法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -10ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

法人税法67条(特定同族会社の特別税率)の規定の趣旨(原審判決引用)

 

 

              法人税等課税処分取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/昭和54年(行コ)第23号

【判決日付】      昭和56年11月24日

【判示事項】      (1) 法人の申告所得金額を減少させる趣旨の更正(減額更正)の取消を求める訴えは、訴えの利益がないとされた事例(原審判決引用)

             (2) 法人税法六七条(同族会社の特別税率)の規定の趣旨(原審判決引用)

             (3) 更生会社の留保金が、更生計画認可決定前においてやむを得ず留保したものであり、または更生計画に従い留保したものであったとしても、当該留保金につき法人税法六七条(同族会社の特別税率)を適用する必要性は失われていないとされた事例(原審判決引用)

             (4) 更生会社の代表取締役に支給された賞与金につき法人税法三五条一項(役員賞与等の損金不算入)の規定を適用して損金に算入しなかったことは適法であるとされた事例(原審判決引用)

【判決要旨】      (1) 控訴会社は、本件更正処分のうち、役員賞与が損金に算入されるべきであるとして、同更正処分が認定した所得金額金四五六九万二二八二円より役員賞与金一〇三万円を控除した金四四六六万二二八二円を超える部分の取消を求めているが、本件更正処分は、申告所得金額を一部取消すものというべきであり、従ってこれを取消せば、結局申告所得額が復活することになるから(なお、控訴会社が国税通則法二三条一項による更正の請求をしていないことは当事者間に争いがなく、申告書の記載が錯誤により無効であるとの控訴会社の具体的主張立証も存しない。)結局のところ、右取消の訴えは訴えの利益がないものというべきである。

             (2) 法人税法六七条の規定の文言からも明らかなように、同条は、同族会社の一定額を超える留保金額についてこれが不当留保かどうかを問うことなく一律に所定の金額に応じた特別税率を課すこととしているものであって、そのことからすれば、本来の立法趣旨を不当留保所得の是正ということにのみ求めるのはいささか早計というべきである。むしろ、右に述べたような本来の規定の文言およびこれが同族会社の留保金についてのみその適用があり、非同族会社についてはたとえ不当留保がなされたとしてもこれには適用されないこととされていることからすると、本条の規定の立法趣旨としては不当留保所得を是正することと併せて、同族会社と個人企業との税負担の公平をも図っているものというべきである。

             (3) 本件更生会社の各留保金が、その一期分については、更生計画認可決定前においてやむを得ず留保したものであって、二期分については、更生計画に従い留保したものであって、株主による個人所得税の負担を免れんことを意図した不当留保所得とはみられない性質のものであるとしても、それが後日更生会社の設備投資に充てられ、あるいは更生債権者に対する弁済に充てられるなどして結局更生会社たる同族会社の利益となる性質のものである以上、前記の個人企業との税負担の公平という見地からみて、これを留保した時点において法人税法六七条を適用する必要性はなお失われていないものというべきである。

             (4) 本件更生会社の代表取締役が更生計画によって適法に選任せられている以上、たとえ更生会社の事業の経営、財産の管理処分をする権限を有していなくとも、更生会社の機関たる地位にあることには変りがないのであって、まして何らの手続を経ることなく当然に管財人の使用人たる地位に就くものではないことは明らかである。従って、法人税が、本件の如き代表取締役に対する賞与について、その実質的内容を問うことなく一律に益金に算入すべきものとしている以上(同法二条一五号、三五条一項、二項、五項、同法施行令七一条一項)、本件各賞与金はいずれも同法三五条一項により益金に算入されるべきものといわざるを得ない。

【掲載誌】        税務訴訟資料121号382頁

 

留保金課税(りゅうほきんかぜい)とは、法人が経済活動を通して獲得した利益(所得)のうち、法人内部へ保留され蓄積される部分について、租税回避等で過剰な留保が起きることについて追加で課税することである。この過剰な留保の内容、定め方については国によってもことなる。留保金課税が行われている例として日本、アメリカ、フィリピン等があげられる。

 

 

法人税法

(特定同族会社の特別税率)

第六十七条 内国法人である特定同族会社(被支配会社で、被支配会社であることについての判定の基礎となつた株主等のうちに被支配会社でない法人がある場合には、当該法人をその判定の基礎となる株主等から除外して判定するものとした場合においても被支配会社となるもの(資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるものにあつては、前条第五項第二号から第五号までに掲げるもの及び同条第六項に規定する大通算法人に限る。)をいい、清算中のものを除く。以下この条において同じ。)の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、その特定同族会社に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項(外国税額の控除)(同条第二十三項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定にかかわらず、これらの規定により計算した法人税の額に、その超える部分の留保金額を次の各号に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。

一 年三千万円以下の金額 百分の十

二 年三千万円を超え、年一億円以下の金額 百分の十五

三 年一億円を超える金額 百分の二十

2 前項に規定する被支配会社とは、会社(投資法人を含む。以下この項及び第八項において同じ。)の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の一人並びにこれと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。

3 第一項に規定する留保金額とは、所得等の金額(第一号から第六号までに掲げる金額の合計額から第七号に掲げる金額を減算した金額をいう。第五項において同じ。)のうち留保した金額から、当該事業年度の所得の金額につき前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項の規定により計算した法人税の額と当該事業年度の地方法人税法第九条第二項(課税標準)に規定する課税標準法人税額(同法第六条第一項第一号(基準法人税額等)に定める基準法人税額に係るものに限る。)につき同法第十条(税率)及び第十二条第九項(外国税額の控除)(同条第十三項において準用する場合を含む。)の規定により計算した地方法人税の額とを合計した金額(次条から第七十条まで(税額控除)並びに同法第十二条第一項及び第八項(同条第十三項において準用する場合を含む。)並びに第十三条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除)の規定による控除をされるべき金額がある場合には、当該金額を控除した金額)並びに当該法人税の額に係る地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税を含む。)の額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額をいう。

一 当該事業年度の所得の金額(第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)に規定する最後事業年度にあつては、同項に規定する資産及び負債の同項に規定する譲渡がないものとして計算した場合における所得の金額)

二 第二十三条(受取配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額(特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人から受ける同条第一項に規定する配当等の額に係るもののうち政令で定めるものを除く。)

三 第二十三条の二(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額

四 第二十五条の二第一項(受贈益)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額

五 第二十六条第一項(還付金等の益金不算入)に規定する還付を受け又は充当される金額(同項第一号に係る部分の金額を除く。)、同条第二項に規定する減額された金額、同条第三項に規定する減額された部分として政令で定める金額、その受け取る同条第四項に規定する通算税効果額(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)及び同条第五項に規定する還付を受ける金額

六 第五十七条(欠損金の繰越し)又は第五十九条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額

七 第二十七条(中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入された金額

4 特定同族会社の前項に規定する留保した金額の計算については、当該特定同族会社による次の各号に掲げる剰余金の配当、利益の配当又は金銭の分配(その決議の日が当該各号に定める日(以下この項において「基準日等」という。)の属する事業年度終了の日の翌日から当該基準日等の属する事業年度に係る決算の確定の日までの期間内にあるもの(当該特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人に対する剰余金の配当又は利益の配当として政令で定めるものを除く。)に限る。以下この項において「期末配当等」という。)により減少する利益積立金額に相当する金額(当該期末配当等が金銭以外の資産によるものである場合には、当該資産の価額が当該資産の当該基準日等の属する事業年度終了の時における帳簿価額(当該資産が当該基準日等の属する事業年度終了の日後に取得したものである場合にあつては、その取得価額)であるものとした場合における当該期末配当等により減少する利益積立金額に相当する金額)は、当該基準日等の属する事業年度の前項に規定する留保した金額から控除し、当該期末配当等がその効力を生ずる日(その効力を生ずる日の定めがない場合には、当該期末配当等をする日)の属する事業年度の同項に規定する留保した金額に加算するものとする。

一 剰余金の配当で当該剰余金の配当を受ける者を定めるための会社法第百二十四条第一項(基準日)に規定する基準日(以下この項において「基準日」という。)の定めがあるもの 当該基準日

二 利益の配当又は投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配で、当該利益の配当又は金銭の分配を受ける者を定めるための基準日に準ずる日の定めがあるもの 同日

5 第一項に規定する留保控除額とは、次に掲げる金額のうち最も多い金額をいう。

一 当該事業年度の所得等の金額(第六十四条の五第一項(損益通算)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額がある場合には当該金額を加算した金額とし、同条第三項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額がある場合には当該金額を控除した金額とする。)の百分の四十に相当する金額

二 年二千万円

三 当該事業年度終了の時における利益積立金額(当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額を除く。)がその時における資本金の額又は出資金の額の百分の二十五に相当する金額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額

6 事業年度が一年に満たない特定同族会社に対する第一項及び前項の規定の適用については、第一項中「年三千万円」とあるのは「三千万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と、「年一億円」とあるのは「一億円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と、前項中「年二千万円」とあるのは「二千万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」とする。

7 前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

8 第一項の場合において、会社が同項の特定同族会社に該当するかどうかの判定は、当該会社の当該事業年度終了の時の現況による。

9 第三項に規定する留保した金額の調整その他第一項から第五項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

 

第18章 過失相殺

 

東京地判昭和34年12月16日判タ102号49頁

 本件についてこれを見るに、鶴賀及び野本らは、地主諸貫に全く面識がなく、その上自称諸貫こと永井は当時権利証を紛失したと称し、保証書を呈示しているのであるから、このような場合、自称諸貫が真実に地主諸貫であるか否かの点について特別に注意を払い、地主諸貫の居宅または勤務先などに電話で連絡するとか、または同所に行ってこれを確認するなどの調査をなすべきところ、これを怠り、前記認定した程度の調査をもって、自称諸貫を地主諸貫であると誤信して、この旨を原告に告知し、もって本件土地の売買の仲介をしたことは、鶴賀及び野本らの過失であり、不法行為として右によって原告の蒙った損害を賠償する義務がある。

 また被告遠藤は、前記損害賠償の額の認定につき、過失相殺を主張しているが、原告本人尋問の結果によれば、原告は本件土地の売買をなすについて、専ら不動産仲介業者として被告遠藤の有する不動産取引に関する智識、経験並びにその調査を信頼して本件取引の仲介を依頼したことが認められるのであって、原告が買主として自ら権利者の真偽について調査しなかったとしても、これをもって、原告の過失であるということはできない。よってこの点に関する被告の抗弁は理由がない。

 

大阪地判昭和46年10月9日判タ274号269頁

宅地建物取引業者の仲介により土地を買い受けた者が、右土地の移転登記が確実になされることをたしかめないで、右業者の社員の嘘言を信じてその者に残代金を詐取された事案につき、買主に過失があるとして、賠償額算定につき斟酌された事例

 本件は、前記1に認定の事実によると、原告のような経歴と社会的地位を有する者にしては、まことににつかわしくなく、著しくうかつに被害にかかった事件であるというより他なく、原告は、白田を余りにも信用しすぎ(前記のとおり金を貸したりなどもしている)、白田の要求のままに再三にわたって疑いもせず多額の金を預けているものであるから、原告のこのようなうかつな態度が前記2回め以降の白田の不法行為(前記1の(4)ないし(6)を誘発したと考えられないでもないこと、前記1に認定のとおり、本件土地の通路の件は昭和46年10月5日頃には飯島の土地と交換することで一応の解決にこぎつけ、ついで、同年11月15日頃にはその契約の細部取決めがなされたものであるから、飯島がさらにこの解決あるいはその実行に難色を示しているため高橋、上田との本件土地の売買の期限の延長の必要があると云う白田の前記嘘の供述については、原告において当然疑念を抱き、白田に金を預ける前に飯島や高橋らに間い合せるべきであったのに、原告はこれにいささかの疑念を抱かず、右の措置もとらなかったこと、不動産売買取引については買受不動産の移転登記と引換、あるいはその実行が確実になされることの保証がある段階において買主は残代金を支払うものであることは一般通例であり、このことはかって大阪府庁において土地買収の職務にあたっていた原告も知悉していたと推認されるのに、原告は単に白田の嘘の言を信用して本件土地の移転登記が確実になされることをたしかめないで、白田に残代金を預けたこと、原告の桐原への本件土地の転売買についても、本件土地の所有権移転登記がなされるか、またはその実行が確実なことをたしかめてのち、右転売買契約をなすべきであったのに、単に白田の右登記が確実になされるとの嘘の言を信用してなされたこと等の点が認められ、これらの点はいずれも原告の本件被害の発生、あるいはその損害の増大に原因を与えているものであり、(なお、原告と飯島との本件土地等の交換契約については、これが本件土地の通路の確保のためになされたたものであるから、原告が本件土地の所有権移転登記を受ける前に右交換契約がなされたことはやむを得なかったところで、原告のこの契約の締結およびその手附金支払いを非難すべきでない。もつとも、原告がその交換差金を飯島に支払ったことは、約定期限よりも前に支払っておるから、この点は原告の手落ちとして非難に価するが、この支払金は原告に返還され、本件損害として認定されていない)、また、桐原についても、本件土地の所有権移転登記が原告にいまだなされていない段階に、この登記実現の確実なことをたしかめないで、単にこれに関する白田の嘘の言を信用して原告と転売買契約を締結したもので、右契約の履行については危惧がもたれるべきであったというべきであるから、この点は桐原の手落であると認められるところ、の白田の不法行為責任とは別に、報償責任、あるいは危険責任の見地から負わされる使用者としての被告の民法第715条の損害賠償義務の程度を認定する場合においては、原告および桐原の右にあげた各諸々の落度を被害者である原告らの過失として過失相殺をなすべきであると解するを相当とする。しかし、前記1に認定の事実によると、原告の側においては、被告はある程度規模の大きい、宅地建物取引業を営む会社で、白田はその社員であることや、原告が以前に被告(担当者白田)の仲介で高槻の土地を無事、不利に売却処分できたことのため、原告は、被告および白田を信用するにいたったこと、白田の原告に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、その手口も巧妙で領収証等を偽造して原告にこれを交付する等をして原告の誤信を1層深めたこと、原告は当時長女の病死や茨本市会議員の選挙に立候補してこれに忙殺されていたため、白田の巧妙な口車に乗せられて、つい同人に対する警戒を怠る結果になったこと、桐原との転売買契約については、白田が桐原からの預り金を詐欺するためにこの契約を仕組み、これを原告らに強力に勧めたために原告が締結したもので、原告としては積極的にこのんで締結したものでないこと等の点があり、また、桐原の側においては、原告同様、桐原が右のとおりの信用ある被告やその社員の白田を信用したこと、白田に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、桐原が白田の巧妙な口車に乗せられ、強力に原告からの転買を勧められたためにこれを締結して手附金を預けたこと等の点があり、これらの点を考え併すと、原告および桐原のこうむった損害中、いずれも、その3分の1を減じた残余の損害を被告に賠償さすをもって相当とする。

 

東京地八王子支判昭和54年7月26日判時947号74頁

宅地建物取引業者が宅地を売買斡旋するについて、当該土地が宅造法による宅地造成工事の規制を受けている場合には、買主に対しその旨を告知する義務があるとした事例

 そこで進んで、被告らの過失相殺の抗弁について按ずるに、まず被告ら主張の調査ないし相談の点については、《証拠略》によれば「原告は、本件土地を大蔵屋に転売する際、同土地には前示のような宅造法の適用ないし制限があることを知ったので、自ら町田市役所に赴いて、これを確認したこと」が認められ、また《証拠略》によれば「原告は、右転売前、被告会社に本件土地の買戻を求めたりまたはその相談をしたことはなかったが、これは当時原告と被告会社との間に別件の訴訟事件が係属して、両者は既に対立抗争の関係にあり、相互に不信の念を持っていたので、到底本件土地の買戻など相談できるような状況ではなかったことによるものであること」が認められるから、前記調査ないし相談の点につき原告に過失があったものということはできない。しかし、本件土地の転売価格が前示ように本件売買代金より著しく低廉となったのは、本件土地に前示宅造法の適用ないし制限があったことの外、石油ショックに因る一般的な地価の暴落並びに本件土地の前示のような形状及び地形自体にも、その重要な原因があったこと前示のとおりであるうえ、本件に提出された全証拠によるも、地価の低落していた昭和51年4月当時、原告が本件土地を急いで他へ転売すべき差し迫った状況にあったものとは到底考えられないところであるから、これらの事情は、少なくとも、公平の原則上、原告の損害額を算定する際、十分に斟酌すべきものである。してみれば、被告会社の前示債務不履行の結果、原告が被った損害額は、前示669万円の約3分の1である金200万円と認めるのが相当である。

 

リコールの根拠条文

 

消費生活用製品安全品

消費生活用製品安全法38条1項

(事業者の責務)

第三十八条 消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う者は、その製造又は輸入に係る消費生活用製品について製品事故が生じた場合には、当該製品事故が発生した原因に関する調査を行い、危害の発生及び拡大を防止するため必要があると認めるときは、当該消費生活用製品の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置をとるよう努めなければならない。

2 消費生活用製品の販売の事業を行う者は、製造又は輸入の事業を行う者がとろうとする前項の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置に協力するよう努めなければならない。

3 消費生活用製品の販売の事業を行う者は、製造又は輸入の事業を行う者が次条第一項の規定による命令を受けてとる措置に協力しなければならない。

 

 

自動車

道路運送車両法63条の2

(改善措置の届出等)

第六十三条の三 自動車製作者等は、その製作し、又は輸入した同一の型式の一定の範囲の自動車の構造、装置又は性能が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合において、当該自動車について、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため又は保安基準に適合させるために必要な改善措置を講じようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に次に掲げる事項を届け出なければならない。

一 保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあると認める構造、装置又は性能の状況及びその原因

二 改善措置の内容

三 前二号に掲げる事項を当該自動車の使用者に周知させるための措置その他の国土交通省令で定める事項

2 装置製作者等は、その製作し、又は輸入した同一の型式の一定の範囲の特定後付装置が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合において、当該特定後付装置について、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため又は保安基準に適合させるために必要な改善措置を講じようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に次に掲げる事項を届け出なければならない。

一 保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあると認める特定後付装置の状況及びその原因

二 改善措置の内容

三 前二号に掲げる事項を当該特定後付装置の使用者に周知させるための措置その他の国土交通省令で定める事項

3 国土交通大臣は、第一項又は前項の規定による届出に係る改善措置の内容が、当該自動車又は特定後付装置について、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため又は保安基準に適合させるために適切でないと認めるときは、当該届出をした自動車製作者等又は装置製作者等に対し、その変更を指示することができる。

4 第一項の規定による届出をした自動車製作者等又は第二項の規定による届出をした装置製作者等は、国土交通省令で定めるところにより、当該届出に係る改善措置の実施状況について国土交通大臣に報告しなければならない。

5 国土交通大臣は、第三項の規定による指示を行おうとする場合において必要があると認めるときは、自動車の構造、装置若しくは性能又は特定後付装置について、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため又は保安基準に適合させるために、第一項又は第二項の規定による届出に係る改善措置の内容が適切であるかどうかの技術的な検証を機構に行わせるものとする。

6 機構は、前項の技術的な検証を行つたときは、遅滞なく、当該技術的な検証の結果を国土交通大臣に通知しなければならない。

 

 

医薬品

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律68条の9

(危害の防止)

第六十八条の九 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者又は外国特例承認取得者は、その製造販売をし、又は第十九条の二、第二十三条の二の十七若しくは第二十三条の三十七の承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の使用によつて保健衛生上の危害が発生し、又は拡大するおそれがあることを知つたときは、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければならない。

2 薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者、医薬品、医薬部外品若しくは化粧品の販売業者、医療機器の販売業者、貸与業者若しくは修理業者、再生医療等製品の販売業者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、前項の規定により医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者又は外国特例承認取得者が行う必要な措置の実施に協力するよう努めなければならない。

司法書士の登記申請に添付すべき書類に対する調査義務

 

東京高等裁判所判決/昭和47年(ネ)第1297号

昭和48年1月31日

損害賠償請求控訴事件

【判示事項】    司法書士の登記申請に添付すべき書類に対する調査義務

【判決要旨】    司法書士が登記の申請を依頼された場合において、登記申請に添付すペき書類の偽造であるかの調査は、その依頼にあたり右司法書士の作成名義のものを交付されたとしても、当該書類が偽造または変造されたものであることが一見明白な場合とか、特に依頼人からその成立の真否についての調査を委託された場合等特段の事情がある場合を除き、それが偽造されたものであるかを調査すペき義務を負わない。

【参照条文】    司法書士法

          民法709

【掲載誌】     東京高等裁判所判決時報民事24巻1号17頁

          判例タイムズ302号197頁

          金融・商事判例360号19頁

 

司法書士法

(司法書士の使命)

第一条       司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。

 

【解説】

 本判決からだけでは、本件事案の内容は必ずしも明らかでないが、およそ次のようなものと思われる。すなわち、Y1は司法書士であるが、以前に自己が登記申請をした登記済権利書を提示されて登記の申請を依頼されたが、その権利書は偽造されたものであり、また依頼者の意思に基づいて第3者が届けてきた登記義務者の住民票も改ざんされたものであった。しかるに、Y1はこれが偽造ないし改ざんされたものであることに気づかず、これに基づいて登記の申請をし、登記所も右偽造改ざんが巧妙なため、これを真正なものと認め、これに基づいて登記をしたため、これにより権利を害されたXは、Y1および為(国)を相手に、共同不法行為ありとして、損害賠償を請求したもののようである。

非訟事件手続法第129条ノ4による抗告に同法第21条により執行停止の効力を認めないことの合憲性

 

最高裁判所大法廷決定/昭和26年(ク)第127号

昭和27年3月26日

仮処分事件の申請却下決定に対する抗告に対する抗告棄却決定に対する再抗告申立事件

【判示事項】    非訟事件手続法第129条ノ4による抗告に同法第21条により執行停止の効力を認めないことの合憲性

【判決要旨】    非訟事件手続法第132条ノ6によってされた裁判に対し、同法第129条ノ4に基いて即時抗告をした場合には、同法第21条によって、執行停止の効力は生じない、とする解釈は、憲法第6章が審級制度を認めた精神に違反しない。

【参照条文】    非訟事件手続法21

          非訟事件手続法129の4

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集6巻3号378頁

 

非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)

(原裁判の執行停止)

第七十二条 終局決定に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有しない。ただし、抗告裁判所又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、即時抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

2 前項ただし書の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

3 民事訴訟法第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。

 

海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律違反被告事件について,被告人が成年に達していると認めるのには合理的な疑いが残り,公訴提起は,少年法所定の手続を経ておらず,その手続は無効であるとして,公訴を棄却した事例

 

東京地方裁判所判決/平成23年(合わ)第77号

平成23年11月4日

海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律違反被告事件

【判示事項】    海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律違反被告事件について,被告人が成年に達していると認めるのには合理的な疑いが残り,公訴提起は,少年法所定の手続を経ておらず,その手続は無効であるとして,公訴を棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 本件公訴を棄却する。

 

第17章 損害項目

 

千葉地判平成12年11月30日判タ1110号150頁

登記官が、所有権移転登記申請に添付された印鑑証明書の真偽に疑問を抱くべき客観的状況が存在したにもかかわらず、必要な調査をせず、偽造の印鑑証明書を看過して登記申請を受理して登記をしてしまったときは、登記官の職務の執行につき過失があり、国は、これにより損害を被った者に対し、賠償責任を負う。

不動産の売買代金、登記手数料及び登録免許税、固定資産税(所有権移転登記経由後の分)、仲介手数料、弁護士費用

 

第18章 過失相殺

 

東京地判昭和34年12月16日判タ102号49頁

 本件についてこれを見るに、鶴賀及び野本らは、地主諸貫に全く面識がなく、その上自称諸貫こと永井は当時権利証を紛失したと称し、保証書を呈示しているのであるから、このような場合、自称諸貫が真実に地主諸貫であるか否かの点について特別に注意を払い、地主諸貫の居宅または勤務先などに電話で連絡するとか、または同所に行ってこれを確認するなどの調査をなすべきところ、これを怠り、前記認定した程度の調査をもって、自称諸貫を地主諸貫であると誤信して、この旨を原告に告知し、もって本件土地の売買の仲介をしたことは、鶴賀及び野本らの過失であり、不法行為として右によって原告の蒙った損害を賠償する義務がある。

 また被告遠藤は、前記損害賠償の額の認定につき、過失相殺を主張しているが、原告本人尋問の結果によれば、原告は本件土地の売買をなすについて、専ら不動産仲介業者として被告遠藤の有する不動産取引に関する智識、経験並びにその調査を信頼して本件取引の仲介を依頼したことが認められるのであって、原告が買主として自ら権利者の真偽について調査しなかったとしても、これをもって、原告の過失であるということはできない。よってこの点に関する被告の抗弁は理由がない。

 

大阪地判昭和46年10月9日判タ274号269頁

宅地建物取引業者の仲介により土地を買い受けた者が、右土地の移転登記が確実になされることをたしかめないで、右業者の社員の嘘言を信じてその者に残代金を詐取された事案につき、買主に過失があるとして、賠償額算定につき斟酌された事例

 本件は、前記1に認定の事実によると、原告のような経歴と社会的地位を有する者にしては、まことににつかわしくなく、著しくうかつに被害にかかった事件であるというより他なく、原告は、白田を余りにも信用しすぎ(前記のとおり金を貸したりなどもしている)、白田の要求のままに再三にわたって疑いもせず多額の金を預けているものであるから、原告のこのようなうかつな態度が前記2回め以降の白田の不法行為(前記1の(4)ないし(6)を誘発したと考えられないでもないこと、前記1に認定のとおり、本件土地の通路の件は昭和46年10月5日頃には飯島の土地と交換することで一応の解決にこぎつけ、ついで、同年11月15日頃にはその契約の細部取決めがなされたものであるから、飯島がさらにこの解決あるいはその実行に難色を示しているため高橋、上田との本件土地の売買の期限の延長の必要があると云う白田の前記嘘の供述については、原告において当然疑念を抱き、白田に金を預ける前に飯島や高橋らに間い合せるべきであったのに、原告はこれにいささかの疑念を抱かず、右の措置もとらなかったこと、不動産売買取引については買受不動産の移転登記と引換、あるいはその実行が確実になされることの保証がある段階において買主は残代金を支払うものであることは一般通例であり、このことはかって大阪府庁において土地買収の職務にあたっていた原告も知悉していたと推認されるのに、原告は単に白田の嘘の言を信用して本件土地の移転登記が確実になされることをたしかめないで、白田に残代金を預けたこと、原告の桐原への本件土地の転売買についても、本件土地の所有権移転登記がなされるか、またはその実行が確実なことをたしかめてのち、右転売買契約をなすべきであったのに、単に白田の右登記が確実になされるとの嘘の言を信用してなされたこと等の点が認められ、これらの点はいずれも原告の本件被害の発生、あるいはその損害の増大に原因を与えているものであり、(なお、原告と飯島との本件土地等の交換契約については、これが本件土地の通路の確保のためになされたたものであるから、原告が本件土地の所有権移転登記を受ける前に右交換契約がなされたことはやむを得なかったところで、原告のこの契約の締結およびその手附金支払いを非難すべきでない。もつとも、原告がその交換差金を飯島に支払ったことは、約定期限よりも前に支払っておるから、この点は原告の手落ちとして非難に価するが、この支払金は原告に返還され、本件損害として認定されていない)、また、桐原についても、本件土地の所有権移転登記が原告にいまだなされていない段階に、この登記実現の確実なことをたしかめないで、単にこれに関する白田の嘘の言を信用して原告と転売買契約を締結したもので、右契約の履行については危惧がもたれるべきであったというべきであるから、この点は桐原の手落であると認められるところ、の白田の不法行為責任とは別に、報償責任、あるいは危険責任の見地から負わされる使用者としての被告の民法第715条の損害賠償義務の程度を認定する場合においては、原告および桐原の右にあげた各諸々の落度を被害者である原告らの過失として過失相殺をなすべきであると解するを相当とする。しかし、前記1に認定の事実によると、原告の側においては、被告はある程度規模の大きい、宅地建物取引業を営む会社で、白田はその社員であることや、原告が以前に被告(担当者白田)の仲介で高槻の土地を無事、不利に売却処分できたことのため、原告は、被告および白田を信用するにいたったこと、白田の原告に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、その手口も巧妙で領収証等を偽造して原告にこれを交付する等をして原告の誤信を1層深めたこと、原告は当時長女の病死や茨本市会議員の選挙に立候補してこれに忙殺されていたため、白田の巧妙な口車に乗せられて、つい同人に対する警戒を怠る結果になったこと、桐原との転売買契約については、白田が桐原からの預り金を詐欺するためにこの契約を仕組み、これを原告らに強力に勧めたために原告が締結したもので、原告としては積極的にこのんで締結したものでないこと等の点があり、また、桐原の側においては、原告同様、桐原が右のとおりの信用ある被告やその社員の白田を信用したこと、白田に対する本件不法行為は当初から計画された犯罪行為で、桐原が白田の巧妙な口車に乗せられ、強力に原告からの転買を勧められたためにこれを締結して手附金を預けたこと等の点があり、これらの点を考え併すと、原告および桐原のこうむった損害中、いずれも、その3分の1を減じた残余の損害を被告に賠償さすをもって相当とする。

 

東京地八王子支判昭和54年7月26日判時947号74頁

宅地建物取引業者が宅地を売買斡旋するについて、当該土地が宅造法による宅地造成工事の規制を受けている場合には、買主に対しその旨を告知する義務があるとした事例

 そこで進んで、被告らの過失相殺の抗弁について按ずるに、まず被告ら主張の調査ないし相談の点については、《証拠略》によれば「原告は、本件土地を大蔵屋に転売する際、同土地には前示のような宅造法の適用ないし制限があることを知ったので、自ら町田市役所に赴いて、これを確認したこと」が認められ、また《証拠略》によれば「原告は、右転売前、被告会社に本件土地の買戻を求めたりまたはその相談をしたことはなかったが、これは当時原告と被告会社との間に別件の訴訟事件が係属して、両者は既に対立抗争の関係にあり、相互に不信の念を持っていたので、到底本件土地の買戻など相談できるような状況ではなかったことによるものであること」が認められるから、前記調査ないし相談の点につき原告に過失があったものということはできない。しかし、本件土地の転売価格が前示ように本件売買代金より著しく低廉となったのは、本件土地に前示宅造法の適用ないし制限があったことの外、石油ショックに因る一般的な地価の暴落並びに本件土地の前示のような形状及び地形自体にも、その重要な原因があったこと前示のとおりであるうえ、本件に提出された全証拠によるも、地価の低落していた昭和51年4月当時、原告が本件土地を急いで他へ転売すべき差し迫った状況にあったものとは到底考えられないところであるから、これらの事情は、少なくとも、公平の原則上、原告の損害額を算定する際、十分に斟酌すべきものである。してみれば、被告会社の前示債務不履行の結果、原告が被った損害額は、前示669万円の約3分の1である金200万円と認めるのが相当である。

 

第16章 私道・境界

 

大阪高判昭和61年11月18日判タ642号204頁

不動産仲介業者に私道通行承諾書の交付、境界明示の義務があるとされた事例

 本件事案の概要

 (1)Aは他から買入れた土地を本件土地と西側隣地に分筆し、西側隣地をBに売渡した。

 (2)Bはその後Aに対し本件土地が西側隣地にくい込んでいるとして再測量を申入れたが互いに両土地を自己の側で買取るとの提案をし合う(交叉申込)にとどまった。

 (3)Aの代理人Mは不動産仲介業者であるY1(被告・被控訴人)に本件土地と地上の本件建物(古家)の売却の仲介を依頼した。

 (4)Y1のほかY2、Y3、Y4はいずれも仲介業者として本件土地建物の売買仲介をし「私道の通行承諾は売主が書類にしてもらいます」と記載した売主側の売却条件リストを買主であるX(原告・控訴人)に手交した。

 (5)Xに対しYら自身も仲介業者として売主と共に境界確定と境界標の打込み、私有地通行承諾書のとりつけを了承したうえ、売主代理人Mとの間で売買契約を成立させた。

 (6)Y1、Y2はMと共に境界標を打ったが、MがBから委されているとの嘘を鵜呑みにしてBの立会なしに行なったものでBの関知するところでなかった。

 (7)XはY1持参の通行承諾書の交付をうけ残代金を決済したが、これは偽造であった。

 (8)XはBらから境界、通行承諾書の偽造など異議通告をうけ、その解決金支払などの損害を蒙ったため、Yら不動産仲介人に対し損害賠償の本訴提起。

 神戸地裁はXの請求を棄却。

 X控訴。

 

指定侵入工具をホテルの駐車場に駐車中の自動車内に隠匿保管している者につき,その者が当該自動車に乗車していなくても,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律4条が規定する「携帯」にあたるとされた事例

 

東京高等裁判所判決/平成17年(う)第719号

平成17年6月16日

住居侵入,窃盗,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律違反被告事件

【判示事項】         指定侵入工具をホテルの駐車場に駐車中の自動車内に隠匿保管している者につき,その者が当該自動車に乗車していなくても,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律4条が規定する「携帯」にあたるとされた事例

【判決要旨】         被告人は,マイナスドライバー3本,バール1本を日頃から使用している被告人車に積み,前夜来同車をホテル駐車場に駐車して同ホテルに宿泊していたことが認められる。このように本件各工具は場所的移動を伴うことを前提とした隠匿保管状況にあったと認められるから,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律1条に規定する目的,すなわち建物に侵入して行われる犯罪の防止という観点に照らすと,特段の事情がない限り,この自動車を使用する者がした行為としての隠匿保管をもって同法律4条にいう「携帯」に該当すると解するのが相当である。

 所論は,乗り物内等における携帯は犯人が乗車中か運転中である場合に限られると主張するが,携帯は,日常生活を営む自宅,居室以外の場所においてその物を直ちに使用できるような状態で身辺に置くことであるとしても,同法律の目的かんがみると,ここにいう直ちに使用できるような状態もしくはいつでも使用できるような状態とは,侵入対象建物の狙いを定めた場合には直ちに使用できる状態と解するのが相当であって,所論のようにいわば手の届くところにある場合と限定的に解釈しなければならない理由は乏しい。

【参照条文】         特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律

               特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律1

               特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律2

【掲載誌】          高等裁判所刑事裁判速報集平成17年123頁

 

特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律

(目的)

第一条 この法律は、特殊開錠用具の所持等を禁止するとともに、特定侵入行為の防止対策を推進することにより、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 建物錠 住宅の玄関その他建物の出入口の戸の施錠の用に供する目的で製作される錠をいう。

二 特殊開錠用具 ピッキング用具(錠に用いられるシリンダーをかぎを用いることなく、かつ、破壊することなく回転させるための器具をいう。)その他の専ら特殊開錠(施錠された状態にある錠を本来の方法によらないで開くことをいう。以下同じ。)を行うための器具であって、建物錠を開くことに用いられるものとして政令で定めるものをいう。

三 指定侵入工具 ドライバー、バールその他の工具(特殊開錠用具に該当するものを除く。)であって、建物錠を破壊するため又は建物の出入口若しくは窓の戸を破るために用いられるもののうち、建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとして政令で定めるものをいう。

四 特定侵入行為 特殊開錠用具又は指定侵入工具(以下「特殊開錠用具等」という。)を用いて建物に侵入する行為をいう。

第二章 特殊開錠用具の所持等の禁止

(特殊開錠用具の所持の禁止)

第三条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊開錠用具を所持してはならない。(指定侵入工具の携帯の禁止)

第四条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定侵入工具を隠して携帯してはならない。

 

会社更生法に基き金銭債務の支払を禁ずる旨の仮処分決定をうけた会社に対し金銭債権の無条件給付を求める訴の当否

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(オ)第777号

昭和33年6月19日

約束手形金請求事件

【判示事項】    会社更生法に基き金銭債務の支払を禁ずる旨の仮処分決定をうけた会社に対し金銭債権の無条件給付を求める訴の当否

【判決要旨】    会社更生法に基き、「会社は某日以前の原因に基いて生じた一切の金銭債務を弁済してはならない」旨の仮処分決定がなされた場合においても、債権者は、右会社およびその保証人の双方に対し、無条件の給付判決を求めることができる。

【参照条文】    会社更生法39

          民事訴訟法226

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集12巻10号1562頁

 

会社更生法

(他の手続の中止命令等)

第二十四条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第六号に掲げる処分については、その手続の申立人である更生債権者等又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。

一 開始前会社についての破産手続、再生手続又は特別清算手続

二 強制執行等(更生債権等に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行又は更生債権等を被担保債権とする留置権による競売をいう。)の手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの

三 開始前会社に対して既にされている企業担保権の実行手続

四 開始前会社の財産関係の訴訟手続

五 開始前会社の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続

六 外国租税滞納処分(共助対象外国租税の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(共益債権を徴収するためのものを除く。)をいう。)で、開始前会社の財産に対して既にされているもの

2 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、国税滞納処分(共益債権を徴収するためのものを除き、国税滞納処分の例による処分(共益債権及び共助対象外国租税の請求権を徴収するためのものを除く。)を含む。)で、開始前会社の財産に対して既にされているものの中止を命ずることができる。ただし、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

3 前項の規定による中止の命令は、更生手続開始の申立てについて決定があったとき、又は中止を命ずる決定があった日から二月を経過したときは、その効力を失う。

4 裁判所は、第一項及び第二項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した同号に規定する強制執行等の手続、同項第六号の規定により中止した同号に規定する外国租税滞納処分又は第二項の規定により中止した同項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずることができる。ただし、当該国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

6 第一項又は第二項の規定による中止の命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

8 第六項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

(包括的禁止命令)

第二十五条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項第二号若しくは第六号又は第二項の規定による中止の命令によっては更生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての更生債権者等に対し、同条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分及び同条第二項に規定する国税滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、開始前会社の主要な財産に関し第二十八条第一項の規定による保全処分をした場合又は第三十条第二項に規定する保全管理命令若しくは第三十五条第二項に規定する監督命令をした場合に限る。

2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する前条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分又は同条第二項に規定する国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる。

3 包括的禁止命令が発せられた場合には、次の各号に掲げる手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、当該各号に定める時までの間、中止する。

一 前条第一項第二号に規定する強制執行等の手続及び同項第六号に規定する外国租税滞納処分 更生手続開始の申立てについての決定があった時

二 前条第二項に規定する国税滞納処分 前号に定める時又は当該包括的禁止命令の日から二月が経過した時のいずれか早い時

4 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。

5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第三項の規定により中止した同項各号に掲げる手続の取消しを命ずることができる。ただし、前条第二項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

6 包括的禁止命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

8 包括的禁止命令が発せられたときは、更生債権等(当該包括的禁止命令により前条第一項第二号に規定する強制執行等又は同条第二項に規定する国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。

 

       主   文

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

       理   由

 上告人ら代理人弁護士前田茂の上告理由について。

 しかし、原判決の確定した事実によれば、所論上告人らの連帯保証の対象となっている主債務は上告会社が被上告組合に対して負担する既存の又は将来負担することあるべき約束もしくは為替手形上の債務であるというのであるから(所論にいわゆる上告会社が被上告組合に将来負担するであろう一切の債務について本件保証が適用あることに関しては原判決は何ら言及していない)、右主たる債務は右約旨の程度を以て十分に特定されているものと認めるを相当とするばかりでなく、このような場合主債務が特定されているというがために、所論のように主債務の現実に発生する時期、もしくはその最低限度額が明定されていなければならないわけのものではなく、またその点に関する取りきめがないからといって、右保証契約が当然に無効となり、或は公序良俗に反するが故に無効となると云いうるわけのものでもない。そして右約定に基いて現実に発生した本件手形債務について、上告会社に対し判示内容の保全処分があったからといって、保証債務の附従性の故に、所論上告人らに対してその取立が禁止されているものと云わなければならない筋合があるわけのものでもない。所論はひっきょう原判決の確定していない事実を想定し、かつ叙上に反する独自の見解の下に原判決を攻撃するものであって、採るを得ない。

 よって、民訴401条、89条、93条、95条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第1小法廷