ネタバレも何も。って感じの本。　　著者は小説家でも随筆家でも、要は文筆家ではなく漫画家（当時流行りの言葉で言うと劇画家）です。今では知らない方も多いでしょうが、1960年代から70年代の劇画ブームを牽引した一人で、『柔侠伝』シリーズなどの代表作があります。そんな著者は映画が、それも映画の中の悪党が大好きらしく、その思いを多くの妄想を交えて綴ったのが本書であります。なので、エッセイに近いと言ってもよいかとも思いますが。ここで言う悪党とはストーリー上の悪役とも、それを演じる悪役俳優とも微妙に違う、悪党を演じることが似合う俳優といったところでしょうか？（何せ、松田優作、三国連太郎までそこに含まれてますから。）しかし、面倒なので、ここでは悪役と表記しますが。そしてまあ、まずは構成からして妄想が酷い。日本映画、海外映画と大きく二つに分けてあり。前半は洋画の、後半は邦画の悪役について書いてます。前者は多くの悪役が収容された刑務所を描くストーリーという形で、後者は悪役達を乗せて宇宙を旅する宇宙潜水艦を描くという形で妄想ストーリーが展開され、1ブロック終わるとその後で、そのブロックに出てきた悪役を写真、イラスト、作品名などで解説していくというスタイルが連続する。なんての。しかし、その解説の中に自分の作品内に登場する悪役も混ぜ込むという悪乗りっぷり。その合間に時折妄想大作映画なんてのもあって、『ハリウッド水滸伝』なんていって、『天保水滸伝』にハリウッド俳優をキャスティングしてみたり（ちなみに平手造酒はポール・ニューマン）。日本ワイルドバンチと称して、清水の次郎長を自分なりにキャスティングしてみたり（次郎長＝原田芳雄、大政＝松田勇優作他）など妄想全開の好き放題。　1980年初版発行なので、作品も俳優も少し古びてはいますが。まあそこは。ラストには著者と松田優作との対談なんてのもあるがそれは妄想ではないようだ。中高生の頃読んだ記憶があり、それなりに面白かったので、この度手に取りましたが、自分もいい年になっての読後感想としては、なんて下らない本であろうか。しかし、いい年をしてこんなものを書いている幸せを羨ましくも思える。そんなところでしょうか？
11May
- ボトックス注射とリハビリ
  現在使用している下肢の補装具も前回作成してから3,4年経ち、少しガタが来ている気がしまして、姿勢などもより良くしたいということで、いつも見てもらう補装具技師の方に相談したところ、それでは新調しましょうとなりました。補装具を製作するには役所に申請する必要があります。それに必要な書類を作成してもらうためには補装具外来というものを受診しなければならないのです。それを実施している場所は多くないので、近くだと埼玉県リハビリテーションセンターという大病院であり、大きなリハビリ施設でもあるところ（実は脳出血発症後半年弱入院していた施設です）にはありまして。そこで、担当医や療法士、補装具製作技師などの皆さんに様々チェックしていただいたところ、以前からではあるが、かなり内反（下肢が痙縮し内側に曲がってしまうこと）がきついから、まずはこちらを解消した方が良いので、ボトックス注射を受けた方が良いとの指導を受けました。そことは違う大病院で受けることになります。その施術の担当医にお話を聞くとボトックス注射というのはそれだけではなく施術によって弛緩させた筋肉にその後どういった運動をさせるかが大事だということで、それに見合ったリハビリが肝要とのことです。そのためには横の連携なども鑑みて、現行のリハビリよりその病院にある施設・療法士でのリハビリを受けた方がより効果があるであろうとのことで、そうなれば当然そちらで受けた方がいいですよ。通所の交通手段などの問題をクリアしなければいけないことはありつつ、こちらでリハビリを行うことが決定いたしました。但し、制度の問題で現行のリハビリとは並行しては行えないということとやはり制度のことで、期間も割と短期となってしまうということもあり、現行のリハビリはやめてしまうということでなく休止ということにし、病院でのリハビリが終了次第復帰することとしました。要は注射を受けてのリハビリをして、また能力向上のリハビリをしようというわけです。先日初回を受けたのですが、注射を打った麻痺足に体重をかける運動など、施術を受けたことを踏まえてのメニューを中心に考えて下さる。この選択、間違いなし。やります！
21Apr
- ユージニア
  恩田陸著『ユージニア』（角川文庫刊）読了。ネタバレ注意。　恩田陸は結構好きで、頻繁に読んでおります。と、言いつつ、直木賞受賞作『蜜蜂と遠雷』は読んでないのですが。それでも代表作なんて調べてみると本作に当たる訳です。ということで。　正直読後感としては、よく分からない。気持ち悪い。でした。恩田陸さんって、別人なんじゃないの？と思う程様々な傾向な作品が二種類ある気がします。『チョコレートコスモス』や、『夜のピクニック』を代表とする爽やかな青春物。もう一つはデビュー作『六番目の小夜子』、や『麦の海に沈む果実』の連作の、少し難解なホラー的ミステリー。またはそのどちらでもない『ドミノ』なんてコメディ系グランドホテル形式の傑作など、本当に一人の作家なのであろうか？なんとも思っています。今回、氏の代表作として名が上がるので手に取った『ユージニア』は、完全に後者のホラー的ミステリーでした。　昨年辺りから偶々よく読んでいるある事件の関係者へのインタビューを通じてその事件の真相に近付いていくというスタイル。（と言いつつ、薮の中的に真相から遠ざかるなんてものもありますが）インタビューってことは当然インタビュアーがいるってことですね。大抵その正体は序盤ではシークレットにされます。その正体が知れることがクライマックスの衝撃となるスタイルもあれば、中盤の転換点となることもあります。他にも地の文が一人称になったり、三人称になったりして、誰が、どんな立場の人がインタビューされている章なのかを錯視させ、そんなところもとても面白いです。本作は更に、人名も似せながら微妙に変えているので、その意味を探り出すと却って謎が止まりません。章毎に細かなメモを取りながらの読書になります。ある意味集中してるんだかしてないんだか。楽しい時間です。その分相当な読書時間を要しましたが。一応事件があって犯人がいるという小説なのですが、そんなことはどうでも良くなり、その気持ち悪さをただ楽しんでいきました。一通りのストーリーが終ると本書の制作に携わった人々が本書について語るという体を取った文章で締め括られます。本書の制作に携わった方々も皆、この気持ち悪さを楽しんでいたのです。あなたもでしょ？なんて締め括りなんでしょうか。そこもまた素敵でした。ああ、気持ち悪かった。（もちろん絶大な賛美として。）　
09Mar
- 金田一耕助の冒険
  購入済み未視聴DVDより、古谷一行主演、大林宣彦監督、『金田一耕助の冒険』鑑賞。初見ではないです。ネタバレ全開注意。大林宣彦監督。お好きな方も多いでしょう。私も好きです。尾道三部作に代表されるしっとりしたノスタルジックな作品群。それが堪らない方が大半かと思います。しかしそんな作品は大林監督のホンの一部だと思うのです。極彩色めいたガチャガチャした作品。使い古された言葉で言えばひっくり返したおもちゃ箱とでもいうような。私は前者をモノクロ大林。後者をカラー大林と勝手に呼んでいます。商業映画デビュー作の『HOUSEハウス』や二作目、手塚治虫の名作ブラックジャックを実写映画化した『ブラックジャック瞳の中の訪問者』（手塚はこれを相当嫌ったようですが。）などがこのカラー大林に当たるでしょうか。薬師丸ひろ子主演の『ねらわれた学園』はその中庸といった感じでしょうか。そんなカラー大林の最たる作品が本作『金田一耕助の冒険』なのです。横溝正史著の人気シリーズ金田一耕助物の一つである同タイトルの短編集でありながらその内の一編をメインストーリーとしつつ、他の短編の登場人物像も取り入れた物でTVドラマ版の金田一役・古谷一行を主役に迎えながら酷い映画なんですよこれが。（褒め言葉です。）当時（1979年公開映画）の流行や、監督の自作、他の横溝映画のパロディーだけの映画なのです。それがあまり笑えないと来ている。完全に悪ふざけオンリー。一応前述したストーリーはあるもののそんなの関係なし。途中から少しうんざりしてきますよ。　しかしこの映画、特筆すべき点がありまして。ハリウッド映画ではままあるらしいのですがダイアローグライターというものを取り入れているのです。読んだ通りの台詞のライターということですね。全体の構成はシナリオライターが手がけるが、台詞に関してはそれに沿ってダイアローグライターが書くというものらしいです。本作ではそのダイアローグライターを劇作家つかこうへい氏が担当しております。そして本作では金田一のバディと言える等々力警部（石坂浩二版だと、加藤武さんが「よおし！わかった！」と言って手を打つ早とちり警部ですね。）を田中邦衛さんがやってまして。邦衛氏はつか氏の舞台作品にもご出演されているので、その台詞回しも熟れたもので、かなりいいです。金田一に向かって、「また血が汚れてるとか、恐ろしい偶然が重なってしまったとか言うんじゃねえだろうな！」とか、「事件が起きたからあんたが来るんじゃなくて、あんたが来るから事件が起きるんだろ！」なんて言ったりするのはかなり素敵です。そんなことなので、等々力警部が段々とつかこうへい氏の代表作『熱海殺人事件』の主人公木村伝兵衛部長刑事に見えてきます。そんな映画ですが一応クライマックスを迎えます。不細工なおばちゃん登場人物の正体が、物語のキーとなっていた絶世の美女である亡くなった夫人であったなんて。それを言い当てる時の台詞が以下。「あらゆる物語はいつでも深い人間の情念に支えられています。この事件の全貌が分かった時、私はどうも事件を支えている執念に欠けているような気がしてなりませんでした。そこで私は考えたのです。不二子さん。自殺に失敗したあなたは無関係な人と結婚し、愛する男の帰りをずっと待っていた。やがて帰ってきた彼は別人のように変わっていた。そこであなたは自分の近くに彼を置いて彼をなじり続けた。それがこの事件の始まりなんです。」推理の源がそんな物語に対する情念に拠るものだとは。メタの手法の発言ですね。凄い。しかし女と真犯人は自殺（心中）のような形で死んでしまう。　この後はメタ繋がりのクライマックスです。本作のポスター取りということなのか金田一と等々力が写真スタジオにいる。セッティングをするスタッフ達が話をしている。「しかし、よくまあ死にましたね。こんなに殺す必要あったの？」、「結局金田一がモタモタしてたからいけないんだよね。皆死んじまわなきゃ推理できないもんね。大体同じ短編集だからって、別作品の登場人物が出てくるじゃない。」と、突然撮影の効果のためか雨が降り始め等々力が現れる。金「段々謎が解けた気がします。」等「謎解きの鍵となる美女の石膏像の首でも見つかりましたか？」金「首ですか？首ならきっと次に殺される人の元にあるんじゃないですかねえ？？急いで謎を解きます。」突然二人で雨の中”お楽しみはこれからだ！なんて、ポーズ。”ここまで、ふざけていたこの作品、そして、それ以外の全て金田一映画。いや全ての映画なんて遊びです。なんてニュアンスであろうか。　で、ここからは一人椅子に座った金田一のモノローグ。金田一にのみスポットが当たり、周りは全て等々力も含めて、闇に飲まれていく。「私、日本のおどろおどろしい殺人って好きなんです。毛唐みたいにピストルばんばん撃ち合う明日の殺人と違って日本の殺人は過去の魑魅魍魎を払い捨てるための殺人なんです。人を殺せば殺すほど、絶望的になっていきますもんね日本の犯人は。世界中のどこ探したって私一人ですよ。犯人の気持ちを思いやる探偵なんてのはねえ。私ねえ、こんなものじゃまだ満足しないですよ。」加速度的に狂気を孕んでいく。この辺りはどこまでつか氏が手を入れたのかは分からないが、木村伝兵衛以上の狂気。「もう四人も五人も死んでるんだ。まだ一波乱も二波乱もあってもいいじゃないですか。私だってちったあ名の知れた探偵なんだ。このままもし終わるようなんだったら、等々力さん！次はあなたを犯人にする気でいますよ。私達、そのために登場してるんですからね。」突然かき消える。等々力「（辺りを探し）まさか！」　場面変わって砂浜。大きな鐘や吊り下げられた刀。逆さ吊りの死体。半ば埋められ漏瑚を咥えさせられた死体などと戯れる金田一。遠くに現れそれを見つめる等々力とその部下。部下「しかし、なんであの死体なんて盗み出したんでしょ？しかも現場に下駄の跡を残して。しかしボス、あんた何もかも知っていたんでは？」等々力無視して金田一に歩み寄る。金田一、それに気が付き「やっと来ましたね等々力さん。そんな大人っぽい顔のあなたに会うのは初めてです。中々似合いますよ。さあ、さっさとおやりなさい。僕はこのままであなたにお別れします。さようなら等々力さん。さようなら金田一耕助。」またしてもかき消える。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　The End今までに見たこともない金田一。見たこともない大林映画です。好き嫌いは出ると思いますが。お薦めです。なんて言いつつ、後半丸写しですみません。
29Jan
- リハビリ施設
  以前通っていたリハビリの施設を諸々の事情で通所をやめてから、もう5,6年経ちます。しかし、それまで、指導していただいたことなどから、自分なりのプログラムを作り日々こなしてきました。そのお陰か歩行機能には問題なく、都内などにも出掛けることも容易とまではいきませんがしてきました。しかしです。ここ半年程、急激にそれが衰えた事は家族にも指摘され、実感もしております。そこで、ケアマネージャーさんの勧めもあり、近所のデイケア的にリハビリを受け付けている施設への通所を決意しました。施設の性質上多少高齢者向けのようではありますが、療法士の方もしっかりしているそうなので、一から鍛え直してもらおうと思います。いや、もらうなどという受け身な考え方ではなく、自ら動いて。顔晴ります。明日（2024年1月30日）はそんな第一歩、体験通所です。行ってきます。
16Jan
- 自由に、からだ、自由に、こえ
  　平川和宏著『自由に、からだ、自由に、こえ』（幻冬舎MC刊）読了。ネタバレ多少。　私の読書生活としては珍しく文庫本でなければ小説でもありません。所謂ハウツー本と言ってもいいのかもしれませんがそういうものでもありません。帯にはプロの俳優が教える！全身を使った自己表現。とあります。ですから演劇の入門書と言えるのかもしれません。まあ、確かにそういう面もあります。しかし肝となるのはタイトルにもあるような、演劇のワークショップを通しての、挨拶など日常生活に於ける発声、身体や表情の動かし方のバリエーションを学ぶことによるコミニュケーション力を育むということにあるようです。演出家や脚本家ではなく俳優が著していてこそですね。　様々なエチュードの方法、ワークショッププログラムが載っています。それらはもちろん演劇という括りで考えたら初心者向けと言えるかもしれません。しかし、前述した意味で言えば、平易な言葉でありながら、生活やコミュニケーションに大切なものとは何かということがしっかりと記された著作であると言えるでしょう。ということで考えれば演劇の指導者はもちろん教育現場に携わる全ての方に読んで欲しい一冊です。　何か大事なことを教えてくれる一冊となることでしょう。
05Jan
- 焼きそば初め
  さて2024も開けました。あけましておめでとうございます。今年も楽しく焼きそばを食べていきたいと思います。　そんな私の今年の最初の焼きそばは妻の作った我が家焼きそばでした、我が家のソース焼きそばは少し変わっていて、チューブからしを使っているそうです。これが、七味や胡椒や紅生姜とも少し違う柔らかなアクセントとなり、美味しいのです。　さあ、今年も色んな所で、色んな焼きそばを食べたいなあ。
01Jan
- あけましておめでとう
  さて、一月に入りまして、年も改まりました。新しい年のスタートです。皆様あけましておめでとうございます。本年(2024年）もよろしくお願いします。今年は夏にちょっとしたイベントがあり、それに向かって精一杯頑張る所存ですが、当ブログもよろしくお願いします。とは言え、いつものような読書感想文やら映画の感想文などの駄文をダラダラと書き連ねるだけですが。今年は観劇の感想文ももっと書ければ嬉しいのですね。そのためにもまずはもっと歩行のための体力筋力を鍛え直すことが大事ですが。とにかく皆様よろしくお願いします。
31Dec
- 大晦日
  皆様、こんにちは。もう今年(2023年)も早いもので、12月31日、大晦日ですね。今年一年は良かったのだか悪かったのか、結果、あまり成果の残せないあまり良い年ではなかった気がします。皆様はいかがだったでしょうか？それでは良いお年を。
30Dec
- いなくなった私へ
  　辻堂ゆめ著『いなくなった私へ』（宝島社文庫刊）読了。ネタバレ注意。　確か去年(2022年）であろうか、NHKで、あるドラマが放送された。一話15分程度、毎日月から金曜日までの短い期間ではあったが。しかしなんだか気になる印象深いドラマであった。原作物であり、その原作小説の著者名は辻堂ゆめ、その少し変わったペンネームと相まって、いつかは著作を読んでみたいと思ったのです。そんなことで手に取ったのが、本作というわけです。デビュー作だそうです。デビュー作って、多少は拙い部分はあろうとも作り手のやりたい物が詰まっているエッセンスであると思ってますので、お初の作家はデビュー作を読むことが大事という気持ちもあります。　冒頭、主人公の身の上に起こったことは大分SFというかファンタジーです。ふと眠りから目覚めるとそこは渋谷のゴミ捨て場であり、自分は超有名なミュージシャン（アイドル的ではあるが、シンガーソングライター）であり、新聞や大型ビジョンのニュースでは昨晩自分が自殺したという報道がなされている。自分は今正に生きているのに。ただ自分が自殺したらしき時間の前後の記憶はない。そんな不思議な状況にフラフラと彷徨い歩く。しかしである。行き交う人々は誰も自分をあの有名歌手だとは認識していない。だから、自殺報道のあった自分が普通に生きていても不思議に思う人もいない。ただ一人、アマチュアバンドらしきグループの中で、ベースを背負った青年を除いて。主人公は唯一状況を理解してくれているらしき彼を頼りにし、彼も自分の姉の家に身を寄せるよう言ってくれる。但し、いつまでもという訳にはいかないので自分が在籍していた事務所でアルバイトを始めることにする。しかし、可愛がってくれた社長も優しい先輩も頼りになるマネージャーも誰も彼女を彼女として認識はしてくれない。絶望の中彼女は真相を掴もうと決意する。謂わばこの物語は変形型の自分探しなんですね。もちろん青年とその姉も様々協力してくれます。そんな中で出会う一人の少年。彼は、主人公の大ファンで、主人公の死亡現場のすぐ近くにおり、主人公が上から落ちてきたことに驚き、走って逃げ出したところを、車に轢かれたというのである。後は、主人公と同じ状況で、死んだようなのだが、確かに自分が生きているいるという感覚がある。死んだ前後のことは記憶にない。その上家族の誰にも自分を認識してもらえないという状況なのだ。だからなのか、彼には主人公があの自分が大好きな有名歌手だと認識できる。そして、主人公、少年、青年の三人は行動を共にすることとなり、何故こんな現象が起きるのか？主人公と少年は何故死ななくてはならなかったのか。真相を突き止めようとする訳だ。そんな沈んでいる主人公に青年は彼が大学で活動しているアマチュアバンドに誘ってくれる。もちろん自分が過ごしてきた環境よりはレベルは落ちるものの、やはり、音楽に触れることは主人公にとっては大事であり、メンバーともすぐに打ち解けていく。しかしそのメンバーの一人が騙されかけたことから怪しい新興宗教の存在が見えてくる。そしてどうやら、その教団は主人公と少年の死の真相、また、青年の忘れられない暗い過去にも大きな関わりを持っているようなのである、そこからは真相究明の結構なミステリー。しばしばインサートされていた遠い昔インドの伝説。その全てが絡み合っていく。その中を文化祭のステージ向けて頑張る主人公とメンバー達。そして、教団の正体が明るみになると、二人の死の真相、青年の過去の真相がはっきりと分かる。そこからはエピローグという名のクライマックス。少年と青年の姉が客席で見守る文化祭のステージ。主人公は本来の自分の楽曲を熱唱し。誰も彼女を彼女と認識しなくても、音楽は伝わるのだ。この辺りは文章からサウンドさえも感じて素晴らしい。そしてステージラストのサプライズ。主人公にも読み手にも最高のプレゼントです。そしてラストは静かで穏やかながら、大きく感情が渦巻くものでした。まだまだ読みたい辻堂ゆめです。
29Dec
- 2023年読書マイランキング
  さて、今年（2023年）も、もう間も無く終了します。そこで、毎年のことですが、今年の読書マイランキングを記しておきます。実はまだ12月中に読み終えた二冊の感想文を書いてはいないのですが。今年は11冊と少し少なめだったでしょうか？　毎年書いてしまいますが、身体（左手）の麻痺の問題で、文庫中心になってしまいましたので、あくまで今年読んだ物、つまりは旬ではないものも多く入っています。悪しからず。それでは、参ります。10.アルファベット荘事件（北山猛邦）9.六の宮の姫君（北村薫）8.グランドマンション（折原一）7.月光ゲームYの悲劇'88（有栖川有栖）6.ある少女にまつわる殺人の告白（佐藤青南）5.扉は閉ざされたまま（石持浅海）4.六人の嘘つきな大学生（浅倉秋成）3.いなくなった私へ（辻堂ゆめ）2.ハケンアニメ（辻村深月）1.麦の海に沈む果実（恩田陸）と、こんな感じです。一二位は大好きで、いつも読んでいる作家なので、堅いかな？と思いますが、今年はお初の作家も多かったように思います。それが、皆一様に当たりでした。それが、収穫と言えば、収穫でしょうか？後、例年と少し違っていたのは、妻が私が薦めるものを比較的読んでくれたことでしょうか？やはり、感想を言い合える人がいるのは楽しいものです。どうしてもネットやテレビのある情報番組からの情報が多くなってしまうのですが、又来年年も新しい小説と出会えますように。
21Nov
- ある少女にまつわる殺人の告白
  　佐藤青南著『ある少女にまつわる殺人の告白』（宝島社文庫刊）読了。ネタバレしてしまうかも知れない。　ストーリーの進行は凝ってます。ある事件について取材を進める雑誌記者なのであろう男が、その事件に関わる様々な人間にインタビューをする会話形式で物語が紡がれていく。それを読んでいくうちに、その事件がどういったもので、その真相は何かということが徐々に分かってくる。読者は記者の取材によって自分も事件のことを知っていくというものです。　そうして読み進めるとすぐに児童虐待にあっている少女とその少女にまつわる事件であるということが分かります。そういった作りではありますが、主人公は三人であるということにも気付きます。インタビュアーである記者。少女。一番多くの話を聞かれる少女を担当した児童相談所の当時の所長。なので、どうしても所長の一人称で語られる部分が多くなります。そのスタイルは非常に面白く読めるのですが、所長の口から語られる少女の義父（母の内縁の夫）からの虐待の様子は非常に辛く痛々しいものですから、ぐいぐいと読ませるスピードは早いのですが、これ以上は見ていられない。という気分も大きくあります。そんな真逆の印象を強く思わせる。それほどに著者の筆致は素晴らしいものです。　ということでどんどんと読み進めていくうちにラスト近く。漸くハッピーエンドへと向かうのかな？と思わせておいて迎える最大の悲劇。そして事件の真相。タイトルの真の意味も知れる。驚きとため息。その後エピローグ的に分かるインタビュアーの正体。こちらも驚きました。しかし、読了して気付きます。実は三人の内でも真の意味での主人公は所長・所長による懺悔録なのです。　非常に重い話ではありましたが、とても興味深く読ませていただきました。　
06Oct
- 六の宮の姫君
  北村薫著『六の宮の姫君』（創元推理文庫刊）読了。ネタバレ注意。以前FB上で、古い友人がお薦めしていた一冊ですが、その友人とは趣味嗜好が近いようなので、手に取りました。しかしです。本作は著者の代表的シリーズである円紫さんと私シリーズというものの一つに数えられるとかで、あ、またシリーズものの途中から手を出してしまうという悲劇に陥ってしまった…。で、とりあえずどんなシリーズかと言いますと、文学部の大学生の私と大学の大先輩でもある噺家・春桜亭円紫（しゅんおうていえんし）が日常に謎と不可思議を解き明かすという円紫が探偵役、私が助手役な感じだそうですが、円紫はプロの探偵でもなければ刑事でもないし、扱う事件も殺人なんてものでもないような。ライトな感じのミステリー、こういうのコージーミステリーっていうらしいですね。不勉強でしりませんでしたけど。大好きな米澤穂信の古典部シリーズもこれなんだな。で、その辺りは一度置いておいて。　本作はその私が卒業も近付き、卒論のテーマに芥川龍之介を選ぶことから始まる物語です。そこで目を付けるのが本作のタイトルでもある芥川の短編『六の宮の姫君』な訳です。こ芥川の短編は古今物語集にある一つの話に芥川が想を得て書いた短編小説なので、古今物語集→芥川→本作という入れ子構造になっているという凝った造りなのですね。（私）は卒論をワープロ（時代を感じる言葉）で書きたいと思い立ち、ならば買わなければ。で、お金が欲しい。なんて考え、卒論担当教授に出版社のアルバイトを紹介してもらいます。そこで、出会う敏腕女編集者、大御所小説家などにヒントをもらったり、誘導されたりとしながら、卒業論文のためにも芥川が何故この短編を書くに至ったのか、検証・考察していく。その様はまさにミステリー以外の何ものでもない。少しドキドキしつつも学習しつつ読み進める。ヒントの中の一つ、友人とのドライブをしながらのおしゃべりはさながらロードムービー小説的な趣もあり面白い。　そして、この後からが円紫師匠の登場である。シリーズの読者であればここで「待ってました！」って感じなんでしょうが。私は初めてだしなあ。本作に於いてはただの一人の登場人物。しかしこの方が博覧強記であり、性格的にも優しく穏やかであることがすぐに知れる。芥川の交友などの様々なヒント（この中での蘊蓄も面白い）で。円紫師匠は、結論を教えてしまうでも・押し付ける訳でなく、（私）を答えに導いていくことが素晴らしい。芥川の交友関係の中でも鍵となるのが菊池寛である。二人は不仲なんだか親友なんだか私には少し判断付き兼ねますが。そこがまた面白く興味深い。ここで大変驚いたこととしては、芥川は長男が生まれた時に菊池寛の読みだけ頂いて比呂志と名付けたそうな。知らなかった。驚き。　小説は（私）が菊池が芥川に送った結婚を祝う手紙で締め括られる。なので特に言及はしていないが、さぞかし素晴らしい卒業論文が提出されたことであろう。　また、読むべきシリーズ物が一つ増えてしまった。嬉しくもあるが。

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