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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

弁護士・弁護士事件・所得税法56条の適用要件と課税単位

 

 

              所得税更正処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成16年(行ツ)第23号

【判決日付】      平成16年11月2日

【判示事項】      1 親族が居住者と別に事業を営む場合における所得税法56条の適用の有無

             2 親族が居住者と別に事業を営む場合に所得税法56条を適用してされた課税処分と憲法14条1項

【判決要旨】      1 所得税法56条は,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても,その居住者の営む事業に従事したことなどの同条所定の要件が満たされる限り,適用される。

             2 配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合にその居住者の事業所得等の金額の計算に所得税法56条を適用してされた課税処分は,憲法14条1項に違反しない。

【参照条文】      所得税法56

             憲法14-1

             所得税法57

【掲載誌】        訟務月報51巻10号2615頁

             最高裁判所裁判集民事215号517頁

             裁判所時報1375号488頁

             判例タイムズ1173号183頁

             判例時報1883号43頁

             税務訴訟資料254号順号9804

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      ジュリスト1314号165頁

             別冊ジュリスト178号54頁

             別冊ジュリスト253号64頁

             税務弘報53巻11号137頁

             判例時報1903号188頁

             民商法雑誌133巻2号354頁

             税76巻5号181頁

 

事案の概要

 1 いずれも弁護士であるXとその配偶者Aは,同居し生計を同じくしているが,別々に業務を行い,経理処理も別にしている。Xは,その営む弁護士業にAが従事したとし,その労務の対価として支払った報酬を自己の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して所得税の申告をした。Yは,XとAとの間の報酬支払については所得税法56条が適用され,その金額はXの事業所得の計算上必要経費に算入されないとして各更正及び各過少申告加算税賦課決定(本件各処分)をした。本件は,その取消しが求められている事案である(右の点を除けば,Xの事業所得の金額には争いがない。)。原審及び第1審は本件各処分は適法であるとして,請求を棄却すべきものとした。

 Xは,上告して,生計を一にする夫婦がそれぞれ独立して事業を営む場合にも所得税法56条の規定を適用し,必要経費としての控除を認めないとすると,同法57条の適用がされる場合,すなわち,青色申告の承認を受けた居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む事業に従事する者が給与の支払を受けた場合等との対比において不合理な差別となり,憲法14条1項に違反する旨の上告理由を主張した。

 

所得税法

第五目 親族が事業から受ける対価

(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

第五十六条 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)

第五十七条 青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

2 その年分以後の各年分の所得税につき前項の規定の適用を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同項の事業を開始した場合には、その事業を開始した日から二月以内)に、青色事業専従者の氏名、その職務の内容及び給与の金額並びにその給与の支給期その他財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

3 居住者(第一項に規定する居住者を除く。)と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「事業専従者」という。)がある場合には、その居住者のその年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、各事業専従者につき、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を必要経費とみなす。

一 次に掲げる事業専従者の区分に応じそれぞれ次に定める金額

イ その居住者の配偶者である事業専従者 八十六万円

ロ イに掲げる者以外の事業専従者 五十万円

二 その年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額(この項の規定を適用しないで計算した場合の金額とする。)を当該事業に係る事業専従者の数に一を加えた数で除して計算した金額

4 前項の規定の適用があつた場合には、各事業専従者につき同項の規定により必要経費とみなされた金額は、当該各事業専従者の当該年分の各種所得の金額の計算については、当該各事業専従者の給与所得に係る収入金額とみなす。

5 第三項の規定は、確定申告書に同項の規定の適用を受ける旨及び同項の規定により必要経費とみなされる金額に関する事項の記載がない場合には、適用しない。

6 税務署長は、確定申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出がなかつたこと又はその記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第三項の規定を適用することができる。

7 第一項又は第三項の場合において、これらの規定に規定する親族の年齢が十五歳未満であるかどうかの判定は、その年十二月三十一日(これらの規定に規定する居住者がその年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時)の現況による。ただし、当該親族がその当時既に死亡している場合は、当該死亡の時の現況による。

8 青色事業専従者又は事業専従者の要件の細目、第二項の書類に記載した事項を変更する場合の手続その他第一項又は第三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 1 上告人及び上告代理人森貴子,同服部訓子の上告理由第1について

 所得税法56条は,事業を営む居住者と密接な関係にある者がその事業に関して対価の支払を受ける場合にこれを居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費にそのまま算入することを認めると,納税者間における税負担の不均衡をもたらすおそれがあるなどのため,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む事業所得等を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には,その対価に相当する金額は,その居住者の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入しないものとした上で,これに伴い,その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は,その居住者の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入することとするなどの措置を定めている。

 同法56条の上記の趣旨及びその文言に照らせば,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても,そのことを理由に同条の適用を否定することはできず,同条の要件を満たす限りその適用があるというべきである。

 同法56条の上記の立法目的は正当であり,同条が上記のとおり要件を定めているのは,適用の対象を明確にし,簡便な税務処理を可能にするためであって,上記の立法目的との関連で不合理であるとはいえない。このことに,同条が前記の必要経費算入等の措置を定めていることを併せて考えれば,同条の合理性を否定することはできないものというべきである。他方,同法57条1項は,青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む前記の事業に従事するものが当該事業から給与の支払を受けた場合には,所定の要件を満たすときに限り,政令の定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものの限度で,その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入するなどの措置を規定し,同条3項は,上記以外の居住者に関しても,同人と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその事業に従事するものがいる場合について一定の金額の必要経費への算入を認めている。これは,同法56条が上記のとおり定めていることを前提に,個人で事業を営む者と法人組織で事業を営む者との間で税負担が不均衡とならないようにすることなどを考慮して設けられた規定である。同法57条の上記の趣旨及び内容に照らせば,同法が57条の定める場合に限って56条の例外を認めていることについては,それが著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。

 以上によれば,本件各処分は,同法56条の適用を誤ったものではなく,憲法14条1項に違反するものではない。このことは,当裁判所の判例(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁)の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 2 同第2について

 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,論旨は,理由の不備・食違いをいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,上記各項に規定する事由に該当しない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

登記所を支払場所とする代金債務につき、期間を定めて履行の催告があつた場合と弁済の提供方法

 

 

              建物収去土地明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和30年(オ)第344号

【判決日付】      昭和32年6月27日

【判示事項】      登記所を支払場所とする代金債務につき、期間を定めて履行の催告があつた場合と弁済の提供方法

【判決要旨】      登記所を支払場所とする代金債務につき、期間を定めた履行の催告があつた場合において、債務者が催告期間の末日に代金を携帯して登記所に出頭した以上は適法な弁済提供があつたものと解すべく、その提供に先だち予めその日時を債権者に通知することを必要としない。

【参照条文】      民法493

             民法541

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集11巻6号1154頁

 

民法

(弁済の提供の方法)

第四百九十三条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

 

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

 

2024年の目標

 

今年は、税法に強くなるべく、

『重要租税判決の実務研究 第四版』 2023/12/25

品川 芳宣 (著)

を一周したいと思います。

 

アメーバ・ブロオグの構成は、

○○法の改正

業法、920冊ある「○○法に関する裁判例」

民事・・行政・刑事事件

不動産法

税法

の各判例1つづつを掲載します。

 

 

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第8 自筆証書遺言の保管

1,改正前

従来の相続法によると「自筆証書遺言」は自ら保管しなければならないため、災害や不注意により滅失・紛失したり、隠匿や改ざんされる恐れもありましたが、今回の改正相続法により、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことで、そのようなリスクを回避することが可能になりました。

 

また、法務局で保管している遺言については、偽造、変造等のリスクがないため、家庭裁判所での遺言検認の手続きが不要になりました。

 

この保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続が不要になることも大きなメリットです。

 

検認手続とは、遺言の内容等を相続人に知らせ、家庭裁判所で遺言書等の形状を確認して偽造、変造などを防止するために行われるものですが、保管制度を利用した場合は、この検認手続を省略することができます。

 

検認手続では、申立書と必要書類を合わせて家庭裁判所に提出しなければならないなど、煩雑な作業が必要で、また、手続きには数ヶ月の期間がかかります。

 

自筆証書遺言の保管制度について、利用の有無を比較すると次のとおりになります。

 

2,制度の概要

法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

自筆証書遺言を作成した方は,法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができます。

遺言者の死亡後に,相続人や受遺者らは,全国にある遺言書保管所において,遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求),遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ,また,遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。

 

遺言書

法務局(遺言書保管所)

法務局の事務官(遺言書保管官)

原本保管 画像データ化

本人確認

遺言書の方式の適合性

(署名、押印、日付の有無等)を外形的に確認等

死亡後、通知

相続人

遺言書の写し

検認不要

※遺言書保管所に保管されている遺言書については,家庭裁判所の検認が不要となります。

※遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると,遺言書保管官は,他の相続人等に対し,遺言書を保管している旨を通知します。

 

保管申請は遺言者自らが行わなければなりません

保管申請は、遺言者自らが「遺言保管所=法務大臣が指定した法務局」に自筆証書遺言を持ち込み、申請しなければなりません。遺言者自身が作成した遺言書に間違いないか確認するため、本人確認もその場で行われます。

 

なお、遺言者の気が変わったとき、内容を変更したいときなど、一定の手続きを経ればいつでも遺言書の返還を求めることができます。

 

遺言書はデータ管理されるため、いつでも閲覧請求できる

遺言保管所では、遺言書原本が災害などによって滅失するリスクに備えて、データ化して保管されるので、遺言者は、いつでも遺言書情報の閲覧を請求することができます。

 

なお、閲覧の請求には遺言者自身が出頭する必要があり、その場で本人確認が行われます。

 

関係相続人等から情報開示請求ができる

遺言書の保管申請を行った遺言者が死亡した後、その相続人等は遺言書に関する情報がまとめられた「遺言書情報証明書」の交付請求を行うことができます。

 

遺言の有無、内容を秘匿しておきたい遺言者の気持ちに配慮され、関係相続人からの交付請求は、遺言者の死亡後でないとできないことになっています。

 

交付請求ができる関係相続人とは、主に以下のとおりです。

①遺言者の相続人

②遺言に受遺者として記載された者またはその相続人

③遺言で遺言執行者として指定された者

 

3,施行日

作成した自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる自筆洋書遺言書保管制度も2020年7月10日より施行されました。

 

 

地方新聞社がその代表取締役の権限濫用によって損害を被ったことを理由として同新聞社から財務に関する調査などを受任していた公認会計士および会計監査を受任していた監査法人に対して求めた損害賠償請求を認容することができないとされた事例

東京地方裁判所判決/平成15年(ワ)第14086号

平成19年5月23日

損害賠償請求事件

【判示事項】    地方新聞社がその代表取締役の権限濫用によって損害を被ったことを理由として同新聞社から財務に関する調査などを受任していた公認会計士および会計監査を受任していた監査法人に対して求めた損害賠償請求を認容することができないとされた事例

【判決要旨】    地方新聞社が、その代表取締役の権限濫用によって同新聞社とは関係のない自らが経営して個人保証もしていた別会社の債務を同新聞社の完全子会社を介在させるなどして実質的に同新聞社に引き受けさせられて損害を被ったことを理由として、同新聞社から財務に関する調査などを受任していた公認会計士および会計監査を受任していた監査法人に対して求めた損害賠償請求は、同代表取締役を逮捕、起訴の危機から救おうとしその所有する同新聞社の株式の高額の売却を意図するなどした事実は認められず、公認会計士としての法令上または倫理上の問題もなく、同新聞社には、その代表取締役の不正行為につき見て見ぬ振りをしていた取締役、監査役がいたのに、そのすべての取締役、監査役が公認会計士にその事実の存在を明らかにせず、会計帳簿、現金・預金の動きを見ても解明できないことをよいことに、契約書その他の文書も秘匿していたというような判示の事実関係の下においては、公認会計士がその不正を暴くことは通常は期待できないものというべきであるから、公認会計士が関与を開始するまでの間、何らの対応措置もとらずに、これを放置して、同新聞社に生ずる損害を拡大させるなどした取締役、監査役に対する損害賠償請求をしないまま、公認会計士に対してのみ損害賠償請求訴訟を提起するのは本末転倒であって、公認会計士および監査法人には、同新聞社の主張するような債務不履行ないし不法行為の事実があるとはいい難く、仮にその事実があったとしても、本件における損害賠償請求は信義誠実の原則に違反するものとして、これを認容することができない。

【参照条文】    民法1-2

          民法415

          民法644

          会社法423

【掲載誌】     金融・商事判例1275号48頁

          判例時報1985号79頁

 

事案の概要

 本件は、地方新聞社からその財務に関する調査などを受任していた公認会計士およびその会計監査を受任していた監査法人の損害賠償責任をめぐって争われた事案であるが、同社の代表取締役の権限濫用が顕著であると同時に、そのような権限濫用を長年にわたって、本判決の言葉を借りれば、「見て見ぬ振り」をして放置ないし容認してきた同社の取締役および監査役の職務怠慢もまた顕著な事案であって、公認会計士および監査法人の責任を否定した本判決の判断それ自体には、そのような特殊な事案における事例的な意義を認め得るにとどまる。

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(受任者の注意義務)

第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

 

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

 

登記権利者単独で抹消登記の申請をなし得る場合

 

 

              登記官吏の処分に対する異議申立却下の決定取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和33年(オ)第358号

【判決日付】      昭和35年7月14日

【判示事項】      登記権利者単独で抹消登記の申請をなし得る場合

【判決要旨】      甲所有の不動産につき仮処分権利者乙のためになされた譲渡その他一切の処分禁止の記入登記に次いで、丙に対する所有権移転がなされた後、甲乙間に成立した調停調書に基き乙が右不動産につき所有権移転登記を申請するについては、右申請と同時に丙のための所有権移転登記の抹消を申請する場合にかぎり、乙単独で右抹消の申請をすることができる。

【参照条文】      不動産登記法26

             不動産登記法27

             不動産登記法146

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集14巻9号1755頁

 

不動産登記法

(共同申請)

第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

 

(判決による登記等)

第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。

2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

 

(仮登記に基づく本登記の順位)

第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

 

弁護士・税理士事件

 

 

所得税更正請求上告及び上告受理申立事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成17年(行ツ)第164号、平成17年(行ヒ)第176号

【判決日付】      平成17年7月5日

【判示事項】      上告人の上告理由が民事訴訟法312条1項または2項(上告の理由)所定の場合にあたらず、申立人の上告受理申立ての理由は民事訴訟法318条(上告受理の申立て)に規定する事件にあたないとして、上告人の上告が棄却され、上告受理申立てが上告審として受理されなかった事例

【判決要旨】      省略

【掲載誌】        税務訴訟資料255号順号10071

 

 上記当事者間の東京高等裁判所平成16年(行コ)第364号所得税更正請求事件について、同裁判所が平成17年2月23日に言い渡した判決に対し、上告人兼申立人から上告及び上告受理の申立てがあった。よって、当裁判所は、次のとおり決定する。

       主   文

 本件上告を棄却する。
 本件を上告審として受理しない。
 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

       理   由

  1 上告について
    民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、理由の不備をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
  2 上告受理申立てについて
    本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
    よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 平成17年7月5日
    最高裁判所第三小法廷

 

 

不当利得返還請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成15年(行コ)第209号

【判決日付】      平成16年6月9日

【判示事項】      弁護士が税理士である妻に支払った税理士報酬は、所得税法五六条により、同弁護士の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとされた事例

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合」とは、親族が、事業自体に何らかの形で従たる立場で参加する場合、事業者に雇用されて従業員としてあくまでも従属的な立場で労務又は役務の提供を行う場合及びこれらに準ずるような場合のみを指すものと解することができず、親族が、独立の事業者として、その事業の一環として納税者たる事業者との取引に基づき役務を提供して対価の支払を受ける場合も、上記要件に該当するものというべきである。上記事業の形態がいかなるものか、事業から対価の支払を受ける親族がその事業に従属的に従事しているか否か、対価の支払はどのような事由によりされたか、対価の額が妥当なものであるか否かなどといった個別の事情によって、同条の適用が左右されるものとは解されない。

             (3) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも親族が同一の家屋に起居している場合に限られるものではないが、上記場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これに該当するものと解される。

             (4) 省略

             (5) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の立法目的は、累進税率を採用する所得税制のもとで、同条が規定するような生計を一にする親族間で支払われる対価に相当する金額については、支払を受けた者ではなく、支払をした者の所得に対応する累進税率によって所得税を課税すべき担税力を認めたものと理解される。その立法目的は、上記累進税率を適用することにより、憲法30条(納税の義務)、84条(課税の要件)が要請する租税の公平な分担を実現するというものと解されるから、正当なものと認められる。また、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)が、適用対象を生計を一にする親族間の対価に限定していることからすれば、親族間で家計の一環として所得税の負担を調整することも可能であるから、前記のように一律に必要経費に算入せず、支払をした者に課税することをもって、上記立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかとはいえない。租税法の定立については立法府の裁量的判断を尊重せざるを得ないことからすれば、所得税法56条の規定は、何らかの限定解釈をするまでもなく、憲法14条1項(平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界)の規定に違反するものということはできない。また、このように、所得税法56条の規定は、それ自体極めて明確な規定であるから、課税要件を明確に定めるべき要請に反する点もない。

             (6) 省略

【参照条文】      所得税法56

             地方税法72の50-1

             憲法14-1

【掲載誌】        東京高等裁判所判決時報民事55巻8頁

             判例時報1891号18頁

             税務訴訟資料254号順号9665

【評釈論文】      税務事例36巻9号1頁

 

所得税法

(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

第五十六条 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

 

第7 自筆証書遺言の方式の緩和

1,遺言の活用

遺言とは,自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について,自己の最終意思を明らかにするものです。遺言がある場合には,原則として,遺言者の意思に従った遺産の分配がされます。

また,遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが,遺言の中で,日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いておけば(遺贈といいます),相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。

このように,遺言は,被相続人の最終意思を実現するものですが,これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。また,家族の在り方が多様化する中で,遺言が果たす役割はますます重要になってきています。

我が国においては,遺言の作成率が諸外国に比べて低いといわれていますが,今回の改正により,自筆証書遺言の方式を緩和し,また,法務局における保管制度を設けるなどしており,自筆証書遺言を使いやすくしています。

遺言には,下記図のとおり公正証書遺言もありますが,作成される方のニーズに応じて使い分けていただければと思います。

 

遺言の方式には,主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

○ 自筆証書遺言

自筆証書遺言は,軽易な方式の遺言であり,自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく,いつでも自らの意思に従って作成することができ,手軽かつ自由度の高い制度です。今回の立法により,財産目録については自書しなくてもよくなり,また,法務局における保管制度も創設され,自筆証書遺言が更に利用しやすくなります。

○ 公正証書遺言

公正証書遺言は,法律専門家である公証人の関与の下で,2人以上の証人が立ち会うなど厳格な方式に従って作成され,公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度です。また,遺言者は,遺言の内容について公証人の助言を受けながら,最善の遺言を作成することができます。また,遺言能力の確認なども行われます。

 

遺言書

① 遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができる。

② 遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することができる。

事例

 

2,従来の自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言は、自分でいつでも作成できるため最も作成しやすい遺言と言えますが、従来の相続法では「全文の自署」が要件とされていました。

 

しかし、遺言作成する人が高齢の場合や病床に臥している場合は、たくさん文字を書く行為に大変な労力がかかるため、この要件が自筆証書遺言作成の大きなハードルとなっていました。

 

また、字がうまく書けておらず文字が判別ができないなど、遺言書の効力についてトラブルの原因となることも少なくありませんでした。

 

このような問題を改善するため、改正法では作成方式を緩和し、一部自署する必要がなくなりました。

 

3,自筆証書遺言の方式の緩和(一部自署によらなくてもOKに)

改正相続法では「全文の自署」の要件が緩和され、「相続財産の全部または一部の目録」を添付する場合には、その目録については自署によらなくてよいことを認めました。

 

改正相続法での方式をまとめると以下のとおりです。

 

遺言書本文⇒自署が必要

財産目録⇒自署しなくてOK

財産目録(遺産の明細)について、具体的に以下の方法が認められることになりました。

①パソコンで遺産の明細書を作成

②不動産の登記事項証明書を添付

③預貯金の通帳口座のコピーを添付

ただし、これらの財産目録の各頁には、遺言者が署名押印をする必要があります。

 

このような方式の緩和により、自書しなければならない部分が減り、文字をたくさん書く労力が軽減しました。

 

4,施行日

自筆証書遺言の方式緩和は、2019年1月13日より施行されています。

パソコンで作成した財産目録、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーなどを代用して作成した財産目録を活用するなど方式緩和された遺言の作成は、2019年1月13日以降に作成された遺言のみが対象となり、1月13日以前に作成された遺言は対象となりません。これも本人の意思尊重規定だからですね。

 

 

高等専門学校の山岳部春山合宿の雪崩遭難死亡事故につき引率指導教師の過失が認められた事例

最高裁判所第2小法廷判決/平成元年(オ)第1199号

平成2年3月23日

損害賠償請求事件

【判示事項】  高等専門学校の山岳部春山合宿の雪崩遭難死亡事故につき引率指導教師の過失が認められた事例

【判決要旨】  原判示の事実関係(原判決引用の第1審判決参照)の下においては、高等専門学校山岳部春山合宿の引率指導教師は、同合宿に参加した学生の雪崩遭難死亡事故につき、山小屋に滞留せず下山を強行した点において、同合宿の実施により生じる危険から保護すべき注意義務を怠った過失がある。

【参照条文】  国家賠償法1-1

【掲載誌】   最高裁判所裁判集民事159号261頁

        判例タイムズ725号57頁

        金融・商事判例848号27頁

        判例時報1345号73頁

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

行政法の読んだ本

 

 今日における行政法の重要性は言うまでもないでしょう。司法試験の必須科目でもあります。

 

 行政法は苦手科目だったので、以下の文献を読みました。

 これによって、行政法の新司法試験の過去問を7割解けるようになりました。

塩野宏『行政法Ⅰ~Ⅲ』有斐閣・2012年~2015年

宇賀克也『行政法概説Ⅰ~Ⅲ』、『地方自治法』有斐閣

安達敏男・吉川樹士・須田啓介・安重洋介『国家賠償法実務ハンドブック』日本加除出版・2019年

土田伸也『実戦演習行政法』弘文堂・2018年

大橋洋一・斎藤誠・山本隆司編『行政法判例集Ⅰ 総論・組織法 (第2版)』有斐閣・2019年

大橋洋一・斎藤誠・山本隆司編『行政法判例集Ⅱ救済法』有斐閣・2018年

宇賀克也・交告尚史・山本隆司編『行政法判例百選Ⅰ、Ⅱ』有斐閣・2017年

芝池義一・太田直史・山下竜一・北村和生編『判例行政法入門(第6版)』有斐閣・2017年

土田伸也『基礎演習行政法』日本評論社・2017年

定塚誠編『行政関係訴訟の実務』商事法務・2015年

曽和俊文・野呂充・北村和生編著『事例研究行政法(第3版)』日本評論社・2017年

北村和生・深澤龍一郎・飯島淳子・磯部哲『事例から考える行政法』有斐閣・2016年

大貫裕之・土田伸也『行政法(第2版)事案解析の作法』日本評論社・2016年

橋本博之『行政法解釈の基礎―「仕組み」から解く』日本評論社・2015年

『論文全過去問集2司法試験公法系 行政法(第2版)』辰巳法律研究所・2015年

『行政法の争点』有斐閣・2014年

原田大樹『演習行政法』東京大学出版会・2014年

原田大樹『例解行政法』東京大学出版会・2013年

高木光・高橋滋・人見剛『行政法事例演習教材(第2版)』有斐閣・2012年

吉野夏己『紛争類型別行政救済法(第3版)』成文堂・2012年

中川丈久・高橋滋・石井忠雄・鶴岡稔彦編著『公法系訴訟の実務(第2版)』弘

西川知一郎編著『行政関係訴訟』青林書院・2009年

東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編『行政法の知識と実務』ぎょうせい・2009年

岩村正彦編『社会保障法判例百選(第5版)』有斐閣・2016年

磯部力・小幡順子・斎藤誠編『地方自治体判例百選(第4版)』有斐閣・2013年