法人税法67条(特定同族会社の特別税率)の規定の趣旨(原審判決引用) 法人税等課税処分取消 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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法人税法67条(特定同族会社の特別税率)の規定の趣旨(原審判決引用)

 

 

              法人税等課税処分取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/昭和54年(行コ)第23号

【判決日付】      昭和56年11月24日

【判示事項】      (1) 法人の申告所得金額を減少させる趣旨の更正(減額更正)の取消を求める訴えは、訴えの利益がないとされた事例(原審判決引用)

             (2) 法人税法六七条(同族会社の特別税率)の規定の趣旨(原審判決引用)

             (3) 更生会社の留保金が、更生計画認可決定前においてやむを得ず留保したものであり、または更生計画に従い留保したものであったとしても、当該留保金につき法人税法六七条(同族会社の特別税率)を適用する必要性は失われていないとされた事例(原審判決引用)

             (4) 更生会社の代表取締役に支給された賞与金につき法人税法三五条一項(役員賞与等の損金不算入)の規定を適用して損金に算入しなかったことは適法であるとされた事例(原審判決引用)

【判決要旨】      (1) 控訴会社は、本件更正処分のうち、役員賞与が損金に算入されるべきであるとして、同更正処分が認定した所得金額金四五六九万二二八二円より役員賞与金一〇三万円を控除した金四四六六万二二八二円を超える部分の取消を求めているが、本件更正処分は、申告所得金額を一部取消すものというべきであり、従ってこれを取消せば、結局申告所得額が復活することになるから(なお、控訴会社が国税通則法二三条一項による更正の請求をしていないことは当事者間に争いがなく、申告書の記載が錯誤により無効であるとの控訴会社の具体的主張立証も存しない。)結局のところ、右取消の訴えは訴えの利益がないものというべきである。

             (2) 法人税法六七条の規定の文言からも明らかなように、同条は、同族会社の一定額を超える留保金額についてこれが不当留保かどうかを問うことなく一律に所定の金額に応じた特別税率を課すこととしているものであって、そのことからすれば、本来の立法趣旨を不当留保所得の是正ということにのみ求めるのはいささか早計というべきである。むしろ、右に述べたような本来の規定の文言およびこれが同族会社の留保金についてのみその適用があり、非同族会社についてはたとえ不当留保がなされたとしてもこれには適用されないこととされていることからすると、本条の規定の立法趣旨としては不当留保所得を是正することと併せて、同族会社と個人企業との税負担の公平をも図っているものというべきである。

             (3) 本件更生会社の各留保金が、その一期分については、更生計画認可決定前においてやむを得ず留保したものであって、二期分については、更生計画に従い留保したものであって、株主による個人所得税の負担を免れんことを意図した不当留保所得とはみられない性質のものであるとしても、それが後日更生会社の設備投資に充てられ、あるいは更生債権者に対する弁済に充てられるなどして結局更生会社たる同族会社の利益となる性質のものである以上、前記の個人企業との税負担の公平という見地からみて、これを留保した時点において法人税法六七条を適用する必要性はなお失われていないものというべきである。

             (4) 本件更生会社の代表取締役が更生計画によって適法に選任せられている以上、たとえ更生会社の事業の経営、財産の管理処分をする権限を有していなくとも、更生会社の機関たる地位にあることには変りがないのであって、まして何らの手続を経ることなく当然に管財人の使用人たる地位に就くものではないことは明らかである。従って、法人税が、本件の如き代表取締役に対する賞与について、その実質的内容を問うことなく一律に益金に算入すべきものとしている以上(同法二条一五号、三五条一項、二項、五項、同法施行令七一条一項)、本件各賞与金はいずれも同法三五条一項により益金に算入されるべきものといわざるを得ない。

【掲載誌】        税務訴訟資料121号382頁

 

留保金課税(りゅうほきんかぜい)とは、法人が経済活動を通して獲得した利益(所得)のうち、法人内部へ保留され蓄積される部分について、租税回避等で過剰な留保が起きることについて追加で課税することである。この過剰な留保の内容、定め方については国によってもことなる。留保金課税が行われている例として日本、アメリカ、フィリピン等があげられる。

 

 

法人税法

(特定同族会社の特別税率)

第六十七条 内国法人である特定同族会社(被支配会社で、被支配会社であることについての判定の基礎となつた株主等のうちに被支配会社でない法人がある場合には、当該法人をその判定の基礎となる株主等から除外して判定するものとした場合においても被支配会社となるもの(資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるものにあつては、前条第五項第二号から第五号までに掲げるもの及び同条第六項に規定する大通算法人に限る。)をいい、清算中のものを除く。以下この条において同じ。)の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、その特定同族会社に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項(外国税額の控除)(同条第二十三項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定にかかわらず、これらの規定により計算した法人税の額に、その超える部分の留保金額を次の各号に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。

一 年三千万円以下の金額 百分の十

二 年三千万円を超え、年一億円以下の金額 百分の十五

三 年一億円を超える金額 百分の二十

2 前項に規定する被支配会社とは、会社(投資法人を含む。以下この項及び第八項において同じ。)の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の一人並びにこれと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。

3 第一項に規定する留保金額とは、所得等の金額(第一号から第六号までに掲げる金額の合計額から第七号に掲げる金額を減算した金額をいう。第五項において同じ。)のうち留保した金額から、当該事業年度の所得の金額につき前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項の規定により計算した法人税の額と当該事業年度の地方法人税法第九条第二項(課税標準)に規定する課税標準法人税額(同法第六条第一項第一号(基準法人税額等)に定める基準法人税額に係るものに限る。)につき同法第十条(税率)及び第十二条第九項(外国税額の控除)(同条第十三項において準用する場合を含む。)の規定により計算した地方法人税の額とを合計した金額(次条から第七十条まで(税額控除)並びに同法第十二条第一項及び第八項(同条第十三項において準用する場合を含む。)並びに第十三条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除)の規定による控除をされるべき金額がある場合には、当該金額を控除した金額)並びに当該法人税の額に係る地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税を含む。)の額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額をいう。

一 当該事業年度の所得の金額(第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)に規定する最後事業年度にあつては、同項に規定する資産及び負債の同項に規定する譲渡がないものとして計算した場合における所得の金額)

二 第二十三条(受取配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額(特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人から受ける同条第一項に規定する配当等の額に係るもののうち政令で定めるものを除く。)

三 第二十三条の二(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額

四 第二十五条の二第一項(受贈益)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額

五 第二十六条第一項(還付金等の益金不算入)に規定する還付を受け又は充当される金額(同項第一号に係る部分の金額を除く。)、同条第二項に規定する減額された金額、同条第三項に規定する減額された部分として政令で定める金額、その受け取る同条第四項に規定する通算税効果額(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)及び同条第五項に規定する還付を受ける金額

六 第五十七条(欠損金の繰越し)又は第五十九条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額

七 第二十七条(中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入された金額

4 特定同族会社の前項に規定する留保した金額の計算については、当該特定同族会社による次の各号に掲げる剰余金の配当、利益の配当又は金銭の分配(その決議の日が当該各号に定める日(以下この項において「基準日等」という。)の属する事業年度終了の日の翌日から当該基準日等の属する事業年度に係る決算の確定の日までの期間内にあるもの(当該特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人に対する剰余金の配当又は利益の配当として政令で定めるものを除く。)に限る。以下この項において「期末配当等」という。)により減少する利益積立金額に相当する金額(当該期末配当等が金銭以外の資産によるものである場合には、当該資産の価額が当該資産の当該基準日等の属する事業年度終了の時における帳簿価額(当該資産が当該基準日等の属する事業年度終了の日後に取得したものである場合にあつては、その取得価額)であるものとした場合における当該期末配当等により減少する利益積立金額に相当する金額)は、当該基準日等の属する事業年度の前項に規定する留保した金額から控除し、当該期末配当等がその効力を生ずる日(その効力を生ずる日の定めがない場合には、当該期末配当等をする日)の属する事業年度の同項に規定する留保した金額に加算するものとする。

一 剰余金の配当で当該剰余金の配当を受ける者を定めるための会社法第百二十四条第一項(基準日)に規定する基準日(以下この項において「基準日」という。)の定めがあるもの 当該基準日

二 利益の配当又は投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配で、当該利益の配当又は金銭の分配を受ける者を定めるための基準日に準ずる日の定めがあるもの 同日

5 第一項に規定する留保控除額とは、次に掲げる金額のうち最も多い金額をいう。

一 当該事業年度の所得等の金額(第六十四条の五第一項(損益通算)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額がある場合には当該金額を加算した金額とし、同条第三項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額がある場合には当該金額を控除した金額とする。)の百分の四十に相当する金額

二 年二千万円

三 当該事業年度終了の時における利益積立金額(当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額を除く。)がその時における資本金の額又は出資金の額の百分の二十五に相当する金額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額

6 事業年度が一年に満たない特定同族会社に対する第一項及び前項の規定の適用については、第一項中「年三千万円」とあるのは「三千万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と、「年一億円」とあるのは「一億円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と、前項中「年二千万円」とあるのは「二千万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」とする。

7 前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

8 第一項の場合において、会社が同項の特定同族会社に該当するかどうかの判定は、当該会社の当該事業年度終了の時の現況による。

9 第三項に規定する留保した金額の調整その他第一項から第五項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。