司法書士の登記申請に添付すべき書類に対する調査義務
東京高等裁判所判決/昭和47年(ネ)第1297号
昭和48年1月31日
損害賠償請求控訴事件
【判示事項】 司法書士の登記申請に添付すべき書類に対する調査義務
【判決要旨】 司法書士が登記の申請を依頼された場合において、登記申請に添付すペき書類の偽造であるかの調査は、その依頼にあたり右司法書士の作成名義のものを交付されたとしても、当該書類が偽造または変造されたものであることが一見明白な場合とか、特に依頼人からその成立の真否についての調査を委託された場合等特段の事情がある場合を除き、それが偽造されたものであるかを調査すペき義務を負わない。
【参照条文】 司法書士法1
民法709
【掲載誌】 東京高等裁判所判決時報民事24巻1号17頁
判例タイムズ302号197頁
金融・商事判例360号19頁
司法書士法
(司法書士の使命)
第一条 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。
【解説】
本判決からだけでは、本件事案の内容は必ずしも明らかでないが、およそ次のようなものと思われる。すなわち、Y1は司法書士であるが、以前に自己が登記申請をした登記済権利書を提示されて登記の申請を依頼されたが、その権利書は偽造されたものであり、また依頼者の意思に基づいて第3者が届けてきた登記義務者の住民票も改ざんされたものであった。しかるに、Y1はこれが偽造ないし改ざんされたものであることに気づかず、これに基づいて登記の申請をし、登記所も右偽造改ざんが巧妙なため、これを真正なものと認め、これに基づいて登記をしたため、これにより権利を害されたXは、Y1および為(国)を相手に、共同不法行為ありとして、損害賠償を請求したもののようである。