1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2指定の虚偽申告罪との罪数 2、関税法の | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2指定の虚偽申告罪との罪数

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例

3、当初の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(あ)第582号

昭和47年3月9日

関税法違反、外国為替及び外国貿易管理法違法被告事件

【判示事項】    1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2指定の虚偽申告罪との罪数

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例

3、当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲

【判決要旨】    1、関税法111条1項所定の無許可輸出罪と同法113条の2所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。

2、関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、関税吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法111条1項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかつたとみるのが相当である。

3、当初の無許可輸出罪の訴因につき第1審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。

(3について反対意見がある。)

【参照条文】    関税法111-1

          関税法113の2

          刑法45

          刑法54

          刑事訴訟法256-2

          刑事訴訟法379

          刑事訴訟法392-2

          刑事訴訟法414

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集26巻2号102頁

 

関税法

第百十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が千万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。

一 第六十七条(輸出又は輸入の許可)(第七十五条(外国貨物の積戻し)において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者

二 第六十七条の申告又は検査に際し、偽つた申告若しくは証明をし、又は偽つた書類を提出して貨物を輸出し、又は輸入した者

2 第六十七条の申告又は検査に際し通関業者の偽つた申告若しくは証明又は偽つた書類の提出により貨物を輸出し、又は輸入することとなつた場合における当該行為をした通関業者についても、また前項の例による。

3 前二項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。

4 第一項又は第二項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が五百万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。

 

第百十三条の二 正当な理由がなくて特例申告書をその提出期限までに提出しなかつた者は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

 

刑法

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

 

刑事訴訟法

第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

② 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。

一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項

二 公訴事実

三 罪名

③ 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

④ 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

⑤ 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

⑥ 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

 

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

第三百九十二条 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。

② 控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項であつても、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に関しては、職権で調査をすることができる。

 

第四百十四条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。