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指定侵入工具をホテルの駐車場に駐車中の自動車内に隠匿保管している者につき,その者が当該自動車に乗車していなくても,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律4条が規定する「携帯」にあたるとされた事例

 

東京高等裁判所判決/平成17年(う)第719号

平成17年6月16日

住居侵入,窃盗,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律違反被告事件

【判示事項】         指定侵入工具をホテルの駐車場に駐車中の自動車内に隠匿保管している者につき,その者が当該自動車に乗車していなくても,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律4条が規定する「携帯」にあたるとされた事例

【判決要旨】         被告人は,マイナスドライバー3本,バール1本を日頃から使用している被告人車に積み,前夜来同車をホテル駐車場に駐車して同ホテルに宿泊していたことが認められる。このように本件各工具は場所的移動を伴うことを前提とした隠匿保管状況にあったと認められるから,特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律1条に規定する目的,すなわち建物に侵入して行われる犯罪の防止という観点に照らすと,特段の事情がない限り,この自動車を使用する者がした行為としての隠匿保管をもって同法律4条にいう「携帯」に該当すると解するのが相当である。

 所論は,乗り物内等における携帯は犯人が乗車中か運転中である場合に限られると主張するが,携帯は,日常生活を営む自宅,居室以外の場所においてその物を直ちに使用できるような状態で身辺に置くことであるとしても,同法律の目的かんがみると,ここにいう直ちに使用できるような状態もしくはいつでも使用できるような状態とは,侵入対象建物の狙いを定めた場合には直ちに使用できる状態と解するのが相当であって,所論のようにいわば手の届くところにある場合と限定的に解釈しなければならない理由は乏しい。

【参照条文】         特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律

               特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律1

               特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律2

【掲載誌】          高等裁判所刑事裁判速報集平成17年123頁

 

特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律

(目的)

第一条 この法律は、特殊開錠用具の所持等を禁止するとともに、特定侵入行為の防止対策を推進することにより、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 建物錠 住宅の玄関その他建物の出入口の戸の施錠の用に供する目的で製作される錠をいう。

二 特殊開錠用具 ピッキング用具(錠に用いられるシリンダーをかぎを用いることなく、かつ、破壊することなく回転させるための器具をいう。)その他の専ら特殊開錠(施錠された状態にある錠を本来の方法によらないで開くことをいう。以下同じ。)を行うための器具であって、建物錠を開くことに用いられるものとして政令で定めるものをいう。

三 指定侵入工具 ドライバー、バールその他の工具(特殊開錠用具に該当するものを除く。)であって、建物錠を破壊するため又は建物の出入口若しくは窓の戸を破るために用いられるもののうち、建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとして政令で定めるものをいう。

四 特定侵入行為 特殊開錠用具又は指定侵入工具(以下「特殊開錠用具等」という。)を用いて建物に侵入する行為をいう。

第二章 特殊開錠用具の所持等の禁止

(特殊開錠用具の所持の禁止)

第三条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊開錠用具を所持してはならない。(指定侵入工具の携帯の禁止)

第四条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定侵入工具を隠して携帯してはならない。