雇傭契約締結の準備段階における信義則上の義務に違背したことを理由とする損害賠償請求が認められた事例
損害賠償請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/昭和59年(ネ)第584号
【判決日付】 昭和61年10月14日
【判示事項】 雇傭契約締結の準備段階における信義則上の義務に違背したことを理由とする損害賠償請求が認められた事例
【判決要旨】 甲を乙会社の幹部社員として採用する雇傭契約締結の折衝中において、乙代表者が、交渉当初と異なり甲に不信感を抱くに至っていたにもかかわらず、乙代表者の言動を誤解した甲が乙に確実に入社し得るとの誤った認識に基づいて勤務先に辞表を提出した経緯を知りながら、甲の雇傭問題に関する乙の現在の方針について的確な情報を提供し、甲に再検討の契機を与えなかったなど判示の事情のもとにおいては、乙は、甲が勤務先を退職したことにより被った損害を賠償すべき責任がある。
【参照条文】 民法1-2
民法44
民法623
民法709
【掲載誌】 金融・商事判例767号21頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト134号18頁
民法
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。