弁護士・税理士事件 所得税更正請求上告及び上告受理申立事件 最高裁判所 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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弁護士・税理士事件

 

 

所得税更正請求上告及び上告受理申立事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成17年(行ツ)第164号、平成17年(行ヒ)第176号

【判決日付】      平成17年7月5日

【判示事項】      上告人の上告理由が民事訴訟法312条1項または2項(上告の理由)所定の場合にあたらず、申立人の上告受理申立ての理由は民事訴訟法318条(上告受理の申立て)に規定する事件にあたないとして、上告人の上告が棄却され、上告受理申立てが上告審として受理されなかった事例

【判決要旨】      省略

【掲載誌】        税務訴訟資料255号順号10071

 

 上記当事者間の東京高等裁判所平成16年(行コ)第364号所得税更正請求事件について、同裁判所が平成17年2月23日に言い渡した判決に対し、上告人兼申立人から上告及び上告受理の申立てがあった。よって、当裁判所は、次のとおり決定する。

       主   文

 本件上告を棄却する。
 本件を上告審として受理しない。
 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

       理   由

  1 上告について
    民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、理由の不備をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
  2 上告受理申立てについて
    本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
    よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 平成17年7月5日
    最高裁判所第三小法廷

 

 

不当利得返還請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成15年(行コ)第209号

【判決日付】      平成16年6月9日

【判示事項】      弁護士が税理士である妻に支払った税理士報酬は、所得税法五六条により、同弁護士の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとされた事例

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合」とは、親族が、事業自体に何らかの形で従たる立場で参加する場合、事業者に雇用されて従業員としてあくまでも従属的な立場で労務又は役務の提供を行う場合及びこれらに準ずるような場合のみを指すものと解することができず、親族が、独立の事業者として、その事業の一環として納税者たる事業者との取引に基づき役務を提供して対価の支払を受ける場合も、上記要件に該当するものというべきである。上記事業の形態がいかなるものか、事業から対価の支払を受ける親族がその事業に従属的に従事しているか否か、対価の支払はどのような事由によりされたか、対価の額が妥当なものであるか否かなどといった個別の事情によって、同条の適用が左右されるものとは解されない。

             (3) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも親族が同一の家屋に起居している場合に限られるものではないが、上記場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これに該当するものと解される。

             (4) 省略

             (5) 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の立法目的は、累進税率を採用する所得税制のもとで、同条が規定するような生計を一にする親族間で支払われる対価に相当する金額については、支払を受けた者ではなく、支払をした者の所得に対応する累進税率によって所得税を課税すべき担税力を認めたものと理解される。その立法目的は、上記累進税率を適用することにより、憲法30条(納税の義務)、84条(課税の要件)が要請する租税の公平な分担を実現するというものと解されるから、正当なものと認められる。また、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)が、適用対象を生計を一にする親族間の対価に限定していることからすれば、親族間で家計の一環として所得税の負担を調整することも可能であるから、前記のように一律に必要経費に算入せず、支払をした者に課税することをもって、上記立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかとはいえない。租税法の定立については立法府の裁量的判断を尊重せざるを得ないことからすれば、所得税法56条の規定は、何らかの限定解釈をするまでもなく、憲法14条1項(平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界)の規定に違反するものということはできない。また、このように、所得税法56条の規定は、それ自体極めて明確な規定であるから、課税要件を明確に定めるべき要請に反する点もない。

             (6) 省略

【参照条文】      所得税法56

             地方税法72の50-1

             憲法14-1

【掲載誌】        東京高等裁判所判決時報民事55巻8頁

             判例時報1891号18頁

             税務訴訟資料254号順号9665

【評釈論文】      税務事例36巻9号1頁

 

所得税法

(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

第五十六条 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。