【あらすじ:「万引き家族」オフィシャル ホームページよりの引用(→☆)】
街角のスーパーで、鮮やかな連係プレイで万引きをする父の治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)。肉屋でコロッケを買って、寒さに震えながら家路につくと、団地の1階の廊下で小さな女の子(佐々木みゆ)が凍えている。母親に部屋から閉め出されたらしいのを以前にも見かけていた治は、高層マンションの谷間にポツンと取り残された平屋に女の子を連れて帰る。
母の初枝(樹木希林)の家で、妻の信代(安藤サクラ)、彼女の妹の亜紀(松岡茉優)も一緒に暮らしている。信代は「もう少し金の匂いのするもん拾ってきなよ」とボヤきながらも、温かいうどんを出してやり名前を聞く。「ゆり」と答える女の子の腕の火傷に気付いた初枝がシャツをめくると、お腹にもたくさんの傷や痣があった。
深夜、治と信代がゆりをおんぶして団地へ返しに行くが、ゆりの両親が罵り合う声が外まで聞こえる。信代には、「産みたくて産んだわけじゃない」とわめく母親の元に、ゆりを残して帰ることはできなかった。
翌日、治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング店へ出勤する。学校に通っていない祥太も、ゆりを連れて「仕事」に出掛ける。駄菓子屋の「やまとや」で、店主(柄本明)の目を盗んで万引きをするのだ。
一方、初枝は亜紀を連れて、月に一度の年金を下ろしに行く。家族の皆があてにしている大事な「定収入」だ。亜紀はマジックミラー越しに客と接するJK見学店で働き、「4番さん」(池松壮亮)と名付けた常連客に自身と共鳴するものを感じ、交流が始まる。
春の訪れと共に、「荒川区で5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れる。両親は2ヶ月以上も「親戚の家に預けた」と嘘をついていたが、不審に思った児童相談所が警察に連絡したのだ。
ゆりの本当の名前は「じゅり」だった。呼び名を「りん」に変え、じゅりの髪を短く切る信代。戻りたいと言えば返すつもりだったが、じゅりはりんとして生きることを選ぶ。信代は、「こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?」と初枝に語りかける。「何が?」と聞かれた信代は、「絆よ、絆」と照れながらも、うれしそうに答えるのだった。
時は流れ、夏を迎え、治は怪我が治っても働かず、信代はリストラされるが、それでも一家には、いつも明るい笑い声が響いていた。ビルに囲まれて見えない花火大会を音だけ楽しみ、家族全員で電車に乗って海へも出掛けた。だが、祥太だけが、「家業」に疑問を抱き始めていた。そんなある時、事件は起きる──。
【感想】
この前に観た「ファントム・スレッド」(2017)同様、重層的テーマで、多面的解釈、が可能な映画。
是枝裕和監督の前作、「三度目の殺人」(2017)同様、すっきりしないラストも同様だ。
現代日本の底辺に位置する「家族」を通して、「家族」とは何か、人と人との繋がり、人間同士の「絆」とは何かといった命題が語られていく。
樹木希林演じる初代はまるで、自分も貧しさの中にありながら「家族」を支え、助けようとする聖母マリアの様な存在に見える。
この映画自体はフィクションだが、新聞やTVで刹那的に流される社会的事件の背景に、どれだけ複雑な人間のドラマがあるのか。
「家族」の希望は、「翔太」に託されたと思うが、日本全国に多数いると思われる「じゅり(ゆり/りん)」たちの将来は、心配だ。今月初めに起きた5歳の少女の監禁・虐待・殺人事件が、生々しく想起される。
【スタッフ、キャスト等】
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:近藤龍人
キャスト:
治(リリー・フランキー)
信代(安藤サクラ)
亜紀(松岡茉優)
祥太(城桧吏)
ゆり(佐々木みゆ)
4番さん(池松壮亮)
初枝(樹木希林)
上映時間:2時間00分
日本公開:2018年6月8日
カンヌ国際映画祭:パルムドール(グランプリ)
鑑賞日:2018年6月14日
場所:TOHOシネマズ新宿
No.9353 Day 3240