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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

イプフェイス事件・万人共有の財産である文字・記号の表出に不可欠な書体は、その限度で排他的権利の対象とすることは許されず、本来的に実用的機能を期待された創作の結果であるタイプフェイスは、1品製作的な著作権法上の美術の範囲には属さないとして、その著作物性を否定した原審の判断を維持した事例

 

          著作権及び著作者人格権侵害差止等請求控訴事件

第章      東京高等裁判所判決/昭和54年(ネ)第590号

昭和58年4月26日

【判示事項】    万人共有の財産である文字・記号の表出に不可欠な書体は、その限度で排他的権利の対象とすることは許されず、本来的に実用的機能を期待された創作の結果であるタイプフェイスは、1品製作的な著作権法上の美術の範囲には属さないとして、その著作物性を否定した原審の判断を維持した事例

【参照条文】    著作権法2-1

          著作権法2-2

          著作権法4-3

          著作権法10-1

          著作権法25

          著作権法45

          著作権法112

          著作権法113

          著作権法114

【掲載誌】     無体財産権関係民事・行政裁判例集15巻1号340頁

          東京高等裁判所判決時報民事34巻4~6号57頁

          判例タイムズ495号238頁

          判例時報1074号25頁

 

著作権法

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。

七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。

九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。

イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。

九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。

イ 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。

ロ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。

ハ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。

九の八 放送同時配信等事業者 人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。

十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。

十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。

十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。

イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。

ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。

十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。

十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。

十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者等の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十二 権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。

イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報

ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報

ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報

二十三 著作権等管理事業者 著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。

二十四 国内 この法律の施行地をいう。

二十五 国外 この法律の施行地外の地域をいう。

2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。

3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。

4 この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。

 

固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合におけるその登録された価格の決定の適否


固定資産評価審査決定取消等請求事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/平成24年(行ヒ)第79号
【判決日付】    平成25年7月12日
【判示事項】    1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合におけるその登録された価格の決定の適否
          2 固定資産評価基準に従って決定される基準年度に係る賦課期日における土地の価格とその適正な時価との関係
【判決要旨】    1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合には、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録された価格の決定は違法となる。
          2 評価対象の土地に適用される固定資産評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における当該土地の価格がその評価方法に従って決定された価格を上回るものでない場合には、その登録された価格は、その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認される。
          (2につき補足意見がある)
【参照条文】    地方税法341
          地方税法349-1
          地方税法388-1
          地方税法403-1
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集67巻6号1255頁

地方税法
(固定資産税に関する用語の意義)
第三百四十一条 固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。
二 土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。
三 家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。
四 償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。
五 価格 適正な時価をいう。
六 基準年度 昭和三十一年度及び昭和三十三年度並びに昭和三十三年度から起算して三年度又は三の倍数の年度を経過したごとの年度をいう。
七 第二年度 基準年度の翌年度をいう。
八 第三年度 第二年度の翌年度(昭和三十三年度を除く。)をいう。
九 固定資産課税台帳 土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する。
十 土地課税台帳 登記簿に登記されている土地について第三百八十一条第一項に規定する事項を登録した帳簿をいう。
十一 土地補充課税台帳 登記簿に登記されていない土地でこの法律の規定によつて固定資産税を課することができるものについて第三百八十一条第二項に規定する事項を登録した帳簿をいう。
十二 家屋課税台帳 登記簿に登記されている家屋(建物の区分所有等に関する法律第二条第三項の専有部分の属する家屋(同法第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物を含む。以下「区分所有に係る家屋」という。)の専有部分が登記簿に登記されている場合においては、当該区分所有に係る家屋とする。以下固定資産税について同様とする。)について第三百八十一条第三項に規定する事項を登録した帳簿をいう。
十三 家屋補充課税台帳 登記簿に登記されている家屋以外の家屋でこの法律の規定によつて固定資産税を課することができるものについて第三百八十一条第四項に規定する事項を登録した帳簿をいう。
十四 償却資産課税台帳 償却資産について第三百八十一条第五項に規定する事項を登録した帳簿をいう。

(土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準)
第三百四十九条 基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(以下「基準年度の土地又は家屋」という。)に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(以下「基準年度の価格」という。)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(以下「土地課税台帳等」という。)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(以下「家屋課税台帳等」という。)に登録されたものとする。
2 基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。ただし、基準年度の土地又は家屋について第二年度の固定資産税の賦課期日において次の各号に掲げる事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
一 地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情
二 市町村の廃置分合又は境界変更
3 基準年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格(第二年度において前項ただし書に掲げる事情があつたため、同項ただし書の規定によつて当該土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準とされた価格がある場合においては、当該価格とする。以下本項において同じ。)で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。ただし、基準年度の土地又は家屋について第三年度の固定資産税の賦課期日において前項各号に掲げる事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
4 第二年度において新たに固定資産税を課することとなる土地又は家屋(以下「第二年度の土地又は家屋」という。)に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
5 第二年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る第二年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。ただし、第二年度の土地又は家屋について、第三年度の固定資産税の賦課期日において第二項各号に掲げる事情があるため、第二年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。
6 第三年度において新たに固定資産税を課することとなる土地又は家屋(以下「第三年度の土地又は家屋」という。)に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする。

(固定資産税に係る総務大臣の任務)
第三百八十八条 総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。この場合において、固定資産評価基準には、その細目に関する事項について道府県知事が定めなければならない旨を定めることができる。
2 総務大臣は、前項の固定資産評価基準を定めようとするときは、地方財政審議会の意見を聴かなければならない。
3 総務大臣は、地籍図、土地使用図、土壌分類図、家屋見取図、固定資産売買記録簿その他固定資産の評価に関する資料及び固定資産税の統計を作成するための標準様式を定めて、これを市町村長に示さなければならない。
4 総務大臣は、固定資産の評価に関して市町村長に対し、左の各号に掲げる技術的援助を与えなければならない。
一 市町村の固定資産評価員が固定資産を評価するために必要な評価の手引その他の資料を作成すること。
二 市町村の固定資産評価員が評価をすることが著しく困難である固定資産の評価について市町村長から助言を求められた場合において助言を与えること。

(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)
第四百三条 市町村長は、第三百八十九条又は第七百四十三条の規定によつて道府県知事又は総務大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、固定資産の価格を決定しなければならない。
2 固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員は、総務大臣及び道府県知事の助言によつて、且つ、納税者とともにする実地調査、納税者に対する質問、納税者の申告書の調査等のあらゆる方法によつて、公正な評価をするように努めなければならない。


 

第4 配偶者居住権の保護

1,改正の背景

配偶者の終の住み家を守る「配偶者居住権」の新設

日本人の遺産の典型例として、「自宅不動産の価値が遺産の半分以上を占める」というケースは多く、これが遺産分割を難しくしていることが多く、また、残された相続人同士の仲が悪い場合、残された配偶者が、自宅を失ってしまうこともあります。

 

そこで、夫に先立たれた妻(逆の場合もあり)が、住む場所や生活のためのお金に困ることなく、老後を過ごすための画期的な権利として創設されたのが、「配偶者居住権」です。

 

改正の目玉とも言えるのがこの「配偶者相続人の保護」に関する新制度です。

 

従来の相続法では、夫名義の不動産に長年住んでいた妻が、遺産分割協議等で不動産を取得できなければ、居住の権利が保護されない可能性があり、以前から問題視されていました。

 

このような問題を改善するため改正相続法では、配偶者居住権の保護についての方策が盛り込まれることになりました。

 

2,配偶者居住権

【配偶者居住権】により終身の間、居住が可能

この新しく認められた権利は、配偶者相続人が、亡くなった夫(妻)名義の居住建物の所有権を相続しない場合でも、配偶者居住権を取得すれば、終身の間その居住建物に住み続けられるという権利です。

 

この配偶者居住権は、遺産分割協議、遺贈、審判などで認められる必要がありますが、不動産に関する権利として登記することもできます。

 

例えば、亡くなった夫名義の居住建物の所有権は長男が取得し、残された妻に配偶者居住権を認めれば、残された妻は生涯無償で居住することができます。

 

3,配偶者短期居住権

配偶者短期居住権】により、一定期間居住が認められる

配偶者短期居住権とは、配偶者の死亡から遺産分割協議の成立まで短期的な居住権を認めるものです。

 

先述した生涯無償で居住できる「配偶者居住権」が仮に認められない場合でも、この「配偶者短期居住権」により、一定期間は居住している建物に無償で住むことができます。その一定期間とは、「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」または「相続開始時から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日となっています。

 

これにより、少なくとも相続開始時から6ヶ月間は配偶者相続人の居住権が保護されることになりました。

 

4,施行日

2020年4月1日以降に開始した相続につき適用されます。遺言・死因贈与契約によって定めた配偶者居住権についても、その作成・契約日が2020年4月1日以降であることが必要です。

 

登記の欠缺を主張するにつきいわゆる背信的悪意者とはいえないとされた事例

 

 

不動産取得登記抹消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和37年(オ)第904号

【判決日付】      昭和40年12月21日

【判示事項】      1、登記の欠缺を主張するにつきいわゆる背信的悪意者とはいえないとされた事例

             2、不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けた後に第三者がこれを二重に譲り受けて先に所有権移転登記をした場合と民法第520条の規定の適用関係

             3、民法第705条の適用がないとされた事例

【判決要旨】      1、甲が地主丙から賃借中の土地上に所有する家屋を乙に贈与し、右事実を前提として、甲もみずから責任を持つ旨口添をして乙丙間に該土地の賃貸借契約が締結され、爾来その関係が9年余にわたつて継続してきた等判示のような事実があつたとしても、丙が右家屋を甲から買い受けてその旨の移転登記を経由するまでの経緯について判示の事情があるときは、丙は右家屋について乙の所有権取得登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者にあたらないような背信的悪意者とはいえない。

             2、不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記をしたため、前の譲受人である賃借人において右不動産の取得を後の譲受人である第三者に対抗できなくなつたような場合には、いつたん混同によつて消滅した右賃借権は、右第三者の所有権取得によつて、同人に対する関係では消滅しなかつたことになると解するのが相当である。

             3、居住家屋の賃料の支払義務のない者が、該家屋の所有者から賃料支払の催告を受けたため、これを支払うべき筋合はないが賃料不払等とこじつけて家屋明渡訴訟を提起された場合の防禦方法として支払う旨とくに留保の表示をしたうえ、請求額を支払つた等判示事実関係のように、債務の不存在を知つて弁済をしたことも無理からぬような客観的事情がある場合には、民法第705条の適用はないものと解すべきである。

【参照条文】      民法177

             民法520

             民法601

             民法705

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集19巻9号2221頁

 

 

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

第五款 混同

第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

 

(賃貸借)

第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

 

(債務の不存在を知ってした弁済)

第七百五条 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。

 

 

 要旨一について。

要旨中にいう移転登記を経由するまでの経緯というのは、判示に詳細述べられているが、これを要約すると、「その間に、右家屋の贈与契約に付随して乙から甲に支払うべく約してあつた右家屋の移転登記費用を乙が提供しないため右登記がなされず、乙の地代の一部滞納によって甲が責を負って代払したようなこともあって、甲は乙にはもはや約束の費用提供の意思がないと判断し、また移転登記未了の間は所有権も移転しないと思っていたので、右家屋の所有を継続して乙のために迷惑を受けるよりむしろ他に売却するにしかずと考えた結果、それらのことを丙に告げてその買取方を求め、甲の言を信じた丙は甲に同情して右家屋を買い受けてその移転登記を経由した」等というものである。

 民法177条の第三者は、一般には善意・悪意を問わないとするのが判例通説であるが、いわゆる背信的悪意者(害意者)は例外的に右第三者から除かれるべきものとするのが近時の多数説の見解である。

 大審院時代にもそのような見解から、第三者にあたらないとされた判例があるが(大判昭9・3・6民集13巻230頁、同昭10・3・30法学4巻1448頁、同昭11・1・14民集15巻89頁)、本判決が引用する最判昭31・4・24第3小法廷(民集10巻417頁)は、前提としてこの見解を採ることを極めて明瞭に判示し、不登法4条、5条その他これに類するような登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由のあるときは、第三者にあたらないとしながら、ただ同事件の事案はそのような場合でないから、第三者にあたるとする(小林裁判官は反対意見において第三者にあたらないとする。)。本判決も、この判例と同じく、多数説の見解を是認しながら、当該具体的事案は背信的悪意者とまではいえないとしているのである。

最高裁には、背信的悪意者にあたることを認めた事例もある(最判昭32・6・11第3小法廷、最高裁裁判集民事26号859頁)。

下級審には、多数説の見解に従う裁判例がかなり多く現われていることは周知のことで、そのうちには、前記背信的悪意者にあたるとして昭和32年の最判で支持された原審にあたる福岡高判昭29・8・6下民集5巻8号1264頁もある。

 本件の事案からは、贈与の事実は知っていたが所有権移転の事実は知らなかったことになるから、厳密な意未では悪意者といえないとも考えられるが、とにかく微妙なケースであり、この種の問題につき重要な参考事例となるであろう。

 要旨二について。

本件は、甲から乙への贈与があってから9年余も経て甲から丙への二重譲渡(売買)が行われたので、一見要旨のような結論が奇異に感ぜられるかも知れないが、2箇の譲渡の間が極めて短期間である場合と法理的には区別はないわけである。

ただ、本件事案で丙に対する関係では乙の家屋賃借権が消滅しなかつたことになるとしても、乙丙間の敷地の賃貸借関係はどうなるのか問題がないわけではないが、判示はこのことに触れていない。

同旨の判例は見当らないが、学説として、於保「債権総論」390頁は同旨を説く。

 要旨三について。

学説・判例の大体一致した見解を踏襲するものである(大判大6・12・11民録23輯2075頁、最判昭35・5・6第2小法廷、民集14巻1127頁事など)。

 

 

雇傭契約締結の準備段階における信義則上の義務に違背したことを理由とする損害賠償請求が認められた事例


    損害賠償請求控訴事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/昭和59年(ネ)第584号
【判決日付】    昭和61年10月14日
【判示事項】    雇傭契約締結の準備段階における信義則上の義務に違背したことを理由とする損害賠償請求が認められた事例
【判決要旨】    甲を乙会社の幹部社員として採用する雇傭契約締結の折衝中において、乙代表者が、交渉当初と異なり甲に不信感を抱くに至っていたにもかかわらず、乙代表者の言動を誤解した甲が乙に確実に入社し得るとの誤った認識に基づいて勤務先に辞表を提出した経緯を知りながら、甲の雇傭問題に関する乙の現在の方針について的確な情報を提供し、甲に再検討の契機を与えなかったなど判示の事情のもとにおいては、乙は、甲が勤務先を退職したことにより被った損害を賠償すべき責任がある。
【参照条文】    民法1-2
          民法44
          民法623
          民法709
【掲載誌】     金融・商事判例767号21頁
【評釈論文】    別冊ジュリスト134号18頁

民法
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転の有無

 

最高裁判所第3小法廷判決/平成22年(受)第1238号、平成22年(オ)第1187号

平成23年3月22日

過払金返還等請求,民訴法260条2項の申立て事件

【判示事項】    貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転の有無

【判決要旨】    貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において、上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは、上記合意の内容いかんにより、それが営業譲渡の性質を有するときであっても、借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転すると解することはできない。

【参照条文】    民法91

          民法703

          民法第3編第1章第4節(債務引受)

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事236号225頁

          裁判所時報1528号67頁

          判例タイムズ1350号172頁

          金融・商事判例1374号14頁

          判例時報2118号34頁

          金融法務事情1927号136頁

 

民法

(任意規定と異なる意思表示)

第九十一条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

 

       主   文

 

 1 原判決中,「219万5139円及びうち52万5611円に対する平成14年5月18日から,うち166万9528円に対する平成21年2月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員」を超える金員の支払請求に関する部分を破棄する。

 2 前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

 3 上告人のその余の上告を却下する。

 4 前項の部分に関する上告費用は,上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人の上告受理申立て理由第2について

 1 本件は,被上告人が,貸金業者であるA株式会社及び同社からその資産を譲り受けたB株式会社等を吸収合併しその権利義務を承継した上告人(以下,上告人及び合併に係る会社をその前後を問わず,単に「上告人」という。)との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。

 2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

 (1) 被上告人は,平成元年3月8日,Aとの間で,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。

 (2) Aは,平成14年1月29日,上告人との間で,同年2月28日午後1時を契約の実行(クロージング)の日時(以下「クロージング日」という。)として,Aの消費者ローン事業に係る貸金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括して上告人に売却する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。

 本件譲渡契約は,第1.3条において,上告人は,譲渡対象資産に含まれる契約に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日以降に発生し,かつ,クロージング日以降に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を,第1.4条(a)において,上告人は,第9.6条(b)に反しないで,譲渡対象資産に含まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のAの義務又は債務(支払利息の返還請求権を含む。)を承継しない旨を定め,第9.6条(b)においては,「買主は,超過利息の支払の返還請求のうち,クロージング日以後初めて書面により買主に対して,または買主および売主に対して主張されたものについては,自らの単独の絶対的な裁量により,自ら費用および経費を負担して,これを防禦,解決または履行する。買主は,かかる請求に関して売主からの補償または負担を請求しない。」と定める。

 (3) 被上告人は,平成14年3月6日から同年5月17日まで,上告人に対し,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る借入金の弁済を行った。

 (4) 被上告人は,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務(以下「本件債務」という。)は上告人に承継されると主張して,被上告人と上告人との間の別個の金銭消費貸借取引により生じた過払金と併せ,その返還等を求めている。

 3 原審は,上記事実関係の下で,本件債務の承継の有無につき,次のとおり判断し,被上告人の請求を認容すべきものとした。

 (1) 本件譲渡契約の第9.6条(b)は,借主とAとの間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務のうち,クロージング日後に初めて書面により上告人に対して履行を請求されたものについては,上告人においてこれを重畳的に引き受ける趣旨の定めである。本件債務は,クロージング日後に初めて書面により上告人に対して履行を請求されたものであるから,上記の条項により,その責任において解決すべきものとして,上告人がこれを重畳的に引き受け,承継したといえる。

 (2) 仮にそうでないとしても,本件譲渡契約は,借主とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転をその内容とするのであり,被上告人がこれを黙示的に承諾したことにより,上告人がAの上記地位を包括的に承継するという法的効果が生じたといえる。上告人において,その承継する義務の範囲を争うことは許されない。

 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 前記事実関係によれば,本件譲渡契約は,第1.3条及び第1.4条(a)において,上告人は本件債務を承継しない旨を明確に定めるのであって,これらの条項と対照すれば,本件譲渡契約の第9.6条(b)が,上告人において第3者弁済をする場合における求償関係を定めるものであることは明らかであり,これが置かれていることをもって,上告人が本件債務を重畳的に引き受け,これを承継したと解することはできない。

 そして,貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転すると解することはできないところ,上記のとおり,本件譲渡契約は,上告人が本件債務を承継しない旨を明確に定めるのであって,これが,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転を内容とするものと解する余地もない。

 5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,原審における不服申立ての範囲である219万5139円及びうち52万5611円に対する平成14年5月18日から,うち166万9528円に対する平成21年2月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記破棄部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。

 なお,上告人は,不服申立ての範囲を原審におけるものより拡張し,これを219万5139円及びこれに対する平成21年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分とする旨の「上告受理申立書」を当審に提出したが,当審において不服申立ての範囲を拡張することは許されないから,拡張部分に関する上告は却下すべきである。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

原告Xが公益通報を行ったことが,内容虚偽であることを知りながら殊更通報に及んだものとは直ちに認めがたく,内部通報にとどまること等から,就業規則の懲戒解雇事由に該当するとはいえないとされた例

 

東京地方裁判所判決/平成24年(ワ)第12908号、平成25年(ワ)第32537号

平成27年1月23日

日本ボクシングコミッション事件

地位確認等本訴請求事件、損害賠償等反訴請求事件

【判示事項】    1 被告Y法人の就業規則が懲戒処分として最も重い懲戒解雇事由に定める職務怠慢や素行不良,無許可の物品持出しや使用者に対する加害行為について,懲戒の事由があるというためには,積極的な懈怠や情状の悪いことが顕著であることを要するとされた例

2 原告Xが公益通報を行ったことが,内容虚偽であることを知りながら殊更通報に及んだものとは直ちに認めがたく,内部通報にとどまること等から,就業規則の懲戒解雇事由に該当するとはいえないとされた例

3 懲戒解雇は懲戒処分のうち最も過酷な処分であることにも照らすと,その処分を行うに当たっては,特段の支障がない限り,事前に弁解の機会を与えることが必要というべきであり,かかる支障も認められないのに,事前の弁解の機会を経ないまま懲戒解雇を行うことは懲戒手続きにおける手続的正義に反するものとして社会的相当性を欠き,懲戒権の濫用となるとされた例

4 Xらが別団体を設立しようとしたこと等は,全体として就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとは認められないとされた例

5 Y法人は,第2次解雇の解雇事由には特段掲げていなかった,第1次解雇の解雇事由を第2次解雇で顧慮することができると主張したが,これを顧慮することはできないとされた例

6 単に訴訟手続きで関連主張が被解雇者であるXから示されたというだけでは,事前の弁解を経ることのできなかった特段の支障としては不十分であるとされた例

7 賞与に関するY法人の賃金規定14条は,支給条件を具体的に規定するものではないこと等から,Xの賞与請求は肯認できないとされた例

8 Xらが別団体の設立の検討作業を業務時間にしていたことについて問題があるという余地はあるが,その頻度はおよそ債務不履行を構成するとまではいいがたく,かつ,これによる損害の発生を認めるべき証拠もないとされた例

9 Y法人による損害賠償の反訴請求がいずれも否定された例

【掲載誌】     労働判例1117号50頁


公益通報者保護法
(定義)
第二条 この法律において「公益通報」とは、次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、当該各号に定める事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)(以下「役務提供先」という。)又は当該役務提供先の事業に従事する場合におけるその役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令(法律及び法律に基づく命令をいう。以下同じ。)の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)をいう。以下同じ。)、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者(以下「役務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号及び第六条第二号において「行政機関等」という。)又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該役務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号及び第六条第三号において同じ。)に通報することをいう。
一 労働者(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者をいう。以下同じ。)又は労働者であった者 当該労働者又は労働者であった者を自ら使用し、又は当該通報の日前一年以内に自ら使用していた事業者(次号に定める事業者を除く。)
二 派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。第四条において「労働者派遣法」という。)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)又は派遣労働者であった者 当該派遣労働者又は派遣労働者であった者に係る労働者派遣(同条第一号に規定する労働者派遣をいう。第四条及び第五条第二項において同じ。)の役務の提供を受け、又は当該通報の日前一年以内に受けていた事業者
三 前二号に定める事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行い、又は行っていた場合において、当該事業に従事し、又は当該通報の日前一年以内に従事していた労働者若しくは労働者であった者又は派遣労働者若しくは派遣労働者であった者 当該他の事業者
四 役員 次に掲げる事業者
イ 当該役員に職務を行わせる事業者
ロ イに掲げる事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該役員が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者
2 この法律において「公益通報者」とは、公益通報をした者をいう。
3 この法律において「通報対象事実」とは、次の各号のいずれかの事実をいう。
一 この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。以下この項において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実又はこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実
二 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)
4 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。
一 内閣府、宮内庁、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項に規定する機関、デジタル庁、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関、法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
二 地方公共団体の機関(議会を除く。)
第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等
(解雇の無効)
第三条 労働者である公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る。第九条において同じ。)が行った解雇は、無効とする。
一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該役務提供先等に対する公益通報
二 通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合又は通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し、かつ、次に掲げる事項を記載した書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。次号ホにおいて同じ。)を提出する場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関等に対する公益通報
イ 公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所
ロ 当該通報対象事実の内容
ハ 当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由
ニ 当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由
三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ハ 第一号に定める公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合
ニ 役務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
ホ 書面により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
ヘ 個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。以下このヘにおいて同じ。)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。第六条第二号ロ及び第三号ロにおいて同じ。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例

 

 

各所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成17年(行ヒ)第96号

【判決日付】      平成18年11月16日

【判示事項】      納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例

【判決要旨】      納税者が勤務先の日本法人の親会社である米国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として所得税の申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例

【参照条文】      国税通則法65-1

             国税通則法65-4

             所得税法28-1

             所得税法34-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事222号243頁


 1 事案の概要
 本件は,米国法人インテル・コーポレーションから,日本の子会社であるインテル株式会社の取締役Xに付与されたストックオプションの権利行使益に関し,平成11年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定(本件賦課決定)の適否が争われた事件である。原審は,この権利行使益が給与所得に当たるとし,Xがこれを一時所得として申告し給与所得としては申告しなかったことについて,国税通則法(以下「通則法」という。)65条4項の「正当な理由」があるとはいえないとして,更正及び過少申告加算税賦課決定を適法としていた。
 2 本判決の判示の意義
 外国親会社から日本の子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が給与所得に当たると解されることは,最三小判平17.1.25民集59巻1号64頁,判タ1174号147頁で決着したが,権利行使益の過少申告に係る過少申告加算税賦課決定の適否,すなわち,当該過少申告につき通則法65条4項の「正当な理由」が認められるかどうかという論点が残されていた。
 この論点について,第三小法廷は,「正当な理由」を認め,過少申告加算税賦課決定を取り消すベきものとした(最三小判平18.10.24民集60巻8号登載予定,判タ1227号111頁)。
 本判決も,課税庁の従来の取扱いとそれが変更され,通達に明記されるまでの経緯等を考慮して,同様に,「正当な理由」を認めた。すなわち,①上記のストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,法令上特別の定めが置かれていないところ,課税庁は,かつて上記権利行使益を一時所得として取り扱い,課税庁の職員が監修等をした公刊物でもその旨の見解が述べられていたこと,②課税庁においては,平成10年分の所得税の確定申告の時期以降,上記の課税上の取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったが,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によつて初めて変更後の取扱いを通達に明記したこと,③上記ストックオプションの権利行使益の所得区分に関する所得税法の解釈問題については,一時所得とする見解にも相応の論拠があったことなどの事情の下では,Xがその権利行使益を一時所得として申告し,同権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて,通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとしたものである。
 本判決も,前掲最三小判平18.10.24と概ね同様の理由によって「正当な理由」に関する事例判断を示したものであり,両者は問題の所在及び基本的な理論を同じくするのである。
 

国税通則法

(過少申告加算税)

第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第九項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(申告納税方式による国税等の納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

2 前項の規定に該当する場合(第六項の規定の適用がある場合を除く。)において、前項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

3 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、第五項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)

二 期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書又は第九項の規定の適用がある場合には、期限後申告書を含む。第五項第二号において同じ。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について、次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし、所得税、法人税、地方法人税、相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)

イ 所得税法第九十五条(外国税額控除)若しくは第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額、第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第四号(確定所得申告)(同法第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額、同法第百二十条第二項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第二条(所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額

ロ 法人税法第二条第三十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第六十八条(所得税額の控除)(同法第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する場合を含む。)、第六十九条(外国税額の控除)若しくは第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第九十条(退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の法人税の額)

ハ 地方法人税法第二条第十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第十二条(外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第二十条第二項(中間申告による納付)の規定により納付すべき地方法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の地方法人税の額)

ニ 相続税法第二十条の二(在外財産に対する相続税額の控除)、第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除)、第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る相続税額)の規定による控除をされるべき金額

ホ 消費税法第二条第一項第二十号(定義)に規定する中間納付額

4 第一項の規定に該当する場合において、当該納税者が、帳簿(財務省令で定めるものに限るものとし、その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。以下この項及び次条第五項において同じ。)に記載し、又は記録すべき事項に関しその修正申告書の提出又は更正(以下この項において「修正申告等」という。)があつた時前に、国税庁、国税局又は税務署の当該職員(以下この項及び同条第五項において「当該職員」という。)から当該帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき(当該納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)は、第一項の過少申告加算税の額は、同項及び第二項の規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、第一項に規定する納付すべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で当該修正申告等の基因となる当該帳簿に記載し、又は記録すべき事項に係るもの以外のもの(以下この項において「帳簿に記載すべき事項等に係るもの以外の事実」という。)があるときは、当該帳簿に記載すべき事項等に係るもの以外の事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に百分の十の割合(第二号に掲げる場合に該当するときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

一 当該職員に当該帳簿の提示若しくは提出をしなかつた場合又は当該職員にその提示若しくは提出がされた当該帳簿に記載し、若しくは記録すべき事項のうち、納税申告書の作成の基礎となる重要なものとして財務省令で定める事項(次号及び次条第五項において「特定事項」という。)の記載若しくは記録が著しく不十分である場合として財務省令で定める場合

二 当該職員にその提示又は提出がされた当該帳簿に記載し、又は記録すべき事項のうち、特定事項の記載又は記録が不十分である場合として財務省令で定める場合(前号に掲げる場合を除く。)

5 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。

一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額

二 第一項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について期限内申告書の提出により納付すべき税額を減少させる更正その他これに類するものとして政令で定める更正(更正の請求に基づく更正を除く。)があつた場合 当該期限内申告書に係る税額(還付金の額に相当する税額を含む。)に達するまでの税額

6 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項第二号及び第八項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。

 

所得税法

(給与所得)

第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。

3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)

二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額

三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額

四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合 百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額

五 前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合 百九十五万円

4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。

 

(一時所得)

第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。

3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

 

第3 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の取扱い(民法906条の2関係)

第906条の2(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)

1 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、全員の同意により、処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

2  前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人または数人により同項の財産が処分されたときは、当該処分した共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

 共同相続人のうちの一部の者が勝手に現金・預金などの財産を処分をした場合のいわゆる「使途不明金」問題は、これで対応できる場合もあるでしょう。

 

第3章 相続法の平成30年改正

第1 はじめに

2018 年(平成30年)7 月に,相続法制の見直しを内容とする「民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」と,法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。同年7月13日公布。

民法には,人が死亡した場合に,その人(被相続人)の財産がどのように承継されるかなどに関する基本的なルールが定められており,この部分は「相続法」などと呼ばれています。

この相続法については,1980 年(昭和55年)に改正されて以来,大きな見直しがされてきませんでした。

一方,この間,我が国における平均寿命は延び,社会の高齢化が進展するなどの社会経済の変化が生じており,今回の改正では,このような変化に対応するために,相続法に関するルールを大きく見直しています。

超高齢社会といわれる現在の社会状況に対応するため、相続法が約40年ぶりに大きく見直されました。

改正相続法の多くは令和元年7月1日から施行されています。

 

相続法の改正といっても、新しく制度が創設されたり、これまでの取扱いが見直されるなど、様々な形で改正は行われています。

 

 

第2 相続法改正の概要

まずは、改正された相続法の全体像を知ってもらうため、改正された分野と改正のポイントを説明いたします。

 

改正された6つの分野とは

今回の相続法の見直しでは、配偶者居住権の新設をはじめ、自筆証書遺言の方式緩和など、多岐にわたる改正項目が盛り込まれています。

 

注目すべき改正ポイントはどのようなものなのか、まずは全体像を確認しましょう。

 

【改正された6つの分野】

注目すべき改正ポイント

具体的には,

被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から,

①配偶者の居住権を保護するための方策

・配偶者居住権の新設

〈ポイント〉

この権利の創設により、居住建物について柔軟な遺産分割を行えるようになりました。また、配偶者相続人がこの権利を取得することで、生涯無償で居住建物に住むことができるので、老後も安心して暮らすことができます。

・配偶者短期居住権の新設

〈ポイント〉

この権利により、配偶者相続人は相続開始から少なくとも6ヶ月間は無償で居住建物に住むことができ、その間、居住権が保護されます。

 

②遺産分割等に関する見直し

・特別受益の持戻し免除の意思表示の推定

〈ポイント〉

この規定により、長年連れ添った夫婦間で、居住用不動産の生前贈与等を行っても、相続発生後に持戻し計算がされないため、居住用建物を確保しやすくなりました。

・預貯金の仮払い制度の創設

〈ポイント〉

相続発生により預金口座が凍結され、葬儀費用や介護費用の支払いに困ってしまうケースがありましたが、改正法により、遺産分割協議の成立前でも家庭裁判所の関与なく、一定額の預金引き出しができるようになりました。

 

遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する観点から,

③遺言制度に関する見直し

・自筆証書遺言の方式の緩和

〈ポイント〉

改正法により、全文自署の要件が緩和され、遺言内容の一部をパソコン等で作成できるようになりました。これにより、字が上手く書けなかったり、多くの文字を書くことに大変な労力がかかる高齢者などでも、遺言書が作成しやくすくなりました。

・自筆証書遺言の保管制度の創設

〈ポイント〉

改正前は、自ら遺言書の保管をしなければならなかったので、焼失、盗難、紛失、変造等の様々なリスクがありましが、本制度により、法務局で保管してもらえるようになったので、そのようなリスクを回避できるようになりました。

 

④遺留分制度の見直し

・遺留分減殺請求の効力の見直し

〈ポイント〉

改正前は、遺留分減殺請求は現物返還が原則だったため、相続した不動産や株式などが共有状態となり、円滑な承継の障害になっていましたが、改正法により、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することが原則とされたため、そのような問題が生じる可能性が少なくなりました。

・遺留分の算定方法の見直し

〈ポイント〉

相続トラブルの争点になりやすかった遺留分の算定について、算定基準が明確になり、遺留分侵害額の予測がしやすくなりました。また、基準が明確になることで、生前贈与などが計画的に行えるようになります。

 

⑤相続の効力等に関する見直し

・権利取得の対抗要件の見直

〈ポイント〉

法定相続分を超える部分について、登記や登録などの手続きをしていなければ、第三者に権利を主張できないことになったので、相続開始後は、登記等の手続きを速やかに行った方がよいと言えます。

・相続債権者の立場を明確化

〈ポイント〉

従来から判例の見解により、債権者は遺言や遺産分割協議で決められた相続の割合に縛られないとされていましたが、改正法により、そのような債権者の立場が明確になりました。

 

⑥相続人以外の貢献を考慮するための方策

・相続人以外の者の貢献を考慮する規定の新設

〈ポイント〉

改正前は、相続人以外の者(例えば長男の妻)が療養看護などの貢献をいくら行っても、寄与分は認められませんでしたが、改正法により、相続人に対して、貢献に応じた金銭の支払いを請求することができるようになりました。