会社更生法に基き金銭債務の支払を禁ずる旨の仮処分決定をうけた会社に対し金銭債権の無条件給付を求め | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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会社更生法に基き金銭債務の支払を禁ずる旨の仮処分決定をうけた会社に対し金銭債権の無条件給付を求める訴の当否

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(オ)第777号

昭和33年6月19日

約束手形金請求事件

【判示事項】    会社更生法に基き金銭債務の支払を禁ずる旨の仮処分決定をうけた会社に対し金銭債権の無条件給付を求める訴の当否

【判決要旨】    会社更生法に基き、「会社は某日以前の原因に基いて生じた一切の金銭債務を弁済してはならない」旨の仮処分決定がなされた場合においても、債権者は、右会社およびその保証人の双方に対し、無条件の給付判決を求めることができる。

【参照条文】    会社更生法39

          民事訴訟法226

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集12巻10号1562頁

 

会社更生法

(他の手続の中止命令等)

第二十四条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第六号に掲げる処分については、その手続の申立人である更生債権者等又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。

一 開始前会社についての破産手続、再生手続又は特別清算手続

二 強制執行等(更生債権等に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行又は更生債権等を被担保債権とする留置権による競売をいう。)の手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの

三 開始前会社に対して既にされている企業担保権の実行手続

四 開始前会社の財産関係の訴訟手続

五 開始前会社の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続

六 外国租税滞納処分(共助対象外国租税の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(共益債権を徴収するためのものを除く。)をいう。)で、開始前会社の財産に対して既にされているもの

2 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、国税滞納処分(共益債権を徴収するためのものを除き、国税滞納処分の例による処分(共益債権及び共助対象外国租税の請求権を徴収するためのものを除く。)を含む。)で、開始前会社の財産に対して既にされているものの中止を命ずることができる。ただし、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

3 前項の規定による中止の命令は、更生手続開始の申立てについて決定があったとき、又は中止を命ずる決定があった日から二月を経過したときは、その効力を失う。

4 裁判所は、第一項及び第二項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した同号に規定する強制執行等の手続、同項第六号の規定により中止した同号に規定する外国租税滞納処分又は第二項の規定により中止した同項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずることができる。ただし、当該国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

6 第一項又は第二項の規定による中止の命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

8 第六項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

(包括的禁止命令)

第二十五条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項第二号若しくは第六号又は第二項の規定による中止の命令によっては更生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての更生債権者等に対し、同条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分及び同条第二項に規定する国税滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、開始前会社の主要な財産に関し第二十八条第一項の規定による保全処分をした場合又は第三十条第二項に規定する保全管理命令若しくは第三十五条第二項に規定する監督命令をした場合に限る。

2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する前条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分又は同条第二項に規定する国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる。

3 包括的禁止命令が発せられた場合には、次の各号に掲げる手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、当該各号に定める時までの間、中止する。

一 前条第一項第二号に規定する強制執行等の手続及び同項第六号に規定する外国租税滞納処分 更生手続開始の申立てについての決定があった時

二 前条第二項に規定する国税滞納処分 前号に定める時又は当該包括的禁止命令の日から二月が経過した時のいずれか早い時

4 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。

5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第三項の規定により中止した同項各号に掲げる手続の取消しを命ずることができる。ただし、前条第二項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。

6 包括的禁止命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。

7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

8 包括的禁止命令が発せられたときは、更生債権等(当該包括的禁止命令により前条第一項第二号に規定する強制執行等又は同条第二項に規定する国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。

 

       主   文

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

       理   由

 上告人ら代理人弁護士前田茂の上告理由について。

 しかし、原判決の確定した事実によれば、所論上告人らの連帯保証の対象となっている主債務は上告会社が被上告組合に対して負担する既存の又は将来負担することあるべき約束もしくは為替手形上の債務であるというのであるから(所論にいわゆる上告会社が被上告組合に将来負担するであろう一切の債務について本件保証が適用あることに関しては原判決は何ら言及していない)、右主たる債務は右約旨の程度を以て十分に特定されているものと認めるを相当とするばかりでなく、このような場合主債務が特定されているというがために、所論のように主債務の現実に発生する時期、もしくはその最低限度額が明定されていなければならないわけのものではなく、またその点に関する取りきめがないからといって、右保証契約が当然に無効となり、或は公序良俗に反するが故に無効となると云いうるわけのものでもない。そして右約定に基いて現実に発生した本件手形債務について、上告会社に対し判示内容の保全処分があったからといって、保証債務の附従性の故に、所論上告人らに対してその取立が禁止されているものと云わなければならない筋合があるわけのものでもない。所論はひっきょう原判決の確定していない事実を想定し、かつ叙上に反する独自の見解の下に原判決を攻撃するものであって、採るを得ない。

 よって、民訴401条、89条、93条、95条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第1小法廷