佐藤青南著『ある少女にまつわる殺人の告白』(宝島社文庫刊)読了。ネタバレしてしまうかも知れない。

 ストーリーの進行は凝ってます。ある事件について取材を進める雑誌記者なのであろう男が、その事件に関わる様々な人間にインタビューをする会話形式で物語が紡がれていく。それを読んでいくうちに、その事件がどういったもので、その真相は何かということが徐々に分かってくる。読者は記者の取材によって自分も事件のことを知っていくというものです。

 そうして読み進めるとすぐに児童虐待にあっている少女とその少女にまつわる事件であるということが分かります。そういった作りではありますが、主人公は三人であるということにも気付きます。インタビュアーである記者。少女。一番多くの話を聞かれる少女を担当した児童相談所の当時の所長。なので、どうしても所長の一人称で語られる部分が多くなります。そのスタイルは非常に面白く読めるのですが、所長の口から語られる少女の義父(母の内縁の夫)からの虐待の様子は非常に辛く痛々しいものですから、ぐいぐいと読ませるスピードは早いのですが、これ以上は見ていられない。という気分も大きくあります。そんな真逆の印象を強く思わせる。それほどに著者の筆致は素晴らしいものです。

 ということでどんどんと読み進めていくうちにラスト近く。漸くハッピーエンドへと向かうのかな?と思わせておいて迎える最大の悲劇。そして事件の真相。タイトルの真の意味も知れる。驚きとため息。その後エピローグ的に分かるインタビュアーの正体。こちらも驚きました。しかし、読了して気付きます。実は三人の内でも真の意味での主人公は所長・所長による懺悔録なのです。

 

 非常に重い話ではありましたが、とても興味深く読ませていただきました。