香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」 執 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」

 

 

執行判決請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成6年(オ)第1838号

【判決日付】      平成10年4月28日

【判示事項】      一 香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」

             二 併合請求の裁判籍が存在することを根拠に香港の裁判所に民訴法一一八条一号所定の「外国裁判所の裁判権」が認められた事例

             三 司法共助に関する条約に定められた方法によらないと送達と民訴法一一八条二号所定の「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」

             四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達と民訴法一一八条二号

             五 弁護士費用を含む訴訟費用全額の負担を命ずる裁判と民訴法一一八条三号所定の「公の秩序」

             六 中国に返還される前の香港と我が国との間における民訴法一一八条四号所定の「相互の保証」の有無

【判決要旨】      一 香港高等法院がした訴訟費用負担命令並びにこれと一体を成す費用査定書及び費用証明書は、民事執行法24条所定の「外国裁判所の判決」に当たる。

             二 甲及び甲が代表者を務める乙会社とAとの間の起訴契約に基づき、Aが丙に対して香港の裁判所に保証債務の履行を求める第1訴訟を提起したところ、丙が、第1訴訟が認容された場合に備えて、甲に対して根抵当権の代位行使ができることの確認を求める第2訴訟を、甲及び乙会社に対して求償請求が請求できることの確認を求める第3訴訟を提起し、第1訴訟及び第2訴訟については香港に国際裁判管轄が存在するなど判示の事実関係の下においては、第3訴訟については、民訴法7条の規定の趣旨に照らし、第2訴訟との間の併合請求の裁判籍が香港に存在することを肯認して、香港の裁判所のした判決を我が国で承認することが、当事者の公平、裁判の適正・迅速の理念に合致し、条理にかなうものである。

             三 裁判上の文書の送達につき、判決国と我が国との間に司法共助に関する条約が締結されていて、訴訟手続の開始に必要な文書の送達が右条約に定める方法によるべきものとされている場合には、右条約に定められた方法を遵守しない送達は、民訴法118条2号所定の要件を満たさない。

             四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達は、民訴法118条2号所定の要件を満たさない。

             五 弁護士費用を含む訴訟費用全額をいずれか一方の当事者に負担させる裁判は、実際に生じた費用の範囲内でその負担を命ずるものである限り、民訴法118条3号所定の「公の秩序」に反するものではない。

             六 中国に返還される前の香港と我が国との間には、金銭の支払を命じた判決に関し、民訴法118条4号所定の「相互の保証」がある。

【参照条文】      民事執行法22

             民事執行法24

             民事訴訟法118

             民事訴訟法7

             民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約

             日本国とグレード・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集52巻3号853頁

             裁判所時報1218号112頁

             判例タイムズ973号95頁

             判例時報1639号19頁

 

民事訴訟法

(外国裁判所の確定判決の効力)

第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。

三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。

四 相互の保証があること。