白石の不登校特例校開校4カ月 18人全員が登校継続 マイペースでいられる場所みつけた

 
 全国でも珍しい宮城県白石市の小中一貫不登校特例校「白石南小・白石南中」(通称「白石きぼう学園」)が開校し、4カ月が経過した。在籍する児童生徒18人は全員が登校を継続。話を聞いてくれる大人、打ち解け合える友達と出会い、「自分の居場所」を見つけたようだ。(白石支局・岩崎泰之
 
[白石きぼう学園]閉校した白石市郊外の旧南中校舎を活用し、今年4月開校。
全国24校の不登校特例校のうち公立の小中一貫校は3校目で東北初。
市内の不登校の児童生徒は21年度67人で、出現率は中学生が全国を上回り、小学生は同程度。市教育支援センターなども不登校支援を行う。
東北の不登校特例校はほかに富谷市が開設した富谷中西成田教室、私立「ろりぽっぷ小学校」(仙台市太白区)がある。
 
 ■細やかな対応、みんなと一緒で心地よさ感じる
 7月中旬、心臓マッサージなどの救命救急を学ぶ授業があった。子ども3人の班に複数の教諭や支援員がついた。一人一人の体験を重視しようと必要以上の助言や手助けはせずに様子を見守った。  「授業が分かりやすい」と中学1年の菊地宗佑君(12)。休みたいときには休めて、図書館には少しだけ漫画もある。「学校に行くのがプレッシャーにならない。学校が楽しい」と感じている。
  4~7月で長期欠席の子はゼロだった。「明日は休もう」「途中で帰ろうと思ったのに最後までいてしまった」。児童生徒は教諭らに気持ちを率直に伝え、自分のペースで通う。保護者からは「行ってきますと言ってくれるのがうれしい」との声が寄せられている。
 
  同校は「学校らしくない学校」を掲げ、学び直しや体験学習に力を入れる。現場を支える教諭やカウンセラーらは19人。「試行錯誤」「臨機応変」をキーワードに4月以降、手探りで学校運営を続ける。生出真理教頭(53)は「みんなで話し合い、細やかな対応ができている」と手応えを口にする。  登校時間が午前9時20分と遅めなので、教諭らは事前に打ち合わせをして授業に臨む。子どもたちとの会話から「今日は調子が悪そう」と察知すれば、みんなで情報を共有する。部活動や定期テストがない分、教える側もゆとりがある。 
 
 6月、子どもたちの希望で白石のまちを散策する校外学習が行われた。市役所や武家屋敷を見て回り、お店でランチを食べた。 
 
 「みんなでいることに心地よさを感じているのがいいなと思った」と我妻聡美校長(55)。
 
「不登校は独りのイメージが強い。学校を休むことよりも、孤立し誰とも関わらず家にこもってしまうことの方が心配だ」と子どもの居場所づくりに注力する。 
 学校は23日までの夏休みに入っている。子どもたちの生活リズムが変わることへの不安はあるが、教諭らは「夏休みも乗り切れる」と信じている。21日の登校日には体を動かすミニゲームの企画で出迎える。
 
 ■不登校の事情さまざま 自分を説明「分かってもらえた」 
 白石市に4月、開校した小中一貫不登校特例校「白石きぼう学園」。さまざまな事情を抱える児童生徒が居場所を求めて学びやに通う。 
 中学3年西川幸信さん(14)が体育館で息を切らしながら遊んでいた。
「人混みが駄目。運動もあまりしてない」。体力不足はいかんともしがたいが、「ここに来てよかった。人が少なく、周りの人も話しやすい。家だと暇」と言う。 
 本格的に休むようになったのは小6の時。スマホなどのゲームに夢中になった。中学1年時はなかなか学校に行けず、2年時は転校先の先生の優しさに甘えて休み続けた。休むことへの後ろめたさはなかった。
  同じ3年の鈴木琉稀さん(15)は自分の意思に関係なく特定の動きや発声を繰り返すチック症を抱える。中学1年で症状が出始め、周囲の目が気になるようになった。野球好きで「小学校が全盛期。輝いていた」と振り返る。 
 きぼう学園ではみんなの前で自らの特徴を説明し、「分かってもらえた」。登下校時は見知らぬ人の視線が気になるし、体調によって休む日もある。それでも学校ではのびのびと過ごせている。  3年生の関心事は高校受験。鈴木さんが高校が開くオープンスクールへの参加を考えていると話すと、西川さんが「一緒行く?」と誘ってきた。友達と一緒なら心強い。 
 
■「多様な学びの場が必要」半沢芳典・市教育長に聞く 
 「白石きぼう学園」の開校を進めた白石市の半沢芳典教育長に開校の狙いや開設までの経緯を聞いた。 
 
◇  -全員が登校している。 
 「登校だけが目的でないが、出席率が毎日7、8割で推移しているのは学校が居場所になったからと感じている。子どもたちを見ていて、学校は楽しくないといけないと改めて学んだ」
 
  -スピード開校だった。
  「2018年に教育長に就任して以来、不登校は大きな課題だった。16年の教育機会確保法の成立を背景に昨年4月、開校に向けた準備に本格的に着手した。見切り発車的な部分はあったが、昨年度は全国の申請数が少なく国の認可を得やすかった事情もあり、1年で開校にこぎ着けた。職員の頑張りと校長会のおかげだ」
 
  -宮城は1000人当たりの不登校児童生徒数が19年度まで4年連続で全国最多で、21年度も2番目の多さだった。
  「東日本大震災が影響しているとも言われるが、白石は沿岸部でなく、宮城特有の影響があると考えられる。多様な学びの場が必要だ」
 
  -国は特例校を全国に300校設置する考えだ。
 
  「白石に引っ越し、きぼう学園に入りたいという子もいる。その子の地元にも特例校ができてほしい。多数派だけでなく、少数派の声にも可能な限り対応していく時代だろう」
 
 
北海道での特例校は、「星槎もみじ中学校」だけで、公立はない。
このような特例校をぜひ多くと思うけれど、
よく考えてみたらこのような教育課程で子ども達が生き生きと学校生活を送ることが出来るなら、
全国の公立小中学校を全部地域に合わせた特例校仕様にしたらいいのではないか。
むしろ、従来の画一的で自由のない学校は「特例校」にしたらいかがでしょう。
そのくらいの大ナタを振るわなくては、子ども達はのびのびと学び成長することが難しい時代なのかもしれません。