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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

住宅地区改良法5条に基づく建設大臣の事業計画認可の行政処分性(消極)

 

最高裁判所第3小法廷判決昭和50年11月28日

住宅地区改良法に基づく事業計画認可処分取消請求上告事件

【判示事項】 住宅地区改良法5条に基づく建設大臣の事業計画認可の行政処分性(消極)

【判決要旨】 住宅地区改良法5条に基づく建設大臣の事業計画認可は、監督官庁の施行者に対してする行政庁相互間における内部的意思表示にすぎず、直接国民の権利義務に具体的な変動を与える行政処分であるということはできない。

【参照条文】 行政事件訴訟法3

       住宅地区改良法

【掲載誌】  訟務月報24巻2号317頁

       最高裁判所裁判集民事116号735頁

 

行政事件訴訟法

(抗告訴訟)

第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。

5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。

6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。

一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。

二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

 

住宅地区改良法

(事業計画の決定)

第五条 施行者は、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に協議の上、事業計画を定めなければならない。この場合において、市町村がその協議をしようとするときは、都道府県知事を通じてしなければならない。

2 前項の規定は、施行者が事業計画を変更しようとする場合(政令で定める軽微な変更をしようとする場合を除く。)に準用する。

 

「       主   文

 本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人らの負担とする。

       理   由

 上告代理人の上告理由について

 住宅地区改良事業の事業計画の認可は抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法があることを前提とする違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。

 

覚せい剤の製造とその後の所持

 

最高裁判所第2小法廷決定/昭和28年(あ)第1534号

昭和30年1月14日

覚せい剤取締法違反被告事件

【判示事項】    覚せい剤の製造とその後の所持

【判決要旨】    覚せい剤の密造者が、製造にかかる覚せい剤を所持する場合において、その所持が製造に伴う必然的結果として一時的になされるに過ぎないと認められない限り、その所持は製造行為に包括せられるものとはいえない。

【参照条文】    覚せい剤取締法14

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集9巻1号45頁

 

覚醒剤取締法

(所持の禁止)

第十四条 覚醒剤製造業者、覚醒剤施用機関の開設者及び管理者、覚醒剤施用機関において診療に従事する医師、覚醒剤研究者並びに覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者のほかは、何人も、覚醒剤を所持してはならない。

2 次の各号のいずれかに該当する場合には、前項の規定は適用しない。

一 覚醒剤製造業者、覚醒剤施用機関の管理者、覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者の業務上の補助者がその業務のために覚醒剤を所持する場合

二 覚醒剤製造業者が覚醒剤施用機関若しくは覚醒剤研究者に覚醒剤を譲り渡し、又は覚醒剤の保管換をする場合において、郵便若しくは民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第二項に規定する信書便(第二十四条第五項及び第三十条の七第十号において「信書便」という。)又は物の運送の業務に従事する者がその業務を行う必要上覚醒剤を所持する場合

三 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受ける者の看護に当たる者がその者のために覚醒剤を所持する場合

四 法令に基づいてする行為につき覚醒剤を所持する場合

 

青色申告更正処分に付記された理由が法人税法一三〇条の求める理由付記として不備があるとして更正処分が取り消された事例

 

 

              賦課決定処分取消等請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成24年(行コ)第32号

【判決日付】      平成25年1月18日

【判示事項】      青色申告更正処分に付記された理由が法人税法一三〇条の求める理由付記として不備があるとして更正処分が取り消された事例

【参照条文】      法人税法130

【掲載誌】        判例時報2203号25頁

             税務訴訟資料263号順号12130

【評釈論文】      自治研究90巻11号142頁

             税研178号272頁

             税務事例46巻2号7頁

 

法人税法

(青色申告書等に係る更正)

第百三十条 税務署長は、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、その内国法人の帳簿書類を調査し、その調査により当該青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限り、これをすることができる。ただし、当該青色申告書及びこれに添付された書類に記載された事項によつて、当該課税標準又は欠損金額の計算がこの法律の規定に従つていないことその他その計算に誤りがあることが明らかである場合は、その帳簿書類を調査しないでその更正をすることを妨げない。

2 税務署長は、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の課税標準の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第二十八条第二項(更正又は決定の手続)に規定する更正通知書にその更正の理由を付記しなければならない。

 

国税通則法

(更正又は決定の手続)

第二十八条 第二十四条から第二十六条まで(更正・決定)の規定による更正又は決定(以下「更正又は決定」という。)は、税務署長が更正通知書又は決定通知書を送達して行なう。

2 更正通知書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。この場合において、その更正が前条の調査に基づくものであるときは、その旨を附記しなければならない。

一 その更正前の課税標準等及び税額等

二 その更正後の課税標準等及び税額等

三 その更正に係る次に掲げる金額

イ その更正前の納付すべき税額がその更正により増加するときは、その増加する部分の税額

ロ その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により減少するときは、その減少する部分の税額

ハ 純損失の繰戻し等による還付金額に係る第五十八条第一項(還付加算金)に規定する還付加算金があるときは、その還付加算金のうちロに掲げる税額に対応する部分の金額

ニ その更正前の納付すべき税額がその更正により減少するときは、その減少する部分の税額

ホ その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により増加するときは、その増加する部分の税額

3 決定通知書には、その決定に係る課税標準等及び税額等を記載しなければならない。この場合において、その決定が前条の調査に基づくものであるときは、その旨を附記しなければならない。

 

地方公共団体がその普通財産についてする貸付または売却行為は行政処分(行政事件訴訟法3条)か

 

札幌高判昭和31年6月11日高等裁判所民事判例集9巻6号388頁 判タ62号81頁 判時81号5頁 

【判示事項】 地方公共団体がその普通財産についてする貸付または売却行為は行政処分か

【参照条文】 地方自治法208、213

       旭川財産条例7

       国有財産法3-1(国有財産の分類及び種類)    

 

地方自治法

(会計年度及びその独立の原則)

第二百八条 普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

2 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。

 

(繰越明許費)

第二百十三条 歳出予算の経費のうちその性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについては、予算の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用することができる。

2 前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費は、これを繰越明許費という。

 

国有財産法

(国有財産の分類及び種類)

第三条 国有財産は、行政財産と普通財産とに分類する。

2 行政財産とは、次に掲げる種類の財産をいう。

一 公用財産 国において国の事務、事業又はその職員(国家公務員宿舎法(昭和二十四年法律第百十七号)第二条第二号の職員をいう。)の住居の用に供し、又は供するものと決定したもの

二 公共用財産 国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したもの

三 皇室用財産 国において皇室の用に供し、又は供するものと決定したもの

四 森林経営用財産 国において森林経営の用に供し、又は供するものと決定したもの

3 普通財産とは、行政財産以外の一切の国有財産をいう。

 

(取引条件等の差別取扱い)

4 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。

 

不当な顧客誘引(4号)

 

神戸地判昭和54年12月11日金融・商事判例591号43頁

美容品類の卸売を業とする甲会社が乙と商品の継続的販売契約を締結するにあたり同業他社の商品を取り扱わないことを約させた場合において、甲の経営規模からみて他の同業者にとっては容易に取引の相手方を求められる状況を作り出すことができこれにより本来の競争による市場進出が妨げられるものと認められないときは、右契約は独占禁止法2条7項4号に該当するものとはいえない。

 

東京高判平成5年3月29日判例タイムズ861号260頁[ベルギー・ダイヤモンド事件]

マルチまがい商法によるダイヤ販売商法が違法とされ、損害賠償が認められた事例

 

 

東京高判平成7年9月26日東京高等裁判所判決時報民事46巻1~12号19頁

1 平成3年の証券取引法の改正法施行前にした証券会社による損失補填は、改正前の証券取引法50条1項3号、4号に違反しない

2 顧客との取引関係を維持し、又は拡大する目的で一部の顧客に対して行った損失補填は、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示15号)の9項(不当な利益による顧客誘引)に該当し、独占禁止法19条に違反する

3 損失補填を行った証券会社の取締役に商法266条1項5号の法令違反(善管注意義務、忠実義務違反)がないとされた事例

 

東京高判平成8年3月28日判例時報1573号29頁

1 コンビニエンスストアのフランチャイズ契約におけるフランチャジー(加盟店)が競業他者の経営に関与し、若しくはこれらの者と業務提携あるいはフランチャイズ契約を結ぶことを禁止した約定が独占禁止法の定める不公正な取引方法に当たらないとされた事例

2 フランチャイジーが取締役をする会社がフランチャイザーの競業他者とフランチャイズ契約を締結したことがフランチャイズ契約における約定の解除原因に当たるとされた事例

2 右解除に伴う損害賠償額の予定の定が著しく高額であるとして一部を無効とされた事例

 

東京地判平成20年12月10日判例タイムズ1288号112頁[USEN対キャンシステム事件]

国内業務店向け有線放送業界1位の会社が2位の会社の元従業員によって設立された代理店と共謀し、2位の会社の従業員を大量かつ一斉に引き抜いた上、2位の会社の顧客に限って低価格でのサービスを提供をするキャンペーンを実施し、2位の会社の顧客を奪取した行為は、差別対価(一般指定3項)という不公正な取引方法に該当する違法な手段により2位の会社の顧客を大量に奪取して2位の会社の事業活動を排除し、もって公共の利益に反して、我が国における業務用有線音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限したものであって、独占禁止法2条3項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法3条に違反するとともに、不法行為に当たる。

 

東京高判平成20年12月19日判例時報2043号51頁

郵政省の郵便番号自動読取区分機類の入札で談合があったとして,公正取引委員会から排除措置を命じられたX1社とX2社の公取委に対する審決取消請求上告審で,審決を取消した東京高裁判決を破棄し審理を差し戻された事案で,東京高裁は,両者の間で郵政省担当者から内示を受けたほうだけが入札に参加するとの暗黙の合意があり,同省も一定の関与をしていたが,両社の責任が免除されるわけではないとして,両社の請求を棄却した事例

 

東京高判平成28年1月29日判例時報2303号105頁

日本法人(ブラウン管テレビ製造販売業者)が日本国外所在の現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管について、外国法人が日本国外で、現地製造子会社等向け最低目標販売価格等を設定する旨を他社と合意した場合、その合意は、本件ブラウン管の購入先及び重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象にするものであり、その合意に基づいて、日本に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間で行われる交渉における自由競争を制限するという実行行為が行われたときは、これに対して我が国の独禁法3条後段を適用することができるとされた事例

 

勧告審決平成3年12月2日[野村証券事件]

損失補償が一般指定9項に該当するとした。

 

勧告審決昭和43年2月6日[綱島商店事件]

ルームクーラーの販売にカラーテレビを景品として提供した行為

 

東京高判平成14年6月7日判例タイムズ1099号88頁[カンキョー空気清浄機事件]

1およそ広告であって自己の商品等について大なり小なり賛辞を語らないものはほとんどなく、広告にある程度の誇張・誇大が含まれることはやむを得ないと社会一般に受け止められていて、一般消費者の側も商品選択の上でそのことを考慮に入れているが、その誇張・誇大の程度が一般に許容されている限度を超え、一般消費者に誤認を与える程度に至ると、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれが生ずる。そこて、景品表示法四条一号は、「著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」を禁止したもので、ここにいう「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指しているものであり、誇張・誇大が社会一般に許容される程度を超えるものであるかどうかは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば「著しく優良てあると一般消費者に誤認される」表示に当たると解される。
 そして、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかは、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容などにより判断される。
 

東京高判平成16年10月19日判例時報1904号128頁[ヤジマ対コジマ事件]

1 被控訴人の実施した各表示が,不当景品類及び不当表示防止法4条2号に違反する違法な不当表示にあたるとともに,その実施が不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為にあたり営業妨害及び名誉棄損になるとして,損害賠償,各表示の実施停止及び謝罪広告等を請求した事案であり,原判決は,控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴し,各表示が独禁法19条に違反するなどと主張した。

2 控訴人の請求はいずれも理由がなく,原判決は相当であるとして,本控訴を棄却した。

 

勧告審決平成3年11月21日[日本交通公社事件]

白夜が当該主催旅行の実施期間中見られるかのごとき広告が、誤認されるとされた

 

排除措置命令平成17年2月10日[東京リーガルマインド事件]

司法試験予備校が司法試験受験対策講座の受講者でない者を当該受講者に含めて合格実績をパンフレット等に表示していた行為

 

被告人会社及びその役員らが,円借款事業であるサイゴン東西ハイウェイ建設事業に関するコンサルティング契約で有利な取り計らいを受けたいとの意図の下に,ベトナム社会主義共和国東西ハイウェイ・水環境業務管理局長に対し現金を供与するなどの不正競争防止法違反被告事件

 

東京地方裁判所判決/平成20年(特わ)第1730号

平成21年1月29日

各不正競争防止法違反被告事件

【判示事項】    被告人会社及びその役員らが,円借款事業であるサイゴン東西ハイウェイ建設事業に関するコンサルティング契約で有利な取り計らいを受けたいとの意図の下に,ベトナム社会主義共和国東西ハイウェイ・水環境業務管理局長に対し現金を供与するなどの不正競争防止法違反被告事件について,国際商取引における競争の公平性を害するだけでなく,我が国の政府開発援助事業や海外コンサルタント業界に対する信頼をも損なうことになりかねないなどとして,被告人会社を罰金刑に処し,その余の被告人らを懲役1年6月ないし2年に処し,執行猶予に付した事例

【参照条文】    不正競争防止法18-1

          不正競争防止法21-2

          不正競争防止法22-1

          不正競争防止法22-3

【掲載誌】     判例時報2046号159頁

 

不正競争防止法

(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)

第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。

一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者

二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者

三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者

四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者

五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

 

(罰則)

第二十一条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。次号において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の営業秘密保有者の管理を害する行為をいう。次号において同じ。)により、営業秘密を取得したとき。

二 詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示したとき。

三 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、前号若しくは次項第二号から第四号までの罪、第四項第二号の罪(前号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)又は第五項第二号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示したとき。

四 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、前二号若しくは次項第二号から第四号までの罪、第四項第二号の罪(前二号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)又は第五項第二号の罪に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示したとき。

五 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号から前号まで又は第四項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供したとき(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した場合を除く。)。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得したもの

イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。

ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。

ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。

二 営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示したもの

三 営業秘密を営業秘密保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示したもの(前号に掲げる者を除く。)

四 営業秘密を営業秘密保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示したもの(第二号に掲げる者を除く。)

五 不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号から前号まで又は第五項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号において「従業者等違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が従業者等違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)

3 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。

二 他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行ったとき。

三 不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。

四 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十七号又は第十八号に掲げる不正競争を行ったとき。

五 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたとき(第一号に掲げる場合を除く。)。

六 秘密保持命令に違反したとき。

七 第十六条又は第十七条の規定に違反したとき。

4 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 日本国外において使用する目的で、第一項第一号の罪を犯したとき。

二 相手方に日本国外において第一項第二号から第四号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をしたとき。

三 日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外において第一項第二号から第四号までの罪に当たる使用をしたとき。

四 第十八条第一項の規定に違反したとき。

5 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の拘禁刑若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 日本国外において使用する目的で、第二項第一号の罪を犯した者

二 相手方に日本国外において第二項第二号から第四号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をした者

三 日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外において第二項第二号から第四号までの罪に当たる使用をした者

6 第一項、第二項(第一号を除く。)、第四項(第四号を除く。)及び前項(第一号を除く。)の罪の未遂は、罰する。

7 第三項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

8 第一項各号(第五号を除く。)、第二項各号(第五号を除く。)、第四項第一号若しくは第二号、第五項第一号若しくは第二号又は第六項(第一項第五号又は第二項第五号に係る部分を除く。)の罪は、日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

9 第三項第六号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。

10 第四項第四号の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

11 第四項第四号の罪は、日本国内に主たる事務所を有する法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者であって、その法人の業務に関し、日本国外において同号の罪を犯した日本国民以外の者にも適用する。

12 第一項から第六項までの規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。

13 次に掲げる財産は、これを没収することができる。

一 第一項、第二項、第四項(第四号を除く。)、第五項及び第六項の罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

二 前号に掲げる財産の果実として得た財産、同号に掲げる財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他同号に掲げる財産の保有又は処分に基づき得た財産

14 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第十四条及び第十五条の規定は、前項の規定による没収について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第十四条中「前条第一項各号又は第四項各号」とあるのは、「不正競争防止法第二十一条第十三項各号」と読み替えるものとする。

15 第十三項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。

第二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 前条第四項又は第六項(同条第四項に係る部分に限る。) 十億円以下の罰金刑

二 前条第一項又は第六項(同条第一項に係る部分に限る。) 五億円以下の罰金刑

三 前条第三項 三億円以下の罰金刑

2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第三項第六号の罪に係る同条第七項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

3 第一項の規定により前条第一項、第三項、第四項又は第六項(同条第一項又は第四項に係る部分に限る。)の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

第六章 刑事訴訟手続の特例

(営業秘密の秘匿決定等)

第二十三条 裁判所は、第二十一条第一項、第二項、第四項(第四号を除く。)、第五項若しくは第六項の罪又は前条第一項(第三号を除く。)の罪に係る事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該事件に係る営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

2 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

3 裁判所は、第一項に規定する事件を取り扱う場合において、検察官又は被告人若しくは弁護人から、被告人その他の者の保有する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、相手方の意見を聴き、当該事項が犯罪の証明又は被告人の防御のために不可欠であり、かつ、当該事項が公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

4 裁判所は、第一項又は前項の決定(以下「秘匿決定」という。)をした場合において、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定で、営業秘密構成情報特定事項(秘匿決定により公開の法廷で明らかにしないこととされた営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)に係る名称その他の表現に代わる呼称その他の表現を定めることができる。

5 裁判所は、秘匿決定をした事件について、営業秘密構成情報特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったとき、又は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項に規定する事件に該当しなくなったときは、決定で、秘匿決定の全部又は一部及び当該秘匿決定に係る前項の決定(以下「呼称等の決定」という。)の全部又は一部を取り消さなければならない。

 

不正競争防止法1条5号の解釈

 

最高裁判所第2小法廷/昭和38年(オ)第1149号、昭和38年(オ)第1150号

昭和40年6月4日

不正競争行為差止請求事件

【判示事項】 不正競争防止法1条5号の解釈

【判決要旨】 雑酒たる発ぽう酒の容器、包装および広告に、商品名として、単に「ライナー」と表示するとともに、製造者の商号である「ライナービヤー株式会社」およびその英語名である「LINER BEER Co.,LTD」と表示したとしても、これをもつて直ちに「ビール」との誤認混同を生ずることはないと解するのが相当である。

【参照条文】 不正競争防止法

【掲載誌】  最高裁判所裁判集民事79号289頁

       裁判所時報427号1頁

       判例時報414号29頁

 

不正競争防止法

(定義)

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

四 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「営業秘密不正取得行為」という。)又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。次号から第九号まで、第十九条第一項第七号、第二十一条及び附則第四条第一号において同じ。)

五 その営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

六 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

七 営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

八 その営業秘密について営業秘密不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

九 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

十 第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)

十一 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十二 その限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十三 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為

十四 限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為

十五 その限定提供データについて限定提供データ不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその限定提供データを開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十六 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為があったこと又はその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為

十七 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録されたものに限る。以下この号、次号及び第八項において同じ。)の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号(電子計算機に対する指令であって、当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいう。次号において同じ。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

十八 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

十九 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

二十二 パリ条約(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

2 この法律において「商標」とは、商標法第二条第一項に規定する商標をいう。

3 この法律において「標章」とは、商標法第二条第一項に規定する標章をいう。

4 この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

5 この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

7 この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く。)をいう。

8 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

9 この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

10 この法律において「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう。

11 この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

 

第19章 賃貸の仲介

 

1 権限

 

東京地判平成13年3月6日判タ1129号166頁

建物賃借人である原告(X)は、宅地建物取引業者である被告(Y)とを仲介業者として、訴外甲から飲食店経営のために本件建物を借り受けた。しかし、本件建物の敷地については、訴外甲が訴外乙から一時使用のために賃借していたものにすぎなかった(使用期限は平成8年8月31日)。そのため、当然のこととはいえ、Xは、本件建物賃貸借契約の締結後わずか2年半余りにして、土地所有者である訴外乙から、本件建物から退去するよう請求され、和解でこれに応じざるをえなかった。そこで、Xは、Yにおいて本件建物賃貸借契約を仲介する際、敷地の利用権が一時使用の賃借権であり、その上に存在する本件建物の賃借権も敷地利用権が存在する限度でしか存続できないものであったにもかかわらず、その事実を十分説明せず、Xをして更新が可能な通常の建物賃貸借契約が締結できるものと誤信させたとして、債務不履行を理由に損害賠償を請求した。一時使用のための土地賃貸借契約が締結されている土地上に存在する建物を対象に、賃貸借契約の仲介をした宅地建物取引業者について、土地の利用権が一時使用の賃借権である事実を十分説明せず、建物賃貸借契約が更新可能な通常の賃貸借契約であるがごとき誤解を賃借人に与えたまま契約を締結させた点に説明義務違反があったとして、建物賃借人からの損害賠償請求を一部認容した事例

 5 なお、本件では、重要事項説明書に土地の一時賃貸借契約書が添付されていたことも考慮し、Xの過失割合を3割と認定している。

 

東京地判平成17年4月5日LLI/DB 判例秘書登載

原告が、被告株式会社Aを仲介業者として被告Bから建物を賃借して改装工事に着手したところ、建物の敷地の所有者で同地を被告Bに賃貸していた被告C会社から不当に工事の中止を命じられ、建物を使用できなくなったと主張して、被告Bに対して賃貸借契約の債務不履行、被告A及び被告Cに対して不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案につき、被告B及びCに対する主張は理由がないとし、被告Aに対する不法行為の成立を認めた事例

 

東京地判平成17年5月24日LLI/DB 判例秘書登載

原告が、被告甲社の仲介により、被告乙社との間に、建物の1室について締結した賃貸借契約について、雨漏り等の瑕疵があるため、また、被告甲には説明義務違反があるため、原告はこうした被告らの債務不履行の結果、契約を終了させ、新たな物件を借り受けなければならなかったなどとして、被告らに対し、債務不履行に基づき、原告の被った損害の賠償を請求するとともに、選択的に、被告らの説明義務違反や家屋の瑕疵の放置責任などを理由として、不法行為に基づき同様の請求をした事案(甲に対して棄却、乙に対して認容)

 

東京地判平成18年2月23日LLI/DB 判例秘書登載

建物転貸借契約を結んだが、建物賃貸人(所有者)から転貸の承諾が得られず、最終的に建物を転借できなかった事案について、この仲介をした宅地建物取引業者が、所有者の承諾の有無の確認を怠ったことは、課された善管注意義務に違反するものであるといわざるを得ず、仲介契約に基づく債務不履行責任を負うとした事例

 

東京地判平成19年4月18日LLI/DB 判例秘書登載

飲食店用店舗の賃貸借契約の仲介をするに際し、建物敷地の法令上の規制について、宅地建物取引業者に調査・説明義務違反があったとされた事例

 (4)しかし、本件建物の敷地は、第一種低層住居専用地域に指定され、また、東京都文教地区建築条例(以下「本件条例」という。)による第一種文教地区に指定されていた(以下、これらの規制を併せて「本件各規制」という。)。

  (5)建築基準法48条は、「第一種低層住居専用地域内においては、別表第2(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない」と定め、別表第2(い)は、「住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの」と定めている。

     そして、建築基準法施行令130条は、上記住宅につき、「延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ、次の各号の1に掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートルを超えるものを除く。)とする。」と定めている。

  (6)本件条例3条は、「第一種文教地区内においては、建築基準法48条の制限によるほか、別表1に掲げる用途に供するために建築物を建築し、または用途を変更してはならない。ただし、知事が文教上必要と認めまたは文教上の目的を害するおそれがないと認めて許可した場合は、この限りでない。」と定め、別表1の8号には、「前各号の建築物に類するもので、環境を害し、または風俗を乱すおそれがあると認めて知事が指定するもの」と定めており、これを指定した昭和42年9月16日東京都告示第916号は、第一種低層住居専用地域内に設ける飲食店を挙げている。

  (7)原告は、本件賃貸借契約を締結した後、本件建物の内装工事に着手したが、平成17年5月26日ころ、文京区建築課の担当者から、本件建物の敷地については飲食店を開業できない規制があるとの指摘を受け、翌日、本件建物で行う営業につき、食品衛生法に定める許可の申請をしたものの、この申請も受理されず、文京区役所建築課の担当者から、本件建物の敷地は、第一種低層住居専用地域であるだけでなく、第一種文教地区でもあるため、飲食店の開業はできない旨の説明を受けた。

  (8)原告は、その後、本件建物における飲食店営業を断念した。

 

東京地判昭和59年2月24日金判705号16頁

店舗賃貸借の仲介を依頼された宅地建物取引業者が、賃貸店舗が仲介の進行中他に譲渡され、所有権移転登記も完了して、貸主に賃貸の権限がなくなっていたにもかかわらず、この権利関係についての再度の調査を怠り、貸主を店舗権利者と記載した物件証明書を顧客に交付し、これを信頼して右店舗を賃貸した顧客が、後日真の所有者の要求により明渡を余儀なくされたため、貸主に支払った賃貸借契約保証金等相当額の損害を被ったときは、宅地建物取引業者は、顧客に対し、損害賠償義務を免れない。

 Y1は、昭和54年1月ころ宅地建物取引業者である当に対し、妻A所有の本件店舖の賃貸の仲介を依頼し、A所有名義の登記簿謄本を交付した。そこで、Y2は、同年3月Xに対し、本件店舗を紹介し、その賃貸借の仲介斡旋を始めた。ところで、本件店舖は、同年4月12日AからBへ売却され、翌13日には所有権移転登記も完了していたが、Y1は、この事実を黙秘し、Y2も、再度本件店舗の権利関係について調査しないまま、当初Y1から受領していた登記簿謄本により、本件店舖の権利者をY1と記載した物件説明書を作成して、これを同月20日ころXに交付し、その結果、同月23日XY1間に、期間3年、賃料月額12万円、使用目的喫茶店経営との約定による本件店舗の賃貸借契約及び営業権譲渡契約が締結され、Xは、当に対し、賃貸借契約保証金600万円、営業権譲渡代金250万円、賃貸借契約礼金50万円(合計900万円)を支払った。ところが、Xは、その後Bから本件店舖の明渡を要求され、仮処分を受けるに至ったので、やむを得ず喫茶店営業を中止し、昭和55年12月5日Bに店舖内の什器備品を売り渡すとともに本件店舖を明け渡した。そこで、Xは、Y1Y2に対し、不法行為に基づく損害賠償として、830万円の支払を請求した。

  判決要旨は、当に関する部分であるが、宅地建物取引業者が建物賃貸借の仲介斡旋をする場合、客が損害を被らないよう、善良な管理者の注意をもって当該建物の所有権の帰属等を調査し、これを客に報告すべき義務があるとの見解に立って、前記事実関係のもとにおいては、Y2の仲介行為に過失(右義務違反)があるとし、賃貸借契約保証金及び礼金のうち現実に本件店舗を使用することができた1年間に対応する分を除き、残り2年分相当額の774万円につき損害賠償を命じた。

  判例は、宅地建物取引業者が取引当事者に真の権限があることについて調査義務を負うことを肯定しており(明石三郎『不動産仲介契約の研究』202頁以下参照)、本件と同様、既に他へ売却されている不動産あるいは第三者名義の不動産を不注意に仲介した事案に関する先例も少なくない(東京地判昭和30年12月21日下民集6巻12号2645頁、東京地判昭和36年7月10日下民集12巻7号1626頁など)。

 

東京地判昭和62年1月29日判時1259号72頁

建物賃貸借の仲介にあたる宅地建物取引業者に、賃貸人の賃貸権限を確認すべき注意義務の違反があるとして債務不履行責任が認められた事例

 

東京地判平成4年4月16日判時1428号107頁

差押登記のある店舗の賃貸借を媒介した宅地建物取引業者に調査義務違反があったとして、その後の競売による売却によって店舗を明け渡さざるを得なかった賃借人に対する損害賠償責任が認められた事例

 

東京地判平成19年5月31日LLI/DB 判例秘書登載

賃貸人の賃借人に対する土地賃貸借契約に基づく未払賃料請求及び同契約にあたり、賃借人の不動産仲介業者に対する仲介契約上の説明義務違反による債務不履行に基づく損害賠償請求をいずれも認め、賃借人の仲介業者に対する前記賠償請求権の不存在確認請求は、訴えの利益がないとして却下した事例

そして、原告X2が、被告に対して本件土地が市街化調整区域内にあって、原則として建物が建てられないことを説明していれば、被告は、本件土地を賃借して建物を建てなかったと認められる。

 

東京地判平成19年6月26日LLI/DB 判例秘書登載

借地権付建物を購入した原告が、売主側の不動産仲介業者である被告らに対し、取引の際、被告らの告知義務違反により損害を受けたとして、損害賠償等を求めた事案について、被告らの告知義務違反と相当因果関係が認められる原告の損害額を認定し、本件取引における原告側の過失3割を過失相殺した後の金額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で、請求を認容した事例

(1)まず、被告Y1の代表者であったAは、本件土地の地主であるBの土地係として、本件土地周辺の事情を熟知しており、Bが、本件土地周辺の土地に建築する建物は、木造2階建にするよう要請していたこと、本件土地上に3階建ての建物を建築することについて、近隣住民からの反対があったときは、Bは建築を承諾しないであろうことを知っていたものである。確かに、被告Y1が、本件売買契約締結前に、具体的に原告の建築予定の建物が3階建てであることを知っていたことまでは認められないし、本件売買契約締結前の過去約20年間、近隣の反対運動があったことを認めるに足りる証拠はない。しかし、Aは、一方では、本件売買契約締結前において、本件土地周辺の地域の住環境を保全するため、建築法規上可能であっても、堅固な建物や3階建ての建物または店舗の計画については、できるだけ木造2階建ての住居にしてもらうよう要請してきたことを認めているのであるから、本件土地上に3階建ての建物を建築するときは、近隣住民から反発があることは予測することができたはずである。そして、被告Y1は、本件売買契約を仲介するに当たり、原告が本件土地上の古家を解体し、建物を新築する予定であったことは認識していたのであり、本件土地上に建物を新築する場合の当該建物の構造に関する地主の意向が買主にとって重要な情報であることも、容易に認識することができたはずである。したがって、被告Y1は、原告に対し、本件売買契約を締結するに当たり、地主の意向が3階建ての建物はできるだけ2階建てに設計変更してもらうというものであるということを、告知する義務があったというべきである。しかるところ、Aは、本件土地に原告が建築する予定の建物が2階建てであると考え、原告にこの点を確認することもせず、地主側の意向を告知しなかったのであるから、被告Y1は、これにより原告が受けた損害を賠償する責任を免れない。

  (2)次に、被告Y2は、被告Y1と共同で本件物件を仲介したものであり、本件売買契約締結前に、原告が本件土地上に3階建ての建物を建築する意向を有していたことは認識していたものである。被告Y2において、3階建ての建物を建築する場合において、本件土地の近隣住民の反対運動が生ずる可能性があることを認識していたことまでは認められないけれども、被告Y2の担当者Hは、本件売買契約締結前に原告からEを通じて3階建て建物の建築が可能かどうかという点について照会を受けた際、上司に確認しただけで、被告Y1や地主であるBに確認することはしていない。借地上に建物を建築することを予定して行う借地権の売買においては、新築される建物の構造に関する地主の意向が重要なはずであり、被告Y2において、原告から照会を受けた際、AまたはBに確認しておれば、建築法規上は可能であっても3階建ての建物はできるだけ2階建て建物にしてもらうというのがBの意向であったことは容易に知ることができたはずである。にもかかわらず、被告Y2は、AまたはBに対する確認を怠り、その結果として、本件土地の地主の意向に関する重要な事項を原告に告知することができなかったのであるから、専門の仲介業者を信頼して取引に入った原告に対する信義則上の告知義務違反の責任を免れないというべきである。

 

東京地判平成13年3月6日判タ1129号166頁

一時使用のための土地賃貸借契約が締結されている土地上に存在する建物を対象に、賃貸借契約の仲介をした宅地建物取引業者について、土地の利用権が一時使用の賃借権である事実を十分説明せず、建物賃貸借契約が更新可能な通常の賃貸借契約であるがごとき誤解を賃借人に与えたまま契約を締結させた点に説明義務違反があったとして、建物賃借人からの損害賠償請求を一部認容した事例

 1 本件は、宅地建物取引業者が、建物賃貸借契約を仲介する際に、契約条件の説明を十分しなかったために建物賃借人に損害を与えたとして、委任契約の債務不履行を理由に損害賠償を命じられた事案である。

  2 建物賃借人である原告(X)は、宅地建物取引業者である被告(Y)とを仲介業者として、訴外甲から飲食店経営のために本件建物を借り受けた。しかし、本件建物の敷地については、訴外甲が訴外乙から一時使用のために賃借していたものにすぎなかった(使用期限は平成8年8月31日)。そのため、当然のこととはいえ、Xは、本件建物賃貸借契約の締結後わずか2年半余りにして、土地所有者である訴外乙から、本件建物から退去するよう請求され、和解でこれに応じざるをえなかった。そこで、Xは、Yにおいて本件建物賃貸借契約を仲介する際、敷地の利用権が一時使用の賃借権であり、その上に存在する本件建物の賃借権も敷地利用権が存在する限度でしか存続できないものであったにもかかわらず、その事実を十分説明せず、Xをして更新が可能な通常の建物賃貸借契約が締結できるものと誤信させたとして、債務不履行を理由に損害賠償を請求した。これに対し、Yは、Xに対し、本件建物賃貸借契約は一時使用の土地賃貸借契約が存続する限度でしか存続できないことを十分説明したと主張して、事実関係を争った。

  3 本件では、本件建物の賃貸借契約が敷地の一時使用賃貸借契約の限度でしか存続できない(土地所有者に対抗できない)ものであることの説明をしたか否かといった事実認定が専ら問題となった。本判決は、本件建物賃貸借契約について、Yが一時使用賃貸借契約書の雛形を利用しなかったことに関して合理的な説明がないこと、Xが設備投資や保証金で合計1400万円を超える費用を投下していることなどの判示の事実関係に着目して、Yは重要事項説明書に土地の一時賃貸借契約書を添付したとはいえ、その意味をXに理解させることを怠ったとして、Xの主張のとおり、委任契約上の説明義務違反があると認定した。

 4 本件でのもう1つの問題は、Yが賠償すべき損害の範囲をいかに考えるかという点である。

  本件では、土地所有者である訴外乙が原告となり、本件建物の所有者である訴外甲とその賃借人であるXとが被告となった別件訴訟で、Xが訴外甲および訴外乙らから1300万円の和解金を取得していることをいかに考慮するのかが問題となった。

 本判決は、Xに生じた損害は、契約当事者である訴外甲と、仲介業者であるYとの説明義務違反が競合して発生したものであることを前提に、Xが訴外甲に請求しえた損害額を2201万2000円と認定した。また、Yの債務不履行と相当因果関係のある損害は、Yの説明義務が尽くされていたならば、Xにおいて負担しなかったであろう諸費用であることを前提に、仲介手数料、本件建物賃貸借契約に伴い差し入れた保証金(償却分を考慮する)および建物改装費用(減価償却を考慮する)の合計667万9444円と認定した。その上で、両損害額は内容的には667万9444円の範囲で重なり合うこと、Xが別件訴訟で130○万円の和解金を取得していることを考慮し、損害の公平な分担を図るため、Yの固有の賠償範囲を、667万9444円に、Xが訴外甲に請求しえた損害額2201万2000円と和解金額1300万円との比率(59%)を乗じた金額である394万0871円に限定している。

  5 なお、本件では、重要事項説明書に土地の一時賃貸借契約書が添付されていたことも考慮し、Xの過失割合を3割と認定している。

 

2 賃貸物件の瑕疵

 

神戸地判平成14年7月4日LLI/DB 判例秘書登載

不動産賃貸借契約の媒介契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求につき、同契約上の善管注意義務ないし説明義務に違反する点があるとしても、この義務違反と本訴において請求する財産的損害との間には相当因果関係は認められないとして、本訴請求を棄却した事例

  (3)ところで、一般に、賃貸物件の使用収益の方法に関する条件に対する賃貸人の承諾は、明示のものに限定されず、黙示のものでも足りるのであって、前記(2)に認定説示の事実にも徴すれば、本件において原告の希望する条件の内容が賃貸人の明示の承諾でなければその目的を達成できない特段の事情があるとも認められないから、本件において、発声練習に対する賃貸人の明示の承諾を取り付けた賃貸物件を紹介すべきことが被告の媒介契約上の債務の内容になっているとは認められない。

    したがって、本件賃貸借契約の締結にあたり、被告が発声練習について甲の明示の承諾を取り付けなかったことの一事をもって、被告に本件賃貸借契約の媒介契約上の債務不履行があると認めることはできず、原告の前記(1)①の主張は理由がない。

   (4)また、前記(2)に認定説示のとおり、発声練習について、原告の希望する条件は甲の承諾する条件の範囲を超えるものではないから、甲が原告の希望する条件での発声練習をすることまでは承諾していないことを前提とする原告の前記(1)②の主張は、その前提を欠くことになる。

   (5)もっとも、前記1(4)に認定のとおり、被告は、本件賃貸借契約の締結前に、甲に対し、原告が本件居室において発声練習をすることを希望していること及びその発声練習の内容を具体的に伝え、その明示の承諾を特に得ていたものではないから、被告が本件居室の賃貸借契約を媒介するにあたって、原告に対し、予め甲の承諾を得ているとの趣旨の説明をしたことの適否については、別途検討されなければならない。

     この点、被告は、原告の希望する発声練習は、その具体的内容に照らし、被告と信頼関係のある甲の推定的承諾の範囲内の事柄であると判断したと主張し、被告代表者尋問の結果及び乙第5号証中には同主張に副う部分がある。しかし、前記1(3)に認定のような説明を受ければ、原告の希望する発声練習のために甲の明示の承諾が特に存在すると受け止めるのが素直であり、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件賃貸借契約締結当時、原告もそのように考えたことが認められるところ、仲介業者が賃貸物件の使用収益の方法に関する一定の事項について賃貸人の承諾を得られるであろう範囲内の事柄であると独自に判断しても、当該事項について賃貸人がその決定ないし処理の権限を仲介業者に予め付与しているなどの特段の事情のない限り、賃貸人は仲介業者の判断に必ずしも拘束されるものではなく、賃貸人が仲介業者の判断と異なる意思を表明すれば、賃貸人の明示の承諾の存在することを前提として賃貸借契約を締結した賃借人が、使用収益の方法について、予想外の制限を受け、あるいは賃貸人との間で紛議を生じるなど、賃借人が将来不測の損害を被るおそれがある。そして、本件居室における発声練習の諾否について甲から被告に対してその決定ないし処理の権限が予め付与されていたことは認められない(被告代表者尋問の結果及び乙第2号証中には、甲に対する関係で、本件居室について原告の希望する条件の程度の発声練習であれば、被告にその諾否の権限があったとの趣旨の供述ないし陳述部分があるが、甲第22号証ないし第24号証の各1、2によれば原告からの電話で発声練習の件を聞いた甲が初めて聞いた話であるなどとして当初要領を得ない回答をし、あるいは原告の発声練習を承諾したことを否定する発言をしていることが認められることに照らし、被告代表者の上記尋問結果はそのままには採用しがたく、また、乙第2号証も、甲が事後的に被告の判断を追認したものというべきであり、これらの証拠から被告に上記のような権限が予め付与されていたとまでは認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。)から、被告が発声練習について予め甲の承諾を得ていると原告に説明して本件賃貸借契約を媒介したことは、仲介業者である被告に課せられている仲介契約上の善管注意義務ないし説明義務の尽くし方として疑問が残るところである。

   (6)しかしながら、前記(2)に認定のとおり、結果的には甲が原告の希望する発声練習の条件に対して承諾していると認められる本件の事実関係の下では、原告は甲に対する関係で本件居室においてその希望する条件に従って発声練習をすることができるのであるから、仮に被告に前記(5)説示のような、媒介契約上の善管注意義務ないし説明義務に違反する点が存するとしても、この義務違反と本訴において原告の請求する財産的損害との間には相当因果関係が認められないというべきである。

 

3 差別

 

京都地判平成19年10月2日LLI/DB 判例秘書登載

賃貸マンションの所有者が、入居予定者が日本国籍を有していなかったことを理由として賃貸借契約の締結を拒絶したことにつき、入居予定者に対する不法行為責任を認めた事案

 

大阪地判平成5年6月18日判タ844号183頁

マンションの賃貸借につき相手方が外国籍(在日韓国人)であることを理由に契約締結を拒否したことが、契約準備段階における信義則上の義務に違反し損害賠償義務を免れないとされた事例

一事案の概要 本件は、大阪府下在住の在日韓国人であるXが、不動産仲介業者Zらとの間で賃貸マンションの入居について合意したところ、家主YからXが在日韓国人であることを主たる理由として入居を拒否されたため、Yに対し、賃借権の確認と建物引渡を求めるとともに、Y、Zらに対し、差別的な入居条件の作成や入居拒否についての不法行為による損害賠償を求め、かつ、大阪府に対し、宅地建物取引業法等に基づく監督義務違反による国家賠償を求めた事案である。

  2 本件の要約 本件における中心争点は、(1)住居基本権を定めた憲法22条等の憲法規定、及び日本国が批准した「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」等の条約が、私人間の法律行為に直接規範性を有するか否か、(2)人権・国籍を理由とする民族差別により、入居拒否等の住居基本権侵害が生じたときは、公序良俗違反を契機として、民法上の損害賠償責任を追求する余地があるか否か、(3)知事は前記憲法及び条約の各規定に基づき、宅地建物取引業法による指導として、宅地建物取引業者に対し、その業務内容を監督する権限及び義務を有するか否かにある。

  1 争点(1)では、基本的人権を定める憲法及び条約上の規定を、原則として、対国家的公権とするのが通説・判例であり、私人間の人権侵害行為は公序良俗違反による救済のほかはないとする(間接適用説、最大判昭和48・12・12民集27巻11号1536頁、最判昭和49・7・19民集28巻5号790頁)。

 本判決もこれに従うものである。

  2 争点(2)の民法上の責任について、本判決では、家主Yが仲介業者を介して広く契約の相手方を募って、申込の誘引をなしていることと、Yの契約締結拒否が在日韓国人であることを主たる理由とするものであることを重視して、仲介業者の言動を信頼したことによる損害を、契約締結上の過失理論により賠償すべきものとした。

この意味で、本判決は、契約締結上の過失理論を是認した一事例に過ぎないところではあるが、在日韓国人の居住権を巡る社会問題の1局面について、本格的な取組みがなされた点で、先例的価値を有するといえる。

   3 争点(3)の知事の宅建業者に対する監督義務の点では、本判決は、宅建業法の立法目的を、宅地建物取引における経済的公正の確保の趣旨に止まると解しているところ、同旨の判例と軌を1にする(最判平成元・11・24民集43巻10号1169頁)。

 

4 賃借希望者の身元、職業等

 

東京地判昭和56年7月15日判タ455号123頁

不動産賃貸の仲介業者は、賃借希望者の申し出た身元、職業等の事項に疑問がない限り、右事項を委任者に伝えることをもって足り、右以上に右事項につき独自に調査し報告すべき業務上の注意義務はない

Xは建築設計、工事請負、ビル賃貸等を業とするものであるが、昭和49年6月不動産の売買・賃貸の仲介等を業とするYに対しX所有の本件ビルの賃貸の仲介を委託した。

そして、Xは、昭和49年11月Yの仲介により訴外Aとの間で右ビルの8階を保証金350万円、賃料月額13万5000円の約定で賃貸する契約を締結し、Aは同月12月1日入居した。

ところが、Aは過激派の委員長であって、Aら過激派は、同年12月頃本件ビルに入居後間もなく、本件ビルの1階出入口に見張りを置き、各階の階段を封鎖する等して本件ビル全館を占拠し続けたため、Xは、昭和50年12月やむなく立退料350万円を支払って過激派に立退いて貰った。

しかし、その間、Xは、本件ビルの5、6階を他に賃貸することが不可能となったことにより1200万円にものぼる賃料収入を失うなどの損害を被った。

そこで、Xは、不動産仲介業者であるYが、仲介にあたって賃借希望者の身元、職業等について調査することなく、漫然、過激派の委員長であるAを仲介してXと賃貸借契約を締結されたことは、受任者としての注意義務に違反したものであるなどと主張し、Yに対し、賃料収入の喪失、保証金運用利益の喪失、清掃・修理改装費、立退料の支出等による損害合計2044万円余の賠償を請求したものである。

  これに対し、Yは、通常の賃貸の仲介の委任を受けたにすぎないYとしては、賃借の申込みを受けた場合、その賃借希望者自らの申し出た人物、業種、使用目的等を忠実に委任者であるXに告げれば足りるのであって、その者に賃貸するか否かは賃貸人であるXの判断と危険においてなすものであり、また仲介は仲介に係る契約が成立することにより終了するものであって、その後は賃借人の入居前であってもYに何らの義務もない、などと反論した。

  本判決は、不動産賃貸の仲介者の注意義務について、判旨のような判断を示したうえ、Aは一見おとなしそうな、落着いた印象を与える人物であり、過激派の委員長であることを疑わせるような不自然なところは認められなかったから、YがAの身元等について何らの調査をしなかったとしても、仲介者の注意義務を怠ったとはいえない、としてXの請求を棄却した。

従来の判例の事案は、仲介する不動産の所有権の帰属、担保の付着の有無等の権利関係、代理権の有無等に対する注意義務に関するものに過ぎず、本件のような、賃借希望者の身元、職業等の調査報告義務に関する先例は見当らない。

 

5 契約条項

 

福岡地判平成19年4月26日判タ1256号120頁

建て貸しの事案において中途解約制限条項を入れなかったことが、宅地建物取引主任者の説明義務違反とされた事例

1 本件は、Xがその所有建物をZの要望に従って増改築した上でZに賃貸する契約(建て貸し)の仲介を不動産仲介業を営むYに依頼し、X・Z間に期間を9年間とする建物賃貸借契約が成立したが、中途解約を制限する条項が盛り込まれていなかったため、Zから中途解約されて損害を被ったとして、XがYに対し、仲介契約の債務不履行による損害賠償を求めた事案である。

  Xが主張するYの債務不履行の内容は、本件建物賃貸借契約は、いわゆる建て貸し(Xが借り主であるZの要望に従って建物を増改築した上でZに賃貸するもの)であるから、増改築に要した投下資本(3360万円)を回収するためには一定期間賃料収入を確保する必要があり、借り主が中途解約をした場合には、残余期間の賃料を保証する条項(中途解約制限条項)を盛り込む必要があったのに、Yはこれを怠ったというものである。これに対し、Yは、本件賃貸借契約書案(中途解約制限条項が盛り込まれていないもの)をXに示してその内容を説明し、Xは内容を理解した上で契約を締結したものであるから、Yに債務不履行はないと主張した。

  2 本件判決は、Yは、宅地建物取引業法35条に従って、契約の解除に関する事項も記載した契約書案をXに交付して重要事項を説明したことは認められるとしながらも、本件のような建て貸しにおける中途解約制限条項の重要性にかんがみれば、Yは、信義則上、借り主側から初めに示された契約書案には中途解約制限条項が入っていたのに、この条項が入っていない宅建協会作成の一般的な契約書のひな型をあえて使用して契約書を作成することについて、Xにその経緯を具体的に説明してその承諾をとるベき義務があったとして、Yの説明義務違反を認めてXの損害賠償請求権を認めた。その上で、Yは賃貸借契約を仲介したにすぎず、契約の代理人ではないこと、Xは契約内容を理解した上で契約を締結していること、X側は不動産の賃貸により相当の収入を得ている者であり、また、相当の社会的地位、経験を有していること(銀行員、元公務員)などの事情を考慮して、Xについて4割の過失相殺をした。

 

6 損害項目

 

東京地判昭和31年11月26日下級裁判所民事裁判例集7巻11号3364頁

不動産仲介業者に過失ありとされた事例

不動産仲介業者に手数料を支払って仲介を委託した者は契約の相手方について自ら調査しなかったとしても過失ありとはいえない。

およそ、不動産仲介業者が客の委託を受け、不動産賃借の仲介となすに当っては委託の趣旨に則り、善良な管理者の注意を以て仲介し賃貸借契約が支障なく履行されて委託者がその契約の目的を達し得るように配慮すべき義務があるものと解すべきであるから、賃貸人が当該不動産につき賃貸の権限を有するや否や、或は、当該不動産に瑕疵が存しないか否かについて周到なる調査義務があるものと言わねばならぬ。

そして、所有者と称する賃貸人が果して当該土地の真の所有者であるか否かを調査するに当っては、先ず当該土地の登記簿謄本及び賃貸人の印鑑証明等の提示を求めると共に、当該土地を実地検分して土地支配の実情を調査し、もってその真の所有者たることを確認すべきものであるが、当該土地所有者の住所の記載が登記簿謄本を印鑑証明書と異る時その他所有者の真偽につき些かでも不審の点がある場合は、特段の注意を払い住民登録票について調査する等の方法により更に当該土地の所有者を確認するにつき確実を期すべきものである。

しかるに被告佐々木が原告より土地賃借の仲介の委託を受け、前記土地を仲介するに当り、土地所有者尾関と称する者より、登記薄謄本、図面、印鑑証明書、勤務先会社の身分証明書(本件の場合前記文書は登記簿謄本及び図面を除きいずれも偽造文書であるが、証人平野清、被告等各本人尋問の結果を綜合すれば、右偽造は極めて功妙であり容易に偽造の事実を発見し得ない状態にあったと認められる。

 

東京地判平成5年10月1日判時1497号82頁

1 駐車場の賃貸借契約において、貸主の修繕義務の不履行責任が認められた事例

2 右賃貸借に当たり、貸主及び仲介人に駐車場の瑕疵につき、告知義務違反を肯定した上、損益相殺及び過失相殺がされた事例

 1 本件駐車場は、建物を取り壊した跡地であり、舗装や砂利入れ等なされることなく、若干整地した程度で原告に引き渡された。しかし、右駐車場は、雨が降ると地盤が水を含んだ状態となり、駐車車両が自力で脱出できなくなる事態が発生するようになった。そしてその度ごとに原告の従業員が、他の駐車場から本件駐車場まで二トン車を持っていき脱出不能となった車両を牽引せざるを得なかった。

  2 このため原告は、被告石岡住宅に対し、本件駐車場に砂利を入れるよう求めたところ、平成三年七月末ないし翌八月上旬頃、被告石岡住宅は、本件駐車場の入口付近の約二台分のスペースに砂利を入れた。

  3 しかし、その後も牽引による脱出を必要とする状況が、平成三年八月に二回、九月に六回、一〇月に六回発生した。そこで、この間、訴外遠藤は、被告石岡住宅代表者の清水絹代又は同社の従業員に対して、砂利を入れていない約六台分相当のスペースについても砂利を入れるよう何度か電話で催告したが結局砂利入れは行われなかった。

  四 本件賃貸借契約の解除及び本件駐車場の明渡し

 請求原因7、8の事実は、《証拠略》から認めることができる。

  五 被告石岡住宅の修繕義務不履行(履行遅滞)により原告の被った損害

  原告は、平成三年九月二一日以降原告が本件駐車場に二台を越えて駐車することはできなかったと主張する。しかし、先に認定したように九月二一日以降一〇月に入っても牽引することがあったという事実がある以上、砂利が入れられて駐車に支障のない二台分のスペース以外の約六台分のスペースに九月二一日以降も駐車したことがあったと認めるべきであり、同日以降一〇月末までの間は必ずしも雨天の日ばかりではないことを考えあわせると、九月二一日以降は二台以下しか止めていなかったと認めることはできない。ただ、《証拠略》によれば、本件駐車場の砂利の入れられなかった約六台分のスペースは、雨が降ると駐車場としての役割を相当減殺されたと認めることができるので、原告の主張する同年九月二一日以降本件契約解除により明渡しが完了した同年一〇月末日までの期間、原告は、被告石岡住宅の修繕義務不履行により、少なくとも本件駐車場の約半分(約四台分)の使用ができなかったと認めるのが相当である。右損害を金額に換算すると金二七万四六六六円(九月二一日から一〇月三一日までの本件駐車場の半分の賃料相当額)となる。

 七 被告らの告知義務違反

  被告福島ハウジング代表者尋問の結果によれば、同人は、本件駐車場をよく見ていたことが認められ、しかも被告らの代表者が夫婦であり、被告らの営業店舗が同一建物内にあること考えあわせれば、右両代表者は、本件駐車場がぬかるみが生じやすく難点があることを認識していたか、又はこれを容易に知り得たものと考えられる。したがって、この場合、被告石岡住宅は、賃貸人として、同福島ハウジングは、仲立人として、信義則上、本件駐車場の賃貸借契約に先立ち、前記難点を原告に告知する注意義務を負っていたと言うべきであるところ、《証拠略》によれば、被告らは、本件駐車場の問題点につき何ら告知していないことが認められる。

 2 損益相殺(礼金分について)

  ところで、本件賃貸借における礼金の性格は、契約期間中の本件駐車場の使用収益に対する対価の一部前払と解するのが相当である。そうだとすれば、原告が、被告石岡住宅に支払った右礼金の内、本件駐車場の使用収益が可能であった範囲及び期間に対応する部分については、原告は利益を享受していたというべきであるから、これを被告石岡住宅が原告に返還すべき礼金相当額中から控除するのが相当である。

 3 過失相殺(礼金分及び手数料分について)

  ところで、証言によれば、同人は、本件駐車場の前をよく通っていたこと、同人が、原告の専務取締役として、本件駐車場を現に見た上で被告石岡住宅と本件賃貸借契約を締結したことが認められる。したがって、原告は、本件駐車場の地盤がどのような状態であるかを事前に知り得たということができる。更に、原告が運送業であり、駐車場の選定に当たっては相応の注意を払うことが期待されることも考慮すれば、原告の過失割合を5割とするのが相当である。

 

名古屋地判昭和62年3月24日判時1250号86頁

差押中の建物の賃借権譲受人が建物の競落により損害を被った事案において、譲受人側の仲介人に対し、差押の事実及びその法的な影響についての説明義務を怠ったとして損害賠償責任を認めた事例

 

自動車購入者に対しその資金を貸し付けた生命保険会社が、割賦販売法にいう割賦購入あっせん業者に当たるとされた事例

 

東京高等裁判所判決/昭和62年(ネ)第247号

 昭和63年3月30日

立替金請求控訴事件

【判示事項】 1、自動車購入者に対しその資金を貸し付けた生命保険会社が、割賦販売法にいう割賦購入あっせん業者に当たるとされた事例

2、右貸付けに当たり購入者の連帯保証人となった者が、代位弁済により購入者に対し求償権を行使する場合において、購入者が販売業者に対してした契約解除をもって右連帯保証人に対抗することの可否

【判決要旨】 商品の購入につき、生命保険会社が代金を融資し、信販会社が消費者からの委託に基づきこれを連帯保証するとの取引形態において、消費者の不履行により借販会社が代位弁済して右求償請求に及んだ場合、信販会社を割賦販売法2条3項2号の割賦購入あっせん業者と解することはできないが、信販会社が求償権を行使する場合には、同法30条の4の類推適用により、割賦購入あっせん業者である生命保険会社に対する事由をもって支払拒絶の抗弁とすることができると解すべきである。

【参照条文】 割賦販売法2-3

       割賦販売法30の4

       民法459

       民法500

【掲載誌】  判例タイムズ693号138頁

       金融・商事判例805号23頁

       判例時報1280号78頁

 

割賦販売法

(定義)

第二条 この法律において「割賦販売」とは、次に掲げるものをいう。

一 購入者から商品若しくは権利の代金を、又は役務の提供を受ける者から役務の対価を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領すること(購入者又は役務の提供を受ける者をして販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)の指定する銀行その他預金の受入れを業とする者に対し、二月以上の期間にわたり三回以上預金させた後、その預金のうちから商品若しくは権利の代金又は役務の対価を受領することを含む。)を条件として指定商品若しくは指定権利を販売し、又は指定役務を提供すること。

二 それを提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに、商品若しくは権利を購入し、又は有償で役務の提供を受けることができるカードその他の物又は番号、記号その他の符号(以下この項及び次項、次条並びに第二十九条の二において「カード等」という。)をこれにより商品若しくは権利を購入しようとする者又は役務の提供を受けようとする者(以下この項及び次項、次条、第四条の二(第二十九条の四第一項において準用する場合を含む。)、第二十九条の二並びに第三十八条において「利用者」という。)に交付し又は付与し、あらかじめ定められた時期ごとに、そのカード等の提示若しくは通知を受けて、又はそれと引換えに当該利用者に販売した商品若しくは権利の代金又は当該利用者に提供する役務の対価の合計額を基礎としてあらかじめ定められた方法により算定して得た金額を当該利用者から受領することを条件として、指定商品若しくは指定権利を販売し又は指定役務を提供すること。

2 この法律において「ローン提携販売」とは、次に掲げるものをいう。

一 カード等を利用者に交付し又は付与し、当該利用者がそのカード等を提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに購入した商品若しくは権利の代金又は提供を受ける役務の対価に充てるためにする金銭の借入れで、二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して返還することを条件とするものに係る購入者又は役務の提供を受ける者の債務の保証(業として保証を行う者に当該債務の保証を委託することを含む。)をして、指定商品若しくは指定権利を販売し、又は指定役務を提供すること。

二 カード等を利用者に交付し又は付与し、当該利用者がそのカード等を提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに購入した商品若しくは権利の代金又は提供を受ける役務の対価に充てるためにする金銭の借入れで、あらかじめ定められた時期ごとに、その借入金の合計額を基礎としてあらかじめ定められた方法により算定して得た金額を返済することを条件とするものに係る当該利用者の債務の保証(業として保証を行う者に当該債務の保証を委託することを含む。)をして、そのカード等の提示若しくは通知を受けて、又はそれと引換えに指定商品若しくは指定権利を販売し又は指定役務を提供すること。

3 この法律において「包括信用購入あつせん」とは、次に掲げるものをいう。

一 それを提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに、特定の販売業者から商品若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から有償で役務の提供を受けることができるカードその他の物又は番号、記号その他の符号(以下この項及び次項、第三章第一節並びに第三十五条の十六において「カード等」という。)をこれにより商品若しくは権利を購入しようとする者又は役務の提供を受けようとする者(以下この項、同節、同章第三節、同条、第三章の四第二節、第四十一条及び第四十一条の二において「利用者」という。)に交付し又は付与し、当該利用者がそのカード等を提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに特定の販売業者から商品若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から役務の提供を受けるときは、当該販売業者又は当該役務提供事業者に当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価に相当する額の交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするとともに、当該利用者から当該代金又は当該対価に相当する額をあらかじめ定められた時期までに受領すること(当該利用者が当該販売業者から商品若しくは権利を購入する契約を締結し、又は当該役務提供事業者から役務の提供を受ける契約を締結した時から二月を超えない範囲内においてあらかじめ定められた時期までに受領することを除く。)。

二 カード等を利用者に交付し又は付与し、当該利用者がそのカード等を提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに特定の販売業者から商品若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から役務の提供を受けるときは、当該販売業者又は当該役務提供事業者に当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価に相当する額の交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするとともに、当該利用者からあらかじめ定められた時期ごとに当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価の合計額を基礎としてあらかじめ定められた方法により算定して得た金額を受領すること。

4 この法律において「個別信用購入あつせん」とは、カード等を利用することなく、特定の販売業者が行う購入者への商品若しくは指定権利の販売又は特定の役務提供事業者が行う役務の提供を受ける者への役務の提供を条件として、当該商品若しくは当該指定権利の代金又は当該役務の対価の全部又は一部に相当する金額の当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするとともに、当該購入者又は当該役務の提供を受ける者からあらかじめ定められた時期までに当該金額を受領すること(当該購入者又は当該役務の提供を受ける者が当該販売業者から商品若しくは指定権利を購入する契約を締結し、又は当該役務提供事業者から役務の提供を受ける契約を締結した時から二月を超えない範囲内においてあらかじめ定められた時期までに受領することを除く。)をいう。

5 この法律において「指定商品」とは、定型的な条件で販売するのに適する商品であつて政令で定めるものをいい、「指定権利」とは、施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるものをいい、「指定役務」とは、次項、第三十五条の三の六十一、第三十五条の三の六十二、第四十一条及び第四十一条の二を除き、国民の日常生活に係る取引において有償で提供される役務であつて政令で定めるものをいう。

6 この法律において「前払式特定取引」とは、次の各号に掲げる取引で、当該各号に定める者に対する商品の引渡し又は政令で定める役務(以下この項、第三十五条の三の六十一、第三十五条の三の六十二、第四十一条及び第四十一条の二において「指定役務」という。)の提供に先立つてその者から当該商品の代金又は当該指定役務の対価の全部又は一部を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領するものをいう。

一 商品の売買の取次ぎ 購入者

二 指定役務の提供又は指定役務の提供をすること若しくは指定役務の提供を受けることの取次ぎ 当該指定役務の提供を受ける者

 

(包括信用購入あつせん業者に対する抗弁)

第三十条の四 購入者又は役務の提供を受ける者は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。

2 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。

3 第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は、その対抗を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。

4 前三項の規定は、第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない支払総額に係るものについては、適用しない。

 

民法

(連帯保証人について生じた事由の効力)

第四百五十八条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

 

第五百条 第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。

 

1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2指定の虚偽申告罪との罪数

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例

3、当初の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(あ)第582号

昭和47年3月9日

関税法違反、外国為替及び外国貿易管理法違法被告事件

【判示事項】    1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2指定の虚偽申告罪との罪数

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例

3、当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲

【判決要旨】    1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、関税吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法111条1項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかつたとみるのが相当である。

3、当初の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。

(3について反対意見がある。)

【参照条文】    関税法111-1

          関税法113の2

          刑法45

          刑法54

          刑事訴訟法256-2

          刑事訴訟法379

          刑事訴訟法392-2

          刑事訴訟法414

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集26巻2号102頁

 

関税法

第百十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が千万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。

一 第六十七条(輸出又は輸入の許可)(第七十五条(外国貨物の積戻し)において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者

二 第六十七条の申告又は検査に際し、偽つた申告若しくは証明をし、又は偽つた書類を提出して貨物を輸出し、又は輸入した者

2 第六十七条の申告又は検査に際し通関業者の偽つた申告若しくは証明又は偽つた書類の提出により貨物を輸出し、又は輸入することとなつた場合における当該行為をした通関業者についても、また前項の例による。

3 前二項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。

4 第一項又は第二項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が五百万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。

 

第百十三条の二 正当な理由がなくて特例申告書をその提出期限までに提出しなかつた者は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

 

刑法

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

 

刑事訴訟法

第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

② 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。

一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項

二 公訴事実

三 罪名

③ 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

④ 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

⑤ 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

⑥ 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

 

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

第三百九十二条 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。

② 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項であつても、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に関しては、職権で調査をすることができる。

 

第四百十四条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。