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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第6 預貯金の仮払い制度(改正法909条の2)

1,改正前

平成28年12月19日最高裁大法廷決定により,

① 相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり,

② 共同相続人による単独での払戻しができない,こととされた。

生活費や葬儀費用の支払,相続債務の弁済などの資金需要がある場合にも,遺産分割が終了するまでの間は,被相続人の預金の払戻しができない。

 

相続法改正以前は、相続発生した事実を金融機関が知った場合には、原則、権利行使をした預貯金債権は、当該相続人が遺産の一部の分割により取得したものとみなされ、精算されることになります。

 

改正以前は、金融機関が本人が亡くなったことを知った場合には、その金融機関の口座を凍結します。なぜなら、預貯金は相続財産になり、法定相続人全員の協議による遺産分割の対象となるからです。

しかし、口座が凍結されてしまうと、相続後に必要な葬式費用、生活費などを賄うことができなくなるおそれがあります。

そこで、一定限度までの預貯金については、相続人の内の一人からの払い戻しができるように改正がさました。

預貯金口座は名義人が亡くなると、凍結されて引き出しできなくなるため、葬儀費用や病院・施設代金などの支払いに被相続人の預貯金が使用できず、残された家族が支払いに困るケースがあります。

 

仲のいい家族であればすみやかに遺産分割協議を行い、預貯金口座の凍結を解除することもできますが、相続トラブルになっており、協議がまとまらない場合は預金の引き出しに数年かかることもありました。

遺産分割における公平性を図りつつ,相続人の資金需要に対応できるよう,預貯金の払戻し制度を設ける。

⑴ 預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については,家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにする。

 ⑵ 預貯金債権に限り,家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する。

遺産分割が終了するまでの間は,相続人単独では預貯金債権の払戻しができない。

 

改正によるメリット

預貯金が遺産分割の対象となる場合に,各相続人は,遺産分割が終わる前でも,一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。

預貯金の払戻し制度の創設

 

このような問題を解決するため改正相続法では、預貯金の仮払い制度を創設し、預貯金の払い出しをしやすくしました。

 

2,仮払い制度により、遺産分割協議前でも預貯金の引き出しが可能に

改正相続法では、遺産分割の成立前であっても家庭裁判所の関与なく、単独で一定額の預貯金の引き出しができるようになりました。

 

次の事例をもとに【預貯金の仮払い制度】を確認をしましょう。

 

〈事例〉

相続人である兄妹は昔から仲が悪く、遺産分割協議がスムーズに成立しそうにない。

 

長男は、様々な支払いを行う必要があるため、仮払い制度を利用して、預金の一部を引き出し、それらの費用に充当したいと考えている。

 

各相続人が引き出せる「一定額」は以下のとおり計算します。

 

【相続開始時の預貯金額✕3分の1✕その共同相続人の法定相続分】

ただし,1 つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで。

 

※遺産分割前に引き出した一定額については、その共同相続人が遺産の一部を分割取得したものと扱われます。

 

3,預貯金債権の仮払い制度の施行時期

この規定は、相続開始日の改正前後を問わず、2019年7月1日改正日以降の預貯金債権行使の手続きに適用されます。

 

附則第5条

新民法第909条の2の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に預貯金債権が行使されるときにも、適用する。

 

登記権利者及び登記義務者双方から登記手続の委託を受けた司法書士が登記義務者から登記手続に必要な書類の返還を求められた場合における登記権利者に対する委任契約上の義務

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和51年(オ)第102号

【判決日付】      昭和53年7月10日

【判示事項】      登記権利者及び登記義務者双方から登記手続の委託を受けた司法書士が登記義務者から登記手続に必要な書類の返還を求められた場合における登記権利者に対する委任契約上の義務

【判決要旨】      登記権利者及び登記義務者双方から登記手続の委託を受け、右手続に必要な書類の交付を受けた司法書士は、手続の完了前に登記義務者から右書類の返還を求められても、登記権利者に対する関係では、同人への同意があるなど特段の事情のない限り、その返還を拒むべき委任契約上の義務がある。

【参照条文】      民法644

             民法651

             司法書士法

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集32巻5号868頁

 

民法

(受任者の注意義務)

第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

 

(委任の解除)

第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。

二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

 

司法書士法

(司法書士の使命)

第一条 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。

 

 

同一当事者間で各別の売買契約によりされた相互の土地の譲渡と取得等を交換に当たるとしてした譲渡所得に係る課税処分が違法とされた事例

 

 

              所得税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成10年(行コ)第108号

【判決日付】      平成11年6月21日

【判示事項】      同一当事者間で各別の売買契約によりされた相互の土地の譲渡と取得等を交換に当たるとしてした譲渡所得に係る課税処分が違法とされた事例

【判決要旨】      同一当事者間で相互に土地の譲渡、取得等をするに当たり、各別の売買契約書を作成して売買という法形式を選択した場合において、その法形式が仮装のものであるとすることが困難である等判示の事実関係の下では、これを交換に当たるとしてした譲渡所得に係る課税処分は違法である。

【参照条文】      所得税法33-1

             所得税法33-3

             所得税法36-1

【掲載誌】        高等裁判所民事判例集52巻26頁

             訟務月報47巻1号184頁

             判例タイムズ1023号165頁

             判例時報1685号33頁

             税務訴訟資料243号669頁

 

 一 納税者が、取引に際して通常用いられるのとは異なった法形式を採用することによって、通常用いられる法形式によった場合に課される税負担の軽減を図ろうとする場合があり、このような場合には、租税回避の目的でされた法律行為の効果を課税処分上どのように扱うべきかが問題とされることとなる。

本件は、X及びXの母の所有する土地等(譲渡資産)をいわゆる地上げ業者の提供する他の土地等(取得資産)と交換するに際して、各資産ごとの各別の売買契約とその各売買契約代金の相殺という取引の形式が取られ、これによって、Xらの譲渡資産の譲渡による譲渡所得に対して課される所得税の負担が、これらの両資産が交換契約(本件では、譲渡資産と取得資産の価額に差があるため、補足金付交換契約ということになる。)によって交換された場合に比べて、大幅に軽減される結果となった。そこで、課税庁は、この取引が、形式上は売買契約の形がとられているものの、実質的には交換契約に該当するものであるとして、交換契約によって資産が譲渡されたものとして計算したところに従って、Xらの所得税について課税処分を行ったため、Xらがその取消を求めたのが本件である。なお、本件では、Xの母がその後死亡したため、本件取引でXの母が取得していた取得資産について相続が開始し、その相続財産の評価について当時の租税特別措置法六九条の四の規定による計算特例(相続開始時の時価によるものとの相続税法上の原則に対する特例として、その取得の対価の額をもって課税価額とされることとなる。)が適用されるため、この相続税の課税価額の点についても、同様に本件取引が売買契約なのか交換契約なのかという観点からする争いが生ずることとなった。

 二 原判決(東京地判平10・5・13判時一六五六号七二頁)は、その取引の経過等からして、本件取引においては、相互の権利移転を同時に履行するという関係を当然の前提とし、一方の履行不能は他方の履行を無意味ならしめるという関係にあり、したがって、本件取引は、取得資産及び差金(補足金)と譲渡資産とを相互の対価とする不可分の権利移転合意、すなわち民法五八六条の交換に当たるものであるとして、所得税関係の課税庁の処分を正当なものとした。もっとも、相続税関係の処分については、本件取引が交換に当たるものとしても、課税庁のした課税価額の計算には誤りがあるものとして、課税処分を取り消した。

これに対し、本件控訴審判決は、本件取引については、譲渡資産の譲渡と取得資産の取得について各別に売買契約書が作成され、契約書上は売買の法形式が採用されていること、このような法形式が採用されたのは、交換の法形式を採用した場合に生ずる譲渡所得に対する税負担の軽減を図るためであったことが認められるが、この売買の法形式が仮装のものであるとすることは困難であり、また、いわゆる租税法律主義の下では、法律の根拠なしに、当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直して課税処分を行う権限が課税庁に認められているものではないことなどを理由に、これを売買契約とみる以外ないものとし、これが交換契約に当たることを前提としてした課税庁の処分を違法として取り消すに至った。

 

 

所得税法

(譲渡所得)

第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。

一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得

二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。

一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)

二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの

4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。

5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

 

(雑所得)

第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。

一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額

二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額

3 前項に規定する公的年金等とは、次に掲げる年金をいう。

一 第三十一条第一号及び第二号(退職手当等とみなす一時金)に規定する法律の規定に基づく年金その他同条第一号及び第二号に規定する制度に基づく年金(これに類する給付を含む。第三号において同じ。)で政令で定めるもの

二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金

三 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金(第三十一条第三号に規定する規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される同法第二十五条第一項(加入者)に規定する加入者(同項に規定する加入者であつた者を含む。)の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する年金として政令で定めるもの

4 第二項に規定する公的年金等控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 その年中の公的年金等の収入金額がないものとして計算した場合における第二条第一項第三十号(定義)に規定する合計所得金額(次号及び第三号において「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」という。)が千万円以下である場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が六十万円に満たない場合には、六十万円)

イ 四十万円

ロ その年中の公的年金等の収入金額から五十万円を控除した残額の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額

(1) 当該残額が三百六十万円以下である場合 当該残額の百分の二十五に相当する金額

(2) 当該残額が三百六十万円を超え七百二十万円以下である場合 九十万円と当該残額から三百六十万円を控除した金額の百分の十五に相当する金額との合計額

(3) 当該残額が七百二十万円を超え九百五十万円以下である場合 百四十四万円と当該残額から七百二十万円を控除した金額の百分の五に相当する金額との合計額

(4) 当該残額が九百五十万円を超える場合 百五十五万五千円

二 その年中の公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が千万円を超え二千万円以下である場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が五十万円に満たない場合には、五十万円)

イ 三十万円

ロ 前号ロに掲げる金額

三 その年中の公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が二千万円を超える場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が四十万円に満たない場合には、四十万円)

イ 二十万円

ロ 第一号ロに掲げる金額

 

(収入金額)

第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3 無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。

 

 

交差点に侵入しようとする自動車運転者に交通法規に違反して高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまでも予想した安全確認をすべき業務上の注意義務はないとされた事例

 

 

              業務上過失致死傷被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和47年(あ)第285号

【判決日付】      昭和48年5月22日

【判示事項】      交差点に侵入しようとする自動車運転者に交通法規に違反して高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまでも予想した安全確認をすべき業務上の注意義務はないとされた事例

【判決要旨】      対面する信号機が黄色の点滅を表示し、一方交差道路上の信号機は赤色の点滅を表示している場合、交差点に進入する自動車運転者は、特段の事情がないかぎり、交差道路を進行してくる運転者において信号に従つて一時停止および適切な事故回避措置をとるものと信頼してよく、あえて法規を無視して交差点に進入する車両のありうることに備えた周到な安全確認をする業務上の注意義務を負うものではなく、当事その者が法規所定の徐行義務を懈怠していたとしても同様である(反対意見がある。)。

【参照条文】      刑法(昭和43年法律第61号による改正前のもの)211

             道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前もの)4

             道路交通法42

             道路交通法施行令(昭和46年政令第348号による改正前のもの)2-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集27巻5号1077頁

 

刑法

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 

道路交通法

(公安委員会の交通規制)

第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者若しくは遠隔操作型小型車(遠隔操作により道路を通行しているものに限る。)(次条から第十三条の二までにおいて「歩行者等」という。)又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。

2 前項の規定による交通の規制は、区域、道路の区間又は場所を定めて行なう。この場合において、その規制は、対象を限定し、又は適用される日若しくは時間を限定して行なうことができる。

3 公安委員会は、環状交差点(車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であつて、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう。以下同じ。)以外の交通の頻繁な交差点その他交通の危険を防止するために必要と認められる場所には、信号機を設置するように努めなければならない。

4 信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は、政令で定める。

5 道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。

(罰則 第一項後段については第百十九条第一項第一号、第百二十一条第一項第一号及び第二号)

 

(徐行すべき場所)

第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。

一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

二 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾こう配の急な下り坂を通行するとき。

(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項)

 

道路交通法施行令

(信号の意味等)

第二条 法第四条第四項に規定する信号機の表示する信号の種類及び意味は、次の表に掲げるとおりとし、同表の下欄に掲げる信号の意味は、それぞれ同表の上欄に掲げる信号を表示する信号機に対面する交通について表示されるものとする。

信号の種類

信号の意味

青色の灯火

一 歩行者及び遠隔操作型小型車(遠隔操作により道路を通行しているものに限る。)(以下この条において「歩行者等」という。)は、進行することができること。
二 自動車、一般原動機付自転車(法第十八条第一項に規定する一般原動機付自転車をいう。以下同じ。)(右折につき一般原動機付自転車が法第三十四条第五項本文の規定によることとされる交差点を通行する一般原動機付自転車(以下この表において「多通行帯道路等通行一般原動機付自転車」という。)を除く。)、トロリーバス及び路面電車は、直進し、左折し、又は右折することができること。
三 多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車(法第十七条第三項に規定する特定小型原動機付自転車をいう。以下この条及び第四十一条の三第一項において同じ。)及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。

黄色の灯火

一 歩行者等は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者等は、速やかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと。
二 車両及び路面電車(以下この表において「車両等」という。)は、停止位置を越えて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。

赤色の灯火

一 歩行者等は、道路を横断してはならないこと。
二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。
三 交差点において既に左折している車両等は、そのまま進行することができること。
四 交差点において既に右折している車両等(多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両を除く。)は、そのまま進行することができること。この場合において、当該車両等は、青色の灯火により進行することができることとされている車両等の進行妨害をしてはならない。
五 交差点において既に右折している多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両は、その右折している地点において停止しなければならないこと。

人の形の記号を有する青色の灯火

一 歩行者等は、進行することができること。
二 特例特定小型原動機付自転車(法第十七条の二第一項に規定する特例特定小型原動機付自転車をいう。以下この表において同じ。)及び普通自転車(法第六十三条の三に規定する普通自転車をいう。以下この条及び第二十六条第三号において同じ。)は、横断歩道において直進をし、又は左折することができること。

人の形の記号を有する青色の灯火の点滅

一 歩行者等は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者等は、速やかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと。
二 横断歩道を進行しようとする特例特定小型原動機付自転車及び普通自転車は、道路の横断を始めてはならないこと。

人の形の記号を有する赤色の灯火

一 歩行者等は、道路を横断してはならないこと。
二 横断歩道を進行しようとする特例特定小型原動機付自転車及び普通自転車は、道路の横断を始めてはならないこと。

青色の灯火の矢印

車両は、黄色の灯火又は赤色の灯火の信号にかかわらず、矢印の方向に進行することができること。この場合において、交差点において右折する多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両は、直進する多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両とみなす。

黄色の灯火の矢印

路面電車は、黄色の灯火又は赤色の灯火の信号にかかわらず、矢印の方向に進行することができること。

黄色の灯火の点滅

歩行者等及び車両等は、他の交通に注意して進行することができること。

赤色の灯火の点滅

一 歩行者等は、他の交通に注意して進行することができること。
二 車両等は、停止位置において一時停止しなければならないこと。

備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
二 交差点以外の場所で横断歩道等又は踏切がある場所にあつては、横断歩道等又は踏切の直前
三 交差点以外の場所で横断歩道、自転車横断帯及び踏切がない場所にあつては、信号機の直前

 交差点において公安委員会が内閣府令で定めるところにより左折することができる旨を表示した場合におけるその交差点に設置された信号機の前項の表に掲げる黄色の灯火又は赤色の灯火の信号の意味は、それぞれの信号により停止位置をこえて進行してはならないこととされている車両に対し、その車両が左折することができることを含むものとする。

 公安委員会が信号機について、当該信号機の信号が特定の交通に対してのみ意味を表示するものである旨を内閣府令で定めるところにより表示した場合における信号機の第一項の表に掲げる信号の意味は、当該信号機について表示される特定の交通についてのみ表示されるものとする。

 公安委員会が、人の形の記号を有する青色の灯火、人の形の記号を有する青色の灯火の点滅又は人の形の記号を有する赤色の灯火の信号を表示する信号機について、当該信号機の信号が歩行者等、特定小型原動機付自転車及び自転車に対して意味を表示するものである旨を内閣府令で定めるところにより表示した場合における当該信号の意味は、次の表の上欄に掲げる信号の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。

信号の種類

信号の意味

人の形の記号を有する青色の灯火

一 歩行者等は、進行することができること。
二 特定小型原動機付自転車及び自転車は、直進をし、又は左折することができること。

人の形の記号を有する青色の灯火の点滅

一 歩行者等は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者等は、速やかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと。
二 特定小型原動機付自転車及び自転車は、道路の横断を始めてはならず、また、当該信号が表示された時において停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除き、停止位置を越えて進行してはならないこと。

人の形の記号を有する赤色の灯火

一 歩行者等は、道路を横断してはならないこと。
二 特定小型原動機付自転車及び自転車は、道路の横断を始め、又は停止位置を越えて進行してはならないこと。
三 交差点において既に左折している特定小型原動機付自転車及び自転車は、そのまま進行することができること。
四 交差点において既に右折している特定小型原動機付自転車及び自転車は、その右折している地点において停止しなければならないこと。

備考 この表において「停止位置」とは、第一項の表の備考に規定する停止位置をいう。

 特定の交通についてのみ意味が表示される信号が他の信号と同時に表示されている場合における当該他の信号の意味は、当該特定の交通について表示されないものとする。

 

 

       主   文

 

 原判決および第一審判決を破棄する。

 被告人は無罪。

 

       理   由

 

 弁護人飯野春正、同野上恭道の上告趣意のうち、最高裁昭和四四年(あ)第八七八号同四五年一一月一〇日第三小法廷決定・刑集二四巻一二号一六〇三頁および同四三年(あ)第一六二九号同年一二月一七日第三小法廷判決・別集二二巻一三号一五二五頁の各判例違反をいう点は、原判決の所論判断は、なんら右判例と相反しているものとは解されないから、理由がなく、その余の判例違反をいう点は、いずれも判例の具体的摘示を欠き、そり余は、単なる法令違反の主張であつて、すべて適法な上告理由にあたらない。

 しかしながら、所論にかんがみ職権で調査すると、原判決および第一審判決は、以下に述べるとおり、刑訴法四一一条一号により破棄を免れない。

 本件公訴事実について、原判決および第一審判決に示された事実関係とこれに対する法律判断は、おおむね次のとおりである。すなわち、被告人は、自動車運転の業務に従事するものであるところ、昭和四二年一一月二六日午前四時二〇分ころ、大型貨物自動車を運転し、時速約五〇キロメートルで長野県塩尻市大字ab番地付近国道一九号線(車道幅員七・八五ないし七・九〇メートル)を南方木曾方面から北方松本市方面へ向け進行中、右道路が東方塩尻駅方面から西方朝日村方面に通ずる県道(歩車道の区別なく幅員六・六メートル)と交差する信号機の設置された交差点の手前に差しかかつたが、右交差点は左右の見とおしがきかないのみならず、右県道上の交通に対面する信号機は赤色の燈火の点滅を表示し、右国道上の交通に対面する信号機は黄色の燈火の点滅を表示していて交通整理の行なわれていない状態であり、かつ、国道の幅員が県道の幅員より明らかに広いとは認められなかつたから、このような場合、自動車運転者としては、道路交通法(昭和四六年法律第九八号による改正前のもの。以下同じ。)四二条に従い、交差点進入前に徐行したうえ、右交差点内および左右道路からの他の交通に十分注意し、その安全を確認して進行し、もつて危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、被告人は、早朝で交通閑散であることに気を許してこれを怠り、漫然同一速度で同交差点に進入しようとした過失により、交差点直前(交差点中央から南方約一〇メートル)に達した際、右方県道上を時速約六〇キロメートルで同交差点に向つて進行するA運転の普通乗用車を右斜め前方一五メートルの地点にはじめて発見し、急制動をかけたが間にあわず、右交差点中央付近で、自車前部を右普通乗用車の左側部に激突させ、その衝撃により同車同乗者一名を死亡させ、右Aおよび他の同乗者三名にそれぞれ傷害を負わせた、というのである。そして原判決は、被告人の本件交差点直前における徐行義務は、交差点内における円滑な通行の不可欠の前提をなし、交差点内における衝突事故と直結するものということができ、被告人が徐行して交差点に臨んでいれば当然本件事故を十分回避しえたものと判断されるから、その徐行義務違反が直接事故の一因となつていることはとうてい否定しがたく、この場合に信頼の原則を適用して被告人の過失を否定すべき理由は存在しない、というのである。

 たしかに、被告人が右判示のような注意をしておれば、本件事故は発生しなかつたか、少なくとも本件事故とは異なる事故になつていたであろうと思われる。問題は、被告人にそのような注意義務があるかということである。そこで、以上の事実関係を基礎にして、被告人の注意義務に関する右判示の当否について考えることとする。

 前記のとおり、Aの対面する信号機は、赤色の燈火の点滅を表示していたというのであるが、この信号は、道路交通法施行令(昭和四六年政令第三四八号による改正前のもの。以下同じ。)二条一項が定めるとおり、車両等につき、「交差点の直前において(中略)一時停止しなければならないこと」を意味するものであり、また道路交通法四条二項により車両等が信号機の表示する信号に従うべきこともちろんであるから、右交差道路から本件交差点に入ろうとする車両の運転者は、すべてその直前において一時停止しなければならなかつたのである。また、この場合、再度発進して交差点に入るにあたつて国道上の交通の安全を確認し、接近してくる車両があるときには衝突の危険を回避するため所要の措置をとるべきことも当然の事理である。

 しかるに、被告人の対面する信号機は、黄色の燈火の点滅を表示していたというのであつて、前記施行令二条一項によれば、その意味は、「他の交通に注意して進行することができること」というにとどまり、なんら特殊な運転方法ないし注意義務を課するものではない。そして、被告人が本件交差点に差しかかつた際に、交差道路からすでに交差点に入つた車両や交差点の直前で一時停止し、発進して交差点に入ろうとしている車両があるような場合には、そのまま進行すれば衝突する危険があるから、被告人においてもその動静に注意しつつ、減速徐行あるいは一時停止等、臨機の措置に出て、もつて危険を回避すべき義務があるけれども、そうでなければ、右のとおり交差道路上の車両はすべて信号に従い一時停止およびこれに伴なう措置をとることとなつているのであるから、被告人の車両がそのまま進行しても、交差道路上を接近して来た車両が、被告人の車両に先んじて、もしくはこれと同時に交差点に入るというようなことは考えられず、したがつて衝突の発生する危険もないはずであり、特段の事情の認められない本件において、被告人が、交差道路を進行してくる現認できない車両は当然交差点直前で一時停止するから衝突の危険はないものとして、徐行することなく交差点に進入したとしても、これをもつて不注意であるということはできないのである。

 もつとも、本件交差点の前示状況に照らし、被告人がその直前で徐行しなかつたことは道路交通法四二条に違反している疑いがないではなく、かつ、被告人がこの徐行をしていれば本件衝突は起らなかつたかも知れないと考える余地があつて、この意味で、右徐行懈怠と本件の結果発生との間には条件的な因果関係があるといえなくはないけれども、交通法規違反のあることがただちに、刑法上、個別的な業務上の過失があることを意味しないことは多言を要しないのみならず、もしも、道路交通法上、被告人が徐行をしておれば交差道路上の車両は一時停止義務を解除されるようなことになつていたのであれば、被告人は、Aが被告人において徐行するものと考えて一時停止をしないことをも予想すべきであり、徐行することのないまま交差点に進入したことはこの点に思いをいたさなかつたものとして過失の責を問われてもやむをえないであろうけれども、すでに述べたとおり、本件交差点では、Aは、国道上の交通状況如何にかかわらず、必ず一時停止のうえ安全を確認すべく、本件のように、時速約六〇キロメートルという速度のまま、交差点に突入することが道路交通法上許容されることはありえなかつたのであり、かつ、Aにおいてこのように適法な運転をしていさえすれば、被告人の徐行の有無に関係なく、本件衝突の発生するおそれはまつたくなかつたのであるから、被告人の徐行しなかつたことは、本件の具体的状況のもとでは、なんら事故に直結したものといえず、これをもつて不注意ということもできない。

 原判示のような注意を被告人においてしなければならないとすれば、一時停止などを定めた道路交通法の趣旨は没却されることになるといわなければならない。

 このようにみてくると、本件被告人のように、自車と対面する信号機が黄色の燈火の点滅を表示しており、交差道路上の交通に対面する信号機が赤色の燈火の点滅を表示している交差点に進入しようとする自動車運転者としては、特段の事情がない本件では、交差道路から交差点に接近してくる車両があつても、その運転者において右信号に従い一時停止およびこれに伴なう事故回避のための適切な行動をするものとして信頼して運転すれば足り、それ以上に、本件Aのように、あえて法規に違反して一時停止をすることなく高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまで予想した周到な安全確認をすべき業務上の注意義務を負うものでなく、当時被告人が道路交通法四二条所定の徐行義務を懈怠していたとしても、それはこのことに影響を及ぼさないと解するのが相当である。

 そうすると、本件において、被告人に過失責任を認めた原判決および第一審判決は、法令の解釈を誤り、被告事件が罪とならないのにこれを有罪としたものというべく、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、刑訴法四一一条一号により、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 よつて、同法四二二条但書、四一四条、四〇四条、三三六条により、裁判官天野武一の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官天野武一の反対意見は、次のとおりである。

 私は、多数意見と異なり、原審の法律判断こそは正当であつてそこに上告趣意所論の違法はなく、本件上告はこれを棄却すべきものと考える。多数意見に敢えて反対する理由を次に示す。

 (一)本件事実関係のうち、

 (イ)本件事故は、昭和四二年一一月二六日午前四時二〇分頃、長野県塩尻市大字ab番地付近における国道一九号線(車道幅員七・八五ないし七・九〇メートル)と県道(歩車道の区別なく幅員六・六メートル)との交差する十字路の中央付近で発生したこと

 (ロ)被告人が、その国道上を南方より北方に向けて大型貨物自動車(以下、単に被告人車という。)を運転進行し、時速約五〇キロメートルで徐行することなく同交差点を通過しようとした際、右県道上を東方より西方に向い時速約六〇キロメートルで一時停止することなく同交差点を通過しようとするA運転の普通乗用自動車の左側部に自車前部を激突させ、その衝撃により、A車の同乗者一名を死亡させ右AおよびA車の他の同乗者三名にそれぞれ傷害を負わせたこと

 (ハ)事故現場は、信号機の設置された交差点であり、左右の見とおしがきかないのみならず、両車が交差点に差しかかつたときは、右県道上の交通に対面する信号機は赤色の燈火の点滅を表示し、右の国道上の交通に対面する信号機は黄色の燈火の点滅を表示していて、交通整理の行なわれていない状態であつたことの諸点は、第一、二審判決において確定されたところである(なお、右Aに対しては、本件事故につき禁錮八月の刑が確定している。)。

 (二)右のほか、原判決が第一審判決とともに認定判断するところに従えば、(イ)右交差点に差しかかる国道の幅員が県道より明らかに広いとは認められなかつたから、このような場合、右国道を進行する車両の運転者としては、道路交通法(昭和四六年法律第九八号による改正前のもの。以下同じ。)四二条に従い、交差点進入前に徐行したうえ、同交差点内および左右道路からの他の交通に十分注意し、その安全を確認して進行し、もつて危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があつた

 (ロ)被告人は、早朝で交通閑散であることに気をゆるして右の注意義務を怠り、漫然同一速度で同交差点に進入しようとした過失により、交差点直前(交差点中央から南方約一〇メートル)に達した際、右方県道上から進行してくるA車を右斜め前方一五メートルの地点ではじめて発見し、急制動をかけたが間にあわず、その結果前記のとおりの激突事故をひきおこしたというのである。原判決は、当時右交差点が道路交通法にいう「交通整理の行なわれていない交差点」であることをまず定め、ついでA車の進行している県道と被告人車の進行している国道といずれ、同法三六条二項の広狭関係にあるかについては、これを客観的に定めうる場合ではなく、しかも同所は同法四二条にいう左右の見とおしのきかない交差点であるから、まさしく同法三五条、三六条の予想する状態にあることを、原審自らの現場検証によつて確認したうえ、A車は赤色の燈火の点滅表示に従い一時停止すべきであつたことは勿論であるが、被告人車の立場も、同法四二条の定めるところに従つて交差点の手前で徐行して同法三五条一項または三項との調整を必要とする場合であつたと説くのである。その認定判断のいずこにも誤りはない。

 しかるに多数意見は、被告人が「(交差点の)直前で徐行しなかつたことは道路交通法四二条に違反している疑いがないではなく、かつ、被告人がこの徐行をしていれば本件衝突は起らなかつたかも知れないと考える余地があつて、この意味で、右徐行懈怠と本件の結果発生との間には条件的な因果関係があるといえなくはないけれども」といいながら、さらに進んで本件の具体的場合に対する同法四二条の適用関係につき正しく追及するところがない。そのうえ、多数意見は、単に、被告人の対面する信号機が表示していた黄色の燈火の点滅が同法施行令二条一項(昭和四六年政令第三四八号による改正前のもの。以下同じ。)により「他の交通に注意して進行することができること」を意味するにとどまるから「なんら特殊な運転方法ないし注意義務を課するものではない。」との解釈を示したのち、このことを前提に、「被告人が本件交差点に差しかかつた際に、交差道路からすでに交差点に入つた車両や交差点の直前で一時停止し、発進して交差点に入ろうとしている車両があるような場合には、そのまま進行すれば衝突する危険がある」けれども、そうでなければ、

 (イ)「交差道路上の車両はすべて信号に従い一時停止およびこれに伴なう措置をとることとなつているのであるから、被告人の車両がそのまま進行しても「交差道路上を接近して来た車両が、被告人の車両に先んじて、もしくはこれと同時に交差点に入るというようなことは考えられず」

 (ロ)「特段の事情の認められない本件において、被告人が、交差道路を進行してくる現認できない車両は当然交差点直前で一時停止するから衝突の危険はないものとして、徐行することなく交差点に進入したとしても、」被告人が不注意であつたということはできないと判断する。しかし、この点に関しては、原判決も「被告人に徐行、左右の安全確認等の注意義務があるとすれば、それは本件交差点の状況その他に基づいて生ずるのであつて、黄色の点滅信号のもつ意味そのものからかように注意義務が発生するわけではない。」といつているのであつて、原判決は、その見地から、本件の場合には「他方の道路から来る車両等は赤色の点滅信号の表示するところに従いその直前において一時停止の義務はあるものの、一時停止したのちはさらに状況に応じて発進し交差点に入ることができるのであり、黄色の点滅信号のある道路を来る車両等は他の交通に注意しつつ進行することができるわけであるから、当該交差点における両者の優先関係については依然調整を必要」とし、これは、前述のように「まさしく道交法三五条、三六条の予想する状態である」とみて、同法四二条により被告人には本件交差点の手前で必ず徐行する義務があることを明確に判示したのである。しかも原判決は、およそ交差点を運行する車両の運転者として、この道路交通法の規定の定めるところにしたがつて行動すべきことはひとり同法上の義務であるにとどまらず、いやしくも同法のこれらの規定が交差点における事故の発生を防止することを目的として設けられていることにかんがみれば、特段の事情によつて別異の行動をとることが事故防止のために必要であるような場合を除いては、「同時に事故発生を防ぐための注意義務にもあたるわけである。」と説き、もつて周到にその間の相関関係を解明しているのである。しかるに、多数意見は、ただ「交通法規違反のあることがただちに、刑法上、具体的な業務上の過失があることを意味しないことは多言を要しない」と言及するのみであつて措辞はなはだ簡略に過ぎ、私のとうてい納得しうるところではない。

 (三)くりかえしていうが、原判決は、本件のように交通整理の行なわれていない左右の見とおしのきかない交差点で、国道のほうには黄色の点滅信号が、県道のほうには赤色の点滅信号が作動している場合に、被告人車は道路交通法四二条の定めるところに従つて交差点の手前でまず徐行したうえ、「その状態においてもしすでに他の道路から交差点に入つている車両等(同法三五条一項)または左方の道路から同時に交差点に入ろうとしている車両(同条三項)があるときはその車両等を優先して進行させるべきであり」、一方A車は、赤色の点滅信号に従つて交差点の手前で一時停止したうえその状態で右のような措置をとるべきであつたことを判示し、このように「両者にそれぞれ一定の義務を課することによつて事故の発生を防止しようというのが道路交通法の趣旨」であると解するのである。つまり、原判決は、「この場合双方に対し徐行または一時停止の義務がそれぞれ課せられているのは、交差点内における車両通行が法の定める優先順位に従つて行なわれ衝突事故などの発生することのないようにするためなのであるから、その一方だけが義務を果たせば他方はこれを守らなくてもよいというようなものではない。」というのであつて、その説くところは、すべて肯定に値いし、いわゆる信頼の原則が、ことさら安易に適用されがちな傾向に対してその誤りを正しく指摘したものということができよう。

 この点につき、多数意見は、当時の国道上の交通状況如何にかかわらずA車は必ず一時停止のうえ安全を確認すべきであつたとの一事のみを強調し、A車が適法に運転されていさえすれば、被告人の徐行の有無に関係なく本件衝突発生のおそれは全くなかつたのであるから、被告人の徐行しなかつたことは、本件の具体的状況のもとでは、なんら事故に直結したものといえないとして、被告人の責任を否定するのであるが、私は、原判決とともに、本件における被告人の交差点直前における徐行義務は交差点内における円滑な運行の不可欠の前提をなすものと解し、この義務違反は交差点内における衝突事故と直結する性質のものであることにその存在理由の重さを認めざるをえないので、被告人の右不徐行は本件事故にとつて単に間接の関係にとどまるものとみるが如きは実体に即しない独断であるとさえ考える。すなわち、本件事故はA車の不停止と被告人車の不徐行との競合によつて発生したものと認識することによつてはじめて、本件の交差点進行の場合における両車の注意義務相互のあり方を正しく問うことができるのであり、また、この具体的状況のもとで競合する過失責任の配分においては、もとよりAの過失の重大さを強く責めなければならないが、被告人も徐行して交差点に臨んでいれば当然本件事故を十分に回避しえたものと判断した原判決に対し、これを誤りとすべき合理的な理由は全く存しない。この点に関連して多数意見は、被告人の不注意を軽視するの余り、原判示のような注意を被告人においてしなければならないとすれば、一時停止などを定めた道路交通法の趣旨は没却されることになるとまで極論するけれども、私は、道路交通上の注意義務違反の行為が、事実上必ずしも事故に結びつかないままに日常去来している事態のあることを否定できないとしても、そのゆえをもつて、例えばこの道路交通法四二条の規定する交差点における一時停止ないし徐行の義務の僻怠をたやすく是認したり、その不注意による事故の不回避を許容したりすべきものとは考えない。むしろ、これらの義務こそは、個々具体的な現在の危険を問うことなしに、正常な運転者の正常な判断に基く態度として現実に守られてきており、かつ、当然これをすべての運転者に求めるに足る社会生活上の規制であるといいうると思うのである。

 (四)本件は、偶々、晩秋の信濃路における夜明け前の交通閑散たる状況のもとで、被告人がかねて勝手知つた道筋であることに気をゆるして、右の徐行を怠つたものであることを容易に認めうるのであつて、それは被告人の経験上、千慮の一失であつたのかもしれないけれども、およそ自動車運転者としては、かかる交差点における出会い事故の防止を必要とする建て前から当然徐行の注意義務を守るべき場合であつたとしても、決して厳に失することはないのである。

 思うに、注意義務とは、結局のところ結果を回避する義務であり、究極的には条理に基づいて決定さるべきであるが、本件における被告人の結果回避義務違反の程度が相手方に比して格段に軽いとみて然るべきであるからといつて、これを全く解除して無に帰せしめてよいいわれはなく、かような一方的な判断は、情緒に偏して理論的でないといわなければならない。さらにいえば、他者を信頼して自己の注意義務を怠ることは、他者を信頼することに過失がありうることにも通じ、守るべき義務を怠る自己もその結果たる事故発生の原因に直接参加するものであることを否定してはならないのである。いうまでもなく、信頼の原則は、双方に責任がある場合における帰責の分配に関する一種の基準なのであるから、当初から一方の過失責任を全く認めえない場合には作用すべくもないが、学者の説く如く、未知の危険に対し危険発生の場合の責任の負担を誰に帰せしめるかの課題を解く尺度を「信頼の原則」に求めるのであるとすれば、この原則をもつて有か無かそのいずれかを選択するほかない基準であるとするよりは、事態の認識につながる危険の配分すなわち責任分配の程度の問題としてこれを評価し適用するところに、現実に適応した至当な解決があるというべきである。かくして私は、被告人につき業務上過失致死傷罪の成立することをやむをえないものと認めるがゆえに、原判決および第一審判決を刑訴法四一一条一号に該当するものとして破棄自判することに反対する。検察官木村喬行 公判出席

  昭和四八年五月二二日

     最高裁判所第三小法廷

商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和33年(オ)第1104号

昭和36年6月27日

審決取消請求事件

【判示事項】    1、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいわゆる指定商品の類似性の判定

2、連合商標の登録の要件

【判決要旨】    1、商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。

2、出願にかかる商標が原登録商標の連合商標として出願された場合であっても、それが登録を受けうるためには、他人の登録商標と類似していないことを必要とする。

【参照条文】    商標法(大正10年法律第99号)1

          商標法2-1

          商標法3

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集15巻6号1730頁

 

商標法

(商標登録を受けることができない商標)

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

二 パリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

三 国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)

イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

四 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第一条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項の特殊標章と同一又は類似の商標

五 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

十三 削除

十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十七 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 被上告人の請求を棄却する。

 訴訟費用は、各審級を通じ被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人指定代理人斎藤一夫、同矢渕久成名義、同杉林信義の上告理由第1点乃至第3点について。

 商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解するのが相当である。そして、指定商品が類似のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞がある認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商標は商標法(大正10年法律99号)2条9号にいう類似の商品の商品にあたると解するのが相当である。本件においては「橘正宗」なる商標中「正宗」は清酒を現わす慣用標章と解され、「橘焼酎」なる商標中「焼酎」は普通名詞であるから、右両商標は要部を共通にするものであるのみならず、原審の確定する事実によれば、同一メーカーで清酒と焼酎との製造免許を受けているものが多いというのであるから、いま「橘焼酎」なる商標を使用して焼酎を製造する営業主がある場合に、他方で「橘正宗」なる商標を使用して清酒を製造する営業主があるときは、これらの商品は、いずれも、「橘」じるしの商標を使用して酒類を製造する同一営業主から出たものと一般世人に誤認させる虞があることは明らかであって、「橘焼酎」なる商標が著名のものであるかどうかは右の判断に影響を及ぼうものではない。それ故、「橘焼酎」と「橘正宗」とは類似の商標と認むべきであるのみならず、右両商標の指定商品もまた類似の商品と認むべきである。

 そして、出願にかかる商標(「橘正宗」)が原登録商標(登録第89、094号「花橘正宗」)の連合商標として出願された場合であっても、原登録商標が登録された後に登録された原登録商標と類似しない第3者の登録商標(「橘焼酎」)に類似する場合には、その登録は商標法2条により拒絶さるべきものと解するを相当とするところ、上告人の有する「花橘正宗」なる登録商標と「橘焼酎」とは類似するものとは認められず、しかも「橘正宗」「橘焼酎」と類似するものであることは上叙のとおりであるから、上告人が「橘正宗」なる商標の登録出願を拒絶したことは正当であるといわねばならない。されば、論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実関係によれば、本件審決になんら違法はなく、その取消を求める被上告人の請求は失当として棄却さるべきものである。

 よって、民訴408条、96条、89条を適用し、全裁判官1致の意見で、主文のとおり判決する。よって、民訴4。8条、96条、89条を適用し、菱蟹豊婁姜の寿判決する。

     最高裁判所第3小法廷

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(本体:2,900円)

 

 

編著者名

 

官澤里美 著

 

発刊年月日          2023-12-27

判型       A5判/C3032

ページ数              232

 

 

 

商品概要

 

本書は、経験が浅く弁護士の仕事そのものに不安を感じている若手弁護士に対し、弁護士経験40年余の著者が自身の経験に基づいて、業務や事務所経営のコツ・心得をわかりやすく伝える。裁判手続のIT化やコロナ禍後のリモートワークの導入などの最近のトピックを追加した充実の第2版。

 

コメント

反対尋問の個所は、読んだほうがいい。

 

 

目次

 

第1 部 裁判関連の勘所

第1  裁判所を味方にする民事弁護の心がけ

第2  裁判所から好印象を得る書面作成のポイント

第3  センスが光る書証の提出

第4  法廷をホームグラウンド化する争点整理への対応

第5  依頼者を納得させる和解のテクニック

第6  裁判所に受ける尋問の準備とコツ

第7  反対尋問で勝訴~私の具体的実践例

第8  刑事情状弁護の勘所

第9  これで安心「刑事公判手続メモ」

 

第2 部 経営関連の勘所

第10 事務所の経営とファンの増やし方

第11  電話応対の勘所~良い対応は電話に始まる!

第12  来所者対応の勘所~このひととき、私はあなただけのもの!

第13  相談申込者の「ファン化」~微差力で勝負!

第14  受任時の勘所~『見通しは、厳しめぐらいがちょうどいい』

第15  事件継続中の勘所~『まめな連絡、トラブル防止!』

第16  終了時の勘所~『何事も、大切なのは 別れ方!』

第17 仕事・経営のために大切なこと

第18  共同事務所のメリットとその最大化~ 1 + 1 を3 にするために

第19  業務の効率化と時間の作り方~限られた時間を有効に使うために

第20 備えあれば憂いなし~各種リスク対策とIT 化対応

第21  弁護士という仕事を楽しんでいくために

 

商品の特色

 

○「弁護士という仕事の価値・意義を再認識し、業務に前向きに取り組み、より楽しめるようになってほしい」との想いを込めて、ベテラン弁護士が温かく寄り添い熱いエールを送る1冊

○「裁判関連」と「経営関連」との2部構成。若手弁護士がやりがちなミス、裁判をより有利に進めるためのポイント、依頼者とのコミュニケーション方法、業務の効率的な進め方等の「勘所」が満載

○著者がこれまでの経験を活かして作成し、実際に業務で使用している文書のサンプルを多数収録

第5 配偶者に対する自宅など居住不動産の贈与をした場合の特例(改正法903条)

1,改正前

特別受益とは、相続があった際に、生前に贈与した財産を相続財産に持ち戻して総財産と法定相続分を計算する制度です。

 

改正前は、妻Bが夫から生前贈与を受けた自宅持分が相続財産に持ち戻されます。

 

配偶者が居住建物を取得する場合には,他の財産を受け取れなくなってしまう。

配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになる。

 

贈与等を行ったとしても,原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため,

配偶者が最終的に取得する財産額は,結果的に贈与等がなかった場合と同じになる。

➡ 被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない。

このような規定(被相続人の意思の推定規定)を設けることにより,原則として遺産の先渡しを受けたものと取り扱う必要がなくなり,配偶者は,より多くの財産を取得することができる。

➡ 贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となる。

 

この遺された配偶者を保護するために、配偶者に対する居住用不動産について特例が設けられました。

 

2,改正によるメリット

婚姻期間20年以上の夫婦が、配偶者に居住の用に供する建物または敷地を遺贈または贈与(死因贈与を含む)したときは、特別受益の持戻し免除の意思が推定されます。

つまり、要件を満たした生前贈与は相続財産に持ち戻す必要がなくなるのです。

原則として,遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。

 

3,配偶者に対する居住不動産の贈与等についての持ち戻し免除推定規定の施行時期

今回の相続法の改正は、改正前に行われた生前贈与等については適用されないため、2019年7月1日改正後に相続が開始された場合でも、改正前にされた生前贈与については適用がありません。生前贈与は本人の意思を尊重する制度です。そのため、贈与は2019年7月1日以降に行われたもののみが対象となるのです。

 

そのため、法改正があったとしても、改正以前に行われた生前贈与については、適用がないので、注意が必要です。これは先ほど挙げたルールでいうと、本人の意思の尊重ということを重視するルールです。

 

(夫婦間における居住用不動産の遺贈または贈与に関する経過措置)

附則第4条

新民法第903条第4項の規定は、施行日前にされた遺贈または贈与については、適用しない。

 

登記権利者の関与なくしてなされた不動産所有権取得登記の効力

 

 

              家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和38年(オ)第1180号

【判決日付】      昭和41年1月13日

【判示事項】      登記権利者の関与なくしてなされた不動産所有権取得登記の効力

【判決要旨】      不動産の贈与を予定し、受贈者たるべき者の関与なくして右不動産について同人名義の所有権取得登記手続がなされた場合でも、後日右不動産の贈与が行われたときは、受贈者は、右不動産所有権の取得をもつて第三者に対抗することができる。

【参照条文】      民法177

             不動産登記法26

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集20巻1号1頁

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

不動産登記法

(仮登記の申請方法)

第百七条 仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、第六十条の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。

2 仮登記の登記権利者及び登記義務者が共同して仮登記を申請する場合については、第二十二条本文の規定は、適用しない。

 

(仮登記に基づく本登記)

第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

 

本件土地建物の売買につき、当初締結された第一契約書には売買代金を一億七〇〇〇万円とする旨記載されているが、買主が代替土地建物の取得契約の手付金流しをしてまで解約していることなどからすれば、第一契約は白紙撤回されたものと認められ、納税者としてはその後に締結された第二契約書に記載された九〇〇〇万円で本件土地建物を売却することに応じたものと解すべきであるとされた事例


    所得税の更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分等取消請求控訴事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/平成6年(行コ)第92号
【判決日付】    平成8年5月13日
【判示事項】    (1) 本件土地建物の売買につき、当初締結された第一契約書には売買代金を一億七〇〇〇万円とする旨記載されているが、買主が代替土地建物の取得契約の手付金流しをしてまで解約していることなどからすれば、第一契約は白紙撤回されたものと認められ、納税者としてはその後に締結された第二契約書に記載された九〇〇〇万円で本件土地建物を売却することに応じたものと解すべきであるとされた事例
          (2) 本件土地建物の売買に係る取引は、通常の売買と異なり、売却代金の支払に代えて代替物件を同額で譲渡するという実質上の交換取引であり、収入が金銭以外の物等である場合は、所得時における当該物件の当時の取引価額でその額を評価するのが適切であるから、本件土地建物の譲渡代金は、契約書に記載された九〇〇〇万円ではなく納税者が実質上交換取得した代替物件の価額と納税者の税金の補填のため買主から給付された金員の合計額一億六四九〇万円であるとされた事例
          (3) 本件土地建物の売買価額は、当初締結された第一契約書記載の一億七〇〇〇万円であるにもかかわらず、売買価額を九〇〇〇万円とする第二契約書を作成して所得金額を過少に申告したことは仮装・隠ぺいに当たるとの課税庁の主張が、第一契約は白紙撤回されたものであり、納税者は本件土地建物の売買代金を、代替物件の納税者なりの評価額である九〇〇〇万円と認識していたと認められるから、税金分として現金で取得した部分を除き、事実の仮装・隠ぺいをしたことには該当しないとして重加算税賦課決定処分の一部が取り消された事例
          (4) 本件土地建物の譲渡につき、納税者は契約書記載金額の外に買主から納税者に課される税金の補填のために給付された金員を取得し、当該金員を契約書記載金額に加算して申告すべきであったにもかかわらず、当該金員をことさらに売買契約書に記載せず隠ぺいしたことが明らであり(納税者の人柄にかんがみると、故意に隠ぺいし脱税を試みたとまでは認められないが、この部分については相応の行為責任を負うべきである。)その部分については重加算税を課すことが相当であるとされた事例
          (5) 重加算税と過少申告加算税の関係
          (6) 本件重加算税賦課決定処分の対象とされた八〇〇〇万円の脱漏所得のうち五二五〇万円については仮装・隠ぺいの事実は認められないが、当該部分については過少申告加算税を賦課する限度においてはなお効力を有するとして、当該部分に係る重加算税賦課決定処分のうち過少申告加算税額部分については適法であるとされた事例
【判決要旨】    (1)~(4) 省略
          (5) 重加算税賦課処分は、過少申告加算税の賦課処分をも包含する関係にあるので、重加算税賦課処分がその要件を欠き効力を有しない場合でも、過少申告加算税賦課の要件が存在する場合には、その限度において、なお処分の効力を有するものと解すべきである。
          (6) 省略
【掲載誌】     税務訴訟資料216号355頁

       主   文

 1 原判決を次のとおり変更する。
 2 被控訴人が平成二年一二月二八日付けでした控訴人の平成元年分の所得税に係る更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
   控訴人が平成二年六月二九日付けで被控訴人に対してした平成元年度所得税の修正申告の「申告し又は処分の通知を受けた額」中、分離短期譲渡所得を一億二三五五万円に、課税される所得金額を一億二二三五万三〇〇〇円に、税額、申告納税額及び第三期分の税額をそれぞれ六二七二万九一〇〇円に更正する。
 3 被控訴人が平成二年七月三一日付けでした控訴人の平成元年分の所得税に係る重加算税賦課決定処分(ただし、平成四年九月二二日付けの国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)は、八一九万二〇〇〇円を超える金額の部分を取り消す。
 4 控訴人のその余の請求を棄却する。
 5 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを五分し、その四を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

       事実及び理由

第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴の趣旨
  1 原判決を取り消す。
  2 被控訴人が平成二年一二月二八日付けでした控訴人の平成元年分の所得税に係る更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
  3 被控訴人が平成二年七月三一日付けでした控訴人の平成元年分の所得税に係る重加算税賦課決定処分(ただし、平成四年九月二二日付けの国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
  4 訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。
 二 控訴の趣旨に対する答弁
  1 本件控訴を棄却する。
  2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
   次のとおり訂正するほかは、原判決事実及び理由「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
   原判決三枚目表三行目から九行目までを次のとおり改める。
  「4 控訴人と株式会社星和ドムス(以下「星和ドムス」という。)は、平成元年一月一三日、控訴人が星和ドムスに対し本件物件を売買代金九〇〇〇万円で売り渡す旨の同日付けの契約書を作成するとともに、星和ドムスが別紙物件目録三記載の土地(以下「代替土地」という。)上に同目録記載の建物(以下「代替建物」といい、代替土地と併せて「代替物件」という。)を建築した上、控訴人に対し、代替物件を売り渡し、かつ、二七五〇万円を支払う旨の合意をした。」
 

香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」

 

 

執行判決請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成6年(オ)第1838号

【判決日付】      平成10年4月28日

【判示事項】      一 香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」

             二 併合請求の裁判籍が存在することを根拠に香港の裁判所に民訴法一一八条一号所定の「外国裁判所の裁判権」が認められた事例

             三 司法共助に関する条約に定められた方法によらないと送達と民訴法一一八条二号所定の「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」

             四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達と民訴法一一八条二号

             五 弁護士費用を含む訴訟費用全額の負担を命ずる裁判と民訴法一一八条三号所定の「公の秩序」

             六 中国に返還される前の香港と我が国との間における民訴法一一八条四号所定の「相互の保証」の有無

【判決要旨】      一 香港高等法院がした訴訟費用負担命令並びにこれと一体を成す費用査定書及び費用証明書は、民事執行法24条所定の「外国裁判所の判決」に当たる。

             二 甲及び甲が代表者を務める乙会社とAとの間の起訴契約に基づき、Aが丙に対して香港の裁判所に保証債務の履行を求める第1訴訟を提起したところ、丙が、第1訴訟が認容された場合に備えて、甲に対して根抵当権の代位行使ができることの確認を求める第2訴訟を、甲及び乙会社に対して求償請求が請求できることの確認を求める第3訴訟を提起し、第1訴訟及び第2訴訟については香港に国際裁判管轄が存在するなど判示の事実関係の下においては、第3訴訟については、民訴法7条の規定の趣旨に照らし、第2訴訟との間の併合請求の裁判籍が香港に存在することを肯認して、香港の裁判所のした判決を我が国で承認することが、当事者の公平、裁判の適正・迅速の理念に合致し、条理にかなうものである。

             三 裁判上の文書の送達につき、判決国と我が国との間に司法共助に関する条約が締結されていて、訴訟手続の開始に必要な文書の送達が右条約に定める方法によるべきものとされている場合には、右条約に定められた方法を遵守しない送達は、民訴法118条2号所定の要件を満たさない。

             四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達は、民訴法118条2号所定の要件を満たさない。

             五 弁護士費用を含む訴訟費用全額をいずれか一方の当事者に負担させる裁判は、実際に生じた費用の範囲内でその負担を命ずるものである限り、民訴法118条3号所定の「公の秩序」に反するものではない。

             六 中国に返還される前の香港と我が国との間には、金銭の支払を命じた判決に関し、民訴法118条4号所定の「相互の保証」がある。

【参照条文】      民事執行法22

             民事執行法24

             民事訴訟法118

             民事訴訟法7

             民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約

             日本国とグレード・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集52巻3号853頁

             裁判所時報1218号112頁

             判例タイムズ973号95頁

             判例時報1639号19頁

 

民事訴訟法

(外国裁判所の確定判決の効力)

第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。

三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。

四 相互の保証があること。